とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「私の戦場どこにいったのかしら…………」

by暁美ほむら


第五十五話

(暁美サイド)

 

夕暮れとき。私とまどか、美樹さやかは魔女結界に巻き込まれ、なんなんく魔女を倒した。

 

しかし、その後に美国織莉子と名乗る魔法少女が現れ、まどかを排除すると宣言してきた。私にとってそれは許せないことだった。

だから、疲弊した身体であろうと戦う準備に入っていたがさっき出会った銀髪の男が私の間に入ってきた。

 

本当に訳がわからない。なぜこの男はここにいるのか、なぜ助けにきたのかという疑問が渦巻くが、鹿目まどかの味方ということが理解できた。

 

そして彼はあろうことか魔法少女で単身で挑むつもりらしい。

やめなさい、と口に出そうとしたが彼の手にカギのような剣が現れた。

 

それは未知の力だった。

 

迫り来る魔法をキャンセルするという驚異の力を見せてくれた。

 

「それで金平糖さん…………だっけ?」

「織莉子です! ちゃんと覚えてください!」

「失礼、噛みました」

「違う。ワザとよ」

「かみまみた!」

「ワザとじゃない!?」

「噛んじゃったぜ☆」

「なぜカッコよく言ったの!?」

「気分で」

 

そう言って彼は美国織莉子の魔法をヒラリと回避していた。

 

 

…………なんというか美国織莉子が遊ばれてる感があるわね。

 

 

現に彼は彼女のリアクションをケタケタと面白がっているし。

 

「というか貴方、覚えるつもりないでしょ! さっきから織莉子って言ってるのに『金平糖』や『オリゴ糖』ってなんで甘いものオンリーな名前ばっかりで間違えるの!?」

「いやーオレってなんか知らない人の名前覚えるのが苦手で…………。あ、アダ名なら覚えられるからミクちゃんでいい?」

「馴れ馴れしいわよ! どこのボカロなアダ名よ!」

「んじゃ、世紀末英雄伝説リコたんで」

「リコたん何者!? どんなことしたら世紀末って言うものがつくのよ!?」

「たった一本の大根で不良、外道、そして善良な一般市民を惨殺した驚異の少女につけられる異名だ」

「なんかイヤだ、それ! てか、善良な人を殺っちゃ駄目でしょ!?」

 

ヒラリヒラリと水晶球を避けて楽しそうに笑う愉快犯。

もう美国織莉子は涙目である。

 

「もう、これでくたばっちゃって!!」

「おろ?」

 

避けるはずだった水晶球が彼の目の前にタイミングよくきた。

 

――――まるで彼の動きを読んだ(・・・・・・・・)』かのように。

 

直撃した彼は爆発に巻き込まれた。

 

「ハァハァ…………早く予知を使えばよかったわ…………」

「なるほど、それが当たった理由かー」

「はい!?」

 

砂煙から彼が擦りきれ、ボロボロな服装で現れた。

 

 

…………普通、目の前の爆発に巻き込まれたら身体が弾け飛ぶものじゃないかしら?

 

私は神威ソラの人外染みたそのハイスペックに呆れていた。

まどか達はハラハラドキドキと歓声していたが今ので、唖然としていた。

 

「人外か何かですか、貴方!?」

「ひどいなー。オレは人外じゃなくて善良な一般市民だぜ? なあ、世紀末英雄伝説リコたん」

「そのアダ名だけはやめてちょうだい!」

 

彼女はもはや最初にあった自信に満ち溢れた脅威の面影なく、ただのいじられる女子中学生へとランクダウンしていた。

 

彼と関わればああなるのかしら…………。

 

そう思うとなぜかゾッとした。

神威ソラ…………なんて恐ろしい男…………!

 

「なにやら変な誤解されてるようだけど、織莉……り…………――――…………オリゴ糖さん」

「完全に私の名前覚えてないでしょ、貴方!?」

「いやごめん。それより聞きたいことがあるけどいい?」

 

平謝りしながら彼は美国織莉子に「なぜ鹿目まどかを狙うのか?」と聞くと彼女はそれに答えた。

 

「さっきのように私には未来予知ができる力があります。その予知で鹿目まどかは魔法少女となった後に、世界を十日間で滅ぼす最悪の魔女になる可能性が秘めているからです」

 

数あるループの結果と同じ結末のことを彼女は話していた。

そうまどかだけを助けるために、色んな人を切り捨ててしまい、私はたった一人でワルプルギスの夜に挑んだ。

その結果、完敗し、まどかを契約させてしまったのだ。

 

この人はそうなる結果を見たのに違いない。だからまどかを狙った。

 

私がそう予想していると彼は「ふーん」とつまらなそうな顔で言い出す。

 

「で、それが世界の救世になるってこと? だとしたら、くだらないね。ああ、くだらない」

「なんですって!?」

「だってそうだろ? お前は人類のためだからと大層なことを抜かしてまだ何も知らない罪無き少女を亡き者にしようとしている。…………それをくだらない以外に何がある?」

「貴方に、貴方にあの魔女の恐ろしさを知らないからそんなことが言えるのです! あんな化け物みたいな魔女に誰も勝てるはずがありません!」

 

美国織莉子は興奮して言い返したが、彼は予想外なことを言い出した。

 

「んなもん、オレとほむらが知ってる!」

「なっ…………!?」

 

美国織莉子だけでなく、私も驚愕した。

 

あの魔女と戦ったことがある? しかも私と?

 

 

いやそんな記憶は一切ない(・・・・・・・・・・)

 

 

彼は私がそう考えていることを気にせず、続ける。

 

 

「鹿目まどかが救済の魔女の魔女になる可能性はある。だけど、それはあくまで魔法少女である鹿目まどかだ! ああ、認めよう。魔法少女の彼女を魔女にさせないならお前のすることは確かに救世であることを認めよう。だが、今のこいつは『ただの普通の女の子』だ! 無限の可能性を秘めた女の子の命を誰も奪う価値なんてない!」

 

美国織莉子は彼の言葉に反論しようにも言い淀む。

正論だからだ。反論の余地もない。

 

それに、と彼は言い始める。

 

「どんな理由であれ、どんな世界であれ、オレはもう鹿目まどかがいなくなることは許さない。たとえ、オレを知らないとしても、オレが鹿目まどかを知ってる限りオレは彼女を失うことはもう嫌だ。地獄だろうが修羅の道だろうが、それで彼女が助かるならとことん付き合ってやる」

 

強い決意が彼の目にあった。その決意に美国織莉子はじっと見据えて、やがて目を瞑り言い始める。

 

「いいでしょう。今回は引きます。ですが、私があなたの考えを認めたわけではありません。それをわかってほしいです」

「いいぜ。元からわかり合うなんてことができるとか思ってねぇよ」

 

 

だからと彼は続けて言った。

 

 

「勝負だ小娘」

 

彼は不敵に笑いながら、「フン」と笑う美国織莉子が去るのを見守った――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………って!

 

「なんで見逃すのよ!」

 

私は彼の頭を叩いた。

熱血展開に流されてしまった私も私だが敵をあっさり逃がしてしまう彼に私は怒りをあらわにするのだった。

 

「ギャーギャーうっせなぁ。黙らないとノーパンの刑にするぞコノヤロー」

「変態! 乙女の秘拠に手を出すなんて最低ね、あなた!」

「最低ですが何か? というかオレ、みんなから外道とか鬼畜だって言われてるから今さらだしなぁ」

「なに懐かしんでるの、あなた!?」

 

あの頃は若かったなぁというな表情をする彼に片手で頭をはたいてツッコんだ。

もう一方は魔法少女の秘拠を護るためであるスカートを守るためである。

 

油断したらあのワキワキしている手が私のスカートの中に手を出すだろう。

 

「冗談だって」

「ホッ…………」

「鹿目か美樹にやらせる」

「まさかのあたし達!?」

「あ、それおもしろそうだね。ティヒ♪」

「「まどか!?」」

 

美樹さやかと一緒にツッコんでしまった。

まどか、私は思うのだけど、あなた出会ったときからたまに変なことを言うわね。

 

いったいこの時間軸はどれだけ私のSUN値をゴリゴリ削らせ、ソウルジェム濁らせるのだろうか…………。

 

そう思う今日だった。

 

 

 

 

(ソラサイド)

 

 

 

 

オレ達はほむらの家に向かっていた。

 

魔法少女というものを知られてもう隠し通せないと判断したほむらが、オレというものが何者かと言う説明を聞くと同時に説明するらしい。

 

まあ隠すことないしな。

 

オレはそう思いながらほむらが玄関の扉を開けるのを見守った。

すると、彼女は石のように固まった。何やらびっくりするものを見たようだ。

 

そう思い、オレは心配している鹿目まどかを横目にほむらを固まらせた元凶を視界に入れることにした。

 

 

 

 

 

 

「あら、おかえりなさいソラ。夕飯できてるわよ」

 

 

 

 

 

 

…………うん、ほむら――――いや暁美(・・)を固まらせるのには充分なものがそこにいた。

 

フライパンを片手で、セーラー服を着て、その上にエプロンを着けた朱美ほむら(・・・・)がそこにいた。

 

「先に夕飯にする? お風呂にする? それとも…………わ・た・し?」

「いろいろツッコみたいことがあるけど、言わせてもらう。なんでセーラー服なんだよ!? お前、ここに来る前プライベート用のワンピースだったじゃねぇか!」

「突っ込みたいなんて…………やだ、いやらしいわね、ソラ」

「その突っ込みじゃねェェェェェボケのツッコミだァァァァァ!!」

 

オレがシャウトしたのは悪くないと思う。

 

いやだって、再会したらなんかいつの間にかコスプレしてんだぞ!

どこから持ってきたとか、なんで着ているのか、そりゃあツッコミを入れられずにいられるか!

 

しかも、なんか女性陣から白い目で見られ始めているし!

 

話聞いてた!?

 

「ソラは私のこの格好…………嫌?」

「全然! ありがとうございます!」

「神威ソラ…………あなたって人は…………」

 

暁美は何やら冷たい視線を向けるが、仕方ないだろ!

 

黒髪で美少女の上目遣いに拒絶できるはずがないだろ!

そりゃあ思春期に入る男子ですからねオレも!

 

「ほむらちゃんがもう一人……………………いやでもそのセーラー服はグッドだよ!」

「まどか、今はそういう問題じゃないわよ。転校生を元に戻さないと」

「駄目だよさやかちゃん! ここは写真を撮らなきゃ、もう一人のほむらちゃんを使っての黒歴史を捏造できないよ!」

「あんたってそこまで黒かったっけ!?」

 

もう一人の自身の恥態に呆然とする暁美。

 

写真を撮ろうとするが美樹に止められるまどか。

 

そして再び料理を続けて、謎の液体を作り出すほむら。

 

 

…………要するにだ。

 

「カオスだなぁー…………」

 

 

とりあえず、オレは暁美の家にお邪魔してリビングにあった雑誌を読み始めることにした。

 

現実逃避? 違うな。雑誌を読みたくなったんだよ…………半分だけ。






次回でなぜ彼女が二人いるのか判明します。

次回、外史。

――――人の想いで作られる世界が存在する。

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