とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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第七十五話

天気は雨。曇天に覆われた空の下にてオレ達はアバロン王の城――――いやオベイロンの城まで来ていた。

 

今日、朗報があったのだ。アバロン王がオベイロンに殺されて国はオベイロンが乗っ取った、と。

 

ジャンヌはこれを好機と見てオレ達に襲撃の先陣を選んだ。

ちなみにドコでもドアで城内の侵入はバッタリ遭遇というリスクがあるため、城の前までにした。いきなり接敵はキツいだろ。

 

「皮肉ね…………お姉ちゃんの結婚には納得してなかったけど、騎士としての役目を果たそうとしたあたしがまたここに戻ってくるなんて」

「リーファ…………」

「大丈夫。あたしのお姉ちゃんを踏み台としか見ない輩には躊躇しないよ」

 

さやかに向かってそう言うリーファだが、自国の第二王女である彼女は気乗りしないものだろうな。

 

そんなことを思いながら木でできた橋の上まで来た。そこにはトゲトゲ頭の男とそこそこの部隊が待ち伏せていた。

 

「ワイは暁部隊隊長キバオウ! 賊共め、ここでお前の年貢の納め時や!!」

 

…………いやマジで誰、あれ。

 

キリトに視線送るとさあ、と手をあげていた。

有名どころか知り合いじゃないしなー。

 

「あいつは確か……………………ごめん、リーファ知ってる?」

「特効部隊のキバオウよ。ほら、よく演習でさやかがコテンパンしていたザコよ」

「ああ! あのウニ野郎ね!」

「誰がウニやねん!!」

 

さやかに詳しく聞いてみるとどうやらきば…………――――忘れた。面倒だから松ぼっくりでいいや。

松ぼっくりは何度もさやかの部隊に嫌みや冷やかしにしに来ていたという嫌がらせをしていたそうだ。

『女の部隊なんかへなちょこやろ』とかほざいた結果、遂にぶちギレたさやかが演習中で松ぼっくりを含めた部隊を蹂躙してコテンパンにしたそうだ。

 

松ぼっくりザマァ、とオレは思ったのは悪くない。

 

「そこの女共が裏切ってくれたおかげで遠慮なくやれるわ! 覚悟しい!」

「てか、うちの部隊の演習の時もそんなこと言ってたくせに負けていたし」

「うっさいわ!! これからが本気や!」

 

松ぼっくりがさやかに向かって喚くがさやかは呆れた目で松ぼっくりを見ていた。

 

しかもなんか自分達の自慢話をし始めてるし。

 

はぁー…………こんな茶番に付き合ってられない。

といわけでまどかさん、やったれ。

 

「了解」と答えると既に魔力矢のチャージ完了ができていた。あ、松ぼっくりとの会話中にチャージしてたんだ。

 

「ティヒヒヒヒ、いっくよー♪」

 

ヒュンッ、ジュッドォォォォォンッッッ!!

 

…………数秒後、まどかのデストロイアーチャーで松ぼっくりの部隊は松ぼっくりを残して全滅した。

さすがオーバキル。半端ないです。

 

「ちょっ、不意打ちとかどんだけひきょ、クボッ!?」

「黙れ松ぼっくり」

 

オレはとりあえず残った松ぼっくりに向かってシャイニングウィザードを顔面へ決めた。

こうかはばつぐんだ!!

 

「ワ…………イは、松ぼっ…………くりや、ない…………ブッ」

「黙れって言ってるだろバカ」

 

とどめに再び顔面を踏みしめて松ぼっくりは今度こそ戦闘不能になった。

とりあえず邪魔なのでオレは倒れた部隊を全員、橋から投げ捨てた。橋の下は湖だから死にはしないだろう。

 

溺死になることは知らないけど。

 

「よし行くか」

「お前の鬼畜さに改めて恐怖したよ…………」

 

呆れた表情でキリトにそう言われた。

まどか、ほむら。オレは鬼畜だろうか?

 

「ぬるいわね。私なら落とした後に手榴弾を投げ込むわね」

「私ならもう一回魔力矢を撃つよ」

 

だってよ、キリト。

 

と言ったが彼は冷や汗を流しながら無視してズカズカ前に進むのだった。

いとかなしである。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

まさかの正面突破にアバロン軍達はパニックであった。

普通は正面突破で突入しないからなぁ…………。

 

ちなみにドコでもドアで連合の援軍部隊を連れて来ていたりする。

 

「よーし、ザコは連合に任せてオレ達は」

 

と言った矢先に何者かが斬りかかってきた。銀髪長髪の美形青年である。

 

その斬撃はキリトによって防がれた。美形さんは一旦退いてオレ達に向けて言い出す。

 

「見事。なかなかのお相手だとお見受けする」

「アンタ、何者だ?」

「失礼した。お初にお目にかかる者がこのようなことをしたことは確かにいただけないな。わたしは銀貨部隊のディアベルと申す。貴公に決闘を申し込む」

 

指名されたのはキリトだ。オイオイ、乱戦の中で決闘するつもりかよ。

 

「大丈夫だ。任せろ」

「…………勝てるのか?」

「勝てるじゃない。勝つんだよ――――俺は」

 

キリトはそう言いながら神器を召喚した。

 

『ダークパルサー』と――――――――パワーを徐々に上げていく神器の『エリッシュデータ』。

 

まさかのスピードとパワーを高める神器が揃っていた。キリトはどうやら二つの片手剣という二刀流のようだ。

 

魔剣と聖剣の二刀流使い。聖騎士や魔剣士が見たらケンカが勃発しそうだなとオレは思った。

 

そして、それが神器使いキリトの本来の姿だとオレは次の光景を見てそう思った。

 

ディアベルに向かって「おォォォォォ!!」吠えながら駆け出し、右手の魔剣で斬り込み、ディアベルの盾が防がれたとき、左手の聖剣で斬りかかる。

 

その繰り返しとも言える攻撃がディアベルを防戦一方にさせた。

もはや防御を捨てた回避と攻撃しかない。

 

袈裟、突き、上段斬りから下段斬りと連続斬りがディアベルの盾を徐々にヒビを入れていた。

 

「ぐっ、だがまだ――――」

「『スターバーストストリーム』…………」

 

キリトから技名が漏れたとき、キリトの斬撃が高速の十五連撃へと変わった。

 

『エリッシュデータ』の能力が最大限に発揮されたのか、スピードは高速へと変わり、『ダークパルサー』の能力が発揮されたのかパワーがこれまでと桁違いになっていた。

 

二、三の斬撃で盾は砕け散り、剣で防御を謀ろうとするディアベルだかもはや遅い。十五連続の残りの斬撃が彼に襲いかかる。

 

「がァァァァァ!!」

 

全て受けたディアベルはキリトがとどめの蹴り与えて、後方へ吹き飛び、壁に激突した。血は流れているが死んでいないようだ。

 

意識を失った彼に向かってキリトは言葉を出す。

 

「俺はアスナを助ける…………どんな相手だろうと戦ってやる」

 

決め台詞乙。オレはそう思いながら足を次のところへ向けるのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

城内に侵入したオレ達は先へ進む――――――――が、また誰かが待ち伏せていた。

 

今度は初老の男性に片手には真っ白な剣が握られていた。

あの剣に…………オレの長年の勘は何か嫌な予感を感じさせた。

 

「こんにちわ諸君。私はオベイロン直轄の護衛騎士、名はアーサーだ。君達が来るのを待っていたよ」

 

アーサーの言葉を聞いてオレ達は一斉に神器を構える。

 

こいつは…………強い。間違いなくオレの直感がそう告げていた。

 

「しかし多勢に無勢ではいくら私も骨が折れる。よって――――――――分断しよう」

 

アーサーが指を鳴らした刹那、ガタッとオレとほむら、まどかの床が扉開きになった。

ちくしょう、やられた!!

 

「では良き御旅を…………」

「覚えていろクソジジイーーーー!!」

 

オレ達三人は空しくも悪態をつきながら落ちてゆくのだった。




次回、VSお姉ちゃん

――――ソラくん、あなただけは助けてあげる

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