byぼけなす
(精霊をデレさせる主人公サイド)
退屈だ…………ホントに退屈だ。
琴里の精霊の力を封印してから面白いことはあまりない。
四糸乃を愛でていても――――
十香を餌付けしていても――――
――――満たされない。なんとつまらない日常である。
「よお、四季。ちょっとはな――」
「ちょうどいい殿町。お前の頭を
「朝っぱらから俺の頭髪の危機!?」
頭を防御体勢をとるクラスメイトに俺はバリカンを取り出して狙いを定める。
「なんで唐突に俺の頭が狙われるんだよ!」
「つまらないからさ。とりあえず今日の目標はお前の頭を坊主にすることだ。よかったな。これでお前もスポーツマンとしてデビューだ」
「いや部活してねぇし、スポーツマン=坊主頭ってのはおかしいだろ!」
「ならお寺の人達か。ついでに出家してお前の俗物な頭も浄化してもらえ。浄化したらゲーム機も浄化してやる」
「髪と共に散らせてたまるかよ、俺の嫁を!」
コイツの嫁とは携帯ゲーム機にある恋愛シュミレーションのよくわからない萌キャラという変な女のことだ。顔はそれなりにいいのにエロゲ脳でコイツがモテないのは必然である。
「あーホントに暇だ。……どこかで爆破テロしてくれないかなー」
「なに恐ろしいこと言っちゃってるの!? てか、仮にあったとしてどうするんだ?」
「爆弾を解体して俺が作ったネバネバスライスを仕込んだ爆弾を仕掛けたヤツの自宅に送りつける」
「なにその嫌がらせ」
「しかも可燃性だから摩擦を起こせばボカンだ」
「嫌がらせじゃなかった! 倍返し!?」
「そしてそれを町にも仕掛けてやる」
「ただの八つ当たり!?」
まあ後半は冗談だが、そんなことあればまず俺は犯人を『切り裂きたくなる』。そういう衝動――――というか破壊衝動があるからな…………。
「なんか面白いことはないのかねぇ…………」
と俺が窓から青空を見ていると俺の机の下から幾何学な模様が浮かび上がる。
「おぉ!? なんだこれ!?」
「これは…………召喚陣?」
…………ふーん。誰だか知らないけど、面白いじゃん。
俺を召喚して使役するつもりだが、あいにく俺は使役されるつもりはないよ。
――――誰にも縛られない
――――誰にも止められない
そんな俺を召喚する馬鹿が異世界の向こうにいるなんて面白いじゃないか。
「いいぜ。乗ってやるよ、どこだか知らないご主人様よぉ。俺を従わせたければそれなりの――――」
「シキー! 何があったのだ!?」
と、そんなこと台詞を言ってるときに元精霊さんこと夜刀神十香が飛び込んできた。
あ。ヤベ…………。今、十香を抱き止めているから――――
「な、なんだ。これはァァァァァ!?」
「あー。やっぱ巻き込んじゃうのよねー…………」
そんなわけで俺と十香は異世界に行くことになった。
ま、いつでも帰れる設定だし。別に問題ないか。
飽きるまで遊んでやるか。
(マジな恋する世界ではオリ主的な立場な主人公サイド)
ワシこと北郷一刀は色のない高校生活を送っていた。
理由は…………まあ、愛する者達と別れて落ち込んでいるからだ。
オイ、情けないって言ったヤツ。ちょっと来い。
貴様らはわかってないようだが、愛する者達がいる場所――――いや世界は『外史』というところだ。
人の想いによって誕生する外史にワシはかつて四度訪れた。
――――最初は王として駆け抜け
――――呉では王の愛を学び
――――蜀では王の成長を見て
――――魏では王の変化を知った
その六つの外史でワシは愛する者達に出会い、恋をした。
しかし運命というモノは残酷だった。外史には終末があり、終末を迎えたため、ワシはその外史から弾き出され、次の外史を訪れることとなった。
…………恋した者達と再び出会えてもその者にとってワシは初対面の男。
全ての外史ではワシは『天の御遣い』という肩書きを持ち、それぞれの外史では王だったり、王の補佐する者だったり、警備隊長だったりと外史によってその役割についていた。
まあ、その肩書きも元の世界に戻ったときには意味のないモノだが。
外史で得た経験は次の外史でも引き継げるようだった。ワシの知り合いによれば、本来は次の外史に渡れば記憶と経験はリセットされるようだが、ワシだけは特別に引き継げる体質だったそうだ。
…………逆に言えばこの体質が原因で辛いのだがな。
だってそうだろ? 経験と記憶を継ぐということは恋した女性や愛してきた女性の記憶も引き継いでいるんだ。
大好きだった女性と何度も何度も何度も戦わなければならなかったのだ。
元の世界に戻ったとき、管路は外史の記憶を消そうかと提案してきたがワシは逆に外史で得た経験と記憶を元の世界に持ち込みたいと願った。
故に今のワシは『俺』という一人称から老人のような『ワシ』というふうに変わってしまった。そりゃそうだ。
合計百年以上の人生経験したわけだからな。
恋した女性達のように、いつかワシの仕えるべき主君が現れることを願って望んだ願いだ。
…………だからこそ、ワシは色のない高校生活を送っていた。
編入したこの川神学園では強いヤツらはいるが、仕えるには青い連中ばかり。王才、軍才、武才を持つ者ばかりだがワシが望んだ主君がいない…………。
このまま現れぬならばいっそ、と思いビルの屋上まで来た。
しかし既に先着がいた。その人物は自殺志願者でもなく、ましてや
「あら、お久しぶりね。北郷一刀」
「……………………」
「こんなところに来て景色を眺めに来たのかしら?」
「……………………」
「だとしたら残念なお天気ね。せっかくの夕陽も見えないわ」
ワシはとっさに木刀をその女性に向けて振るう。しかしそれは眼帯の女性によって阻まれてしまった。
鍵爪で木刀はバラバラになり、ワシは後退して二人の女性を睨み付ける。
「……なぜお前らがここにいる。管路、キリカ」
「あなたなら織莉子って呼んでいいわよ」
「黙れ雌狐。キリカより一番信用できないお前を名前で呼んでやるもんか」
「あらあら、ツンデレねー♪ まあ、今は別にどうでもいいわ。あなたに招待状を送りに来たのよ」
「招待状?」
管路はワシに竹簡を投げ渡してきた。それを受け取り、読んだ――――
――――…………なるほど。
「退屈そうなあなたには持ってこいな任務でしょ?」
「確かにこれはいい腕鳴らしになる。久方ぶりに身体が動けそうだ」
今まで憂鬱だったモノが吹き飛ぶくらい心がワクワクしていた。
…………やはりワシは望んでいるかもしれない。
今まで忌避していた――――殺し合いを、乱世の世界を。
(原作主人公じゃない主人公サイド)
オレの名前は兵藤一誠。所謂、転生したオリキャラというヤツだ。
え? オレが原作主人公?
違うって。原作主人公と同じ名前のオリキャラだって。現に赤龍帝は(TSされた)原作主人公が所持している。
なんでTSしたかはそれはまた別のお話だ。
さて、今オレは重大な問題に直面していた。今日、うちの義妹達の中学校入学式を見守った後に目の前にあからさまな罠が仕掛けられていた。
肉の下に召喚陣が敷かれている。
これは罠だ。オレを召喚するためのあからさまな罠だ。
ふっ…………ぬるい。この兵藤一誠がこの程度の罠に引っ掛かるとでも――――
「思っているのかァァァァァ! …………モグモグ」
肉にかぶりついたとき、召喚陣が発動してオレは異世界に行くことになった。
だって仕方ないもの…………美味しそうな肉だったもん…………。
(
ワタシは眠りにつく。ヴァンパイアという化け物だが純粋ではないため、こうして眠りにつかねばならない体質のようだ。
ワタシがかつて仕えていたヴァンパイアの姫君ならば自由に長い眠りにつき、起きることができるが、どうもワタシは人の一生が終わる歳になると長い眠りにつくという定期的なものだった。
(…………む。何かに引っ張られているような感覚が。フッ…………誰だか知らないがまあいい。デルフ、喜べ。出番がくるぞ)
『やれやれ。相棒を喚び出すなんて変わったマスターだことだな』
デルフの呆れている通り、喚び出すマスターに対して呆れながらワタシはもうしばらく眠ることにした。
――――まだ覚めるときではない。あと少しでワタシは眠りから覚める。
(??サイド)
かくしてそれぞれの主人公達が集まる。
――――かつて英雄に近かった変人
――――かつて英雄となった天の御遣い
――――かつて真龍と喧嘩したことがある暴食龍人
――――かつて虚無とガンダールヴと冒険してきたヴァンパイア
それぞれの主人公が一つの世界に集まるとき、『混沌とした物語』が始まる…………。
「キリトくゥゥゥゥゥん、私を縛ってェェェェェ♪」
「ヌォォォォォまた発作かァァァァァ!」
…………一人忘れていた。彼もまた喚ばれる運命の少年である――――
「あ、召喚陣! とゥッ!」
「逃がさないわよォォォォォ!!」
「ぎゃァァァァァアスナさんも付いてきたァァァァァ!?」
――――ただしお供に変態が付いていた。
召喚陣に飛び込んだ彼に抱きついて一緒に喚び出されることとなったのだ。
彼に幸があらんことを我々は祈る…………。
仕込み完了。さて次回は――――グバッ!?
ノエル「ふっふっふっ…………邪魔な作者を眠らせたことだし、これより私の物語が始まるのだ!!
次回、またまた閑話…………てか、外伝!
『壊れた女性と忘れていた少年』が始まるよ!!」
ライト(閃光)「遂に暴挙に出たか…………」