とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「絶望なんかさせない」
「オレ達はそのためにいる」

by『とある神器使い達の決意』より


第六十二話

(??サイド)

 

 

暁美ほむらは自身の魔法で鹿目まどかを閉じ込めた。

 

一種の時間結界なモノだが、しばらく経てば消えていくだろう。

なぜ彼女がこのようなことをしたのかは明白な理由がある。

 

 

 

――――これ以上、彼女を危害を加えさせないために

――――この事件を決着をつけるために

 

 

 

そして…………来るべき災厄を乗り越えるために、彼女を生きて帰すために――――

 

 

「私はここにいる」

 

 

自分にそう言い聞かせて彼女は扉の奥へ進む。

 

ここに魔女がいるのかしら、と彼女は思っていると、目の前には二人の少女がいた。

美国織莉子、呉キリカ。

 

彼女のたった一人の友人を狙う敵だった。

 

「ようこそ」

 

美国織莉子は暁美ほむらを歓迎するようなことを言い出すが暁美ほむらの表情は変わらない。

 

「この魔女結界を解きなさい。あなた達が関与しているのでしょう?」

「何のことかしら?」

 

惚ける美国織莉子に暁美ほむらは沈黙しながら、あるモノを仕掛けた(・・・・・・・・・)

 

ボンッ!

 

彼女が得意とする爆撃である。当たれば確実に亡き者にする。

 

「あらあら怖い子ね。はじめから話し合うつもりなんてなかったでしょう?」

 

しかし爆撃に巻き込まれず、美国織莉子と呉キリカは健在していた。再び時間魔法と爆撃で仕掛けるが。

 

 

――――当たらない?

 

 

不可解な現象に暁美ほむらは目を見張る。

そんな彼女に美国織莉子は口を開く。

 

「貴女のことは知っているわ。

 

 

 

 

 

 

 

――――あの場所に居た子。世界の終末に」

 

暁美ほむらの表情が変わる。

 

この女、なぜこのことを?

彼女はそう考えていると美国織莉子は話を続ける。

 

「私は何度も繰り返しあれを視ては現在(いま)を動かし、世界を救う方法を探した。――――そしてあれが何であった(・・・・・・・・)のか知った」

「……それが、それが理由で学校に結界を敷いたの?」

「驚いたわ。あなたは『あの場所にいた』貴女なのね」

 

そう答えると暁美ほむらは今度はグロックを取り出して美国織莉子に向けて放つ。

 

「ならば私の話が理解できるでしょう。終末を避けるため、世界を救うため鹿目まどかを排除する!」

 

しかしそれは呉キリカによって防がれた。暁美ほむらの返答とも呼べるその行動に美国織莉子は嘆息を吐く。

 

「あれを見て尚、鹿目まどかを諦められないのね。残念だわ」

 

暁美ほむらの決意ある目は変わらない。

すると美国織莉子は別の方角を振り向く。

 

「あら。新しいお客様が来たわ。貴女方は私とお話ししてくださるのかしら?」

 

三人の少女――――巴マミ、佐倉杏子、千歳ゆまが現れる。

 

「おかしいわね。どこにも魔女の姿がないわ」

「知ったことかよ。織莉子を倒して終いだが! そうはいかないわ。まずこの結界をなんとかしなきゃ」

 

巴マミと佐倉杏子は意見のぶつかり合いを始めて千歳ゆまはオロオロし始める。

それを見て美国織莉子は涙を浮かべる。

 

「……なんだい。今更べそをかいてごめんなさいってか?」

 

佐倉杏子の問いに美国織莉子は答える。

 

「…………可哀想にあの嘘吐きに騙されて真実に耳を貸そうとしない――――哀れな子達」

 

美国織莉子はそう言うと呉キリカは口を開いた。

 

「四対か…………いや、あの鬼畜相手にも勝てなかった私は足手まといかな」

 

――――魔法少女のままじゃね

 

その言葉に暁美ほむらと美国織莉子は気づいてしまった。呉キリカは続けて言い始める。

 

「そろそろだ織莉子。もう私は結界が張れるくらい引っ張られて(・・・・・・)るのだから」

「…………っ!」

「大丈夫。私は何になっても決して織莉子を傷つけたりしない」

 

その言葉に暁美ほむらは確信した。

 

(まさか…………この結界を作っているのは)

 

呉キリカは最期の言葉を吐き続ける。

 

「いや、むしろこうなることでキミを護ることができるならば、私は――――――――安らかに絶望できる!」

 

呉キリカのソウルジェムが飛び出し、そこから現れたのは――――――――魔女。

 

「キリカ、真に絶望するのは貴女じゃない。真実を知るあの子達よ」

 

目を瞑れば彼女は思い出す。

 

議員の娘である美国織莉子の願いは自分の生きる意味を知りたいということだった。

彼女に張られたレッテルのせいでいつも彼女は『美国』の娘で個人として見られていなかったのだ。

 

そして最悪なことに父親が汚職して自殺という最低最悪な結末により、彼女の信頼も失墜し孤独な毎日を過ごすこととなった。

 

そのとき現れたのがキュゥべぇだった。キュゥべぇは絶望した彼女に希望を与えて、それからまた絶望に落とせばいいという合理的な思考で契約に迫ったかもしれない。

 

美国織莉子はキュゥべぇと契約し、そしてこの世界の結末を知った。

 

(この世界を終わらせない。私が生きている理由――――――――それはこの世界を救うことだ)

 

そう思いながら彼女は絶望した少女達の姿を――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へーああやって魔女になるんだ」

「なんかヤダなー」

「佐倉さん、魔法少女が魔女になること知ってたの?」

「まあな」

「そうだよー♪」

 

 

 

――――訂正。絶望せずに談義していた。

 

「なんで絶望してないの貴女達!?」

 

もはやツッコまれずにはいられなかった彼女は三人娘の答えに耳を疑った。

 

「神威ソラと朱美ほむらのお話しを聞いて」

「同じく。アタシの場合、見滝原中学校に行く時に」

「あ、ゆまもキョーコと同じく」

 

まさかのあの少年が関与していたとは誰も思わなかった。

そしてそれを聞いた暁美ほむらは「またか…………」と呟きながら手で顔を覆う。

 

「それより魔法少女から普通の少女に戻れるって聞いたけど、アタシはヤダなー。この力、便利だし」

「あら。なら、うちに居候すればいいわよ。家事を覚えてアルバイトさえしていればうちに居させてあげるわ」

「ええー? 働くのかよー…………」

「働かざる者食うべからずよ。あ、ゆまちゃんは叔父にお願いして小学校くらい通いさせてくれるはずだわ」

「キョーコと離れないならそれでいいよ!」

 

「ふざけないで!」

 

と後の生活について話し合う三人娘に美国織莉子は声をあげた。

 

「魔法少女を元の少女に戻せる? そんなご都合主義があるわけないじゃない!」

「いや現に経験したとか言ってたぞアイツ」

「というか今の私、この力は魔力じゃなくて生命力で発動しているのよ。ちょっと目眩が…………」

「オイオイ、大丈夫かよ」

 

巴マミは疲れていそうな顔で佐倉にもたれかかる。

それを見た美国織莉子は愕然とする。

 

「なんなのよ…………なんなのよ貴女達! どうして絶望しないのよ!」

 

絶望して魔女になった呉キリカのこともあってか、彼女は声を荒げた。

すると千歳ゆまは口を開いた。

 

「ゆまはね。この事実を知ってね。いつかは魔女になるんだって思ったんだ。だけど、お兄ちゃんが言ってくれたんだ。

 

 

『いつかは今じゃない。人はいつか死ぬんだから、最期には笑って過ごせるようにしようぜ』って。

 

 

その言葉にゆまは励まされたよ」

「あ、アタシも」

「私もよ。ほむらさんに慰められた後に言われたわ。いつも思い出しておけって。あの人、意外にお人好しじゃないかしら?」

「あ、なんかゆまもわかる!」

 

そう言って三人娘は笑顔を浮かべる。もはや彼女達には絶望という言葉はない。

 

希望に満ちあふれていた。

 

 

 

「…………誰がお人好しだ。オレはそんなもんじゃねぇよ」

 

 

不服そうな声がした時、そこには神威ソラと朱美ほむらがいた。

 

「たくっ、あの小娘共。人がせっかく普通に戻してやったのにギャーギャー喚きやがって…………一人くらい魔女にしてやろうか!」

「とか言いながら一人残らず戻したくせに、全く相変わらずのツンデレねソラは」

「はいはい…………ツンデレで悪うございました」

 

軽口を言い出しながら彼は続けて美国織莉子に向かって言い出す。

 

「やっと追い付いたぞ美国織莉子(・・・・・)。お前にたどり着くにはちょっとここの生徒を犠牲を出しちゃったが、追い付いたからには逃がさねぇよ」

 

神威ソラと朱美ほむらはそれぞれの得物を構えて言い出す。

 

「ここから先は私達のゾーンよ」

「ここに入ったら、オレ達のルールだ。とっと終わらせてやるから覚悟しやがれ」

 

 

この物語にもはや悲劇はない。

ましてや、喜劇というわけでもない。

 

ただあるのは――――英雄とその相棒が行う化け物退治である。

 




英 雄 参 戦!!

もはやこれは『魔法少女おりこ☆マギカ』ではない何かです。
ソラ達をぶち込むだけでここまでカオスになるとは思ってもいませんでした(ゲス顔)

次回、決戦開始。

――――新たな魔法。それは絆の魔法。

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