とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「とんでもないヤツらがこの世界に来た」

byキリト


第六十六話

(??サイド)

 

 

とある森の中で騎士甲冑を纏った兵士達と黒のコートを着た黒髪黒目の少年が黒い片手剣を構えていた。

 

キリト・ユウキは精霊部隊に囲まれていた。

 

彼は大切な幼馴染みを取り戻すために妖精の国に不法入国した。

だが、それを遮るかのようにこのように妖精の騎士達が現れ、戦いの毎日を過ごしていた。

 

捕まれば牢獄。最悪殺されることだってある。

 

だから彼はこのように戦っては逃げ、逃げては戦う毎日を過ごした。

そんなイタチごっこが一年間続き、遂に追い込まれてしまった。今は亡き、師に育てられたとは言え、精神的にも体力的にも限界は近づいていた。

 

「遂に追い込んだぞ『黒の剣士』!」

「同胞達の無念を晴らしてみせる!」

 

数は三十人前後。このままでは確実に捕まる。

 

キリトはそう思いながらも黒い剣を握る。

するとどこからかドアが現れ、そこから二人の少女と一人の少年が現れた。

 

「あのヤロー、よくも着替えを隠しやがって…………。おかげで変な服を着ることになって、みんなから爆笑されたじゃねぇか!!」

「ふふ、ソラ。かわいかったわよ」

「そうだねー。特に着ぐるみのソラくんってなんか新鮮だったよ♪」

 

こんな緊迫した状況の中で現れたのまだ自分と変わらない歳の少年少女達だった。

キリトは会話する三人に「ヤバい」と思って向けて警告した。

 

「おい、そこの三人! 早くここから逃げるんだ!」

「はっ! 今さら遅いぜ!」

 

そう言って精霊部隊の一人がピンクの髪の少女に羽を羽ばたかせながら向かってきた。

 

ピンク少女はそれに気づいて――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃっ、害虫」

「ぶげら!!」

 

 

顔面ワンパンで部隊の男を殴り飛ばした。それを見た三人以外の全員が目を丸くした。

それもそうだ。いかにも無害そうな少女がワンパンで兵士を殴り飛ばしたのだ。それも害虫と呼んで…………。

 

「うう…………ほむらちゃん、タオルない? 汚れが落ちないよー…………」

「かわいそうに。ほら、ハンカチよ」

「とか言いながらオレの服を差し出すな」

 

漫才している彼と彼女達に今度は二人の兵士達が少年に斬りかかってきた。

銀髪の少年はそれを見て嘆息を吐いた。

 

「やれやれ…………どうやら物騒なところにきたようだねー」

 

と言いながら斬りかかってきた兵士の一人を蹴り飛ばし、もう一人を殴り飛ばした。

その間、約三秒。

 

 

――――――――強い

 

 

キリトは純粋にそう思った。たった数秒で倒したこの少年は自分の同等…………いやそれ以上かもしれない。

 

さてと、銀髪少年は呟いて手を鳴らし始めた。

きっとここから決め台詞を吐くに違いないとキリトは期待していたりした。

 

しかし少年は、

 

 

 

「金目のモノ、全部だしな。さもなきゃ半殺し。出しても半殺しだけどな」

「追い剥ぎかよ!?」

 

その発言にキリトは思わず、ツッコんだ。

金目のモノを要求するヒーローなんていないしね…………。

 

 

 

(ソラサイド)

 

 

 

なんかドアから出てみたら変人達に襲われた。耳の先が長くて、羽が生えて飛んでいる種族なんて見たこと――――――――あ。あったわ。

前世の戦争でいたな、こういう種族。

 

確か妖精って種族だったな。

 

「何かしらこのハエと人間が融合した種族は」

「私は蚊と人間が融合したモノかと思ったよ」

「例えが最悪だな、オイ」

 

ちなみに返り討ちした兵士達を縛って身ぐるみを剥いだ。

財布もたんまりあって、よきかなよきかな♪

 

「というかソラ、この種族知ってるのかしら? モスキートじゃないの?」

「妖精という名前の羽が生えた全裸で踊り出す変態種族だ」

「どんな種族だよ! つーか、全裸関係ないし!」

 

兵士の隊長っぽい人がツッコむ。いや現にパンツ一丁だろお前ら。

 

「ふん、野蛮な種族がどういうつもりでこの地にきたのかは知らないが覚悟しろ。我々がやられても青き騎士と金色の騎士様が――――がふ!?」

「ごちゃごちゃうっせーな。とりあえず四天王フラグ立たせる前にこれでも食ってろ」

 

隊長っぽい人のうるさい口をタバスコの瓶で詰め込む。

 

「か、からァァァァァ!! ひさま、何を飲まへた!?」

「タバスコ。プレミア限定の『情熱の君へ』って言う商品だ。とある外道で愉悦の探究な神父も絶賛してたとか」

「ほんなもんのまへるなァァァァァ!!」

 

うるさいなぁ、とまどかはそう言ってどこからか取り出した鈍器で笑顔で頭を殴った。

端から見たらサスペンスだよこれ。

 

隊長っぽい人物はそれで白目を剥いて失神した。頑丈でよかったな、コイツ。

 

「さてと…………お前も財布だしな」

「俺もかよ!?」

 

今までスルーしていた黒髪少年に財布を催促する。

さもなければ、後ろの二人がカスペ的な現場を作り出すようだから。

 

「いやピンクの人はまだマシだけど黒髪の人はシャレになってねぇから! 銃を持ってる時点でマジ殺しだから!」

「見事なツッコミね。どうかしら? 私の第二の下僕にならない?」

「ならねぇよ!」

「残念ね。第一の下僕であるソラにお友達ができるチャンスだったのに」

「誰が下僕だ、ゴラ」

 

誤解を植え付けようとするほむらに呆れながらオレは黒髪少年に神器を向ける。

 

「今の聞いた話を無視して金だしな。こっちは無一文無しからのスタートなんだから、恵め」

「なんていう上から目線!? くっ、俺はここで立ち止まるわけには行かないんだ!」

 

と言って黒い片手剣を構える。

おやおや、やる気満々だねー。

 

「こっちも立ち止まるわけには行かないんでね。オベ…………なんだっけ?」

「オベイロンのところよ。そこにマミさんがいるって女神のメールにあったでしょ」

 

あ、そういう名前だったな。

オレが納得していると彼は構えを解いた。どうしたんだ?

 

「いやアンタもそこに行きたいって言うならお願いしたいことがある。俺もそこに連れて行ってくれないか?」

「どういうことだ、黒髪少年」

「黒髪少年じゃなくてキリトだ。そういうアンタは?」

「神威ソラだ。それでこっちの髪も頭の中もピンクなのが朱美まどか。そこの黒髪でドSな発想ばかりしているのが朱美ほむらだ」

 

そんな自己紹介をするとまどかとほむらがブーブー文句を言ってきた。

 

「失礼な。私のどこがピンクなの? 私はソラくんと淫らな関係になりたいだけだよ?」

「まどかの言う通りだわ。淫らでおもちゃな関係になりたいのよ私達は」

「どのみちピンクだしドSじゃねぇか」

 

オレは呆れているとキリトは「なんかわかってきた」と呟いた。納得してくれてお兄さんは嬉しいです。

 

「俺の目的は幼馴染みを取り戻すことなんだ。だからそこへ行きたいんだ」

 

キリトの話によれば幼い頃、一緒に過ごしていた幼馴染みはこの国の王女様でどうやらオベイロンによって無理矢理婚約させられたらしい。

オベイロンはそれなりの有力な貴族のため、この国の現王――――アバロンも認めているらしい。

 

「んで、その婚約をぶっ壊したいと?」

「ああ。アスナを取り戻したいんだ。…………やっと両想いだとわかったのに」

 

ほうほう、これは身分違いというか種族違いの恋ですなぁ。

まどかやほむらも口元を隠してニヨニヨしていた。恋バナは女性にとって蜜の味です。

 

「だから頼む! この通りだ!」

 

土下座するキリト。異世界でも土下座は共通なのだろうかとふと思っていたりする。

 

当然、オレ達の答えは決まっている。まどかやほむらもオレに向かって頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

「ええ!?」

「いや当たり前だろ。初対面に何お願いしてるんだよ」

 

真摯なお願いが必ずしも通用すると思わないことだね、お兄さんや。ガックリしたキリトに向かってさらに言葉を続ける。

 

「しかし困ったなぁー。オレ達妖精の国の地理とか知らないしー」

「そうだねー。来たばっかりだしー」

「よーし、そこにいる黒髪のお兄さんに付いて行こうー」

 

まどかとそういう棒読みな会話するとキリトは顔をあげて目を丸くする。

 

「ということでオレ達がお前を連れて行くんじゃない。お前が『オレ達を連れて行くんだ』。だから案内しろ。指示くらい聞いてやるから」

 

オレは最後にそう言って剥いだ身ぐるみを整理し始めた。

 

「えっと…………つまりどゆうこと?」

「鈍いわね。要するにあなたに協力するから衣食を保証しなさいってことよ」

「そうなのか? 俺はてっきり…………」

「断れたと思ったでしょ? 当然よ。ソラは見ず知らずの人を助けるほどお人好しじゃないわ。だけど、目の前であんなに助けを求められたら無視するほど落ちぶれてないわ」

「ソラくんはツンデレキャラだからねー♪」

 

オイこらまどか。誰がツンデレだ。

オレは単にマミさんへの最短距離へ行けそうな人材がほしくてキリトに頼んだだけだ。

 

「とか言って実は衛くんの面影を思い出したんじゃないのー?」

「ぐっ…………」

「図星だね♪」

 

ニッコリ笑うまどかにオレは目を逸らした。…………くそ、図星付かれて恥ずかしいな、全く。

 

するとほむらが手を叩いてこちらを向けるように催促する。

 

「はいはい、ストロベリーな空間は宿屋でしてちょうだい。あ、ソラは後で私の部屋に来なさい。たっぷりお仕置きしてあげる」

「解せぬ。まあ、なんにせよキリト。道を案内してくれ。お前今まで逃げてきたけど、ちゃんと前に進んでいただろう?」

「ああ。任せろ!」

 

こうしてオレ達の異世界の冒険が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それよりこの兵士達どうするつもりだ、ほむら?」

「とりあえず放置よ。そして鼻にワサビ塗ってあげなさい、まどか」

「ティヒヒヒ、まっかせさーい♪」

「さすが鬼畜姉妹。アフターケアが半端ねぇ」

 




はい、というわけでオリジナル要素を加えた『ソードアートオンライン』のキリトくんです。
一応、ソラがいる世界はゲームではなく異世界というリアルです。

仮に異世界の出来事だったらなぁと思って今回の話を考えました。キリトくんは変態化しませんので安心してください。

…………ヒロインは知らないけど。まあ、千香さえ現れなければ丸く収まるはずです。

そんなわけで次回も楽しみにしてください。

次回、猫耳族の邂逅

――――どんな部族だよ…………
byソラ

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