byキリト
目の前のジャンヌという名の化け物にある意味目を奪われたオレ達はこれからのことを話した。
オレ達はマミさん奪還でキリトはアスナを奪還。
ジャンヌはオベイロンの陰謀を阻止したいとか言っていた。
詳しい話を聞こうと思ったが、もう日が暮れており、明日の会議で話すらしい。
それから部屋を案内されて羽を休ませてもらえることになった。オレ達にとってゆっくりできる部屋を用意されたことは喜ばしいことだ。
またお風呂や食事も豪勢だったのでよかった。
余談だが杏子の食漢っぷりが発揮され、料理長も苦笑せざえなかったと思う。追加が出るほどだったからな。
「んで今現在、宛がわれた部屋にいるわけだが…………」
「ほむらちゃん、例の写真撮れてる?」
「ええ、バッチリと。ソラの写真を撮れたわ」
「あんた達なにを撮ったの?」
「「黙秘権を行使する!!」」
「いやホントなにを撮ったの!? 逆に気になるんだけど!」
なぜこいつらと同室なんだよ…………。誰か…………癒しをください…………。
「アタシの胸かしてやるから、泣いとけ」
杏子の優しさに思わず泣いてしまったオレである。
まあなんにせよ。夜はすぐに過ぎていった。
閑話休題
翌日の会議室にて、オレ達は集まった。
「おはよう。勇者ちゃん達」
「おはよう。あと勇者ちゃんはやめろ」
「あら、お気に召さないかしらん?」
まあな。勇者ってなーんか正義感の塊というか独善的な存在というのがオレの印象だし、あんまり呼ばれたくない。
だから魔王か帝王で頼む。
「あ、それじゃ私は美少女女神で」
「私も美少女悪魔で」
「美少女剣士と呼ばれることをさやかちゃんは所望する」
「アンタら無駄に美少女って言う単語に括るな…………。ちなみにアタシは美少女シスターで」
うむうむ、女の子は大体呼ばれたい単語ランキングにランクインしている言葉である。当然だろう。
「ちなみにアタシはどうかしらん? 美少女? 美女?」
「「「「「究極合成魔獣アルティメットキモス」」」」」
「だぁるぇが、『おばあちゃんは見た、未確認生物キモス』ですってェェェェェ!?」
「「「「「自覚してるじゃん」」」」」
「ムキャァァァァァ!!」
ハンカチを噛み締めるジャンヌにオレ達は目線を逸らす。
だって事実じゃん。
「お前よく堂々と言えるなそんなこと…………」
「言いたいことをハッキリ言ってやれってよく師匠に謂われてたからな」
「それでキレたら襲ってきたらどうすんだよ?」
「え? 普通に殴り返して、骨か間接を外して、後は湖か海もしくは山に捨てるけど?」
「なに当たり前に恐ろしいこと言っちゃってるのお前!?」
「あ、これも師匠から教わったことだから」
「アンタの師匠こぇーよ!!」
クラインがツッコむが怖いのかこれ? ノエル(変態)の場合、社会的に抹殺できる写真を撮られたりするのだけど、オレはそっちの方が怖い。
「まあいいわん。オベイロンの目的は他国への進軍みたいなのよん。それも奇襲のような形でね」
「他国への進軍って…………確か妖精の国って不可侵条約で国境に関所があるから奇襲なんてできるはずが…………」
キリトの言う通り、他国の国境にはそれぞれ関所があり、通行税は取らないものの、通行書がなければ侵入できないシステムである。
キリトはこれが理由で密入国したらしい。どうもアバロン王とオベイロンに顔を知られているため、警戒させないように考えたようだ。
リーファの計らいによりアバロン王やオベイロンにはまだ知られてないらしい。
「そうアタシもそう思ってたわ。だけど間者の報告でそうはいかないことが判明したのよん」
「どういうことだ?」
「『全てを開く者』。その神器の力が彼は保有しているそうよん」
「「「「え!?」」」」
驚いた表情でまどか達はオレを見る。まだ説明してなかったけど、色や形は違うものの神器は複数存在する。
オレやまどか達の神器はたった一つ――――というわけではないのだ。
まあ、オレ達の神器はどちらかと言えばレアな部類だから滅多に同じ神器は見られないが。
そのことを説明すると納得した顔でホッと息を吐いた。
なんでだ?
「いやソラくんがオベイロンと影で繋がっているという疑いがあったから…………」
「ねぇよ。大体、知らないヤツに手を貸すほどオレはお人好しじゃないし、どちらかと言えば千香がやりそうなことだ」
「…………そういえば千香ちゃん、リリなの第三期の黒幕と友達になったんだっけ」
はぁ、とオレ達は千香の非常識さに呆れながらジャンヌの言葉に耳を傾ける。
「話を続けるわよん。最初に言っておくけど、オベイロンは神器使いじゃないわ。どちらかと言えば一般兵士と変わらないわ」
「じゃあなんで『全てを開く者』が話に出てくるんだ? 神器使いじゃないのに」
「その『全てを開く者』は
神器…………じゃない?
いったいどういうことかと聞くと予想外の答えがかえってきた。
「『転移結晶』という魔道具を応用されて作られたと思われる魔道具――――アタシ達は『転移の扉』と呼んでいるわ。この扉は城門サイズで大部隊の軍隊を移動させれることができるわ」
つまりオベイロンがその気になれば首都や重要拠点を占拠できるという可能性が出てきたということだ。
「けれど、まだまだ不安定で量産化はまだされてないのよ。アスナ王女との婚約はその資金と技術力の向上の目的ね」
ジャンヌの説明でキリトは拳に力を入れていた。
怒り――――アスナとの婚約はそんな目的のためか、と言わんばかりの感情が彼から感じた。
「ジャンヌ。聞きたいことがある」
「何かしらん? スリーサイズならベッドの上で大歓迎よ」
「死んでもいらない情報だ。知らなくていい。オレが聞きたいのはオベイロンの最終目的だ」
オレの言葉にジャンヌは口角をあげる。こいつはわかっていたな。オベイロンの最終的な野望が。
キリト達は頭に?をあげていたが、まどかはオレに聞いてきた。
「ソラくん、それってどういうこと? オベイロンの目的って進軍でしょ?」
「ああそうだ。だけどそれは足掛かりに過ぎない」
資源や物資を支配し、自国の戦力と持久力をあげる。これは戦争を始める前の下準備だ。
そのことをまどか達に説明してやった。
「戦争の下準備ってことは、敵国はこの世界の人達のこと?」
「最初はな。だけどそれが終われば次はどこになる?」
「それは……………………あ」
まどかが気づいたようにほむら達も気づいたようだ。そしてそれを知ったさやかと杏子は険しい表情になっていた。
「まさか…………そんな…………」
「たぶんお前の予想通りだよ。ヤツの目的は『転移の扉』を使った――――――――
――――――――異世界の征服」
オレがそう言うとジャンヌは「正解よ」と答えた。
これは最低最悪の事態が起きているに違いない。
異世界の進軍でその世界の住人に迷惑をかけるだけでなく、抑止の存在の出現で大虐殺もありえるのだ。
「ま、なんのために異世界を征服しようかと思ったのかは知らねぇが……………………やること決まってる」
「ええそうね。それでソラはどうしたいのかしら?」
ほむらにそう聞かれてオレは笑みを浮かべる。
愚問だな。当然やることはシンプルで簡単な目的。
「決まってるだろ? オベイロンの野望をぶち壊す」
敵は決まった。確定した。
敵は強大、だがオレ達の力は無限大。
全力全壊で敵対する者はなぎ払うだけだ。
オレはそう思いながら拳に力入れるのだった。
(??サイド)
王座の間にて、一人の王が命を散らした。
その光景を見た王女が泣き叫ぶという地獄絵図。
そしてその王の命を散らした元凶――――――――オベイロンは高笑いしていた。
「くひゃひゃひゃ! これで僕がこの国の王だ! 目指すのはこの世界――――いや異世界全てを統べる王!!」
友江マミはその光景を見てグッとマスケット銃を握りしめる。ここでオベイロンを退治したいが王女は今はどうしようもない状態で、その上オベイロンの配下が多い。
いつの間にかアバロン王を支持する者がオベイロンへと鞍替えしたみたいだ。
(耐えるのよ今は…………。きっと誰かが彼の野望を阻止してくれる…………!)
その想いは明日に叶うとは彼女はまだ知らなかった。
これでオベイロンは異世界に進出するカギを手に入れた。
しかし彼は知らない。いつだって悪は英雄に滅される存在である、と。
次回、VSディアベル
「いい加減に見せ場を見せないとな!!」
byキリト