とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「帰ってきた。けどなんでまたこうなったのかねー」

by神威ソラ


第五十四話

春風の暖かい晴れの天気の世界。

 

そんな世界へオレはドコでもドアから飛び出た。着いた場所は見滝原中学校前だ。

 

「? どういうことだ? 師匠から憑依する形で平行世界に渡ると聞いていたのに」

 

憑依ではなくオレ個人の身体(・・・・・・・)でこの世界に渡れたのだ。

 

ありえない。ならば、ここはどこの平行世界なんだ?

服装もオレがここに来る前に着替えていた黒を基調にした服装だ。

 

つまり、オレが異世界に来たという証拠(・・・・・・・・・・・)である。

 

「って…………まずほむらを捜さないと」

 

思考をすぐに切り替えてオレはほむらを捜しに向かう。さすがに学校の中には入れないが今は午後三時。

つまり授業が終わって放課後であるはずだ。

 

予想通り、校門からほむらが出てきた。

しかも、まどかやさやかがいる。

 

あのさやかはたぶん平行世界のさやかのはずだ。

たぶん、オレと面識はないと思うな。

 

それはさておき、先にまどかを見つけたほむらにオレは手を振る。

 

「オーイ、ほむらー!」

 

呼んでみたが――――無視された。

 

あれ? どっかで体験したことあるなこれ?

デジャブ?

 

「無視すんなよ、なぁ」

 

と近づいて話しかけるとなんか不審者を見る目で見られている。

 

えっ? なぜにそんな冷めた目で見るの?

 

「誰? あなたなんか知らないわよ、変質者さん」

 

一蹴されてその後、オレに見向きをせずにそのまま背中を向けた。

 

 

……………………さて、なんか叫びたくなってきたなぁ。

 

オレも彼女達に背を向けて、誰もいない空に向かって叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またかァァァァァ!!」

 

ぶちギレていた。もうなにもかもに。

 

「またヤツの実験か! あの白いナマモノの仕業の世界か!? しかも今度はのっぺらぼうじゃないだけマシだけど、何回オレは忘れ去られるんだよォォォォォ!!(※番外編その七 前半より)」

 

頭をくしゃくしゃしながら叫ぶ今日この頃。

まさか、ほむらがキュゥべぇに囚われて実験されている平行世界に来るとは!

 

もう乱心である。皆のもの戦(いくさ)のときじゃァァァァァ!!

 

「こうなったらあの白いナマモノをぶっ殺す! もう容赦しねぇぞゴルァァァァァ!!」

 

ここにキュゥべぇ駆逐宣言を発表する。

すると、肩を誰かに叩かれてしまう。

 

「ちょっといいかな?」

 

その後、青い服の人に事情聴取されることになった。

 

そりゃあ、中学校の前でブッコロ宣言したら通報されるわな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

どうにかして少年院行きは避けられて、オレは町を徘徊していた。

 

どうやって青い服の公務員を説得したって?

 

…………魔法って便利だよねー(黒い笑顔)

 

「それより寝床捜さないと。このままではホームレス中学生になってしまう」

 

とは言ってもそろそろ夕方である。マミさんのところにお邪魔したいが、今のオレは小学生ではなく中学生の身体だ。

泊めてもらおうにも思春期に入ってるオレを疑うどころか即通報だろう。

 

「ほむらもほむらで見つからないし。どうしたものか…………」

 

すると、なにやら人気のないところが騒がしい。

というわけでそこに向かうと、中世の貴族の日常を描いた衣装を着た魔法少女とほむら、まどか、さやかが相対していた。

唯一ほむらだけが魔法少女の衣装を着ているが、二人は衣装を着ていない。

 

えっ? 誰なのあの人。なんか水晶球を浮かべて不気味なんだけど。

てか、まどかとさやかは魔法少女じゃないのか?

 

そう思うものの、平行世界とはいえ知り合いを襲われているのは嫌なものだ。

 

助太刀すると決めてオレはほむらに向かってきた水晶球を切り裂いた。

水晶球は硝子のように割り散り、消えていった。

 

魔力でできてるのか、これ?

 

「貴方…………何者なの?」

「そういうお姉さんこそ何者なの? グラマーなスタイルしてなんてイタイ格好してるとか恥ずかしくないの?」

「いや、さりげなくそんなこと言われても。後、私はまだ中学生だからまだ大丈夫のはず…………!」

「明らかに魔法少女の賞味期限が近づいているだろ。十六歳で魔法少女はもはやコスプレの域だから。現実見て慎ましく行動しろよコスプレ女」

「この人めちゃくちゃ容赦ないんですけど!?」

 

ツッコむ白髪のお姉さん。

 

なんか気品を感じるからお嬢様ってことかな?

そんなお嬢様がコスプレとか……………………オレが親だったら泣くね、絶対。

 

「り、両親はもうこの世にいないから大丈夫よ! 友達も理解してくれてる人だから平気よ!」

「とか言ってどうせ友達がいないときに、『パパ~ママ~』って実はさめざめ泣いてるじゃないの?」

「なんでそれを知ってるの!?」

「それはマジなのかよ!?」

 

思わずお姉さんにツッコむ。

冗談で言ったつもりがまさかの本気だったとは。

 

うん、わかった。この人、生粋の天然お嬢様だ。

 

ほらみろ。今にもゆでダコのように顔が真っ赤になってるぞ。

するとお姉さんはハッと正気に戻して「コホン」と前置きする。

 

「こんにちわ、救済の魔女さん」

 

なんか勝手に話を始めてきた。

 

あ。ほむら、ちょっと取り出してほしいのあるのだけど。

 

「今日は貴女に用があってきたわ」

 

うん、それそれ。貸してよ。

 

「救世のために――――え?」

 

オレは白髪のお姉さんにRPGを向けて、

 

「発射!!」

「きゃあああああ!?」

 

 

ズガァァァァァン!

 

白髪のお姉さんはそれを避けたため、路地裏の壁を破壊した程度で終わった。

 

「チッ、外したか」

「外したか、じゃないわよ! いきなりなに撃ってるのよ!?」

「え? だってお前まどか達の敵だろ? なら、味方のオレが先手必勝でぶち殺すのが当たり前だろ」

「だいたい合ってるけど、さりげなく恐ろしいこと言っちゃってるよ、この人!」

 

恐ろしいの?

 

そう言ってまどか達に聞くと全員に頷かれた。

解せぬ。ま、いっか。

 

「それに魔法少女かなんか知らないけど、あんたみたいな清楚なお嬢様がそんなコスプレ格好なんて…………改めて言うわ。…………ないわー」

「否定された!? なんでよ!」

「いやだって童顔だけど身体がグラマスなお姉さんじゃん。もうちっとアダルティな格好してくれないとそれだとただの痛い人だ。通称巴マミ二号だ」

「ひどくないですか貴方!?」

「さりげなく巴マミを痛い人扱いしてるわよね。それに関して否定できないところがあるけど」

 

口を開かなかったほむらも中々のセメント発言である。

 

「さて、住所と氏名、電話番号もしくは親戚のでもいいから教えろ。親御さんに説教してものわらないと」

「いないわよそんな人!」

「あっそ。んじゃ、電話番号と住所教えろ。番号がわかればイタ電のコンボしてやるし、住所がわかればうちの知り合いがクリスマスイブでよくやってた爆撃テロしてやる」

「めちゃくちゃよこの人! というか前半がかわいらしくなるくらい後半がリアルで怖い!」

 

お姉さんも思わずシャウトする。

 

それがオレクオリティである。

問答無用で相手を倒す。理由なんて倒してから考えればいいし。

 

「もう怒りました! 顔見せのつもりでしたが、まず貴方から救世の礎になってください!」

 

お姉さんはオレに向けて水晶球を発射する。

なんか某砂使いのようだなぁと思いながらオレはそれを全て切り裂いて言った。

 

「ナメるなよ小娘。お前ごときオレ一人でなんとかできるよ」

「…………改めて聞くわ。貴方、何者なの?」

 

固唾を飲むお姉さんの質問にオレは不敵に笑って答えた。

 

「神威ソラ。『無血の死神』って呼ばれる――――通りすがりの神器使い(英雄)だよ」

 

いつも通りでいつものように敵を蹂躙すればいい。

それだけの話だろ?




水晶球を使ってくる魔法少女います。ただし、漫画版のみのキャラクターですが。
原作ではシリアス一直線な人なのに、この小説では完全ないじられキャラです。

ま、楽しんで読んでくれれば幸いです。

次回、開幕。

さあ理不尽の時間だ。

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