まさかガンダム転生でジーンになると思わなんだ 作:ワッタ~軍曹
久しぶりに時間泥棒に出会ってしまった……
遅れましたが、お待ちかねの30話です。どうぞ。
おはようございます、ジーン(転生)です。
一日飛ばしてやって参りました10月1日のアムロ第一覚醒の日。もうあれは仕方ないとして、やられない程度に仕事をしなけりゃならん。なんか決着はシアトルで決めるから、その道中で戦う今回の戦闘は軽~くで良いらしい。自由落下中の戦闘からほぼ一週間程MS戦をしてないので少し不安な所がありますが……
今回の作戦概要
ホワイトベース(通称"木馬")及びガンダム他MSに打撃を与える事。ただし戦力保持の為、余力を持って撤退をする事。
……判断が若干遅い気がするが、まぁ方向転換できただけマシと考えよう。しかし参加する部隊編成が
ガウ 2機
ドップ 2個小隊
マゼラアタック 1個中隊
MS 1個特別小隊(シャアと俺のみ)
とまぁ、こんな感じでMSを温存している。昨日も二回程待ち伏せして攻撃したみたいだけど、MSは参加させなかったらしい。最初っからこうしていれば……
まぁ、愚痴ってもしょうがないし、ウォーミングアップでもしてきますか。
一方その頃シャアは……
ガウ攻撃空母 指令室
「ガルマ、今日は顔色が良さそうだな」
「あぁ、体調は完璧だ」クルクル
「数日前の時は血の気が引いていたからな。やはりギレン総帥のお説教が……」
「その話は止めてくれ!思い出しただけでも頭痛がしてくる……」
「はっはっは、大袈裟すぎやしないか?」
「君はギレン兄さんの説教を受けた事が無いから言えるんだ……ギレン兄さんの説教はドズル兄さんやキシリア姉さんと違って精神は勿論、脳にまでダメージが行くんだ……」
誇張が過ぎると思ったが、シャアは言葉にはしなかった。
「あの時は酷い頭痛で気分も最悪だったんだ……」
「そうか……」
シャアはあの時のガルマの顔を思い出し、あながち嘘ではないと思ったのでこれ以上追求はしなかった。
「ではそろそろ行く」
「分かった、くれぐれも気をつけてくれよ。何かあったらガウで援護する」
「お気遣いありがとう」
笑顔で見送るガルマだが、指令室を出るシャアの腹の中には暗殺の二文字が残っていることをまだ彼は知らない。シャアはまだ諦めてはいない。
「敵2時と10時の方角からマゼラアタックです!」
「さらに6時の方角からドップが近づいています」
「またこのパターンか!」
オスカーとマーカーの報告に苛立ちを覚えるブライト。そこにまた苛立ちを隠せていないリード中尉が話しかける。
「ブライト君、私は言ったはずだぞ。早く太平洋に脱出して本部に連絡した方がいいと」
「燃料や弾薬、食糧まで底を尽きそうなのに太平洋なんかに出たら孤立してあっという間に墜ちてしまいます!今の状況を考えてから発言して貰いたい!」
「リード中尉、ブライト、二人とも落ち着いて下さい。ここはジオンの勢力圏内なのだから、ジオンの攻撃はあって当たり前よ。昨日も二回攻撃が来ましたけど、何とかくぐり抜けたのだから、何とかなるわ」
ブライトとリードをなだめるミライ。二人は黙ってしまった。名門ヤシマ家のご令嬢は伊達ではない。
「ブライト、指示を出してあげて。この艦の行く末は貴方にかかっているのよ」
「そうだな……よし、各砲撃手は迎撃体制を取れ。敵は多分昨日と同じだ。だが気を抜くなよ」
「正面12時の方角からMSが2機!これは……シャアです!シャアが来ました!」
「シャアも来たのか……よし、カイはガンキャノン、アムロはガンダムで出撃してくれ」
「はいはい」
軽い返事で返すカイだが、肝心のアムロからの返答が無い。ブライトはもう一度呼び掛ける。
「おいアムロ、聞こえているのか?ガンダムで出撃してくれ」
「うるさいなぁ……」
「おいアムロ!これは命令だそ!おい!」
「出撃したら、ゆっくり寝れる保障はあるんですか?」
「なんだと……!」
アムロの返答に力がない。昨日も二回出撃したせいなのは分かってはいるが、シャアを追い返すにはアムロが必要だ。
「アムロ、シャアが来ているんだ。出撃してくれ」
「そんなにガンダムを動かしたいなら、ブライトさんが出撃すればいいでしょ!」
「貴様ッ……!」
思わぬ返答に歯ぎしりをするブライト。
「どうしたんだブライト君!」
「……アムロが出撃を拒否しているんです」
「なんだと!?じゃあシャアはどうするんだ!」
「……代わりにガンタンクを出撃させます。リュウ、ハヤト、ガンタンクで出撃してくれないか?」
「おうよ!」「分かりました」
苦肉の策でガンタンクを出す。しかしガンダムでないとシャアは追い返せない。何とかしてアムロをガンダムに乗せなければと考えるブライト。
「……よし」
受話器を取り、手際よくハンガーへと繋ぐ。
「ブライト君、出撃かい?」
「えぇ、とりあえずガンタンクとガンキャノンを」
「ガンダムは出撃しないのかい?」
「それが……」
アムロが出撃拒否した事を話す。
「出撃拒否か……」
「はい」
「解った、私が説得してこよう」
「お願いします」
通話を切り、ホッと一安心する。父親のレイ大尉なら何とかしてくれるだろうと。ブライトはホワイトベースの指揮に集中する。
「左舷機銃、弾幕薄いよ!なにやってんの!!」
薄暗い部屋のドアが開く。そこには着崩した制服のままベッドに横たわる息子が居た。
「父さん……ブライトに言われて説得にでも来たんでしょ」
「アムロ……」
明らかに元気がない。でも何とかして出撃してもらわねば困る。
「昨日は二回も出撃してロクに寝れてないんだ。休ませてくれよ」
「それを言うならリュウ曹長だってコアファイターで二回出撃したぞ」
「父さんまでブライトの肩を持つつもりなのか!」
ベッドから起き上がり、こちらに近づいてくるアムロ。あまり表情を表さない息子の眉間には、シワが寄るぐらいに怒っていた。
「アムロ、気持ちが分かるがこれは戦争なんだ。アムロが出なければシャアにやられて皆死ぬ事になる」
「……そんなにシャアを倒したいなら父さん、貴方が出ればいい。ガンダム作った技術者なんだから操作ぐらい出来るだろ?」
「なっ……!」
息子からの発言に思わず仰け反ってしまった。怒りの顔から疲れた顔に戻ったアムロはよそよそとベッドに戻ってうずくまる。
「寝させてくれよ……僕の気持ちが分かるんだろ?」
どうしようか。無理やり叩き起こしてガンダムのコックピットに詰め込もうか、必死になって頭を下げ続けるか、それとも……修正を強行するか。
……いや、全部ダメだ。自分の息子は思いの外、頑固な事ぐらい知っている。ましてや自分の息子を殴る事なんて今まで一度もした事がない。仮に殴ったとしても、その後に何を言えば良いかなんて解らない。とすれば答えは自ずと一つになる……
「分かった、私がガンダムに乗ろう」
「えっ……?」
寝ていたアムロが思わずこちらを向く。が、直ぐに背を向けた。
「好きにしてくれっ!……僕は寝るから」
ふて寝する息子に哀しみを残しつつ、部屋に備え付けてあるテレビ電話でブリッジに繋ぐ。
「レイ大尉!どうでしたか?」
「……ガンダムを出撃させるよ。指揮を取ってくれ」
「おぉ、それは良かった。では今すぐに出撃を!」
「……了解」
通信が切れ、自分の顔がぼんやりと映る。その顔は多少の迷いがあるものの、決意を決めた顔だった。部屋を出たテムは久しぶりに全速力で廊下を走った。
2機のザクがガウから降りてくる。着地をした2機はガンキャノンとガンタンクがドップを追っ払ってるのを確認する。
「ガンダムが見当たらないな」
「そうみたいですね」
アムロは原作通りグレたか。
「どちらから行きます?」
「キャノンから行く。ジーンはタンクを足止めしてくれ」
「了解!」
ガンタンクに照準を合わせ、キャタピラを撃ち抜く。見事にヒットし、文字通り足止めをする。
「上出来だ、後は適当に援護してくれ」
「はいはい」
やっぱりガンダムは出なかったか。こりゃ今頃ブライトに殴られているんだろうなぁ。あーヤダヤダ、アムロ覚醒しちゃう。そろそろ引きずり下ろさないと歯止めが効かなくなる。
シャアのザクがガンタンクの砲撃を華麗に避け、お得意のキックが炸裂する。ガンキャノンはオープン回線でないはずなのに、カイの悲鳴が聞こえてきた気がする。ふとガンタンクの方に目を向けると、まだ動きが止まったままだった。トドメを、と思ったその時アラートが鳴る。黒い奴のお出ましだ。
「中佐!ガンダムが出てきました!」
「ようやっとか!」
着地したガンダムはシャアの方を向き、ビームライフルを乱発する。だが、掠りともしない。
「なんだ?いつものガンダムとは動きが違うぞ」
「そうですか?」
「まぁいい、私がガンダムを引き付けるからジーンは援護を!」
「分かってますって!」
シャアが蝶のように舞いながらビームライフルを避ける。逃げる事に関しては一級品だな。向きは変えるが、一歩もその場から動かないガンダムに狙いを合わせる。確かにこの頃のアムロなら普通に動き回っているはずだよなぁ、と思いつつ照準を頭に合わせる。一回ヘッドショットやってみたかったのよねぇ~
「狙い撃つぜ!」
ビーム一閃、ガンダムヘッドを貫き頭が無くなる。ガンダムは仰け反って背中から倒れた。ヨッシャ!決まったぜ!ヘッドショット、キモティー!!!久しぶりのMS戦に血を滾らせるジーン(転生)であった。
「ぐわっ!メインカメラが!!シャアに気を取られすぎたか……ッ!」
テムは身の程を思い知った。アムロの次にシミュレータで得点が良かったのでシャアを追い払う位なら……と思ったが、いざ戦場に出てみるとシャアの速さに戸惑い、肝心の移動を忘れていた。
「しかし……ここでやられる訳には……」
歯を食い縛りながら補助カメラを作動させ、ガンダムを立ち上がらせる。父親もまた、頑固な男であった。
「アムロ!貴様ァ!!」
青筋を立てながら部屋に入り、アムロの首根っこを掴むブライト。
「なっ、何ですか!」
「お前……どういう神経しているんだ!!」
ブライトの顔を見たアムロは直ぐに目を背けた。その顔は余りにも凄みを帯びていて、多分誰が見ても目を背けると思う程だ。
「お前は父親を見殺しにするつもりなのか!」
「そんなの……親父の勝手だろう」
「ッ……!」
冷たい顔をするアムロの頬を思い切り叩く。
「ッ!殴ったね!」
「殴ってなぜ悪い!本当はレイ大尉だってこうしたかっただろうさ!だけどお前が駄々をこねたせいで"上官命令"で出撃させる事になったんだぞ!!」
例のポーズをするブライト。
「僕だって……まさか、本当に出るなんて……」
二人の会話をコール音が遮る。
「ブライト大変よ!ガンダムがやられそうよ!」
「なにぃ!」「えっ!」
一瞬の沈黙が入り、二人に嫌な汗が流れる。
「……お前のせいでレイ大尉が死んだら、お前をホワイトベースから放り投げてやるからな!!!」
「やれるもんなら……やってみろ!」
「二人ともケンカは止めて!今はそれどころじゃないのよ!」
セイラが仲裁に入るが、とてもじゃないが落ち着く様子はない。そこにオスカーからの報告が入る。
「MSが後退!その他ジオンの部隊も撤退を始めました!」
「ハァ……ハァ……そうか……」
「……」
セイラは安堵の表情を、ブライトは少しだけ頬が弛んだ。アムロは安心しつつも浮かない顔をしている。
「……二人とも落ち着いたかしら?とりあえずこれで一安心ね。後でレイ大尉を迎えましょう」
セイラは上手くその場をまとめて通信を切った。ブライトは鼻を鳴らしながら部屋を出ていき、その後にアムロものそのそと出ていくのであった。
ジオンはドップ3機、マゼラアタック1輌の損害で撤退をした。一方ホワイトベースは右エンジンのブローで出力が低下と後方ミサイルが無くなった。MSはガンタンクの左キャタピラの破損とガンダムの頭部、左腕関節の破壊とかなりの痛手を被う事になった。
お互いに緊張感が高まりつつある中、三日後の決戦は刻一刻と迫っているのであった。
アムロ、まさかの覚醒せず。ここに来て運命の歯車が少しずつ変わって行く……
追伸 あれだけ戦闘シーンがあると言っておいて少ししかないのは許して下さい……
ガルマの暗殺を
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阻止すべき(生存IFルート)
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見逃すべき(死亡原作ルート)