とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「さあ、始めましょ♪」

by友江マミ


第七十六話

(アスナサイド)

 

 

さっきから外が騒がしい。なんなのかしら。王座の間まで聞こえるこの騒ぎはいったい…………。

 

するとマミさんがマスケット銃を取り出して、王座の間から出ていこうとしていた。

 

「マミさん?」

「姫様、しばらくここにいてください。私は外の騒ぎを治めてきます」

 

優雅にお辞儀をし、武装メイド隊を連れて彼女は自身の戦場へ向かっていった。

 

もしかして…………この騒ぎはキリトくんが?

 

そうだとしたら私は喜ぶべきなのだ。しかしマミさんのことも考えると…………。

 

私はただ二人の無事を祈るのだった。

 

 

 

(ソラサイド)

 

 

 

薄暗い地下にてオレ達三人は前へ歩いていた。地下はまるでドーム状のような天井で迷宮のような壁で覆われたつくりだったので抜け出すことは困難だった。

 

「とりあえずドコでもドアを――――」

「ソラくん、そこから離れて!」

 

まどかの言葉に反応したオレは咄嗟に引くと銃弾がオレがいた場所に飛んできた。

 

――――狙撃…………いったいどこから?

 

オレはそう思いながら辺りを見回す。

次の弾丸がまどかに向かって飛んできたのでオレはそれを弾いた。

 

「狙撃手がいるようだな。確か……………………誰だっけ?」

「よしのんだったと思うわ」

「いや違うからほむらちゃん。シノンちゃんだよ。私は覚えているよ」

 

まどかはライバルを見つけたかのような表情で言っていた。そういえばまどかって後方支援タイプの狙撃手みたいな立ち位置だっけ?

 

まあ自分と同じくらいの強さの相手を見つければ試したくはなるわな。

 

「だから一対一でやらせて」

 

オレ達の答えは当然決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「だが断る」」

「なんで!?」

 

ほむらと一緒に言うとまどかがツッコんだ。なんでってそりゃあなぁ……………………。

 

「まどかが勝てるイメージがわかないわ」

「例えるとあれだ。スナイパー持ったゴルゴVSたわしを持ったゆるキャラぐらいの難易度だ」

「それって無理ゲーってこと!? ひどい言われようにまどかさんは泣きたくなりました…………」

 

プクッと頬を膨らませるその姿に萌えを感じていると再び狙撃がきた。

無粋なヤツめ。というわけでほむら、お願いね。

 

「『リリース』」

 

カチャンと音が鳴った瞬間、魔弾が発砲されたところへ吸い込まれるように逆行していった。おかげ居場所が特定できた。

 

まどかが頼りないというのが理由だけではなく、ほむらの逆行があれば最初からこれは勝負にならないのだ。

 

「といわけだ。撃て」

「こうなったら八つ当たりだよ!!」

 

まどかの流星群のような魔力矢が放たれた。あっという間にその場所が吹き飛び、残されたのは香ばしいにおいになったボロボロのシノンだった。

そんなシノンにゲシゲシと踏んでいるまどかを尻目にオレは彼女達に向けて言い出す。

 

「よし、シノンを縛ったら人質にして先に進むぞ」

 

外道? はて、なんのことやら?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そんなこんなでドコでもドアを使って地下から抜け出し、オレ達は広場に出た。

 

そこには待ち構えるように武装したメイド達が整列していた。

 

「これぞまさしく冥土界だね…………」

「上手い。山田くん座布団一枚」

「誰が山田だ。ま、冥土に送ろうものなら返り討ちだけど」

 

何て言う軽口を言っていると、武装メイド達の中からマミさんが前へ出て現れた。

 

「昨日ぶりね…………暁美さんと、鹿目さんでしたっけ?」

「「!!」」

 

マミさん、まさか…………前世の記憶を?

いやまだわからない。オレはとりあえず彼女を話し合うことにした。

 

「マミさん、なんでこいつらの前世の名前を知ってるのかわかりますか?」

「あら、前世からのお友達だなんて電波発言にもほどがあるわよ、ソラくん」

「いやオレ、不思議くんじゃありませんから。というかなに近づいてきてるのですか」

「近づかないと頭をナデナデできないでしょう?」

「え、なにこの人。なんでオレにだけフレンドリーなの?」

 

オレの頭を撫でながらまどか達にマスケットを構えている器用さに脱帽ものである。

なんでまどか達だけに敵意を表しているんだ…………。

 

「なんで私達にマスケット銃を構えるかは置いといて、マミ。大人しくソラから離れなさい。さもなければシノンの顔に油性ペンで鼻毛を描くわよ」

「あ、じゃあ私はおでこに肉を」

「マミさん助けて!!」

 

ある意味危機に瀕した彼女はマミさんに助けを請う。

 

「お断りよ。どうぞ、好きにしていいわ」

「マミさぁん!?」

 

裏切られたシノンの顔はまどかによってどこからか取り出した油性ペンで鼻毛や肉を書き出し始めて…………プッ。

 

もうあれは女性として終わってるくらいの落書きだな。

メイドのみなさんも笑ってるし。

 

「茶番はそこまでにしましょう。あなた達の目的はわかりませんが――――

 

――――姫様に害なすものには変わりません」

 

だからとマミさんはオレの頭を撫でるのをやめて、両手にマスケット銃を構える。

 

「排除します」

「やれるものならやってみなさい」

 

ほむらはまどかを退かせて前に出た。マミさんの対戦相手は決まった。

 

「私が相手よ。かかってきなさい」

 

かつて激しい銃撃戦を繰り広げた二人の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………これとれるかなぁ」

「さあな。まあ、洗えば落ちるんじゃね?」

「石鹸で落とさない限り落ちなさいペンだからね。ティヒヒヒ、自分でも傑作だよ、これ♪」

「お前の笑みに邪悪なものが戻ってきたと思うのはオレだけか?」

 

シノンの落書きはなかなか落ちなかったことをここに追記しておく。




そしてシノンの顔が大惨事に。まあ、死んでないだけマシですけど。

次回、マミVSほむら

――――しかし彼女達は知らない。








――――誰かが失う悲劇が待っているとは…………

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