by佐倉杏子
閑話 杏子の追憶
ヤツと最初に出会ったのはさやかをボコボコにしたときだった。
ふざけた子どもだと思い、お灸を据えてやろうとしたが、逆に翻弄されて返り討ちにされた。
最初のアイツはムカつく子どもだった。いつか、仕返ししてやると報復を誓ったことは今でも覚えている。
まあ、すぐに再会したけど。
ほむらと一緒にいるところを見て、ほむらもコイツの仲間だと思った。
だけど、ほむら曰く、協力関係だけどちょっと人選ミスったかも…………とぼやいていた。
オイ、なにしたんだお前。
しかも名前を微妙に間違えてたし。あんこじゃなくて杏子だっての!
全く、アイツはいつも人の名前を間違える。なんで覚えないのか不思議だ。
まあ、アタシのことはしっかり覚えてくれたけど。
その後、さやかにアタシの祈りを打ち明けたときアイツも一緒にいた。けど、アイツは子どもらしくなくこう言いやがった。
「杏子の祈りは間違ってないよ。誰かを想う祈りは間違いなはずはない。父親にわかってもらえなかったけど、オレは杏子の祈りを肯定する。絶対に否定してやらない」
理想的で子どもみたいな言葉だったけど――――初めて認めてもらえたことにアタシの心は満たされた。
泣いたときはソラが頭を撫でてもらった。…………い、今思えば恥ずかしいな。
それからアイツと友達になっていろいろ遊んだりしたな。思えばアイツってダンスゲームが苦手みたいだった。つまるところ、ヘタクソだった。
そのとき拗ねた表情は年相応な顔でよかったと思う。
それからワルプルギスと決戦。
勝てたけど、抑止の存在が現れてアタシは死んだ。
しかしまどかによって世界は改変され、アタシとマミは生き返ったが、まどかと過ごした時の記憶を無くし、さやかとまどかが消えた。
改変された世界でしばらく過ごしていると今度はほむらが囚われて、ナイトメアと戦う日々が始まった。
ソラもこの世界に来たとき、誰だかわからないくらい成長していた。殴ったことは「ないわー」という発言の罰だと思え。
そして、ソラは死んでアタシは虚無に支配された。
悪友であり、親友だった少年がもういない。求めることができない。ああ、そうかアタシ――――――――ソラが大好きだったんだ。
そのときアタシはアイツが好きなのだと自覚した。
それからほむらを救ってアタシ達は女神と出会って転生した。
なあ、ソラ…………また会ったら覚悟しろ。
必ず振り回してやるかな!
だけどその前にまどか達の変態行動を止めねーとな……。ソラが鬱になる。
オイ、誰だここまで改悪したヤツらは?
え、誰この乙女?と思った方。杏子ですよ。
この作品の杏子は純粋で常識的な少女のため、ソラの転生後、唯一のオアシスです。
面倒見のよい姉御のような女の子ですからねー。
ま、ソラにいただかれましたが。
次回、やっちまえ。
ソラ「とりあえず……主砲、用意。放てー!!」