by神威ソラ
エピローグ的な話をすれば妖精の国は滅んだ――――――――わけではなく、民主制へと変わり、名家達が代党に政界に進出した。
まあ、わかりやすく言えば戦後の日本みたいな者だ。選挙で選ばれた名家や貴族が今度は国を支える政治家へとシフトチェンジしたということだ。
そこで起きる問題は民主制過激派だ。
彼らは生き残った王族が邪魔なため、王族の親族やその側近達を殺して二度と王制が起きないようにしようとした。
そのときにアスナとリーファが襲撃されたが……………………言わなくてもわかるだろ?
まどかがどこからか取り出したタバスコを目にぶっかける行為は、ちょっと同情した。
あれってめちゃくちゃ痛いし、最悪失明するんだよな。
そんなこんなでアスナの顔見知りが何人か亡くなってのハッピーエンドである。
えっ? アスナがハッピーじゃないからハッピーエンドじゃない?
残念。オレ達は何も失ってないからビターでもバッドじゃない。
誰かが幸せになれば、誰かが不幸になる。
ま、そういうものさ世界ってヤツは。
オレ達は何も失ってないという理由があるように、ほむらは無事に治療が終わった。もう命に別状がないようだ。
病院の彼女はあの致命傷で死にかけた身体から数週間で峠を越えて元気に戻って――――…………いや若干落ち込んでた。
「医者から人外を見る目で『あんな重傷から生還した君の身体どうなってるんだ!?』って言われたわ…………まどか」
と言ってまどかに静かに抱きしめられていた。
失礼な。オレのどこが人外だ。オレはれっきとした普通の美少年だろ。
そう言うとなぜかみんなから「いや、違うだろ」とツッコまれた。解せぬ。
なぜか謎の少年少女は別に驚いていないが……………………ってそういえば、こいつらの名前知らなかったな。
しかも翌日になるとどこかへ行ってたし。誰だったんだ、あいつら……。
閑話休題
アインクラッドの広場にてオレやまどか達は集まっていた。次の異世界について話し合いである。
千香を探すのが最終的な目的だが、その前にヤツと組んでるジェイルという者と接触する必要がある。しかも犯罪者のため、管理局という鬼畜組織に捕まる可能性があるのだ。
だからこそ、まずどうするか、意見交換する必要があるのだ。
「というかほむら。お前、ホントに平気か? 完治したとは言え、病み上がりだろ」
「安心して杏子。もう私は平気よ。ええ、人外って言われても大丈夫。もう私は何も怖くないわ……」
「ヤベーぞソラ。ほむらのヤツ、まだ気にしてるぞ…………」
知らんがな。オレにどうしろと申すのだ。
「私を癒しなさい、癒すべき、癒しなさいよ、癒せ、癒すのよ」
「なにその五段活用。軽くホラーなんだけど」
「ギガロなんちゃらのとある眼鏡ヒロインが使っていた会話術よ。ふふ…………これでソラはもう断れないわ。そうでしょ?」
「いや普通に断るから。だが断るだから」
「どうしよう、まどか。論破されてしまったわ…………」
ほむらが涙目でまどかに助けを請う。ソースはやっぱりお前か、まどか。
「諦めないで。これはソラくんのツンデレなんだからいずれデレがあるから!」
「ソラ、今こそデレて!!」
「だが断る」
「「チキショー!!」」
愕然とするまどかとほむらにオレは呆れて嘆息を吐いた。てか、さっきから静かだと思ったらさやかと杏子は携帯ゲームで対戦していた。
我関せずのつもりか、お前らは。
「マミさん、ヘルプ。このカオスを治めるにはあなたの力が必要です」
「うーん、私にできるかしら…………」
「できたらデートしてあげてもいいよ、お姉ちゃん」
「はいはーい、みんなソラくんのお話を聞きましょうね♪」
「「「「移り変わり、はやッ!!」」」」
全員がツッコむほどの手際の良くみんなにマスケット銃で脅迫するマミさん。
さすがみんなのお姉さま。見惚れるくらいである。
「それじゃあ、この会議が終わったらソラくん。…………手始めに一緒にお風呂に入りましょ?」
「いやなんで? 何が手始めでお風呂なんですか?」
「それはがった――――…………オホン。ソラくんの成長記録を見るためよ」
「なぜかわからないけど、鼻血が出てるマミさんに恐怖してしまった…………」
背筋が凍るくらいの妖艶な微笑みだ。どこか妖しい美しさという魅力が彼女にはあった。
…………鼻血で全て台無しだが。
「愛が鼻から出てしまったわ」とマミさんは言っていたが愛って鼻から出るものなのか?
そこんとこどうなの杏子?
「知らねーよ。そもそもなんの手始めにお風呂を一緒に入る必要があるんだよ?」
「さーな。でもヤな予感がするのは気のせいではないと思う」
「気のせいじゃね? 姉弟でも未だに一緒に入ってる人とかいそうだし」
「なるほど。参考になったぞ、杏子」
「いやいないから、そんな姉弟。てか、あんたらの純粋さにさやかちゃん、泣けてきた」
口を抑えて涙を流すさやかとなぜか落ち込むまどかとほむら。
なんでこの人達はダメージを受けてるのだろうか。
杏子が首を傾げると今度はそれを見たマミさんが「グフッ」と言って倒れた。
いや「グフッ」ってなんだ「グフッ」って…………。
「ま、まぶしいよ…………ほむらちゃん。私、杏子ちゃんの純粋な心に浄化されそう…………」
「ま、負けないでまどか! 純粋な心なんて私達の色で染めるのよ!」
「そ、そうだね! ほむらちゃんがいるなら…………もう私、何も怖くない!」
まどか、それマミるフラグだから。前世の平行世界でマミさんが言ってたフラグだから。
てか、やめろお前ら。なんか知らないけど、純粋な杏子を邪なモノで汚すな。
そんなことを思いながらオレは二人に拳骨を落として失神させた。死屍累々なこの場所でオレは嘆息を吐く。
「なんだこのカオス…………」
「いつも通りじゃんか」
杏子にツッコまれたのでござる。いや、そうだけどさー…………。
☆☆☆
ある程度、目的は決まった。
まず千香をシバく。
え? なんでだって?
第三期のラスボスと勝手に手を組んだから。おかげで衛と八神と戦わなきゃならない。
八神はまだしも衛の耐久力は殺すつもりじゃないと通用しないもん。
ギャグ補正はマジの中のマジじゃないと通用しないからなー…………。特に筋肉の変態とマゾの変態は。
じゃないとイロモノは何度でも復活する。ヤツらはゾンビのごとく復活する。
同志を増やすまで復活するハンティングゾンビゲームだよ。マゾ筋肉ハザードとはこれのことだよ。
ある意味ホラーである。
まあ、意見交換を終えたオレ達はアインクラッドの連合軍の宴会に参加するのだった。
そのとき再会したキリトの顔が枯れていて、アスナの肌に艶があったのはきっと気のせいだと思いたい。
その後、まどか達を含めた女性陣はなんかガールズトークにしに行って今はキリトとクラインの三人で飲んでいた。
お酒は飲んでいないから。成人してから飲むつもりだから。
「知ってるか、クライン…………。縄って縛れば縛るほど楽しくなるんだぜ…………」
「しっかりしろ、キリト!! なんか目が死んでるぞ!?」
「いやー、たのしーなー。縛る役って結構ハマるもんだなー…………」
「なんかとんでもないこと口走っている!? お前、いったいアスナの嬢ちゃんと何があったんだ!?」
「もうやだ…………アイツもう俺の知るアスナじゃないくらいのキャラ崩壊してるよ…………エヘヘヘ、ヘヘヘ…………」
「キリトォォォォォしっかりしろォォォォォ!!」
キリトの口からなんか白いフワフワとしたモノが出てきた。そんなキリトの肩を揺さぶるクラインという光景にオレは苦笑した。
ご愁傷さま、キリト。君に幸あれ。
というか、なんか未来の自分を垣間見た気がするな。
オレもキリトみたいに汚染されるのだろうかと若干恐怖が生じた。
もう彼女達から離れられないのたら癒しを増やすしかあるまい。
憂鬱になったオレは嘆息を吐くのだった。
(まどかサイド)
やっほー。みんなのプリティー元女神のまどかちゃんだよ♪
…………あれ? 期待してない。まあまあ、そう言わずに…………ね?
聞かない子にはもれなく私直々の魔力矢をお見舞いする所存です。
まあ、そんなことはさておき。私達はガールズトークをしていた。
みんなの顔を見るとほんのりと紅くなっていたのは、たぶんシリカちゃんが間違って持ってきたお酒の瓶のせいだと思う。
杏子ちゃんとさやかちゃんはそれにやられてドンチャン騒ぎをし始めて、リーファちゃんを困らせているし、マミさんとアスナさんは不気味なほど「ウフフフフフ」と笑いながらソラくんの写真を使って、お酒を飲んでないシリカちゃんを両脇に挟んで意中の
笑い上戸だ。マミさんとアスナさん、笑い上戸だよ…………。
ちなみにほむらちゃんは飲んでるうちにダウンして寝ている。今のところお酒も飲まずに無事なのはシノンちゃんだけ。
「よかったねー。シノンちゃん」
「は、はあ。…………ってなんで私まで参加しているのですか? 敵でしたよね、あたし」
「細かいことは気にしなーい。それにしてもこのジュース美味しいね」
「あの、それお酒ですけど…………」
「大丈夫だ。問題ない」
「いや問題だらけですから。未成年が飲んでいいものじゃないですから。てか、この人お酒をがぶ飲みしてるのに、酔ってない!?」
それが私のママである詢子ちゃんクオリティ。
ママってホントに毎日飲んでいるのに、あんまり酔わないんだよね。
まあ、大量摂取は例外だが。
「お酒強いのですね…………」
「ママの遺伝子だからねー。それよりもシノンちゃんはこれからどうするつもりなの?」
「マミさんがここを離れるそうですから、傭兵稼業しようかと」
「えー、なにその乙女成分ゼロな後生。彼氏つくりなよ、彼氏」
「あたしに何を期待してるのですか…………」
シノンちゃんは私に対して呆れたため息を吐いた。
むー、これ重要なんだよ?
私の知っているは人でむしろバッチコイなのにいき遅れた女教師の話をシノンちゃんに話してみた。少しだけ考え始めたところ、別に異姓に興味がないわけではなさそうだ。
「好きな人というか気になる異姓はいるのでしょ?」
「まあ、いないことはないですが…………」
「あ、シノンちゃんの好きな人はキリトくんだ」
「なんで彼だと決めつけるのですか。いや、そうですけど…………」
シノンちゃんの話によると彼はアスナさんを助ける随分前にここに来て、スランプで落ち込んだところを出会って友達になっていたそうだ。マミさんの襲撃で再会したときは驚いたみたいだけど。
「だけど彼にはアスナがいるし、もう諦めようと思っていま…………ぶむ」
シノンちゃんがバカなことを言う前に私はそれを(購入したての)スポンジで口を塞ぐ。
「ふざけないでシノンちゃん。恋は簡単に諦めちゃダメなんだよ? むしろライバルを出し抜き、抜け駆けするして得る挑むモノなんだよ」
「なんというアグレシッブな思考回路。まどかさんはたくましいです。だけど、もうキリトはアスナと両想い……………………あれ? そうでもない?」
シノンちゃんの言う通りだ。アスナさんの
だから、これはシノンちゃんにとってチャンスなのだ。
「シリカちゃんもああいうかわいい容姿なのに、見ている番組は修羅場な昼ドラなんだよ。浮気、不倫バッチコイなテレビドラマだったよ」
「意外すぎて開いた口が治まらない…………。ということはキリトが受け入れる前にこちらに振り向かせろってことですか?
「そうだけどシノンちゃん。誤解してるようだけど
えっ?とした表情になるシノンちゃん。それから徐々に不安そうな表情になっていった。
ふふ、私が言いたいことはね。
「
「予想の斜め上の答え!? しかも昼ドラ展開ですよね、それ!」
「シリカちゃんもそれに大いに同意してくれたよ。いやー、純粋な子ほどまどかちゃん色に染まりやすいね…………」
「この人、悪魔だ…………悪魔がいる」と失礼なことを言うシノンちゃん。
私は悪魔じゃないもん。むしろ慈愛の女神様なのに。
まあなんにせよ。私が恋愛でアドバイスすることは一つ。
「略奪愛こそ恋愛の真理だね!!」
「絶対違います!!」
解せぬ。なぜか否定された。
おかしいなぁ…………。ママもそういうつもりで恋せよって言ってたことなのに間違っていたのかな?
(ソラサイド)
広場から離れ、オレは城のテラスにいた。
場が混沌化し、事態は治まることなく暴走する。
うん、終わりはやはりカオスだ。
…………そして始まりは――――――――不幸な災難だ。
「やあやあ、こんばんわボーイ。また会ったねー♪」
「やかましいパーカー女。お前は誰だ」
「パーカー女じゃないもーん♪ ま、自己紹介がまだだったね」
謎の女はパーカーをとって顔を見せた。
…………やっぱりか。オレの予想通りだった。
聞き覚えのある声色、口調。
そして前世で見たことある容姿――――――――答えは一つだった。
「やっほー、みんなのアイドル。天ヶ瀬千香、推☆参!!」
ポーズをとるそんな彼女にオレはニッコリ微笑んで…………。
「心配かけてんじゃねェェェェェ!!」
「ハゥン!?」
思いきりひっぱたいてやった。千香はそれを興奮しながら受け止めるのだった。
…………ガイヤよ、どうやらオレの心労に安息はないようです。
千香ちゃん帰還!!
彼女の登場でソラ達の運命が決まります。
次回、終わりの始まり
――――さあ、始めよう。喜劇と悲劇の劇場を