とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

79 / 158
「どんな部族だよ…………どんな伝説だよ…………」
byソラ


第六十七話

ややくもり空な天気の森の中でオレ達はさっそくピンチである。

 

なんか水着っぽいお腹を出した服装で槍のような武器を構えた猫耳な女性達に囲まれていた。お腹壊すぞお前らとぜひとも言いたいファッションである。

 

ちなみになぜかまどかとほむらだけはその槍を向けられていない。オレとキリトのみである。

 

「これが異世界のファッションだと? まどか、ほむら気をつけろ。お前らは水着ファッションで過ごさないといけないみたいだぞお二人さん」

「あらやだ。それが本当ならどうしようかしら。私、水着持ってないわ」

「そうだねほむらちゃん。いつか着ようと思っていたビキニは家に残したままだし…………。こうなったら下着姿で!」

「いや、冗談だから。羞恥心を持とうな、まどかさん」

 

とりあえずまどかを抑えながらオレ達は談笑していた。

 

「いやなんでこんな状況で普通に会話してんの!?」

 

という危機感のない会話していたオレ達にキリトがさすがにツッコんできた。

それがオレ達のスタンダードなのさキリトくん。

 

すると猫耳の小さな茶髪の少女が前に出てきた。鉄の胸当てでお腹が出た赤を基調にした服装だ。肩には小さなトカゲいた。

そんな小さな少女だが一見気弱そうな印象だが、今の彼女には女性達をまとめるリーダーの雰囲気がある。

 

この少女がこの女性達の長かなんかだろうな。

 

とりあえずまず聞きたいことがあるのでその少女に聞いてみた。

「なんですか?」と聞いてきたので、オレは最初の疑問を口に出した。

 

「そのトカゲ…………非常食か?」

「トカゲじゃありませんし、ドラゴンですから。あとピナは非常食じゃありませんよ!?」

「いやなんか焼いたらうまそうだなーって…………ジュルリ」

「この人マジだ! ピナを食べるつもりだよ!」

 

おぉ、見事なツッコミだ。誰かに訓練されている者だろう。

 

「というかまず質問するところ違いませんか!? どうしてこんな目にあっているのか疑問はないのですか!?」

「いやーこういうの日常茶飯事だったからなー。ぶっちゃけ慣れてるし、やってきたら女性だろうが子どもだろうが返り討ちにしてパンツ一丁にさせてた」

「容赦ないよ、この人!?」

 

顔を赤くして茶髪少女はその小さな胸を抑えながらツッコむ。槍を構えてた女性達もそんな未来を予想したのか震えていた。

神威ソラは老若男女問わずに追い剥ぎを返り討ちにして無一文にさせる男です。

 

「まあ、この際オレの話はどうでもいいとして、そこどけてくれない? オレ達このガイドのお兄さんに案内されてるところなんだよ。遊びのコスプレ集団は帰れ。むしろ、そうなら本場の人に謝れ」

「その『こすぷれ』という単語は知りませんが、なぜかバカにされてる気がします。」

 

青筋を立て始める女性達と茶髪少女。今にも襲いかかってきそうだ。

 

「ってオイ! この人達猫耳族だぞ! ケンカ売っていいヤツらじゃない!」

「知るか。こちとら売られたケンカを買うのが主義だ。猫耳族なんてどうせあんまり強くないだろ」

「いやそうなんだが…………コイツらと敵対するとこの国と敵対するのと等しいんだ」

 

えっ、マジで?

コイツらってそれなりの権力者なの?

 

キリトは続けて言葉を出す。

 

「なんでも猫耳ファンクラブという謎の団体が敵対組織を滅ぼしているんだ」

「聞いて損した…………」

「そしてその団体はとある国の魔王を倒したという伝説を残し、古代壁画に載せられるほど古くから伝わる団体なんだ」

「ファンクラブが伝説ってどんな言い伝えだよ!?」

「ちなみにこの国の王様もファンクラブの一員らしい」

「アバロン王ォォォォォ何やってのあんたはァァァァァ!?」

 

何やってんだよ、国の最高責任者!!

ある意味終わってるよこの国!

 

「そ、そうです…………にゃん。私達と敵対するとこの国と戦うことになるのです! …………にゃん!」

「いや、なに今さらキャラ付けしてるんだよ、お前。普通に喋ってていいだろ」

「その…………この国の法律で『猫耳族は必ず語尾にニャンをつけるべし』って書かれていまして…………あぅ、恥ずかしいです…………にゃん」

「もう滅びろこんな国!!」

 

心からそう思うオレだった。ファンクラブが伝説を残すなんてなんだその新しいレジェンド。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

そんなこんなでオレ達は猫耳族の根城にしている村に向かっていた。

オレ達の目的は一つ村長に会うことだった。理由はなんで男ばかり狙うかということを聞きたいからだ。

 

「ここが猫耳族の村か?」

「はい…………」

「よし案内しろ」

「わかりました…………」

 

チラホラ他の種族を見かける中で、猫耳族の部隊長であるシリカについて行き、村長の家までやってきた。

ちなみにその部隊はオレ達の後ろを鴨の子どものようについて行ったりしていた。

 

「族長ー、いるかー? ブサイクな族長ー!」

「ちょっ、いきなりなんてこといってるのですか!?」

「えっ? 美人なの?」

「美人というか美少女ですよ! しかも強くてカッコいい私の憧れの女性です! あなたなんかケチョンケチョンにしてしまいますよ!」

「あっそ。ブサイクー! さっさと出てこーい! デブなのか、お前はー?」

「人の話を聞いていましたか!?」

 

シリカがオレにツッコむ。しかしオレはそれでも罵倒はやめないまま、そのまま続ける。

すると、ほむらが彼女の肩を叩いて口を開いた。

 

「無駄よ。ソラは基本信頼してない人の言うことは聞かないわ」

「納得できますけど、女性に対してめちゃくちゃ失礼なこと言ってますよ!?」

「それが彼の作戦よ出てきたところを――――――――殺る。私もそうするわね」

「なにこの人達、スゴく怖いんですけど!」

 

それがオレとほむらクオリティであるのだシリカちゃんよ。

すると、コテージから物音が聞こえ始めて、赤い髪の少女が出てきた――――

 

「うっせーな!! 誰がブスだとデブだとコラ! アタシはまだまだブクブク太ってねぇよ!」

 

――――…………え?

 

「…………え?」

 

 

出てきたのは見知った顔の少女――――友江杏子であった。

え? どゆこと? 誰か説明プリーズ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

村長こと友江杏子はオレ達が異世界やら平行世界に行っていた間に起きたことを話してくれた。

 

なんでも猫耳族の村に来て、盗賊達に襲われていたところを助けてしまい、その後村長に任命されてしまったらしい。

杏子としてはさっさとどこかに行きたいが、どうも生来のお人好しというか世話焼きがそれを邪魔してしまい、行くにも行けなかったらしい。

 

この集落では男の装備品を奪って売るという遊びが有り、それが楽しくてだんだんとオレ達に会うことを忘れていたらしい。

 

「いや猫耳族って盗賊なの?」

「一応、法律では公認されているからたまに迷い混んでくるところを襲撃してる」

「なるほど。そうやって猫耳と尻尾をつけ、セクシーな服装で襲っていたと…………。まどか並の肉食系だこと」

「うっせぇ…………!」

 

顔を紅くしながらそっぽを向く杏子。

 

いやいや似合ってるぞ?

 

同じ水着のようなお腹を出した赤い服で猫耳と尻尾をつけているその姿は野良猫のような魅力を感じさせていた。

つけ耳とつけ尻尾をなのに違和感を感じさせないのはこいつの素材の良さが発揮されてることだろう。

 

オレがニヨニヨ笑っていると杏子は嘆息を吐いて言い出す。

 

「んで、アンタ達はなんでシリカに首輪をつけてるんだ?」

 

杏子が指さす通りシリカにかわいらしいハートの首輪がつけられていた。

 

「聞いてください杏子さん…………。この人達、私を人質にして族長と話をつけるとか言い出して、挙げ句の果てには首輪を付けられてしまいましたぁ…………」

「あー…………それはアンタの運の悪さだ。悪い、コイツらは次元が違うほどの鬼畜だからその首輪は取らせてくれないだろうな…………」

「そんなぁ…………!?」

 

シリカは涙目で杏子に助けを請うが哀れ、杏子は目を逸らす。キリトだけは頭を撫でるなりして慰めていた。

さすが色男、ヒューヒュー。

 

あと杏子、失礼だな。オレは人畜無害な少年だぞ。

 

「いやテメーも同じだからな、人外」

「解せぬ。まあなんにせよ。杏子を見つけたし、とっとここから出るぞ」

「いや…………アタシもそーしたいのだけど…………」

 

どこかバツが悪そうに返す杏子にオレはふと疑問を感じる。

それを答えるかのようにシリカが答えた。

 

「私達の掟で村長だけはこの集落を離脱できないのですよ」

「マジかよ。んじゃ、族長をやめさせる方法はないのか?」

「えっと村長を倒すことです。けどその村長を倒せば新たになる村長はその倒した人になります」

 

つまり、倒したヤツが族長になるってことだ。どうしよう、サクリファイスしか思い付かない。

 

「最悪キリトを生け贄にするか…………」

「オイこら。なにとんでもないこと言ってんだアンタは」

 

こちらを睨むキリトから目を逸らしているとシリカは「たぶんダメです」と言い出す。

 

なんでだ?

 

「男の人は村長になれないという掟なのですよ。この一族は女尊男卑という習わしがありますから」

「あー…………だから男だけ狙ってたのねー」

 

納得したところでオレ達は頭を悩ませる。このままでは杏子はこの集落から出られないし。

 

仕方ないな…………。

 

「そういえば嫁入りした人は村を出てるのか?」

「そうですね…………掟には嫁入りした者は村から出ることが義務付けられてますし……………………え? まさか…………」

 

それを聞いてオレはニタリと笑う。そして杏子に向かって言い出す。

 

「杏子、嫁に来い」

「へ?」

「「「はいィィィィィ!?」」」

 

オレの爆弾発言に三人の連れは驚くのだった。

シリカは「なんかヤバいことをやってしまった」という表情をしていたが。




おめでとう杏子。貰い手が見つかったよ。

はい、というわけでシリカ登場です。マスコットキャラでみんなの妹的な彼女ですが、ぼけなすワールドではキリトに続く第二の苦労人です。

哀れ、杏子に振り回されてやや諦め気味だったところでシンパシーを感じさせるキリトの登場で彼女に恋心は芽生えた――――かも?

まあ、真相はまだ秘密というわけです。

次回、決闘。

――――だてに魔女を一人で倒してないぜ、彼女は

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。