とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――常にフリーダム。それが彼と彼女の日常なり」


第八話

空は快晴。気分がよいことが起きそうな天気である。

 

こんにちは、みんなのソラです。

今日は昨日ほむらが当てた福引きの戦利品で温泉に行きます。ただいま絶賛荷物持ちをしてるでござる。

 

「お、あっちにあるもんうまそう!」

「コラッ、勝手な行動はしないの杏子! あ、なんかいい石鹸見っけ」

「ってさやさやも勝手な行動してるんじゃん! あ、そこのお姉さまお茶しない?」

 

スッゲーフリーダムな我ら転生者軍団。オイ、誰か労えよ。もしくは変わってよ。

三人のやりたい放題な現場にオレは嘆息を吐いた。

 

「ふふ、みんなしてはしゃいじゃって♪」

「マミさんが唯一の清涼剤だ」

「お姉さんですもの」

 

お姉さん万歳。マミさん万歳。

 

「なにデレデレしてるのいやらしい」

「そして鉄仮面によってオレのハートブレイクされる………………」

「ほむらちゃんは鉄仮面じゃないよ。変人だよ」

「どうしようソラ。最近のまどかのセメント率が高いわ…………」

 

まどかがこうなった主な原因は例の三人娘である。なんかオレの悪口言ってるらしい。

まどかはそういう陰口は嫌いらしい。

 

「もっと堂々と来いって毎回思ってる」

「やっぱ詢子さんの娘だったわけあるわね」

「ほむら、その度にオレのハートブレイクされるのヤなんだけど」

「安心しなさい。その時は私とまどかで弄ってあげる」

「慰めないの!?」

「あなたにアメを与えないわ。ムチにはムチ。徹底的にいじめてあげて鍛えてあげる。そうすればソラの涙目が見れて私ハッピーよ」

「ゴリゴリ精神擦りきれてる度にお前がハッピーなんて解せぬ…………」

「そしてそのとき私がアメを与えて洗脳すればソラくんは私とほむらちゃんのモノになるね!」

「お前はお前で腹黒いしよ!!」

 

さよなら癒し、ようこそ四面楚歌。

 

マミさんは味方かと思えば、涙目なオレを見たいとか言ってるし。ただ頭撫でるだけだし。

 

はぁ…………なんにせよ。

 

「リフレッシュできるかなぁ」

 

このフリーダムで、セメントで、ぶっ飛んだ連中と宿泊することで。あれ、なんか目にゴミが…………。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

脱衣所で服を脱ぎ、オレは湯船に浸かった。石でできた日本の露天風呂である。

 

「まさかマミさんも一緒に入るとか言ったときは焦った」

 

一応みんなの保護者という立場で大人バージョンになり、チェックインした後、元の姿に戻った。

あのとき見た姿は将来優しい美人で母性的な女性になることを確信した。

 

そしてその後に鼻血を流しながらの混浴宣言でそれは台無しとなった。

 

いや成長記録をとりたいからってオレの精神年齢考えてよ。二十歳越えたお兄さんだぞ、もう。

 

他のみんなも悪ノリしてくるし。

 

ふと、誰かが入ってきた。若い男性二人だ。兄弟か?

 

「ふぅー、さすが月村さん所縁の旅館だ」

「父さんなんかジジくさいぞ」

「なにを言う。私はまだ現役バリバリだぞ」

 

…………神よ。テメーはどんだけ試練を与えるつもりだゴルァ。

あ。神は死んだんだ。下級だけど。

 

「ん? 君は確か……………………」

「ヒトチガイデス」

「いやまだ何も言ってないんだけど」

「ワタクシロバートジョンソンデス。ニッポンノオンセンスバラシイダス」

「ダスってなんだダスって。というか温泉って言ってる時点で思い切り日本人だろ君は」

「アーアー、キコエナーイ。ニッポンゴワカラナーイ」

「耳ふさいで現実逃避しないでくれないか…………」

「まあそう言うな恭也。彼も緊張しているはずダス」

「父さん悪ノリしない」

 

冷や汗止まらない。

天敵の拠点にいるなんて、このままでは月村組にエンカウントするのも時間の問題か。

 

ちくせう。まさか月村家の本拠地に来てしまうとは、これが孔明の罠か!

おのれ月村。どこまで我が平穏を邪魔するか!

 

「私は高町士郎。こちらが私の息子の」

「高町恭也だ。これも何かの縁だ。よかったら名前を教えてくれないか?」

 

しかも高町親子だ。どうしようヤベー。とりあえず名乗っとこう。

 

「ソラです。特技は変態変人に向かってドロップキックからのプロレス技をかけることです」

「どんな特技!?」

「ミィィィィィプッ!と掛け声をあげてボディアタックするのが必殺技です」

「どっかで聞いたことある掛け声!」

「すばらしい特技だね。私もプロレス好きである妻にかけられたことがある」

「父さん、なにとんでもないことを息子や初対面の子どもにカミングアウトしてるの!? というか母さんプロレス好きだったの!?」

 

まさか高町父がカミングアウトしてきた。やるな中年。中年には見えないお兄さんけど。

 

「ちなみに夜のプロレスもしていると」

「そうだね。激しい方だよ」

「なるほど。これは脳内プロフィールに高町士郎という人をメモしよう。ある意味スゴい大人であると」

「誉められたぞ恭也。ふふん♪」

「いやなに誇らしくしているんだよ! むしろ恥じろ! 爆弾発言したことを!」

「そして息子はツッコミ役、と」

「そこはメモするな!」

 

いや思い切りツッコミ役まっとうしてるじゃん。

 

恭也はハアハアと息を荒らしながら疲れた表情となっていた。

 

「やれやれこの程度で疲れるとはまだまだ未熟。修行し直したまえ」

「納得できん。そういう君こそどうなんだ」

「…………常日頃そういう変態と腹黒と変人によって振り回されている」

「…………なんかすまん」

「いや慣れてるから大丈夫。私、もう怖くない!」

「なんかすごい死亡フラグだよそれ。主に金髪ドリルな女の子の」

「恭也がメタいなぁ」

 

面白そうに笑う士郎さん、あなたもそういう人と関わってください。

 

マジでゴリゴリ精神削られるから。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

高町親子と接点をもってしまったオレは第一回ソラくんどうしよう会議を開催するものの、ウーノというカードゲームによって全員欠席という結末となった。

 

おのれカードゲーム。

オレだけでなく罪のないみんなを巻き込むとは。

 

そしてそれを発案したさやかちゃんマジ策士。めちゃめちゃ楽しいぞコラ。

こいつが孔明だったのではないかと地味に思った。アホだが。

 

「お?」

 

なんかティンッときた。みんなもそう感じたらしい。これは…………。

 

「敵? はっ…………これがニュータイプ!?」

「そんなわけあるわけないでしょバカ千香。これはあれよ。虫の呼び鈴よ」

「どんな呼び鈴だよ。虫の知らせだろ、さやか。……………………ところでマミ、虫の知らせってなんだろ。意味覚えてないや」

「色々台無しな杏子さんな件」

 

笑顔でそうツッコむマミさんも染まってきたなぁ。そう思いながらオレ達は外へ向かう。

 

この反応は…………魔力のぶつかり合いだ。誰が戦っているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ヤバい。カメラ持ってくるの忘れた。ちょっと待ってて」

「何撮るつもりだお前」

「パンチラ」

「相変わらずな千香な件について」




次回、いろいろ台無し。

シリアスがシリアルに変わるとき、物語はカオスとなる。

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