とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「さーて、久しぶりのケンカだ。今回は殴り合いじゃないけど」

by神威ソラ


第七十話

街にどこかの部隊の舎屋を吹き飛ばしてからオレ達は街に入り、広場まで来ていた。

先ほどの射撃で広場にはあまり人が少なく逃げ出す人達ばかりである。

 

うむうむ、さすがまどかの射的である。おかげで誰にも悟られず、どうどうと侵入できた。

 

「いや悟る以前にぶっ飛ばしてるよね? 混乱に乗じて入ったよね?」

「バレてるだろうけと好都合。向かってきたら財布を拝借してやる」

「うわー…………考えが完全に犯罪者だ…………」

「キリトさん、それは今更ですよ…………」

 

キリトとシリカはゲンナリしながらオレに呆れていた。何を言う。オレは犯罪なんてしてないぞ。

乱暴な人達からただ永久にお金を借りているだけだ。

 

「どこの幻想卿の魔女っ子だよお前は。それよりこんな往来のところで大丈夫なのか? 騎士達に見つからないのか?」

「大丈夫だって。こんな混沌とした状況でマヌケな騎士達は気づかないって」

「誰がマヌケですって?」

 

オレ達が声がした方向を振り返ると金髪ポニーテールの妖精が腕を組ながら空中で仁王立ちしていた。

空中で仁王立ちしているため、なぜか威厳を感じさせた。

 

「誰だあいつ」

「さあ、あんなうらやまけしからん胸を持って女の子は知らないわ。ムカつくわね、あの胸」

「とりあえず胸がムカついた。ほむらちゃん、あの子殺っとく?」

「賛成。殺るわよ」

「ストップ・ザ・お前ら。てか大半が嫉妬だろそれ」

 

むき出しの殺意に金髪巨乳に向ける。確かに腕を組んでるおかげで胸が強調されてるな。

すると金髪ポニーテールは顔を紅くて、胸を抑えながら口を開いた。

 

「あ、あんた達どこ見て言ってるのよ! 私だって大きくしたくてしたわけじゃ…………」

「それは宣戦布告ということだね。貧乳達に対する挑発だね。ほむらちゃん、どう思う?」

「ギルティ。死刑よ。おっぱいが大きくなったからって調子乗らないでほしいわね無駄脂肪」

「どんだけ胸にコンプレックス感じてるのよあんた達!?」

 

ほむら達はどこからか出したハンカチを噛み締めながら羨ましそうに金髪ポニーテールを見る。

 

どうでもいいけど大体の金髪の少女って巨乳率が高いのかな?

マミさんもどちらかと言えば巨乳だし。最後に見たときにはDくらいあるって言ってたし。

 

「つか、杏子は気にしないんだな」

「当たり前だろ。別に胸が大きかろうが小さかろうがソイツを愛してくれさえ言えば問題ねぇだろ」

「なんと逞しい発言。ちなみに杏子は胸が大きい方? 小さい方?」

「……………………この間、計って見たらちょっと大きくなってた。道理で肩こりがあるわけだ」

「まさかの裏切りにまどか達がお前のことを敵意を込めた目で見てるぞ?」

 

とばっちりにバツが悪そうに目を逸らす杏子。しかし、彼女達の眼差しは止まらない。

そしてなぜかシリカも自身の胸を触りながら愕然としていた。戦力が圧倒的なのに、カオスなのはこれ如何に。

 

「というかさっきから胸ばっかりの話じゃない! いい加減に真面目にやりなさいよ!」

「知るか話題の元凶。お前のおっぱいが大きいからこうなったんだが。終わらせたければお前が終わらせろ金髪巨乳」

「誰が金髪巨乳よ! あたしの名前はリーファよ!!」

「りー……………………ヤベ、忘れた。ワンモアプリーズ」

「こんなに短いのに忘れちゃうの普通!?」

「どうでもいいヤツの名前を覚えるのが苦手。それがソラクオリティ」

「あんたが最低なのはよーくわかった」

「杏子、誉められたぞ」

「いや誉めてねぇだろ絶対。てか、なんだこのグダグダ感」

 

全くである。シリアスは実家に帰ってシリアルが仕事をしている状況である。

しかしそれがオレ達の普通である。グダグダで、馬鹿らしくて、時には真剣になるのがオレ達だろ。

 

「さて話を戻すけど、お前だけで来たというわけじゃないよな?」

「当たり前よ。既にここは包囲済みよ。諦めて大人しくしなさい」

「「「「ヤダ」」」」

「まさかの即答!?」

 

当たり前だろ。高々ザコに囲まれたところでオレらが屈するはずがないだろ。

 

オレはりー…………あ、思い出した。リーファか。覚えた。

とにかくリーファに向かって言葉を出す。

 

「というわけで無理矢理だりなんだりしてみろ。ただし、無事では済まないが」

「言ってくれるじゃない。望み通りしてあげる」

 

「でもその前に」と今度はキリトに視線を向ける。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃんのことを諦めてくれないかな。これ以上ここにいてもいずれは…………」

「無理だよリーファ。俺はアスナを助けるって決めたんだ」

「お兄ちゃん……………………」

 

悲しそうに呟くリーファ。どうやらこの二人は知り合いみたいだ。

きっと兄妹のように仲がよかったのだろうな。オレには関係ないが。

 

「というわけでほむら、発射よーい」

「オーケー」

 

 

 

 

ガチャ

 

再びバズーカ砲を取り出して標準をリーファに合わせる、ほむら。

 

「やれ」

「ちょっ!?」

 

リーファの戸惑う声を無視して、それからトリガーを引いて発射した。

 

 

ドガァァァァァンッッッ!!

 

直撃したのか爆煙と爆発音がリーファのいたところから出た。

 

「お前らうちの大切な義妹に何しちゃってるの!?」

「えっ? 義妹なの? まあオレらにとってあいつ関係ないし、敵だったし」

「だからって問答無用すぎるだろ!?」

 

キリトよツッコミが冴え渡る中で爆煙が風で吹き飛び、無傷なリーファが現れた。

右手にはエメラルド色の剣が握られていた。

 

察する風で爆撃を防ぎ、その風で爆煙を飛ばしたのだろう。

 

風の神器使いか…………。厄介だな。空中戦が専売特許のヤツとはできれば相手したくないなぁ。

 

「というわけでシリカ、キリト。悪いけどあいつは任せた。オレだとまず手加減できないし、苦手なことだ」

「わかった。だけど他は任せたぞ」

 

キリトはそう言って神器『ダークパルサー』という聖剣を召喚した。

確か持ち主の『スピード』を徐々にあげていく時間差系の神器だ。

 

十分くらいになるとオレの目で終えるのはやっとなくらいな速さになる。

まあ、別にキリトの剣術は中々だし、まだ奥の手(・・・)があるし大丈夫だろ。

 

「さてととっと終わらせて…………――――っ!」

 

オレは咄嗟に後ろに退くとオレがいた場所にサーベルが突き刺さる。

まさかあいつがリーファと一緒にいるなんてな。

 

「久しぶりソラ。とりあえず殴らせてくれない? さっきの魔力矢の怨みを込めて」

「久しぶりさやか。断じて拒否。そこにいたお前が悪い」

 

売り言葉買い言葉で睨み合うオレ達。いつの間にかまどか達は部隊と接点し、戦いの火蓋を切っていた。

 

うん、とりあえず…………。

 

「いくわよコノヤロー!!」

「かかってこいやアホ女!!」

 

目の前のアホを大人しくさせることだ。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

戦いの火蓋は落とされた。オレとさやかの神器はそれぞれの攻防をしていた。

袈裟斬り、切り返し、突き、右から左や左から右への一閃、または上から下へ、下から上への斬撃を放つ。

 

たぶん剣術に置いて上なのはさやかだ。

断言できる。認めよう

 

だが、剣術が上だからと言ってオレより強いとは限らない。天才が必ずしも凡人より上とは限らないように。

 

「『プレスト』!!」

 

音楽用語で確か、『速く急に』という意味だ。恭也さんの『神速』をコピって名付けた技だろう。

 

文字通り、さやかが消えた。いや見失ってしまった。

 

だからこそ、オレは僅かに感じた気配と空気の流れを感じて即座に防御に入った。

予想通りにさやかは側面からの斬撃を放ってきた。

 

「よくわかったわね! あたしの攻撃!」

「こちとら自分より早い敵をぶっ潰しているんだよ! そう簡単にいくか!」

 

そう言い返して反撃。さやかはそれを受け流したりして回避する。

 

『無限の音楽』はオレの『全てを開く者』と同じで燃費の悪い神器だ。

つまり、さやかはオレと同じく長期決戦には向いてないのだ。

 

だからこそ、オレは神器(全てを開く者)の力を使わず持久戦で挑むつもりだ。するとさやかは左手にサーベルを創造してきた。

 

「『テンペストーゾ』!!」

「ゲッ!」

 

意味は嵐のように激しくだ。

 

両腕が消えたかのような速度の連続斬りがオレに襲いかかる。防御しようにも速さ過ぎて防ぎきれず、その斬撃でオレの身体は次々と切り傷ができた。

 

「どうよ! あのお兄さんの『神速』という技を使って出せた、あたしの技は!」

「さすがしか言いようがねぇよ。普通その腕は使い物にならないのにな」

 

斬撃が治まった時には、さやかの両腕は無事だということが確認できた。神器使いとしての恩恵があるからの影響かもな。

ヤベ―、余裕で勝てる気がしなくなってきた。

 

「クソッ…………アホくせに剣術に関しては天才だなお前」

「はっはっはっ! 天才美少女剣士さやかちゃんに不可能はないのだー! あとアホ言うな」

「んじゃバカで」

「バカもアホも同じでしょ! というかソラはあたしのことをそうでしか思えないの!?」

「えっ? 今更気づいたの? やっぱアホだお前」

「うがァァァァァ! あんた絶対許さない!」

 

うなーと腕を上げて憤慨する、さやか。するとザコを蹴散らし終えたまどか達がこちらに加勢してきた。

 

「ソラくん、大丈夫?」

「さやかの分際でソラを追い込むなんて…………やるわね」

「いやそりゃそうだろ。もうさやかは素人じゃないし、初見でアレは無理だろ」

 

それぞれが感想をもらす中、オレはやれやれと嘆息を吐く。

 

「まだ手を出すなよ。これはさやかとの喧嘩だ。どっちが参ったって言うまで戦うつもりだから」

「そう、けどさやかに言いたいことがあるから先に言わせてもらうわ」

 

ほむらとまどかは合掌して言い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。ソラくんのアレ、よかったわよ♪」

 

まさかのカミングアウトですか!?

ほら見ろ! ポカーンとしてるぞさやかが!

 

「そうね。まどかはいただいていたけど、私は美味しくいただかれたわ。悔しいわ。ソラ、今夜はリベンジよ」

「やかましい!! お前らはなんで目の前で艶話を人前でするのかな!?」

「それはさやかがネトラレ系エロゲーのヒロインだからよ。ほら、キュゥべぇに騙されて精神的に堕ちてたじゃない」

「肉体的にもな! 魔女化したことがいやらしく聞こえるからやめろよ、それ!」

「やめないのが私クオリティ。どう?」

「最低だったよ!」

 

ほむらにツッコんでいるとさやかがワナワナと震え出した。

 

「じゃ、じゃあ何? ソラはもうまどか達と…………その…………関係を持ったの?」

「杏子もよ」

「あぅ…………」

 

顔を紅くしながら顔を隠す杏子。オレはオレでさやかから目線を逸らすだけである。

 

「ふ、ふふ…………そう。そういうことならあたしもウカウカしてられないわね。この勝負に勝てたらソラをもらうよ!!」

「さやか、それ負けふらぐよ」

「『テンペストーゾ』!!」

 

ほむらのツッコミを無視して再び放たれた嵐のような高速連続斬撃。オレはやれやれと一呼吸して、横への一閃を放つ。

 

 

ガィィィィィンッッッ!!

 

 

そのたったの一撃で連続斬りを打ち消した。

 

「くっ…………」

「なんでって顔をしているな。まあ、確かにあれは見えない部類の斬撃だ」

 

けど、とオレは続ける。

 

「大体どういうところを狙ってくるのかがわかれば後は実戦経験で得た感覚の出番だ。対処法は容易い」

「…………さすがは英雄ってことだね」

「後、二回目で目が慣れたからもう感覚がなくても対処できるかも」

「訂正。あんたやっぱり人外よ!」

「失礼な。オレは立派な人間だぞ。しかも普通の」

「どこの世界にあんな高速斬撃を目で追えるヤツがいるのよ!?」

 

なぜかまどか達にも頷かれた。解せぬ。

 

「だけどまだまだ…………!」

「いや無理だろ。お前の神器はオレと同じく燃費が悪いし、魔力が減れば減るほどその力は弱くなる。見てみろ。サーベルが刃こぼれし始めてるぞ」

 

オレの言う通りサーベルが刃こぼれし始めたていた。『無限の音楽』は魔力が少なくなればなるほど、その力は弱くなる。

つまり、二回連続の大技を使ったせいで魔力の限界が近づいていたのだ。さやかはただでさえ、魔力量は元魔法少女の中では多いとは言えないからな。一幕置いていれば、まだ戦えていただろう。

 

くっ、と悔しくもらしながらさやかは膝についた。

 

「オレの我慢勝ちだぜさやか」

「ええ…………降参よ」

 

そう言ってさやかはサーベルを地に刺して白旗をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だけどまどか達を抱いたことは見逃せない」

「マジでー…………。で、罰はなんぞ?」

「…………こ、今夜。宿で、一人であたしのところに来なさい」

 

えっ? 何その嫌な予感を思わせる罰は。主に貞操の。




剣術においてさやかは天才です。素人から始まったのに、魔女と戦えるくらい成長してますから。
あと、さやかの剣術は元々、まだ小さい頃の(純粋な)ソラの剣術を真似たもので、そこから我流に発展させています。

さすが天才。感覚でわかっちゃうなんて。まあ、最後には考えずノリで大技を使っちゃったアホですが。


次回、金髪少女の災難

――――キリト、ごめん。見せ場を取っちゃったかも

by神威ソラ

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