(草太サイド)
フェイトを助けるために撃った魔力弾がまさか弾き返されるとは思わなかった。踏み台転生者であるが、こいつの実力は本物だ。
だけど俺は勝てる自信があった。
なのはのお父さんとお兄さんと毎日稽古つけてもらい、それなりの実力がついたと自信がある。
だから挑んだ。そして知った。
――――――――敵が遥か彼方の実力を持つ者であったことを。
「遅い。ぶっ飛べ」
「がはっ！？」
魔力刃で斬り込んだが、ヒラリと右に避け、腹部に激痛がはしる。強烈な蹴りだった。
士郎さん――――いや、それよりも重く強い一撃。
まさか魔力強化しているのか！？
「んなわけあるかタコ」
「ぐ、あ…………」
心を読んだようにヤツはそう言って、カギのような剣を魔力刃で受け止めたが、重すぎる！
なんて斬撃だ。たった一撃で全身の筋肉の体力を持っていかれそうだ!
神威は次々に右、左、上、下からと斬撃を放つ。反撃できず、成すがままだった。
「あァァァァァ！」
「おっ、火事場のなんちゃらか？」
俺はすぐさまヤツから距離を取り、相棒であるデバイスに最強の魔法の発射準備を頼んだ。
「ラルド！ ダークインパルスを！！」
《心得た！》
「え、なにそのおもちゃ。初めて知った――――――――」
興味津々にラルドを見ていた神威だが、最後まで言えなかった。
ダークインパルス。
なのはのスターライトブレイカーの黒いバージョンの最強の砲撃魔法である。さすがにヤツも――――――――
「なっ!?」
そんな考えはすぐに破棄された。神威は無事だった。
しかも無傷で。
剣先をこちらに向けた格好で不機嫌な表情をしていた。
「いきなり撃つなよ。ビックリしただろ」
「な、なんでお前は無事なんだよ！？ あれほどの砲撃をどうやって！」
「え？ 普通に『開いた』んだけど」
「どういうことだ！？」
「いや『開けた』っていう概念をその砲撃にぶつけて切り開いたってことだけど」
概念に干渉する武器？
ヤツはどんな特典をもらったんだ！ 踏み台が得る特典じゃないぞ！？
「なんかもうめんどいからとっと終わらせよう」
「ナメるな。まだ俺は――――」
そう言いかけたとき、神威を見失い、後頭部に衝撃を受け、地面にたたきつけられた俺は失神してしまった。
……なんて……強さ…………だ。
(ソラサイド)
オリ主くんとの戦闘が終わり。オレは寝ているヤツを縄で縛った。
「うん、つまんない」
ここまで骨のない敵は久し振りである。オレが強すぎるせいか相手にならなかった。
つーか、千香と神器なしの模擬戦した方がまだマシだった。
防御専門のヤツに負けるなんて、最悪だなもう。
「んで、なにしてんのソラと千香は」
「いや金あるかなって。ほら、オレってまどかに財布握られてるし。あったら返済無しで借りる予定」
「ボクはこいつの恥ずかしい写真をとってネットにばらまく予定」
「サイテーだなオイ。だが許可する。ゆけい、我が積年の恨みのために」
「やめんかお前ら」
ちなみに金髪少女は戦闘中に逃げられた。
結局、オレの復讐も杏子に止めれたし。ちくせう。
☆☆☆
翌日、オリ主くんに遭遇しないように細心の注意を払い、帰宅した。
途中、ゴツくてケツ顎男性が「ヤらないか」と聞かれたとき、寒気がした。
追ってきたところを、通りすがりの金髪オッドアイを生け贄にしたオレは悪くない…………はず。
まあなんにせよ。貞操を守れたことがすばらしいことである。
「ただいまー」
「おかえりなさいソラ」
ほむらが出迎える。そういえば、今日は買い物の当番だったな。
「ねぇソラ。温泉行きたい？」
「う～ん、別にどっちでもいいかもな」
「私達の裸体みたくない？」
「お前いい加減に自重しような」
昔はオドオドした大人しい文学少女だったらしいが最早面影ないくらいのハッチャけキャラにシフトチェンジ。
何が彼女を変えてしまったんだ…………。あ。オレか……………………たぶん。
「自重しなくて何が魔法少女よ」
「なにその某英雄王みたいな言い分。確かにあれはあれで自重してなかったけどさ。リアルファイトはアニメーションだけでいいよマジで」
円環の理だった頃のまどかに見せてもらった並行世界の一つの話だったりする。
あれはひどい。
主にマミさんの死因が。
「とにかく温泉行くのはどっちでもいい。みんなが行きたいなら行くって感じ」
「あら、それは全員一緒が賛成したら行くってことかしら？」
「………………………………」
「女たらし」
「うっさい。オレは誰一人欠けたくないの」
クスッとほむらが優しい笑みでオレを見つめる。……………………図星つかれるのって結構ハズいな。
ということでゴールデンウィークは全員で温泉行くことになった。
「あ。移動と荷物持ちはソラの役目ね」
「なにその男女差別。解せぬ」
次回、温泉へＧＯ！
そして彼女は自重しなくなる…………。