とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「意外に弱いソラのメンタル」

by友江杏子


第七十二話

青空が広がる心地よい天気。そしてその日当たりが絶好とも言える城下町にオレ達はいた。

 

リーファはとりあえず、前日の宿屋でキリトの説得で大人しくなっていた。まあ、さすがに敵陣の拠点で兄貴分であるキリトを捕まえたくないのだろう。

んで、今現在オレとさやか、杏子は変装して街道を歩いていた。メンバーはバラバラに別れて情報収集していた。

 

あちこちには妖精がおり、少数の中には猫耳族など他種族がチラホラいた。

 

「杏子、そんなに食べ物買って大丈夫なの?」

「大丈夫だって。ソラの財布から出してるから」

「オイこら。なに人の財布で食べ物を買ってんだお前」

 

コツンと叩いてからオレは嘆息を吐いた。

先日、オレの財産は女神のおかげで換金されてリリカルな世界と同じく財布が潤いに満ちていた――――――――が、そこにまどかが財布を握られてしまいおかげでお小遣いはリリカルな世界にいた頃と変わらないようになった。

 

ああ、恐ろしきかな。カカア天下。

 

「そういえば、まどかのヤツどこ行った?」

「なんか珍しい大人のオモチャがあったから買いにいったんだけど…………ソラ? 大人ってオモチャで遊ぶのか?」

「杏子、知らなくていいよ。てか、お前はずっと純粋でいてください」

 

土下座するくらいの勢いで杏子に懇願した。杏子は頭には『?』と浮かんでいるような表情をしていた。

これ以上、変態はごめんである。

 

「ちょっと待って。あたしはまどかと違ってノーマルよ!」

「昨日の夜のことを言ってもか?」

「あれは…………その…………エヘヘヘヘ…………」

「ニヤけるな」

 

さやかって実はMだった。あんまり言いたくないけど、縛ってみたら結構よかったらしい。

かと言ってユーノ少年のような壊れすぎてるMじゃなかったが。

 

「だって大好きな人と結ばれるのって幸せなのよ。ハッピーなのよ?」

「ネトラレてるくせに」

「よろしい。戦争よ杏子」

 

ファインティングポーズをとるさやかと杏子にオレは呆れながら口を開いた。

 

「落ち着け。二次創作界の百合カップル」

「「誰が百合カップルよ!!」」

 

知らないのか? リリカルな世界では二次創作のこいつらは有名なくらいカップリングされてるんだぞ?

 

「あたしはノーマルよ! てか、いつの間に創作対象されてたのよ!?」

「大体小五辺りから。ちなみに始めたのは千香だ。『財布と欲望が潤されるでござる、ゲスゲスゲス♪』って言ってた」

「あんの変態腐女子めェェェェェ!!」

「ちなみに一番人気はクロノとユーノのカップリングだった。どうも腐女子同好会という組織があって、そこで大人気作だったそうだぞ。『受けがユーノで、攻めがクロノは神!!』だったとか」

「どうでもいいわ!! てかうちの学校にそんな組織があったのが驚きよ!!」

 

さやかの言う通りである。

 

まさか危ない視線を感じて探ってみるとあら不思議。そこにあった部屋からには同性愛を描いた同人誌ばかりが発見された。

 

その魔窟から逃げ出してしまったオレは悪くない。うん、オリ主くん(故)と衛くんののカップリングが描かれていたプロットがあったけど無視したのも悪くない。

 

え? なんでだって?

 

オレに実害ないから。

 

一時期オレとユーノのカップリングが誕生していたのが、当然、販売阻止した。

 

あれは思い出せばヤバい。まさかの高町の目の前でユーノをネトラレるという色んな意味でひどい作品だった。

オレはノーマルだし、他人の大切な人を手を出すほどゲスじゃないからな。

 

そんなことを話してゲンナリするさやかと嘆息を吐く杏子だったが、ハッと顔をあげて辺りを見回した。

 

「ソラ…………」

「わかってる…………。いつの間にか囲まれてる」

 

見回すと甲冑を着た妖精達がチラホラいる。気づいてないつもりらしいが戦場を駆け抜けたオレにはすぐにわかる。

 

「どうする?」

「路地裏に逃げ込んで撃退しよう。ここでは目立つ」

 

さやかと杏子は頷いてからオレ達は一斉に路地裏に駆け込んだ。

すると甲冑を着た妖精達もまたオレ達を追いかけてきた。

 

よし、後は…………。

 

「甘いわよ」

「ぬぉ!?」

 

建物から狙撃にオレはすぐさま跳び退いた。杏子達も狙撃を受けたが神器で弾いたようだ。

 

「シノンの狙撃に反応するなんてなかなかな人達ね」

 

先ほどオレ達に向かって言った人物がオレ達の前に現れた。その人物はオレ達がよく知る女の子。

 

知ってるマスケット銃をこちらに構えているが、コルセットではなくメイド服という格好で、特徴的な金髪のくるくる巻きのヘアースタイルの彼女はオレ達には笑顔を向けず、敵意のある顔で見ている。

 

「マミさん…………なのか?」

「あら、名乗った覚えはないのだけど知り合いなのかしら?」

「オレだ。ソラだ!」

「ソラ…………そら?」

 

マミさんはしばらく思案顔になったがその後、言った言葉にオレの心に衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『そんな男の子。知らないわ(・・・・・・・・・・・)』。知り合いだったのかしら?」

 

……………………ふぅ。

 

オレはとりあえず深呼吸、深呼吸して――――して……………………。

 

 

 

 

 

「…………グスン、グ…………」

 

……なんでかな。涙が止まらない。もうやだぁ…………一人になりたくないよぅ……。

 

「泣いちゃった!? なんで!?」

「うわー、マミさん泣かしたー…………」

「ヒデーな、オイ…………」

「「「………………………………」」」

 

「なんでみんなから白い目で見られなくちゃいけないの!?」

 

周りから受ける白い目にマミさんが常識的にツッコんでいた。

オレのハートはブレイクされて崩れていた。主に心労とショックで。

 

ああ、ホントに疲れたなぁ…………。

なんかもうどうでもよくなってきたなぁ…………。

 




変態達の心労とトラウマを刺激でソラが幼児退行しちゃいました。まあ、一種の発作ですが。

次回、なにこれ

――――なんでこういうノリなのこの人たち……

byシノン

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