「――――そして役者は揃い、物語は歪曲する」
杏子達の居候場所は自宅でした。
いやマジで。
嘘だドンドコーと言いたいくらい事実だった。
まさか帰ってきたらマミさんとさやかが優雅に紅茶飲んでるとは誰も思わないわ。
「ソラは渡さないわ。ソラは私とまどかのおもちゃよ、美樹さやか!」
「友江さやかって言ってるでしょ!! こっちこそソラはあたし達友江家のものよ!」
「よろしいならば戦争よ」
「上等。かかってこい」
青筋を浮かべて、第一次ほむさや大戦勃発。
いや頼むから神器を出さないで。家がぶっ壊れるから。
「はい、ソラ君あーん」
「一人で食べれるから、マミさん」
「お姉ちゃんって呼んでいいわよ?」
「いえ、結構だから。というかまどか、膨れっ面でオレの首を締めないで。地味にキツい…………」
まあなんにせよ。
「カオスだなこりゃ」
杏子がツッコむか。
閑話休題
「マミさんは『結んで開くリボン』。さやかは『無限の音楽』か。ピュエラ・マギ・なんちゃらの頃の魔法少女が勢揃いだな」
「ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテットよ!!」
「マミさん通常運転だなオイ。なんかマミさん達も聖佯行くとか言ってたけどホント?」
「ええそうよ。私が一年上で、さやかさんと杏子さんが別のクラスだそうよ」
「マミさんが名前で呼ぶのってなんか新鮮」
「仕方ないさ。同じ友江だし。ぶっちゃけ女神がめんどいからひとくくりしたって言ってたし」
「なんとアバウトな……………………」
せめて考えてほしいな。まあ今となってはどうでもいいが。
「ちなみに名前で呼ぶのに何度も噛んでたぞ」
「し、杏子さん!」
「マミさんで萌えることになろうとは」
「わかるよほむらちゃん。これがギャップ萌えだね!」
「いろいろ台無しだよコノヤロー」
そんな軽口をたたきながらオレ達の夜は過ぎる――――
まさか、マミさんが就寝のときに夜這いしてくるとは思わなかったが。
☆☆☆
翌日、朝からなんかオリ主くんに呼ばれた。
スルー。めんどいから。
昼休み、オリ主くんに呼ばれる。
スルー。ウザいから。
放課後、マミさん出現。
逃げる。さやかが現れた。
窓から飛び降りる。杏子がロッキー食ってた。一本もらった。固い。
「無視するなっ!」
ロッキー食ってたらオリ主くんが現れた。あ、まだいたんだ。
「当たり前だ! お前に聞きたいことが――――ぐふっ!?」
言い切る前に杏子が右ストレートを与えた。なんでこんなことしたんだ?
「ヘタレっぽいのに態度がえらそうだった。殴ったことに後悔してない」
いや笑顔でサムアップして答えるもんじゃないだろ。第三者から見たら殴ったサイテーな人間じゃん。
「大丈夫。痴漢されたって言えばアタシが正義になる!」
「黒ッ! 黒いよお前!」
「ところで痴漢ってなんだ? 電車でよくポスターで見るけど」
「違った。まさかの純粋無垢!?」
「よろしい。この変態の婦人。千香ちゃんがご教授承ろう!!」
「一番教えてほしくないヤツが現れた!!」
場はカオスになったのだ。杏子と千香を連れて逃走した。
☆☆☆
逃走したオレと千香、杏子は公園に来ていた。海鳴の公園は普通に良い場所だ。
ジャングルジム、ブランコ、シーソー。
そして巨大な犬のオブジェ――――――――あっれー?
「おかしいな…………。なんかグルルって唸るオブジェってあったっけ?」
「リアリティーあるオブジェだねー。これ創った人は神だよ」
「呑気なこと言ってる場合か! ジュエルシードだよ!」
杏子のツッコミで正気に戻ったオレ達は神器を召喚した。
「そういえば犬って食えたっけ?」
「食うつもり!?」
千香の爆弾発言に戦慄を覚えているといきなり、電撃が犬に直撃した。
犬は元のサイズに戻り、ジュエルシードを落とした。
誰だかわからないが封印してくれて助かる。
オレはジュエルシードを拾おうとしたとき――――――――って電撃がこちらにもきた!?
「守護せよ」
千香の神器『守護神の壁』が発動し、半透明半円がオレを守る。
「ありがと千香。助かった」
「いえいえ。しっかし、いきなり攻撃するなんて物騒な女の子だこと」
千香が言う少女はスクール水着のような衣装を纏った金髪で同い年の女の子だ。うん、一言言わせてもらおう。
スゥーハァー深呼吸して、
「変態だァァァァァ痴女がいるゥゥゥゥゥ!?」
「違います! 初対面でひどいですねあなた!」
「ヤベー、あんな服装で見られたらアタシ間違いなく引きこもるわー。あいつの変態力はパネェぞ」
「うんうん、同士がいて千香ちゃん感激! しかも美少女! ゲヘヘヘヘヘ…………夢が広がるのぉ」
オレと杏子にドン引きされ、千香には視姦されてしまいついに痴女は「違うのに…………」と半泣きしてしまった。
ザマァと思ったオレは外道じゃない。いきなり攻撃したお返しだコノヤロー。
「うちのご主人様をなに泣かしてんだい!!」
傍らにいた犬が怒鳴ってきた。普通は「犬が喋った!」と驚くところだがオレ達は違う。
「ソラあいつ捕まえようぜ! サーカスに売れば儲けられる!」
「よっしゃあ!! 二人で山分けして買い食いしに行こうぜ!」
「なに考えてるのこのガキ共!? とんでもないヤツらだよ、こいつら!」
驚くどころか捕まえて買収するのがオレらのスタンダード。
ちなみにまどかとほむらだったら、片方は普通にリアクションするが、もう片方は射撃の実験台にするとか言いそうだ。
「コースプレッ、コースプレッ!」
「ばーいしゅッ、ばーいしゅッ!」
「「ひ、ひぃッ」」
さすがに怯え始める襲撃者達。もはや彼女達が狩る側ではない。狩られる側だ。
杏子と千香のテンションが高くなっており、掛け声が出ている。それが余計に彼女達に恐怖心を与える。
――――――――しかしオレの不幸はまだ続いてようだ。
「ぬぉ!?」
「うわっ!?」
「うきょ!?」
いきなり黒い魔力弾がこちらに向かってきた。この魔法は…………。
「か弱い女の子に何をしているんだお前は!!」
みんな大好きオリ主くんでした。
うわー、一番めんどーなヤツがきたー…………。
「何って、その犬を捕まえて買収するつもり」
「その痴女を捕まえて着せ替え人形にするつもり」
「「ソラが」」
「お前らなに言ってるの!?」
擦り付けられた! こいつらヒドッ!
「なんてヤツだ! もう許さない!」
なんか知らないけど誤解されたままだし! オリ主くんは再びオレに向けて魔力弾を撃つ。
ああもう。仕方ない。
オレは魔力弾を神器で弾き返した。オリ主くんは防御したが返されたことに驚いていた。
いやこの程度でやられるわけねぇじゃん。
三年前にオレをボコボコしたことで調子乗ってるのかこいつ?
「だとしたら――――――――思い知らせてやるか……………………」
お前が相手している敵がなんなのか。未熟者ごときじゃ勝てない相手ってヤツをな。
次回、オリ主くんVSソラ。
果たして『彼は』勝てるのだろうか。