by杏子
巴さんのお宅で一泊してからオレはほむらと分かれて行動していた。
今日はバラバラで行動して情報収集するらしい。
ちなみに白いナマモノらしきものがベランダに見ていたらしいが、ほむらが駆除したそうだ。
巴さんに気づかれず、サイレンサーを使っての暗殺にしたほむらに恐怖を覚えたのは気のせいではない。
いつかヤンデレ化して、知らぬ間に撃たれそうだもん。
現在オレは公園でブラブラしていた。
「はっ、しまった。今日はロッキー春限定のイチゴ味の発売だ。なんてこったい。このままでは売り切れてしまう。といわけで佐倉たん、アディオス」
「待ちやがれ。誰が佐倉たんだバカ」
襟首を掴まれて逃げれなくなった。なんかブラブラしていたら、佐倉に見つかり絡まれた。
財布は五百円しかないぞ。カツあげするなら他を当たれ。
「財布が狙いじゃねぇよ。キュゥべぇが言ってたイレギュラーのお前と話があってきたんだよ」
「話?」
佐倉曰く、どうやら美国なんたらさんとは因縁があるらしく、その情報を提供してくれと言っていた。
「なら、お菓子よこせ。トリック・オア・トリートだ」
「いやギブアンドテイクだろ、そこは」
などと美国の情報を提供していると「キョーコー!」と幼女が佐倉にトテトテと走ってきて飛び付いてきた。
佐倉はやれやれと仕方なそうに頭を撫でてあげていた。
馬鹿な…………そんな…………。
「いつも腹を出しながら寝ていて、全自動料理処理機で、女性らしさのかけらもないあの杏子が一児の母親だと!?」
「いろいろツッコミたいところがあるが、まず言っとくけど、アタシはまだ子ども産んでねぇよ!!」
「なん…………だと。義母だと!? お前はこれ以上属性を増やすつもりか! あの変態を萌え殺すつもりか!」
「ねぇショウコ。もえってなあに?」
「ゆまもこいつのデタラメを耳を貸すな! つーか、余計なことしゃべってんじゃねぇよテメー!」
佐倉はゆまという少女との関係を話してくれた。
なんでも彼女は家族と魔女結界に囚われ、両親を目の前で喰い殺されたそうだ。
普通の少女ならば、泣きながら親戚に預けられることになるそうだが彼女は違った。
――――――――ドメスティックバイオレンス
両親の愛を受けず、虐待されていたのだ。しかも親戚などおらず、誰も彼女を引き取るところはなかったそうだ。
だから彼女は両親が殺されても泣かなかった――――
だから彼女は捨てられることを嫌がった――――
役立たずという言葉に敏感だと佐倉は語っていた。
「ふーん、で? 哀れだと思った佐倉は引き取ろうと思ったわけね。なかなかいい話じゃないか」
「…………テメーはなんとも思わないのか?」
「まあね。他人の家庭なんてどうでもいいし。ましてやオレは育て親に対して良い感情はない」
オレも拒絶されて捨てられた身だからな、と最後にそうしめた。
佐倉は沈痛そうな表情をしていた。地雷を踏んだと思っているそうだが、別にそうは思えないけどな。
オレとしてはもうどうでもいい過去なのだから。
「お兄ちゃんもいじめられてたの?」
「いじめられてないさ。オレが勝手に化け物になって帰ってきたら、拒絶されただけさ」
「そうなんだ」
「そうなんだよ。だからこのお話はおしまい。このお姉ちゃんに美国オリゴ糖の話をしなきゃいけないんだから、お嬢ちゃんは待っててくれ」
「むーお嬢ちゃんじゃないもん。ゆまだもん!」
ゆまちゃんがそういうと佐倉は驚愕した顔でオレを見ていた。オレなんかしたのか?
「驚いた…………ゆまは人見知りするヤツだから初対面のお前には心を開かないと思ってたけど」
まあ『開ける』ことが得意だからなオレは。
そんな感じで、ゆまちゃんを交えて美国オリゴ糖の話をするのだった。
「後、オリゴ糖じゃなくて織莉子だから。糖分じゃなくて人だからなソイツ」
えっ? そうなの?
また間違えたのオレ?
☆☆☆
集合場所にほむらと再会したオレはまずしたのは情報交換だった。
鹿目家は相変わらずで、志筑仁美も変わらずいた。
それからオレは佐倉とゆまちゃんについてほむらに話した。
「まさか、ここの佐倉杏子が子持ちとは。さすが外史。予想の斜め上をいくわ」
「いや違うから。義母的ていうか義姉的ポジションだったからな」
「ソラ、負けてられないわ。今すぐあなたと合体したい」
「そんな機能ないからな? てか、お前創世記のロボットアニメ見ただろ」
「ここの私の家にDVDがあって。私、見たことなかったからつい…………」
人が一生懸命情報収集しているのに、こいつと来たらどうも暁美の家で志筑、美樹、鹿目を含めた暁美と一緒に合体アニメを見ていたそうだ。
とりあえず軽く注意するとシュンとなるほむらに萌えを感じてしまった。
しかし、あやつ合体アニメを見ていたのか。ほむらはそんなアニメ見たことないようだから新鮮なことだったに違いない。
「合体という単語にまどかのことを妄想してしまったは」
「ナニを妄想したのかあえて聞かないとして、それであの眼帯少女と美国…………みくに…………なんだっけ?」
「織莉子じゃないかしら?」
「あ、そんな感じ。そいつらに会った?」
「会ったら今度こそバズーカ砲で一掃してやったのに、全然来なかったわ」
ほむらは悔しそうに顔をしかめる。
言ってることがめちゃくちゃ物騒だなオイ。
えっ? オレも?
ハテ、ナンノコトヤラ。
「とにかく、まどかの情報は無しってことか…………やれやれどこにいるやら」
オレは背を向けてぼやいているとほむらがオレに声をかけた。
「この世界のまどかは…………いなくなることはないのよね?」
「…………わかんねぇ。外史は正史と違って抑止の存在や世界のルールがないんだ。たぶん、オレ達が介入しても鹿目まどかが死ぬことはないと思う」
「じゃあ!」とほむらが咲く花のように笑った。
平行世界とは言え、彼女が死ぬことは許されないようだ。
「ま、目的は変わらずまどかを捜すことだ。何か手がかりはなかったか?」
「ないわ。…………でも」
「でも?」
「こっちのまどかの純粋さに癒されたわ」
「仕事しろや」
否定はしないけどな、それは。どこに置いていったんだろうあの純粋なまどかは。
こっちのまどかとトレードしたいと思う時もある。昔のお前らが恋しいよ。
…………でも、まあ今も嫌いじゃないけど。
「ふふ…………ツンデレね」
「うっせぇ。とにかくまだまだ散策するぞ」
「はいはい♪」
まるで弟を見守る姉のような彼女の微笑みに照れながらオレは先へ進む。
…………いつものように明日を求めるように。
「あ、今日の寝床どうするか決めてないな」
「よし、まどかのお宅にこの巨大シャモジで突撃するわよ」
「いやするなよ。普通に迷惑だから」
どこからとってきたんだ『突撃テメーの晩ごはん』という巨大シャモジ。
という平和な一日を過ごしました。ちなみにこのあとホントに鹿目家に突撃して、ほむらのたくましさに詢子さんが気に入って一泊したそうです。
ソラが鹿目パパに同情されてましたが。
いやいや、逞しいねー最近の女性は。
次回、決戦見滝原中学校
――――さあ、カオスな授業の時間だ