まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ 作:ワッタ~軍曹
今回で運命のシアトル戦に突入。ジーン(転生)は生き残ることが出来るのか?そしてガルマ暗殺の行方はいかに。
U.C.0079 10月4日 17時23分
ガルマ暗殺の日
アメリカ合衆国 ワシントン州 シアトル地区
いよいよだ。この二週間ちょっとがとても長かった。何故か一年近く掛かっているような気がするが。作者「クシュン!」
それはともかく……
ガルマ暗殺をどう回避するかが問題だ。少なくとも、持ち前のビームライフルでホワイトベースを撃破しなかった以上、ガルマをぬくぬくと殺させてはたまらない。シャアの動きを予測しやすくするために、わざと野放し同然で戦闘で手を抜いたのだから。まぁ手を抜いた結果、クラウンと一緒に燃え尽きそうになったが。
ぶっちゃけシャアが死ねば万事解決なのだが、まだガンダムに殺られるような腕前の差はないからねぇ。かといって俺が天誅を下せば、ルウム戦役のヒーローを殺した殺人者で銃殺刑だ。あぁ!シャアが死ねば宇宙世紀は安泰なのに!アムロはえげつない程強いけど、シャアが絡まなきゃそこまで厄介な相手にならないはず。うーむ、ガルマの暗殺回避の方が簡単そうだけど、妙案が浮かばない……
「ジーンもうすぐ出撃だ、MSの調子を見てこい」
パイロット待機室にシャアが入ってきた。おや、もうそんな時間か。考え事をしていると時間の経過があっという間に過ぎるな。
「了解です」
「もうじき夜になるから夜戦装備を整えろ。あと、予備武装でバズーカを持っていけるか?」
「夜戦装備とザクバズーカ、了解しました」
予備武装を要求するなんて珍しいな。一応ビームライフルは16発でバズーカより11発も多いし、バズーカより取り回しが良いからあんまり必要が無いのよね。……まさか何か企んでいるとか?まぁ上官命令だし、たまには他の武器を使わないと腕が鈍るから丁度いいと考えよう。
格納庫へ向かうと二機のMSが用意されていた。無論、俺たちのザクだ。武装ラックと護衛で飛んでいるドップを除けば格納庫には何もない。俺の目の前にある武装ラックにはザクマシンガンが備わっていた。
でけーなぁ……生身の人間から見るとザクマシンガンでさえデカい。10メートルぐらいはあるのか?MS目線だとマシンガンサイズだけど、人間目線だとただの大砲やな。隣のラックは確かバズーカだったよな……
左隣の武装ラックはジーン(転生)の思った通り、ザクバズーカが備わっていた。しかし、そこに"微かな違和感"を感じていた。
「なんか……バズーカの形状が絶妙に違う気がするな……」
「ジーンさん、良く気がつきましたね」
後ろから声を掛けたのはセキヤ技術少佐だった。
「せ、セキヤさん!……バズーカ、何か変わったんですか?」
「あのバズーカは最近配備された改良後期型ザクバズーカですよ」
「か、改良後期型???」
「はい!説明しますね」(ニカッ)
セキヤ・シモノ技術少佐の教えて!MS解説~!
セキヤ ジーンさんはザクバズーカには大きく分けて"初期型" "改良型" "改良後期型"の三種類があるのはご存知ですか?
ジーン(転生) いえ、マッタク……(そんなにあるのかよ?!)
セキヤ ではこの主要な3つのバズーカをご紹介しましょう!
初期型ザクバズーカ
セキヤ(以降セ) 開戦初期に使用されたザクバズーカです。一般人の「バズーカと言えばこんな感じ」っていう想像通りの形状をしていますね。
ジーン(転生)(以降ジ)(外見は……いわゆる原作アニメやガンプラでよく観る"ノーマルなザクバズーカ"ってやつだね)
セ 装填数は1発の単発式です。
ジ え?1発しか入れられないんですか?
セ えぇ。なにせ"核弾頭"を使用していますから……
ジ あっ…(察し)
セ その後、南極条約によって核兵器等の使用が禁止されました。そのため、新たに280㎜の通常弾頭を開発。装填数が4発に増えました。
ジ えっ、えっ。ちょっと待って下さい。元々単発式なのに、何処に4発を入れるスペースがあるんですか?
セ バズーカの後ろにバックファイアを逃す4つのノズルみたいなのがありますよね?
ジ はい。
セ あのノズルに1発。計4発入っています。
ジ ????????
セ ジーンさん、あのザクバズーカは元々核兵器を運用するための物だった。そこまではいいですね?
(ジーンが頷く)
なので、なるべく大きいサイズでなければいけません。いくら核兵器とはいえ、小さく作っては広大な宇宙では効果がありません。なのでジオン軍は来るべき決戦に備えて、艦隊を面で殲滅するための680㎜時限式核弾頭を開発、そして残存勢力を各個撃破するための680㎜通常弾頭を同時に開発したのです。
ジ ということは、初期型ザクバズーカの内径は680㎜もある、ってことですか?
セ そうなんです。なので例えばバズーカを2発同時に発射したとしても計算上は干渉はしないのです。もはやバズーカというより、ロケットランチャーって言った方が良いのかもしれませんね。
ジ (そういえば、MGのザクを組み立てた際にザクバズーカの内径を計った事あるけど……確か6.8㎜だったような気がする。あの時「全然違うやんけ!」ってセルフツッコミをした記憶が…)
セ それじゃあ、次の解説に行きましょう。
改良型ザクバズーカ
セ この改良型ザクバズーカは主に陸戦用ザク、MS-06Jと同時に開発されたものです。地球侵攻作戦時に判明した初期型ザクバズーカの欠点を補う為に開発されました。
ジ どんな欠点があったんですか?
セ 取り回しが不便という事です。元々宇宙空間での核兵器運用を想定して作られた物なので、地上での取り回しは想定外だったのです。
ジ 元々地球への侵略は予定に無かったですもんね。
セ 地球の重力に耐えられず、バズーカを持つザクの右腕の故障が多発したそうです。
ジ (重い荷物を持って筋肉痛になったオカンみたいだな……)
セ そこで口径の縮小をして小型化し、軽量を計ったのです。これにより重量が約23%も削減出来たのです。
ジ おぉ、それは凄い。
セ 更に「弾数をもっと多くしてくれ」という要望に応え、弾数を5発に増加。「整備性も良くしてくれ」という要望で、バナナ型弾装を使用することによりバズーカのメンテナンス性をアップすることに成功しました。
ジ (バナナ型弾倉って事は、俺が転生した後にシミュレータで使ったバズーカか)しかし弾数が増えたのは1発だけかぁ……
セ 実はその増えた1発のせいでトンでもない不良を抱える事になったのです。
ジ へ?
セ 軽量化した話は覚えていますね?
(ジーンが頷く)
その軽量化と相まって装填不良、いわゆるJAMが発生してしまったのですよ。
ジ それまたどうして?
セ バズーカの軽量化による耐久性の低下、バナナ型弾倉による特殊な装填方法、バズーカ弾5発の重み……これらが運悪く重なった結果が装填不良という訳です。あとついでにカウンターウェイトが後方に寄り過ぎているるせいで、撃った時にバランスが崩れて命中精度に難が出ています。
ジ それじゃ結局ダメやんけ…(そういやバズーカ使ったのって宇宙空間だったよな…だからJAMらなかったのか。というかシミュレータならそこまで配慮しないのかな…)
ここでふと、気になった事がある。
ちょっと待って下さいセキヤさん。JAMるって事は、もしかして……
セ ……はい、暴発事故もあります。
(ヤッパリネー)
暴発事故が今までに32件、この内の4件はMSに誘爆しています。
ジ もはや不良品じゃねーか!!!
セ ……という訳で改良後期型の説明に移りましょう。
改良後期型ザクバズーカ
セ これが今、ガウのバズーカラックに収納されているバズーカです。配備開始は10月からなので、出来立てホヤホヤの新品ですよ。
ジ へぇ~そうなんだ。
セ 耐久性を向上するために砲身厚を少し増やしたので重量は改良型よりも約8%増加していますが、まだ初期型よりもだいぶ軽量化はされています。更にバナナ型弾倉を廃止し、装填不良が起こりにくい長方形の弾倉を使用しています。
ジ やっと学んだのか。
セ 装填数は3発で…
ジ ちょっと待って下さい、装填数減ってるじゃないですか!
セ 安心して下さい。この弾倉は腰部の他に、ザクの右肩シールドにもマウントする事が出来るんですよ!
ジ はぁ。
セ なのでやろうと思えば右肩シールドに8つ、左右の腰部に4つ、バズーカに1つで合計39発も持ち運び出来る様になったのです!
ジ それって右腕の負担は?
セ あくまでも"最大積載量"なので考慮していませんけどね!
(ヤッパリネー)
……まぁ、それはともかく。一回の装填数が少ないので、口径を280㎜から320㎜に変えて威力をUPさせましたし、この改良後期型はザクバズーカの最高傑作と言っても過言ではないですよ。
ジ なんかサラリと"口径が320㎜になった"と聞こえた気が……
セ はい、そう言いましたが……
ジ もしかして、3つのバズーカって互換性は……
セ 無いに決まっているじゃないですか。
ジ (そんな笑顔で言われてもなぁ)
ジ (ちなみに、この改良後期型はジ・オリジンのザクバズーカA2型そのまんまの見た目やな)
セ 他にもザクⅠが使っていた"最初期型"や、水中用ザクの"水中試験型"、ドムが使用しているロケットモーター点火式……あれはちょっと違うか。おっと、もうこんな時間。ジーンさん、もう少しで出撃です。MSの性能を100%引き出せる様に念入りに整備してあるので、おもいっきり暴れまわっても大丈夫ですからね。
ジ ありがとうございます!
ジ (総評するとすれば、地球降下作戦のせいで滅茶苦茶めんどくさくなってるな……互換性がないし、改良後期型のせいでまた、しっちゃかめっちゃかになりそう。なんだかジオンはやっぱり勝てなさそうな気がしてきた……)
「ジーン出撃だ!行くぞ!」
シャア中佐が声を掛け、MSに乗り込む。それに続いて俺も自分のMSに乗り込む。胸部から下がっている乗り込み用のタラップに足を掛け、上昇する。下からセキヤさんが手を振ってくれてるので、それを敬礼で返してコックピットへ乗り込んだ。
シャアからは離れてはいけない。特に今日はミノフスキー粒子散布濃度が濃く、通信対象から500メートル以上離れると何言ってるか分からん状態になる。でも、ちゃっちゃとホワイトベースをぶっ潰しておけばいらん努力だったよなぁ……
「勝利の栄光を君に!」
シャアが原作通りの台詞を決めたところで降下開始。とにかく、ガルマ暗殺を食い止めつつ生き残らなければならない。何でこんな面倒な事に巻き込まれたんだ?どうせ転生するならジョニー・ライデンになりたかったな。シン・マツナガでも良いかもしれん。あ、アナベルちゃんは止めて下さい4年後ロクな目に合わないので。(キッパリ)
薄暗い、というか普通に夜戦と言ってもおかしくないぐらいに辺りが暗い。時刻はまだ18時過ぎだが、厚い雲が太陽を遮っている。ザクのカメラを夜戦用に切り替える。画面が若干赤みが掛かるが見えないよりはマシである。
「よし、これより木馬の捜索を開始する。ガンダムも出ているはずだ、気を付けろ」
「了解です」
捜索とは言ったものの、ホワイトベースのいる雨天野球場からはかなり離れている。おおよそ4㎞といったところか。そこそこ歩かなきゃいけない上に、上官と別行動は基本的にご法度だ。
と、ここでアラームが鳴る。熱源探知が反応し、モニターの情報欄にはガンダムの表記が出ている。はえーよホセ!しかし、まだこちらには気づいていないようだ。
「向こうからやって来るとは、我々も運が良いな。ジーン、私が良いと言うまで物音立てるなよ」
「分かってますって」
シャアの指示でガンダムを挟み撃ちにする戦法を取った。ガンダムはまだシャアを探しているらしく、キョロキョロとゆっくり動き回っている。(でも確かガンダムは"囮"だったよな……?)にしてもガンダム討つのにザクⅡ2機って、あり得んよな。普通。一応温存していたザクⅡ15機を投入してホワイトベースの捜索をしているらしいけど……そんなに温存していたのか。っていうか作戦変更していなければ、そのザク達はガンダム達の餌食に……二つの意味で恐ろしいな。
集中しよう、たった二機でガンダムをぶっ叩くのはほぼ無理に近いがやらなきゃアカン。とりあえず一撃必殺のビームライフルをお見舞してやれば……
ガンダムが近づいてくる。自分から半径300メートル位のところまで熱源探知で分かる。廃ビルが崩れ、丁度良くガンダムの進行方向を捉える場所構える事ができた。
後はシャアの動きも良く見ておかないとな。多分シャアはまだホワイトベースが何処に隠れているかまでは把握出来ていないはずだ。何故なら、原作ではガンダムを発見した後にジャンプしてホワイトベースを見つけたが、まだ行っていない。地図をこの世界のシアトルにはちゃんと雨天野球場がある。そして自分達が居る場所からおおよそ4㎞離れてよく見えない(存在感は結構あるけど)ので、確認するまでは動かないと思いたい。
手に汗を握るとはまさにこういう場面だろう。"もしかしたら"のチャンスがやって来たのだ。精密に狙撃出来るように両手持ちで構え、瓦礫の上に立ち密かにその時を待っていた。ここで"もしかしたら"を実現すれば、ガルマ暗殺を阻止出来る……そう信じるしかない。気をつけなければな、ここは瓦礫が多いから物音を立てやすい。原作ではそれでガンダムがザクに見つかってしまった(ガラガラ)からな。そうそうこんな感じに……
気づいた時には外の風景が若干斜めになっていた。ついでに言うと黒いガンダムがハイパーバズーカを構えてこちらを向いていた。
「こ、こんなところに居たのか!」
(やっちまったぁぁぁぁぁ!!!!!)
「ええい!ジーンの奴、しくじったか!」
バズーカ弾が左脇腹を掠め、後ろにあったビルを爆破し、粉々にした。殺られてたまるかと三発程ライフルを撃ったが、どれもガンダムには当たらなかった。シャアが助太刀に入り、バズーカを足元にお見舞するが、あんまり効いてない気がする。一応新しいバズーカで威力はアップしているはずなのだが……
ガンダムとシャアザクはどちらも蝶のように舞い、蜂のように刺す一進一退の攻防を広げている。もうここまで発展してしまうと、むやみに攻撃出来なくなる。フレンドリーファイヤーはキシリアなら許してくれそうだが、ドズルは駄目だろうなぁ。だって私情でガルマの仇討ち部隊編成する程だし。「お前のせいでシャアが死んだ!」と言われて即銃殺やろなぁ。
「何をやってるんだジーン!貴様も戦闘に参加せんか!」
「何って、フレンドリーファイヤーでもしたら、どうするんですか!一発でアウトですよ!?」
「貴様はそんなヘマをする奴……ではないはずだ!」
なぜ一瞬言葉を飲んだ?
「中佐、ジャンプしたらライフルで撃ちますからね!」
「あぁ分かった!」
つばぜり合いから一瞬、シャアザクが後方へジャンプする。それを追いかけるガンダムをこれでもか!と言わんばかりに撃った。しかし緊張とプレッシャーで狙いが定まらず七発も撃って左肩を小破させただけだった。
「焦るなジーン!チャンスはまだある!よく狙って撃て!」
「す、すいませェん!」
誰か、誰か助けてくれないだろうか……
もう限界に近い。頭が真っ白になりかけている。
「ジーン!もう一度行くぞ!」
「了解!」
バズーカを撃ちながら後方へジャンプするシャアザク。今度は冷静になって撃とうとしたが、私はアムロはどういう奴なのかを忘れていた。
「今度はさせるか!」
とシャアを追いかける前にガンダムシールドを投げつけてきた。うわぁ!これがガンダム名物のシールド投げかぁ!!回避したが少し遅かった。右腕を切断されてしまったのだ。ただのシールドが何故ここまでの切れ味を出しているかはホントに不明であるが、大ピンチである事は解っていた。今回は予備武装を持ってきて正解だった。すぐさまバズーカを左手に持ち、三発撃ち切ったがジャンプして避けられてしまった。
……ってちょっと待て反転しながらこっちに来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「てりゃぁあ!」
「ヤメロォォォォォォォ!!!」
思わずザクバズーカ(改良後期型)を投げつけてバックステップを踏む。ビームサーベルの犠牲になったバズーカの代わりに何とか助かった……けど、どうしよう。武器がヒートホークしかなくなってしまった……
このままじゃ殺られる!もう誰でも良いから助けにきれくれぇ!お願いだから助けてぇ!!!
「助太刀に来たぞぉ!!!」
友軍が助けに来てくれた……
絶望のどん底から希望の光が射してきた。もしかしたら一般兵士じゃすぐに殺られるかもしれないけど、一瞬でも気を引いてくれたら後方に下がれる。緊張とプレッシャーが無くなり、生きる活力とやる気が湧いてきた。ザクがあれよあれよと増えて10機も来てくれた。え?こんなに来て捜索は大丈夫なの?
先頭に立つザクは多分、隊長機だな。色は暗くてよく解らないけどアンテナブレードがあるし、バルカン砲が頭に4門付いてるし、右手に持ってるヒートホークはちょっと大型で……
へ?頭部にバルカン砲??ま、まさか!??!?
「ええい連邦の黒い悪魔め……これ以上好き勝手にはさせんぞ!落ちろッ!落ちろォォ!」
(゜ロ゜)?!
(゜ロ゜)?!
モニターの情報欄には[MS-06FS]の文字がくっきりと写しだされていた。
あぁ~!歴史の壊れる音ォ~!
ガルマの暗殺を
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阻止すべき(生存IFルート)
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見逃すべき(死亡原作ルート)