まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ   作:ワッタ~軍曹

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お盆中に上げられたら良かったけど、色々立て込んでいました……
いよいよシアトル戦の決着です。


第34話 ガルマ散る[散りに来ちゃった編]

「勝利の栄光を君に!」

 

シャアのキザな台詞に微笑みを感じながら、二機のザクがガウから降下していくのをガルマは見届けた。

 

「ほ、本当に出撃なさるのですか…?」

 

ガルマの副官ダロタは心配そうに言う。

 

「あぁ勿論だ。この為にわざわざ私のザクを隠した。シャアに心配されると厄介だからな」

「しかしですね…貴方は仮にも地球方面軍の指揮者なのですよ?ここは後方でしっかりと構えてもらって…」

「ええい!シャアだって中佐のくせに前線で戦っているではないか!」

「し、シャア中佐は特別編成の遊撃部隊なので、ガルマ様とは訳が違うのですよ!?」

 

あぁもう駄目だ。こうなってしまっては、ガルマ様はテコでも動かないだろう。いくら地球方面軍の全権はキシリア様が握っているとはいえ、北米での活動は決して無駄ではないのに。何故そこまでしてホワイトベースの撃破に執着するか……

 

ダロタは大きなため息を吐きながら

 

「解りました、もう私は止めません。しかし、木馬捜索に当たっているザクを、何機か護衛に付ける事が条件です」

「む…やむを得んな。私が声を掛けよう。それでいいな?」

「はい……」

 

隠していたガルマザクの立ち上げが終わり、その時が来てしまった。ガルマは自分のザクへ乗り込み、ダロタは胃が痛いのを我慢しながら敬礼で見送った。

 

「ガルマ、出撃!」

 

とうとうガルマのザクがガウから降下していった。あとは上官の帰還を祈るしかなくなってしまった。今日から胃薬の量を倍にしようと決断したダロタであった。

 

 

 

これが30分前の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザクを一個中隊引き連れて我々の目の前に来たのは、紛れもないMS-06FS。つまりガルマ・ザビ大佐本人である。シャアも驚きを隠せていないのが通信でも分かる。

 

「きっ、キサ…ガルマ!何故ここに居る!?」

「何故って、ガンダムを討ちに来たんだ!」

「ガルマ!貴様は前線の指揮者だぞ!後方に下がって指揮するのが仕事だろうに!」

「それを言うならばシャアこそ、ガンダムを追いかけている時は、ドレン中尉にファルメルを任せて、自分だって前線に狩り出ているではないか!」

「うぐっ!そ、それは話の規模が…」

 

意外や意外、ガルマの指摘にシャアがたじろいている。まぁ五十歩百歩だけど。

 

ガンダムもあまりの光景にたじろいでいる。いきなり10機のザクが出てくりゃ、驚かない方がおかしいもんな。

 

「ええい!こうなったら全力でガンダムを倒すぞジーン!」

「わ、分かりました!」

 

二手三手先を読むのが得意なシャアの弱点。それは想定外の出来事に対処することである。いわゆるやぶ蛇というやつだ。かくいう俺もガルマがザクに乗って降りてくるとは思わなんだ。予測しろって言う方がおかしい。

 

でもヒートホーク一本でどうやって倒せと?

 

「者共撃てッ!撃ちまくれェ!!」

 

横からマシンガンとバズーカの雨あられが飛んで来る。ちょっと待てや!俺を巻き込むんじゃない!!

何とか俺は避けれたが、ガンダムはもろに食らってしまう。あまりの衝撃にぶっ倒れたが、これだけ攻撃を食らってもカロリーゼロ♥️もといダメージゼロなんだから末恐ろしい。

 

やはりダメージは受けてないらしく、すぐさまに立ち上がったガンダム。おっ、来るか?と身構えたが、バックステップを駆使して逃げてしまった。分かるぞアムロ少年。いくらガンダムとはいえ、同時に12機のザクを相手にするのは分が悪すぎるという考えをして当然だ。それにガンダムはただの囮だし。

 

「ガルマ!ガンダムを見つけたら報告をするって言っただろ!何故待てない!」

「君が『シアトルでホワイトベースを叩き潰そう』って提案したじゃないか!」

「あれは"ホワイトベースを叩き潰す"のであって"ガンダムを叩き潰す"訳ではないぞ!」

「ガンダムを倒してしまえば、目標の五割は達成するんだ!」

 

お二人さん、コードネームの木馬じゃなくてホワイトベースって呼んじゃってるよ。まぁ、気にしたところで差ほど意味は無いだろうけど。

 

「ガルマ、何故そんなに焦っているんだ?もしや、あの彼女の為に戦果を上げようと?」

「そっ、そんなわけ…」

「ガルマ!戦場にラブロマンスを持ち込むなんぞ、愚の骨頂だぞ!それで前線に異常を招いたらどうするつもりだ!」

 

 

 

お前が言うかーーーーっ!!!

 

 

 

二人が口喧嘩している間にガンダムが遠くに逃げ……てない。そうか、ガンダムは囮だったよな(二回目)。中々来ないから警戒しながらこちらをチラチラ見ている。ガルマについて来たザク達も命令が無いからオロオロしている。せめて移動しながら喧嘩してくれませんか?

 

「あの~お二人共、そろそろ作戦に戻って……」

 

「「分かってる!!!」」

 

 

 

…もうお前ら結婚しろよ。

 

 

 

うーむ、皆でガンダムを追いかけているが一向に倒せる気配がしない。古の腐女子御用達のガルマとシャアがしょーもない喧嘩している内に、ギリギリ攻撃が当たらない距離まで離されたからな。ガンダムの歩行速度自体はザクと同程度なんだけど、いかんせんスラスター推力が桁違いに高いのよ。地上で追い付くのはシャアザクでも厳しいと思う。でもガンダムは囮だからあえてザクが追い付けるスピードで移動してくれるから、離される事はない。

 

……のは良いことだけど、ホワイトベースからはかなり離れてしまった。ガルマよ、ぶっつけ本番で着任したブライトに戦術で負けてどうする。このまま隙を突かれてシアトルから脱出されたら、元も子もないぞ。

と、思っていたらガンダムがUターンし始めた。そうか、ガンダムも離れすぎると帰れなくなるもんな。ぴょんぴょん跳ねるガンダムを、ぴょんぴょん跳ねながらザクで追いかけ回す。うーん、攻撃さえこなければ意外と楽しいな、これ。

 

 

「見つけたぞ!」

 

 

うわぁ、ガルマよいきなり叫ぶな。

 

「ガルマ、一体何を見つけたんだ?」

「ホワイトベースだ!ガンダムはホワイトベースへと向かっているのだ!」

「ッ!……待てよ、このままだとガンダムに逃げられる事になるな」

「なにッ!それだけはさせてたまるか!」

「………」

 

あっヤバい、シャアが機転を利かせて、ガンダムとの戦闘でガルマを見殺しにするつもりだ。ヤバいな、身を呈してでもガルマを守らないと……それで死んだら元も子もないけど。

 

ぴょんぴょん跳ねながら大体元の場所まで戻ってきた。「やっぱり追い付かないなぁ」と思っていたらシャアがガンダムの進路を塞ぐように攻撃したので、ぐっと近づいた。ガルマと一個中隊のザク達がガンダムに突撃する中、シャアは殿を勤めるような素振りで後ろからついていった。

 

「ちゅ、中佐!ガルマ様をお守りしなくて良いのですか!?」

「ガルマはああ見えて頑固でな。下手に手出しをすると怒るからな」

「そんな事言って、ガルマ様が斬られたらどうするんですか!」

「私のクビも斬られるだろうな」

 

呑気に洒落なんか決めやがって。お前ガルマ暗殺して、意外と凹んでただろ。

 

ともかく、シャアは予定通りにガルマを暗殺するらしい。俺はフォロー出来るようにガルマのすぐ横らへんに陣取って監視する。いくらなんでもこの状況でシャア自らガルマに手を下す事は無かろう。こんだけザクがいれば、無線で嘘情報流した後の処理が出来ないだろうし。

 

ザク一個中隊がいい感じにガンダムを包囲してくれたので、ガンダムは逃げにくくなった。やっぱりMSの動かし方や戦術はMSパイロットの方が分かってるな。はいそこ、ガルマもMS乗りと指摘しない。とここでガルマが提案をしてきた。

 

「ジーン曹長、これからガンダムに攻撃を仕掛けたいのだが…きっかけを作ってくれないか?」

「が、ガルマ様…指揮官なのですから、無茶は」

「ここでやらねば、ジオンが滅ぶ!」

 

貴方が死んでもジオンは滅びますよ?

 

「あの黒い悪魔を始末しなければ、ジオンは滅びる!だからきっかけを作るんだ曹長!」

「はい了解です……」

 

大佐から命令されちゃ、断れないな……シャアも黙っているし、何とかせなきゃアカンのかぁ。というか俺、右腕無いし、武装がヒートホークだけなんですけど。どうしろと?

 

 

 

「ん?これは……使えるかも」

 

 

 

ソレを手に取った俺はガンダムの気を逸らせる作戦を決行する。ガルマにガンダムの背後を取らせれば、何とかやっつける事も可能かもしれない。今はそれに賭ける他ない。

 

「ガンダム、勝負じゃぁああ!」

「あ、アイツ…ガンダムシールドを!?」

「でりゃぁあ!」

 

ザクの左手で持っているのは、少し前にガンダムが武器として投げつけたガンダムシールドだった。投げつけても良し、守っても良しの万能兵器である。シールドを前にしてガンダムに突っ込む。ガンダムはバズーカを使いきったのでサーベルを持とうとしていたが、反応が遅れてタックルを受けて吹き飛ばされる。

 

「今です大佐!」

「これでトドメだ!」

 

ヒートホークを振りかぶりながら走ってくるガルマ専用ザク。立ち上がるガンダムの背後を斬りかかる絶妙な陣取りだった。

 

そのはずだった。

 

「!?」「なにッ!?」

 

立ち上がるはずのガンダムはあろうことか、立ち上がらずにそのままバーニアを吹かせ、ガルマザク目指して仰向けのまま突進してきたではないか!ガルマザクは何とか上昇して回避したが、着地に失敗して地面に倒れる。対するガンダムは起き上がってビームサーベルを抜いた。

マズイ、形勢逆転してしまった。このままだとランドセルと一緒にコックピットを串刺しにされる。まずいマズイ不味いどうにかしないと!武器は……あるじゃないか。

 

「えぇい!一か八かじゃあ!」

 

持っていたガンダムシールドを投げる。が、クラッカーを投げる動作を無理やり出した為に、ガンダムシールドは緩い放物線を描くようにフワァ~っと飛んだ。

 

ガンダムはサッと避けて、ガルマザク目指して走り出した。

 

時間稼ぎにもならねぇ!

 

武器はヒートホーク一つ。でもこれでガンダムに攻撃すればガルマザクにも当たる!この状況でどうやってガンダムを退けるか……ッ!

一体…どうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……発想を逆転させろ

 

 

 

 

 

"ガンダムを退ける"のではなく

 

 

 

 

 

"ガルマさえ守れればいい"と……

 

 

 

 

 

 

そうだ…ザクなんかでガンダムは倒せっこない。

アレックス「呼んだ?」マドロック「呼ばれた気が」

 

 

 

 

 

ならやることは一つ!

 

 

 

 

 

ジーンザクとガンダムとほぼ同時に走り出す。ガルマザクはようやっと立ち上がるモーションを取ってる。このままだと本当に串刺しにされてしまう。間に合ってくれ!

 

ガンダムはビームサーベルを逆手持ちにして突こうとしている。タックルでガルマザクを吹き飛ばすには少し遅いかもしれない。となれば、アレを試す他ない……

 

「ガルマ様!失礼!」

「なにッ!?グハァ!」

 

セキヤ技術少佐が入れた新しいモーションの一つ「回し蹴り」を炸裂させた。右足は見事に立ち上がった直後のガルマザクの脇腹に決まり、横へ吹っ飛ばした。代わりにジーンザクの右足が串刺しにされる。それほど刹那なタイミングだった。

回し蹴りの勢い余って、そのまま半周回って右足がもげた。そのままバランスを崩してうつ伏せで倒れ込み、死を覚悟した。

 

 

ああ、ここで俺は死ぬのか……

いっそのこと、一思いに突き刺してくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

あれ?まだ生きてる。

 

 

 

「ジーン!大丈夫か!」

 

シャアの声が聞こえる。まだ死んでないみたい。

 

「少佐!私は大丈夫ですか、一体どうなっているんです?」

「説明するより見た方が早い、立てるか?」

「補助を頼みます」

 

シャアザクに肩を貸してもらい、指定された方角を見ると、ホワイトベースが飛んでいた。

 

「ガウが遠くに行った時を見計らって飛び立ったようだな。そのうち一機は背後から、ガンタンクやガンキャノンに不意打ちされて落ちた。ガルマのガウは追いかける程の燃料が残っていない。残る一機は遠くでやっと旋回し終わった……という感じだな」

「つまり、ガンダムはホワイトベースに戻った。ってことでいいのでしょうか?」

「そうだな」

 

どうやらこの状況に痺れを切らしたブライトは、強行策に出て上手く逃げれたようだ。絨毯爆撃のシフトちゃんと敷いとけよ……と思いながらも、ガルマを生き延びさせる事に成功したのはかなり大きい。これで、このガンダム世界の歴史がどう変わるのか……

ガルマの暗殺を阻止した俺をシャアはどう見るのか、オデッサの戦いはどうなるのか、それよりA-12部隊はこの後どう動くのかすら解らない。

一つだけ解った事があるとすれば、ガルマの策略はブライト以下だって事だ。

 

 

そんな事を考えながらも、壊れた足でガウへと戻ったジーンであった。




シャア「にしてもガルマを蹴り飛ばすとは、中々の根性を持っているな。気に入ったぞ」
ジーン(転生)「はは…どうも」(ガルマじゃなくて俺が暗殺されそう……)

ガルマの暗殺を

  • 阻止すべき(生存IFルート)
  • 見逃すべき(死亡原作ルート)

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