とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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長いです。そしてまた一人登場しないまま変態に…………。まあへタレだしいいか。

ではどうぞ。

「恐ろしきかな。まどかの秘伝書」

by朱美ほむら


第五十六話

カオスな状況から小一時間後、オレはほむらの夕飯で半分死にかけながらも平らげて、説明会を始めた。

 

まず魔法少女についてである。これはキュゥべぇが話していた通りのことをそのまま暁美は説明した。

うん、どうやら真実まで話すつもりはないようだ。

 

この世界のマミさんと接触する可能性がないとも限らないから最善と思って策だろう。

だが、彼女は忘れてはいないだろうか……。自身に危害がないのなら、問答無用なもう一人の自分に。

 

「で、魔法少女は絶望したら魔女になる。そういう仕組みらしいわよ」

「「えっ?」」

「ちょっ!?」

 

まさかのほむらのぶっちゃけである。まどろっこしいことするのが、なんかシャクだったのだろうな。

 

「そんな…………それじゃあほむらちゃんは…………」

「いや、その…………平気よ! ほら、ソウルジェムが真っ黒に濁るまでが期限だから安心してまどか、さやか」

「そのソウルジェムがあなたの本体なのよね。ゾンビ少女暁美ほむらちゃんって感じに」

「どんだけぶっちゃければ気がするのよ、あなた!?」

 

暁美はほむらにツッコむ!! こうかはいまとつのようだ。

ほむらは髪を流しながら暁美に反論する。

 

「うるさいわね、暁美ほむら。同じほむらとして落ち着きがないなんて恥ずかしいと思わない?」

「悪いのはあなただからでしょ! 隠したいこと全て話しちゃってそれで巴マミに知られたらどうするのよ!」

「大丈夫よ。そのとき私の最近大きくなったバストのことを話せばいいわ。ほら、同じあなたより五センチ大きいBカップよ」

「それ全然解決策じゃないし、さりげなく自慢されて腹立つ!」

 

さすがの暁美もぶちギレである。隠したいこと全てぶっちゃけるし、自身のコンプレックスのことを言えば、そうなるのは当然である。

あ、今さらだけど確かに違うよなこの二人の胸と髪型。

 

暁美はロングストレートだけどほむらはポニーテールだ。

なんかほむらのうなじがグッと来たとオレが思ったのは秘密だ。

 

「それから美樹さやか。あなたの幼馴染みが自殺しようとしてたわ」

「まさかのトンデモ発言!? えっ、恭介は大丈夫なの!?」

 

ガッツかんばかりに美樹はほむらに詰め寄る。ほむらは平然と「大丈夫よ」と言って続けて言った。

 

「バイオリンができないことに絶望して屋上で飛び降り自殺しようとした彼を私がコブラツイストで止めたわ。過呼吸になっても『あなたが、泣くまで、やめない!』って言ってマジで彼が泣くまでやめなかったわ」

「オイ、さりげなく殺しにかかってるわよね? 人命救助で止めるどころかいろいろ意味で停止するよね、それ!!」

「それから彼は話してくれたわ。バイオリンが引けないから死んだ方がマシだって。私はそれに腹が立ってコブラツイストをリピートしてやったわ」

「いや怪我人になにしてんのよあんた!?」

 

美樹がそうツッコむ。怪我人だろうが子どもだろうが容赦ないからな、こいつ。

いったい誰のせいだ………………あ、オレのせいか。コブラツイスト教えたのオレだし。

 

「それでマジ泣きする彼に新たな生きる希望を与えたわ」

 

そう言うと美樹のスマホから着信音が鳴り始める。それに出るとなんと例の幼馴染みだった。

 

『やあ、さやか。僕、今日退院するみたいなんだ。左腕が動けるようになったしね』

「ウソ!? もう動けないはずだったでしょ!?」

『うん。だけど、アケミさんからいただいた秘伝の書によって僕は一つの真理に辿り着いて動かせるようになったんだ』

 

美樹は今にもほむらに泣き出しそうに感謝を込めた目で見つめる。

 

…………だけどなんでだろう。嫌な予感がする。主に真理という部分に。

どっかで聞いたことあるし…………。

 

「それじゃあバイオリンは続けられるんだね!」

『…………いや、僕はもうバイオリンをやめるよ。それにわかったんだ。本当に大切なモノを』

 

美樹は「えっ?」と期待するように上条に聞く。彼女の顔はまさに恋する乙女だ。

ドキドキしているのだろうな。…………なぜか『さやか』じゃないのにモヤモヤしたけど。

 

それから会話は続く。

 

『さやか…………僕の本当に大切なモノは』

「うんうん!」

『それは――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――筋肉だったんだ!!』

 

「うんうん――――うん? 恭介、もっかい言って?」

『筋肉。マッスルだよ、さやか!』

「ワンモアプリーズ。…………う、ウソって言ってくれない?」

『いや本気さ僕は。筋肉とはあらゆる力の象徴。神経なんて筋肉さえ使えばすぐに再生できるんだよ! さやかの言う通り、奇跡とマッスルはホントにあったんだ!!』

 

やっぱりかァァァァァ!! 変態化してるよ上条が!

 

ほらみろ! 美樹のヤツ、ポカーンとした顔をしているよ!

てか、『奇跡と魔法』じゃなくて『奇跡とマッスル』になっちゃってる!?

 

『ヘイ、恭介! 一緒にマッスルトレーニングしようぜ!』

『OKマイク!』

「マイクって誰!? 恭介今どこにいるの!?」

『マイクは同じマッスルチームの一員さ。彼は病弱だったけど、アケミさんの秘伝の書で見滝原病院のみんなが元気に腕立てをしているよ!』

「病院なのそこ!?」

 

病院全員が筋肉に汚染された!?

どうしよう。もうあの病院行けないよ。

 

『それじゃあ、これから筋肉演説会があるから切るね。さやか、今まで応援してくれてありがとう! さやかの言う通りバイオリン以外にやれることっていっぱいあったよ!』

「ちょっと待てェェェェェ筋肉演説会って何よ!?」

魔法漢女(まほうしょうじょ)マッスルグレネードともえさんという筋肉史上最高の人が行う筋肉ムキムキな人が行う演説会さ! そこでたくさんの同士がいるんだ! だから行かなきゃ!』

 

それじゃ!とスマホから聞こえて、通話が切れた。

美樹はしばらくポカーンと口を開いてそれから深呼吸。そして、ほむらの両肩を掴んで言い出す。

 

「あんたなんてことしてくれたのよォォォォォ!! 恭介がホントの意味で遠いところに行っちゃったじゃない!」

「そんなこと知らないわよ。私はただのまどかに『絶望した人がいたら、これを使って助けてあげて』ってプルプル震えて口を抑えながら言ってたからそうしたまでよ」

「ま~ど~か~!」

「えぇ!? 私そんなこと一言も言ってないよ!?」

 

とばっちりをくらって焦り出す鹿目。

てか、まどかのヤツとんでもないものをほむらに託してたんだな。

 

…………絶対、『おもしろそう…………!』と思って渡したに違いない。ほむらの話の中にあったように、笑いに堪えながら言ってたのがその証拠だ。

 

「つーか、親友とバイオリンの次に筋肉にネトラレるとか、どんだけお前ネトラレ属性ついてるんだよ」

「美樹さやかのポジションはエロゲで言えば、ネトラレるヒロインよ。ほら、私達が知ってるさやかも主人公(上条恭介)を助けようとキュゥべぇに騙されて、最終的には堕ちていたじゃない」

 

あ、なるほど。つまり淫乱というわけか。わかります。

ほむらと話し合って納得した。

 

「誰が淫乱だゴルァ! 誰がネトラレ系のヒロインですって!? あたしはもっぱらの純情系ヒロインじゃァァァァァ!」

「さやかちゃん落ち着いて!」

 

今にも襲いかかろうとする美樹。

それを止めようとする鹿目。

 

そしてオレ達は器に入ったお茶を飲んでゆったりするのだった。

 

「いや、なんであなた達そんなに余裕なのよ」

「「常にそれ以上の衝撃的なことが日常だったから」」

「わけがわからないわ…………」

 

オレ達の言葉にゲンナリする暁美だった。いや、お前も千香とかに絡んでみろよ。

常に衝撃と貞操の危機という恐怖が待ってるから。

 

あ、そういえばほむら。エロゲってなんだ?

 

オレはそう聞くとほむらは髪を手で流しながら答えた。

 

「私とまどかの聖書(バイブル)よ」

「聖書? えっ、アダムとイブとかのヤツの?」

「あなたも杏子と同じこと言うわね。まあ、知りたかったらベッドに来なさい。どういうことか身体で教えてあげるわ」

「あ、やっぱいいや。なんかわかった」

 

主に貞操の危機ということが。

オレがそう言うと「解せぬ。どうすればソラを誘い込めれるかしら」と呟くほむら。

 

せめて本人がいないところで言ってください。お前のその野獣が狙う獲物を見る目が恐いんだよ。

 

「というかいい加減に話を戻そうよ。つまり魔法少女はゾンビで、進化したら魔女という怪人になるってこと。わかったか?」

「誰がゾンビよ! 後、ハショリすぎよあなた!」

 

暁美がツッコんだが無視して今度は、オレ達の正体と神器使いの話、オレ達の目的を話すことにした。

涙目で『構ってよオーラ』だしても無駄だよ、暁美。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「ホントに平行世界の私なの…………?」

「なんか…………その…………」

「ぶっ飛びすぎよ」

 

それぞれの感想にほむらはムッという表情をしていた。

いや、そりゃそうだろ。平行世界のオレがブッとんだキャラになってたらオレも驚くわ。

 

「鹿目まどかや美樹さやかはまだしも、断崖絶壁女に絶望されるのはシャクだわ」

「誰が断崖絶壁よ!」

「違うの? なら、ボッチ女ね。所詮友達もその二人しかいないのでしょ?」

「あなたが言える義理はあるの!」

「フッ、甘いわね。私には残り四人の友と呼べる人がいるわ。二人しかいないあなたと比べて二歩先にいるわ!」

「なん…………だと!?」

 

ドドーンと胸を張るほむらと愕然とする暁美。

同じ顔なのに違うのは性格と胸だけなのに、その性質だけは同じだ。

 

てか、なんだこの低レベルの会話は。

 

「お前ら二匹共ボッチ仲間のくせに言い争うなよ」

「「誰がボッチですって!?」」

「んじゃ聞くけど小学生の時にいた友達の数を言ってみろ」

「「………………………………」」

「オイ、こっち見ろや二人共」

 

顔だけ明後日の方向を向ける二人に呆れながらオレは脱線した会話を戻す。

 

オレが今、話していたのはオレ達の正体と神器使いということである。

次はオレ達の目的だ。

 

オレはまどか達の今の状況を説明し、そして異世界の旅について話した。

 

「あれ…………でも神威、さんでいいのかな?」

「神威でいいよ。オレとほむらはまだ年齢は中一くらいだから」

「つまり年下なの!?」

「まあな。でも敬語は使わないぞ? めんどくさいし、イチイチですますつけるのがうざったい」

「ぶっちゃけすぎだよぉ…………でも神威くんってそのわりには大人っぽいよね」

 

まあ鹿目の言う通り、オレの精神年齢はもう大人だからな。

 

おっと脱線したな。

 

「それで鹿目は何に疑問を思ったんだ?」

「えっと平行世界に渡るとその世界の人に憑依するんだよね? じゃあ、なんで神威くんやそっちのほむらちゃんは憑依じゃなくて個人として存在するの?」

 

鹿目の疑問は最もだ。だからこそ、ある仮説がある。

 

「まずオレのことを説明すると、世界のルールとして二人以上の同一人物は存在できないから、平行世界に憑依という形で渡るんだ。だからオレという者が存在(・・・・・・・・・)しないこの世界はオレ個人がこうやって存在することになるんだ」

 

本来ならば、オレはまどか達の世界では子どもの姿になっているが、今のオレはここに来る前の姿だ。

つまり、この世界にオレは存在しない。

 

 

――――では、ほむらはどうなのだ?

 

 

その世界にいるにも関わらず、彼女は憑依せずに個人として存在している。

 

矛盾が起きるのだ。

だけど、オレはその矛盾に仮説立ててある答えを出した。

 

「ほむらの場合は仮説だけど、たぶん朱美ほむらは前世の頃――――――つまり暁美ほむらだった頃に円環の力の一部をもぎ取って『悪魔』に昇格したことがあったんだ。だから、そっちの暁美とは別人ということになってると思うんだ」

 

と言ってもあくまで仮説である。ホントにそうとは限らないが鹿目達は納得してくれたみたいだが、まだ疑問がある。

これは仮説ではなくて確証を得る疑問だ。それをほむらに聞いてみた。

 

「ほむら、一ついいか?」

「なにかしら? いつ初夜の準備するかってことかしら?」

「お前どんだけ発情してんだよこの思春期女。いやそうじゃなくて…………み、みー…………」

「美国織莉子?」

「そうそれ! その女のこと前世のループであったことがあるか?」

 

「忘れてたわね」と暁美に言われたが無視する。

すると、ほむらは答えてくれた――――――――予想通りの答えで。

 

 

 

そんな人、知らないわ(・・・・・・・・・・)。誰かしらその人」

 

まどか達が驚愕していた。

 

当然だ。いくら平行世界とは言え何百回のループ中でその人物に出くわさないということはありえない。

そしてその返答でオレは遂に答えにたどり着いた。

 

ほむらが悪魔だったからという理由だけでなく、ここがただの平行世界(・・・・・・・・・・)ではないことを。

 

「…………一度、師匠に聞いたことがある。平行世界の中にはまた違う歴史を持つ世界があると」

「ソラ、何か知ってるの?」

「ああ。ほむらの知る歴史(ループ)と暁美の歴史(ループ)の違いでオレははっきりした。この世界はただの平行世界じゃない」

 

三国志の歴史人物が正史である男ではなく、女になったり、その歴史が全く違う結末を迎えて新たな世界を造り出すという平行世界がある。

 

 

その名は――――――――

 

 

 

 

 

「『外史』。ここは誰かの願いによって造られた平行世界なんだよ」

 

 

 

師匠、どうやらここはこの物語を完結しないと出られないみたいです。

外史って入ってしまうと完結するまで外から出られないんだよな。

 

オレは憂鬱そうな溜息を吐くのだった。




『マッスルグレネードともえさん』は巴マミではございません。
…………ムキムキのモリモリなマミさんとか、どんな悪夢ですか、それ。
そんな拳でなんとかしそうなマミさんだったら、シャルロッテ(お菓子の魔女)も逃げ出しますって。

ちなみに外史という単語は『恋姫』から来ています。

ぼけなすワールドでは外史という単語は重要な役割があります。
例えばとある少年が迷い込み、乱世を駆け抜けてはまたその時間軸にループするという物語があったりします。

彼の物語はこの作品では出てきませんがどこかで出そうかと考えています。


それから外史のルールは次回で発表します。

次回、新たな刺客。

――――されどカオスは向かわされる

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