by呉キリカ
路地裏の魔女結界にてオレ、ほむら、巴さんは敵である……………………えっと……。
あ! そうだクレヨン一世だ!
「いや誰だよそいつ! 私の名前は呉キリカだって! 頭悪いのかい君は!?」
眼帯少女は無事だった。
理由はほむらが入れていた武器がこの世界に来てから
いわゆるギャグ補正の兵器である。それを知ったほむらは申し訳なさそうにションボリと落ち込みながら後退してくれた。
一緒に戦えないことが残念で仕方ないのである。
さて、オレは巴さんとほむらの前に立ち、眼帯少女の言葉に答える。
「心外な。オレはこれでも頭が良い方だぞ。社会のテストの歴史人物の答えに全て歴代仮面ライダーの名前を載せるくらいの良さだぞ!」
「何しちゃってるのあんた!? どこの国にそんなバカテス回答するバカがいるのよ!」
「HERE!」
「無駄に発音よくすんな!」
なぜか怒られたでござる。
ちなみに千香の場合だと、歴代の戦隊ヒーローの名前を書いていたそうだ。
当然、オレを含めて呼び出しくらって怒られたけど。
「初対面の人間にここまで侮辱されたのは初めてだよ。そこの魔法少女の仲間っぽいし、お前もここで排除するよ」
「物騒なこと言う子どもだこと。お兄さんは最近の若者が心配です」
「私が子ども…………?」
オレはやれやれと嘆息を吐く。眼帯少女は身体をプルプル震わせて、オレに向かって激昂した。
「こここっ子どもじゃなァァァァァい!」
なんかそれにトラウマがあるのやら、嫌なことがあったのやら、眼帯少女はオレに斬撃を放つ。
見える速度のため、余裕に回避できた。
右、左、上段から下段。そして次は右の袈裟斬りだな。
オレはその斬撃から逃れるために、身体を左に逸らそうとした。
「ソラ、さがって!」
「っ!」
ほむらの叫びにオレは咄嗟に身体を逸らさず、そのまま後退。
斬撃は予想より早くオレの身体を掠めて、服を切り裂いた。
「速くなった? 速度上昇させる魔法少女かお前」
「そんなこと誰が答えるか!」
そりゃ、もっともだ。
そう思っていると眼帯少女は愚問に答えず、どんどん斬り込む。
徐々にオレの身体は裂かれ、遂には胸辺りを浅く斬られてしまった。
「ヤッベー。毒ないよねこれ? 毒状態で戦うのちょっと嫌な思い出あるんだよね」
「そんな姑息な手は使わないよ。まあ、彼女のためなら使うことは躊躇わないけど」
ほう、彼女ねぇ…………。
どうやらこいつの狩りは誰かに命令されたか、お願いされたもののようだ。
つまるところ親玉か協力者がいるわけかい。
「んー、大方情報が集まったし。そろそろ反撃いくかー」
「ふーん、今まで逃げてたくせに今さら戦うつもり? 今の君の速度は一般人くらいなんだよ?」
「それくらいのステータスダウンしてたのオレ? ヤベ、これで鹿目まどかでさえ負けたらマジでへこむ」
ちょっとショックを受けていると眼帯少女は気にせずオレに向かって鍵爪を降り下ろす。
「じゃあそのまま死になよ!!」
その鍵爪がオレの頭部を切り裂こうと迫り――――――――
ガキィン!
――――来る前にオレは神器で止めた。
眼帯少女は目を丸くしながらオレの顔を見ていた。
「おかしいか? 『
「っ!!」
眼帯少女は咄嗟にその場を後退し、オレに警戒心をあらわにする。
「…………いったい何をしたんだ君は」
「なーに、単に魔法で速度を上げただけだよ」
補助系マジック――――『レベルアップ』。
パワー、スピード、思考速度を高める魔法だ。
本来なら、大工稼業が使う魔法らしいが、戦時中はよく使われていた。
ただまあ、燃費の悪く疲労が溜まりやすい魔法だったので
短い時間しか使えないが――――――――
「単時間で済ませるには充分だ」
オレは横構えを取り、いつでも斬り込めるように飛び出せる準備をした。
「訂正するよ。お前は子どもじゃないよ。むしろ子どもには勿体ない」
「へえ? それで子どもじゃない私は何?」
何って? そんなの簡単な答えだろ。
――――――――人形
こいつは傀儡だ。自分の意思なんて考えてない。ただ主人のことしか関心のない駒だ。
オレは眼帯少女に向かってそう言うと彼女は笑い始めた。
「なに言ってるんだい。駒でいいじゃないか。それこそ、私は主人の愛だと考えているね」
「愛?」
「そう! この身は全て彼女のためにある! 愛のためにある! だから私は彼女の傀儡でいい! 愛してくれるのであれば私はそれでいい!」
「だから君を殺す」と眼帯少女はそう最後に言って斬りかかる。
それを防いで「狂っているわ」と呟く巴さんを横目にオレは思った。
一見、狂っているように見えるが見方を変えれば献身的な愛だとオレは思う。
ほむらの愛――――もはや
究極の自己満足であり、想われる人にとってはありがた迷惑な話だ。
しかし、間違っているとは言えない。なぜなら、『彼女は彼女を愛している』からだ。
オレは悪魔となることは否定しても、それだけ否定しようとも思わなかった。
別に相思相愛でなくてもいい。
その人を想い、愛してさえいればそれが愛なのだから。
愛は様々な形があるのだから。
だから、認めよう。彼女の自己満足の愛は本物であると。
「なーんか嫉妬しちゃうなその彼女に。その献身的な愛をくれよ、オレ達にも」
「嫌だね。第一君が気に入らないし」
「あらやだ失恋しちゃった。ほむらさんや後でその胸貸して泣かしてよ」
「いいわよ。目の前で浮気したソラにお仕置きしてからね」
「解せぬ」とオレが呟くと神器ごと後方へ飛ばされた。
そのまま眼帯少女は左横から斬撃を放つ。
それを防いだらオレはさらに質問する。
「で、その献身的な愛にオレ達殺されちゃうの? 理不尽すぎやしませんかい」
「関係ないね。私は君を殺せばそれでいい!」
問答無用ってわけか。それはなんとも――――
「同感…………!」
「っ!?」
オレはニタリと笑うと眼帯少女は後退した。あれま、どうやら殺気が滲み出ていたみたい。
「いいねぇ…………愛のために問答無用か。実にシンプルだ。しっくりくる」
だけど、とオレは目を瞑りながら続けた。
「それは単にお前だけじゃないってことさ。オレは大切な…………大切なあいつらを守れるなら外道だろうが鬼畜と呼ばれていい」
だからオレはあいつらための英雄になる。
あいつらが望むことをして満足させる。
「だから安心してとっと死ね小娘。オレの大切なモノリストにない人形には用はない」
いつも通りにオレは斬り込みにかかり、いつも通りにほむらは「告白されたわ」と頬を染めながらイヤンイヤンと首を振る。
いや告白じゃねぇから。だから「挙式はここにしようかしら」とか呟くな。
中学になる歳になってからマジで貞操の危機を感じる今日この頃である…………。
ソラは狂っていたのだ!! ナンダッテー!?
まあソラがぶっ飛んでいるのは元からですが、前世ではほむらの愛を最終的には認めてはいました。
納得はできず戦いましたが、負けてその愛を認めようと思ったのです。
思えば『愛』ってなんなのでしょうね? 家族や友人、そして恋人などに向ける愛は人それぞれだと自分はそう思います。
次回、愛の力VS理不尽
――――――――『愛』は必ずしも勝てる力、というわけではない
ちなみに明日は諸事情のため投稿できません。ごめなさい。