とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「なんでさァァァァァ!!」

byキリト


第八十話

戦いが終わった後にキリトはオレに対してあまり良い顔をしていなかった。きっと、まだ殺しを経験してないため、オレが人を殺したことに納得していないのだろう。

 

それは正しい反応だ。オレもそう思う。

 

だけど、もうこの身は殺しに染まった。たぶん、オレはもう普通には戻れない。

 

けど、それでいいと思う。普通には戻れないかもしれないけど、『普通』を求めてはいけないと思わない。

それがオレの今の理想なのかもな。

 

そんなこんなでオレはキリトに肩を貸しながら王座の間までたどり着いた。ここにオレ達が求める者がいる。

 

 

――――キリトはアスナを救いに

――――オレはオベイロンをぶちのめすために

 

 

さあ準備はできたか?

オレがキリトにそう聞くと彼は不敵な笑みを浮かべた。

 

「当たり前だろ」

「なら、安心。こっから先はホントに血生臭い戦いだ」

 

暗に殺し合いを意味している。オレの魔力はもうあんまりない。

神器(全てを開く者)は後五回しか使えないからな。

 

さーて、蛇が出るか龍が出るか。

 

オレは扉を開けた。そこには――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ答えて。どこにギャルのパンティーがあるんだい?」

「知らねぇよ!! てか、離せ! 僕を誰だと思ってる!?」

「え? ホント誰?」

「知らないのか!? 僕はこの――――アツゥゥゥゥゥ!!!!」

 

…………オベイロンはいた。ただし足を吊るされた状態でパーカーで顔が隠した黒いレインコートを着た少女と同じ格好の少年という二人にいじられてる形で。

 

ボチャンと縛られたオベイロンが熱湯の釜に入れられた。グツグツ煮込んでいるからあれは熱いよ、きっと。

 

てか…………ホントなにこれなんだけど…………。誰か状況説明プリーズ。

 

ポカーンと呆然としているとドレスが崩れた茶髪の妖精の少女が泣いていた。

 

「う、うぅ…………」

「アスナ!? どうしたんだ!」

「キリト、くん…………私、汚されちゃった…………」

「っ…………! まさか、アイツに!?」

 

ギロリと熱湯でどこぞの芸人のように氷に突っ込むオベイロンを睨む。しかしアスナは首を振る。

 

え、違うの?

 

キリトは詳しく聞くとアスナは答えた。

 

「あの…………パーカーを着た女の子に、その…………エッチな縛り方をされて…………」

「マジで!? って汚されたと言うべきか、これは!」

「汚されたわよ! 主に私の常識が! おかげで――――…………ちょっと気持ちよかったわぁ…………」

「アスナさぁん!? それ目覚めちゃいけないものですよ!?」

「うるさいわね! そんなに文句があるなら縛りなさい!! むしろキリトくんならばバッチこい!」

「いやァァァァァアスナが変態になったァァァァァ!!」

 

シャウトしながら頭を抱えるキリトに、縄を出して危ない目をしながら興奮するアスナ。

 

…………なんか見覚えがあるパターンだな。

 

てか、アスナさん、もうやめたげて。キリトのライフポイントはゼロよ。

 

「ぜぇぜぇ…………おのれ、この女…………よくも僕にここまでの屈辱を!!」

「まだ余裕みたいだね。じゃあ今度はこれどうぞ!!」

「アツッ、アチッ、おでんを顔にくっつけるな!」

 

見ろよ。オベイロンのヤツが今度は少年にグイグイおでん押し付けられてる。

あれって温めすぎると皮膚が火傷するよね。

 

うん、とりあえずオベイロンの殺意と敵意が消し飛んだわ。

 

だからあえて言わせてもらおう。

 

「なんだよこのカオスはァァァァァ!!!!」

 

 

キリトにセリフをとられた。つーか、もはや魂の叫びだな、もう。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

カオスな事態が治まり、謎の少女と少年はオベイロンを縛ったままにして壁にもたれていた。

改めて二人の様子を見ると、少女の方がオレと同い年くらいで、少年の方が二つ年下と思える。

 

まあ今はそれどころじゃないか…………。

 

ちなみにキリトはアスナに猛獣の如く押し倒されていた。

 

ベッドでやれ、ケダモノ。

 

「というわけで転移の扉について答えろ。アスナがキリトをいただく前に」

「僕のアスナがあんな…………あんな変態に…………くぼっ!?」

「どうでもいいだろ。あと常識的なヤツほど変態は感染しやすい」

 

例外をあげるとしたら現段階ではクロノ少年と八神辺りである。

二人が感染しなかったのはたぶんオレと同じ苦労人だったのではないかと推測している。

 

まあ二人が変態達に振り回される未来は避けられないが。

 

「そういえばここの先祖って確かオークに犯されたあの姫だったっけ? ということは淫乱化は遺伝子レベルってことか?」

「カルディナ様を知ってるのか!?」

「知ってる。だってオレが『無血の死神』だもん」

「なん…………だと!?」

 

オベイロンの顔が真っ青になっていたがオレは本で書かれたカルディナ姫が起こした国復興事業の歴史を思い出していた。

 

一度オークに滅ぼされた妖精の国はカルディナ姫の帰還後、国の復興事業を起こした。

 

 

…………服の下で縄で縛られた姿で。『縄の擦れ具合がよかった』と言ってたと記述にあった。

 

 

これを見て、まず目を疑った。キリトやリーファやシリカなどによく聞いていたと記憶している。

 

結果を言おう――――――――みんな口を揃えて事実だった、と。

 

この本がおかしいのではなく全て事実だとキリト達は言っていた。

つい、頭が痛くなった。

 

だって王様はアイドル追っかけでその祖先は淫乱な変態だぞ?

 

どんな歴史だよと心の中でツッコんだよ、もう。

ちなみにこの人がかつてオレが助けたお姫様と知ったのは記述に『無血の死神がオーク達を蹂躙し、救いだした』と書かれていた。

 

…………たぶん前世で千香を救ったときの人だ、きっと。

 

「バカな…………『無血の死神』は死んだはず!?」

「生まれ変わって復活。まあ、一応前世の異名だけどまた背負うことにしたけど」

「アーサーは…………アーサーはどうした?」

「殺した。それ以外ないだろ?」

 

オベイロンは悔しそうに「クソッ」と口に漏らす。

アーサーはオベイロンにとって最大の戦力だったと思う。

 

もう、問題ないだろと思ったオレは血走った目のアスナに衣服を剥ぎ取られて色々ヤバいキリトを救出しようとオベイロンから目を離した。

 

すると、ヤツは縄をほどいて何もない壁のところまで来た。

 

「は、ははは…………くひゃひゃひゃ!! バーカめ、油断したな!! おかげで転移の扉の前まで来れた!!」

 

扉なんてどこにもないはずの壁でオベイロンはそう叫ぶ。

 

なに言ってんだ、あいつ?

 

「転移の扉はこの『全てを開く者』の神器使いを素体として作られたこの首飾りで展開するもんなんだよ!!」

「つまり…………その首飾りは」

「その神器使いから強奪した神器さ! それを神器使いではない僕が使えるように改良したのさ!」

 

まさかこの世界にも『全てを開く者』を持つ神器使いがいたとは。

 

 

――――しかしその神器使いはもういない。死んだ。ヤツの手によって。

 

 

なんてヤツだ。神器使いにとって神器は自身の命だ。

強奪されれば死ぬに決まってる。

 

「アーサーには騎士道に反するとかバカなことをほざいていたが、強奪の仕方を教えてもらったおかげでこの神器が使える!」

 

 

ガチャン

 

 

何かが開く音と共に扉が展開された。ドコでもドアのような扉だった。

そしてオベイロンはゲスな笑みを浮かべて、言った。

 

「じゃあな馬鹿共! ここに戻ってきたらお前らを――――――――」

 

 

言葉は最後まで続かなかった。理由は明白、ヤツの顔に人間とは思えないくらいの太い腕が口を抑えたのだ。

 

オレはそれに見覚えがある。

だってあれは――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらん。良い男。草太くんくらいの美青年だわん」

「うむ、良いオノコだな。ガハハハハ!!」

 

 

――――オリ主くんをぶちこんだ悪夢の世界の住人だったから。

 

なんであの世界に繋がったのだろうか?

オベイロンが望んだ世界じゃないはず。

 

「あー…………やっぱりか。あれって神器使いじゃないヤツが使えるように改良したつもりみたいだけど…………世界のルールが許さない」

「つまりどういうことだ。パーカーの女」

「要するに抑止の力で彼が望んだところが、歪んだ形で叶えられたってことさ。彼が望んだのはきっと女性だらけの世界っぽいし」

 

なんかデジャブ(既視感)を感じた。

…………ジュエルシードもあんな感じで叶えるのかな。

 

「草太くーん、お客さまよーん。相手してあげーん」

「はぁーい♪」

 

 

――――――――扉の先にいたのはニューカマーとして新生したオリ主くんがいた…………。

 

 

オベイロンは何かを訴えるようにオレを見ているがとりあえず親指を下に向けて返してやった。

うん、殺意はないけど殴りたいヤツだもん。

 

「やだ…………良い男。や ら な い か?」

「ムゥゥゥゥゥ!?」

 

じたばた暴れるがマッスルボディーの呪縛から逃れられない!!

 

あ、今ので首飾りがとれた。

それを謎の少女が拾って懐にしまう。

オレはどうしたかと言うと扉を閉めることにした。

 

だってあそこ完全にイロモノ魔境だもの…………。普通のオレが狂ってしまいそうだもの…………。

 

「た、助けて! 英雄なんだろお前!?」

「違います。オレはただの中学生です。…………あ、中学通ってないや。今度、通信教育で通わなきゃ」

「どうでもいいだろそんなこと!!」

 

どうでもよくないよ。中卒ならまだしも、小卒で雇ってくれるところは絶対ないだろ。

 

そんなこと言うオベイロンくんなんか嫌いです。だから助けませーん。

 

「ふざけるな! ホントにヤバいから助けてよ!!」

「さあ、俺の熱いベーゼを受けてみせろ!!」

「う、うわァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

ギギギ、バタン。

 

 

扉は閉まり、消えていった。

 

悪は滅びた。とんでもない地獄へ逝くことで。

 

間違いなくオベイロンもオリ主くんと同じ末路になってるだろう。

てか、これ確実に高町達を泣かせるな…………。意中の男性がニューカマーという変態になっているから…………。

 

「よし、帰るか…………」

「うん、そだねー」

「お腹空いた…………」

 

謎の少年がどうやらお腹を空かしているようなので、オレはほむらの面会を兼ねて、何かを奢ろうと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ、俺を忘れてないかみんな!?」

「うふふふ…………キーリート、くぅーん♪ …………ジュルリ」

「あ、駄目アスナ! そこだけはそこだけ――――…………アーーーーーーーーッッッ!!」

 

 

王座の間で誰かの悲鳴が聞こえたが気にしない。変態の餌食になった少年なんか知らないことにした。




悪夢再び!!

そうこれがなのは様が誕生したわけです!!
まあ、トラウマ確実ですよこれ。

次回は閑話です。なんとはやてと衛の結婚式です。

――――その頃、リリカルな世界では?


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