とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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連続投稿。そして久しぶりのリリカル組です。

ではどうぞ。

「私達は探すべきやなかった。思い出は思い出という美しいままで残すように、現実では求めたらアカンやったんや」

by八神はやて


閑話 なのはちゃんがなのはさん――――じゃなかった『なのは様』に変わるまで

(はやてサイド)

 

 

ソラくんがここから去ってから一ヶ月後、中学を入学して楽しく過ごすはずの私達だったが、なのはちゃんだなけは病院にいた。

 

理由は天宮草太を捜すためにあらゆる任務をこなしていた。

 

小さな情報でも彼女は天宮草太に関すること全ての任務へ没頭していた。しかし、休み無しのぶっ通しな毎日のため徐々に疲労が溜まり、そしてその任務帰りにアンノウンに襲撃されて――――墜ちた。

 

重傷を負った彼女は目を覚ますことなく、未だに眠りについていた。

フェイトちゃんはその看病のため、仕事帰りに毎日寄っていた。そのため、昨日行われた執務官の試験が落ちたそうだ。

 

悪いことばかりで私は思わずため息を吐いてしまった。

 

私は現在、衛くんと一緒に病院にいた。なのはちゃんの様子を見るためにや。

 

成長してからの衛くんは普段は細い身体に見えるが脱いだらすごい。極めつけに大人モード(マッスルモード)はモリモリや。筋肉がビッシリやったで。

中一でこれだけの筋肉ある男子はそんなにいないやろな。

 

ちなみに私達も成長しとる。一番成長しとったのはフェイトちゃんやな。

なんやねん、あのおっぱい。うらやまけしからんから何度も揉んだで。

 

柔らかさ弾力は素晴らしかったと言っておこう。

 

 

さて、話を戻すで。私は花瓶の花を替えるためにいつもの花束を持っているが、衛くんは月刊『マッスラーズ』という謎の雑誌を持っていた。

もしなのはちゃんが目を覚ましていたら渡すつもりらしい。

 

オイこら。なのはちゃんを筋肉フェチにするつもりか、あんたは。

 

「何を言う。筋肉こそがあらゆる病魔に対抗できる人間の武器だぞ!」

「知らんがな。てか、絶対なのはちゃんは筋肉信者にさせへん。あんたが捕まえた犯罪者達のような信者にさせへん」

「彼らの事情聴取に我の演説を聞かせただけだぞ」

「それで刑務所が筋肉を育てるジムへ変換したことを忘れてへんか?」

 

そんな劇的ビフォーアフターは嫌やで。この間、その刑務所行ってダイナマイトボディの署長を見たときはビビった。

 

すごく逞しい胸筋やったと追記しておく…………。

 

私はまたため息を吐きながら、親友の病室を開けた。

 

「なのはちゃん、起きとるー? ってまだ寝とるから仕方――――」

「あ。おはようはやてちゃん」

「――な……い、で。…………へ?」

 

なのはちゃんは起きていた。ミイラのように包帯が包まれているが、しっかり起きていた。

そんな……これは、まさに――――

 

「筋肉だ!! 筋肉が高町を起こしたのだ!」

「んなわけあるかい、ドアホ!!」

 

せっかくの感動を台無しにしたアホにツッコむ私だった。

 

 

☆☆☆

 

 

なのはちゃんが目が覚めたが彼女の傷はリンカーコアにまで影響していた。

もしかしたら、もう魔法が使えなくなってるかもしれないという可能性があった。

 

なのはちゃんはそれを聞いて絶望した。私達がお見舞いに来る度に痛々しいくらいの作り笑顔で出迎える毎日だった。

 

こんなときに天宮くんがいたら、どうしたんだろうと時々考えてしまう。

 

私は放課後の屋上で、天宮くんならなんとかしたんじゃないやろかと衛くんに聞いてみた。

 

「さあな。結果は違うかもしれぬが高町は変わらぬままだろうよ。高町は我が友曰く、『臆病者』だ」

「なのはちゃんが臆病者? でもなのはちゃんって……」

「戦うときは勇敢に見えるが、それは彼女の廻りに仲間がいたからだ。ヤツはそれを失うことを恐れて、真っ先に自分から誰かを守ろうとしていた。つまり、逆に言えば、誰かが自分から離れることを恐れているのだ」

「私達は別に離れていくつもり…………」

「ない、だろうな。しかし、高町はそうとは思えぬ。なぜなら、彼女は知っているのだ。いや、植え付けられていると言ってもいいだろう。彼女は『孤独』という寂しさを知っている。さらに『死』という予想外な形で離れていくことを知っている。士郎さんが一時期大変だったことを踏まえて、な…………」

 

反論できへんかった。私も孤独を知っていたからや。

 

 

――――寂しいことは辛い

――――誰かがいないということは空しい

 

 

孤独は人を弱くさせるモノやった。マミさんもそういうことを話していたことがあった。

あの人も理解者がいない毎日を過ごしていたみたいで孤独やった。

 

誰もいないということはとても悲しくて寂しいことや。

 

「ヤツは魔法があるから自分を見てくれる、認めてくれると勘違いしている。魔法の依存から抜け出さない限り、ヤツはあのままだろうよ」

 

衛くんはそう言って青空を見ていた。まるで、誰かを想っているように見えたのは私は気のせいじゃないと思った。

 

 

☆☆☆

 

 

それからさらに一ヶ月後。なのはちゃんは何かを決意してリハビリを始めた。

原因はフェイトちゃんの激励だった。

 

 

『立って前を歩け。あなたには立派な足があるじゃないか』

 

その言葉になのはちゃんに火がついたんじゃないかと桃子さんは言っていた。

衛くんの言った通りに魔法の依存から抜け出せていないようだけど、私はこれでいいと思う。

 

なのはちゃんが元気になればいいと思っていたからだ。けど、衛くんは微妙に不満そうな表情だった。

どうも彼としては根本的な解決がまだじゃないのかと思っているようだ。

 

まあ、あんまり気にしていないそうやったし。

 

それから中学三年になったある日、遂に天宮くんの情報が入ったそうだ。

彼がいる次元世界を管理局は発見したそうだ。

 

なのはちゃんとフェイトちゃんはその情報を頼りにその世界に向かったそうだ。

 

なのはちゃんはまだ万全に魔法が使える状態ではないため、一応衛くんも護衛として一緒に行った。ちょっとなのはちゃんに衛くんを取られることを嫉妬したけど、彼女達の初恋の人が見つかってホンマによかったと思うわ。

 

私は彼らが喜んで帰ってくると期待した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが――――それが――――失敗やと、気づいて――――いなかった……………………

 

 

なのはちゃんは天宮くんを迎えに行った翌日、再び入院した。身体は無事で、リンカーコアは影響もない。

 

問題はどこの病院に入院したかという話だ。

 

 

まさか…………まさか精神科の専門病院に入院するとは思わなかった…………。

 

フェイトちゃんも同様だった。しばらく入院という名の引きこもりとなり、病室から出てこなかった。

 

おまけに天宮くんを迎えに行った局員全員が心を病んで精神科に入院した。いわゆる鬱状態やった。

 

唯一無事やった衛くんに事情を聞いてみた。

すると、彼は言った。

 

「…………我はホントに筋肉バカでよかった。あれは常人にはキツすぎる…………」

 

ホンマに何があったんや!?

 

思わずそうツッコむと衛くんはとある写真を見せてくれた。どうやら天宮くんがいる次元世界の写真だった。

 

私はそれを見て理解した。

 

 

…………なのはちゃん、ご愁傷さま。

 

その写真に写っていたのは変わり果てた天宮くんやった…………。

つまり、なのはちゃんは予想の斜め上をいく失恋をしたんや。

 

 

閑話休題

 

 

なのはちゃんが退院してから私と衛くんは病院の屋上に呼び出された。フェイトちゃんは未だに引きこもりなっている。

なんか、怪しい漫画を集め始めているとクロノくんは言っていたが、私にはどないしようもない。あんなトラウマを見せられたらしばらく放って置きたいで。

 

「はやてちゃん、私ね。気づいたの。私にとって魔法がどういうものかを」

「なのはちゃん、もしかして…………」

 

変わり果てた天宮くんの再会という失恋で彼女は自分にとっての魔法がどういうことなのかを悟ったようだ。

私は衛くんに言った通りに気づいたことが嬉しかった。

 

しかし、肝心の衛くんは無言で目を瞑って腕を組んだままだ。

 

「私にとって魔法はね…………」

「うんうん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「快楽を得るモノだったのぉ…………♪」

 

……………………え?

 

今、彼女はなんと言ったのか理解できなかった。

私はもう一度聞くと、恍惚した表情で彼女は語りだした。

 

「私は魔法で空を飛ぶことが好きだったけど、最近になって誰かを撃ち落とすことがもうサイッッッコウに楽しくなってたんだ! それには最初は否定していたよ? そんなのおかしいから。

 

――――でも砲撃を放つ度の爽快感がだんだんと堪らなくなってきて否定するのはもうやめたよ! 神威くんが言ってたように私は変わろうと思うの!」

「なんでやねん!」

 

なのはちゃんの『私、生まれ変わります宣言』にツッコむ。予想の斜め上になっておった!

 

しかもこれからのことを考えるととんでもないことをカミングアウトしとった!

主に犯人確保の方面で!

 

「なんでそないなこと考えるようになったんや!?」

「天宮くんを撃ち落としてから。――――スカッとしたなぁ♪」

「だろうね! いろんな意味で!」

 

まさか失恋でなのはちゃんがおかしくなろうとは思ってもみなかった。

こんな形で変態が感染するとは思わなかった!

 

「あははははは♪ これからもバンバン撃ち落とすよ。楽しい楽しい砲撃の始まりなのです、にぱー☆」

「なんか知らへんけどなのはちゃんが変になったァァァァァ!?」

 

なのはちゃんの後ろに角が生えた巫女のスタンドが見えた気がした。しかも『あぅあぅ』と唸っているし、頼りない。

 

私が愕然している中で、衛くんが肩を叩いて言った。

 

「ようこそ、イロモノワールドへ」

「やっかましぃわボケェェェェェ!!」

 

私のシャウトが綺麗な青空に響き渡るのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、フェイトちゃんが退院したとき彼女もまたなのはちゃんと同じように私達を呼び出した。

 

――――そのとき彼女がショタとロリに目覚めていたとは思いもしなかった…………。

 

 

 




オリ主がどうなっていたのかは次の異世界編の終盤で判明します。
てか、なのはちゃんがなのは様になるほどの変わり様って。

何が起きたんだ、いったい…………。

ちなみにオリ主くんの世界は管理局では干渉禁止世界になりました。次元初のそんな世界が管理局が干渉し続ければ人類ニューカマー計画というモノが誕生してしまいます。

ある意味悪夢だよ、これ…………。

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