しばらくはリリカルから離れますのでご了承ください。
ではどうぞ。
閑話 それぞれの立場
(??サイド)
天ヶ瀬千香。
神器使いである彼女は管理局に捕まる際に、まどか達にあらかじめ仕込んでいた送還術の札を発動させ、それから自身も送還術を発動した。
そのとき見た彼女を捕まえて喜んでいた
そんな彼女はちょっとだけ懸念していたことがあった。
送還術である。召喚術とは違い、自身を別の世界へ跳ぶ術式は星の位置によってランダムで決まってしまうのだ。
つまりまどか達をバラバラにしてしまったことが唯一の懸念なのだ。
(ま、ソラがそのうち集めてくれるねきっと)
そんな自信がどこからあるのか聞きたいところだが、今はそれは後にすべきである。
今、座っている彼女の目の前には白衣でパープルなマッドサイエンティストが座っているのだ。
「で、スカさんはボクをどうしたいのかな?」
「君達の神器を調べたいね。この世界には技術だからね」
「うーん、ぶっちゃけそれはほぼ不可能だね。これってどちらかと言えばオカルトの部類だから科学的には限界があるよ」
「この世界は魔法を科学的に解明したんだ。不可能じゃないだろう?」
ごもっともだね、と千香は薄く笑って続けて言い出す。
「ボクの前世は造られた命だったんだ。オカルトって言われたらそこでおしまいだけど、どうかな? プロジェクトFで『ボク』を作ってみない?」
彼女は前世の自分――――人造神器使いを造りだそうと提案したのだ。
プロジェクトFはただのクローンではなく、その人の記憶、能力を完全にコピーできる技術だ。つまり、人造神器使いも造れる可能性があるのだ。
しかしプレシアのような天才ではない限り不可能な違法研究のため、あまり試す科学者はいない。
「それはどういう意味かな? 千香くん」
「そだねー。提案とも言えるし、取り引きとも言えることだけど単調直入で言うと」
ま、要するに、と千香は続けて言った。
「ボクの友達になってよ」
「…………それはなぜかね?」
「ボクって師匠から性質が受け継がれててね。――――――――『混沌』。要するにボクはボク達をバラバラにしてくれた管理局をめちゃくちゃにしたいんだ。あ、面白おかしくするつもりで」
千香の言葉にジェイル・スカリエッティは笑い出す。
彼女はなんと言った?
混沌を求めるとは――――なんとも面白いじゃないか!
スカリエッティはそう思い、彼女に向かって言い出す。
「よかろう! 君と友達になろうじゃないか!」
「よかったー。提案呑んでくれなかったからソラにぶちのめされてたよ?」
「ソラとは君が話していた神器使いのことかね?」
「うん、そだよ。あの人敵には全く――――――――ハッ、スカさん! ティンときた。プロジェクトF…………人造神器使いのモデルが決まったよ!」
「なに!? ならば話してくれたまえ!」
混沌とマッドサイエンティストの会話は続く。
天ヶ瀬千香。彼女はどんな場所でも変態化と混沌をもたらす少女である。
☆☆☆
友江マミは記憶を無くしていた。送還術の影響で彼女は記憶があやふやになり、自分の名前以外しか思い出せなくなった。
加えて彼女がいる国は妖精という耳が細長く、人間達の背中に羽が生えた種族達が住むところで、疎外感に
そんな彼女は妖精の国の王女に保護され、侍女として働いていた。
「かれこれ一ヶ月ですね姫様」
「もう、マミさん。二人っきりの時はアスナって呼んでよ」
「ふふ、ごめんなさいね」
すると、マミは具合が悪そうに頭を片手で抑える。アスナは心配そうな目で見つめる。
「…………また例の発作?」
「そうね…………。もう嫌になっちゃうわ」
「駄目よ。それが記憶を取り戻す大事な兆候だって医者も言ってたじゃない」
「そうね。ごめんなさい…………」
するとお茶室に誰かが入ってきた。金髪のロングで顔立ちが整った長身の妖精だ。
名前はオベイロン。次期妖精王として候補が上がっている実力者である。
「アスナ、話にきたよ」
スマイルを浮かべて話しかけるがアスナはそっぽを向いて話そうとしない。
アスナはオベイロンの許嫁であるが、アスナは彼のその軽そうな雰囲気と人間を見下す視線が気に入らなかった。
「なんだよ。お話しようじゃないか」
「あなたとはしたくないわ」
「そんなこと言わずに――――!」
近づこうとしたオベイロンにマミはマスケット銃を彼の顔に向けて威圧する。
「お戯れすぎますわ、オベイロン卿。アスナ姫は今日は具合が悪いため、お引き取りくださいませ」
「…………野蛮な種族め、僕の邪魔をするのかい?」
「野蛮で結構。私はアスナ様を守れるならどれほど罵られようと姫様のために尽くすまでです」
スカートの裾を掴んでお辞儀するマミの言動にオベイロンは舌打ちしながら出ていった。
アスナはそんなマミに憧れの視線を向けていた。
「どうしました?」
「いやマミさんって
「ふふ、お姉ちゃんですもの。…………あら?」
「どうかしたの?」
「いえ…………なんでもないわ」
首を傾げるアスナにマミは窓から見える空を無意識に見ていた。
(私に弟がいたかしら?)
その認識が後に彼女を元に戻すきっかけになるとは誰にもわからなかった。
☆☆☆
妖精の国の騎士を精鋭に集めた部隊があった。そこにいる者達は国境を越えようとしてくる侵入者達を排除するのが役目だ。
その部隊に友江さやかは隊長であるリーファ・アルヴェイムをサポートする副隊長に所属していた。
「お兄ちゃん…………」
その隊長はどこか暗い声で義理の兄を想っていた。その兄が今日、国境を越えて侵入してきたらしいのだ。
「元気だしなよリーファ。お兄ちゃん見つけたらすぐに国境から出せばいいんでしょ?」
「簡単に言わないでよ。人間だからと言ってあの人は神器使いよ。そう簡単にはいかないでしょ」
「でもあたしも神器使いだもんねー」
さやかは記憶を失わず、リーファに拾われてその実力を妖精王アバロンに認められ、副隊長に抜擢されたのだ。
彼女の目的はマミの記憶を取り戻すこととソラの再会である。
だからこそ、大きな組織に所属した方が見つかりやすいのではないかと思ってここに入隊したのだ。
(ソラ、マミさんの記憶はあんたの手にかかってるわよ)
今日も彼女は空を見上げる。綺麗な青空で彼女は彼女の英雄を待つ。
☆☆☆
友江杏子もまたこの世界にいた。彼女は猫耳族という村に拾われ――――――――
「獲物だ! やっちまえ!」
「「「おォォォォォ!!」」」
族長になってた。その支えであるシリカ・ユールベルは呟く。
「杏子さん今日も元気だなぁ」
後に彼女がどうなるかは――――――――実はもう決まっていたりする。
☆☆☆
とある一軒家にてピンクの髪の少女が目覚めて、急いで学校の支度をした。
昨日みた変な夢のせいであまり眠れなかくて、寝坊したのである。
(なんで私があんなに変な人になってる!? てか、知らない男の人めちゃくちゃ疲れてそうだったなぁ…………)
もしかして平行世界ではああなっているのでは?とそう思うと若干、憂鬱になる。
だが、学校の授業という使命があるため急いで学校へ向かう。
『ティヒヒヒヒヒ♪』
変な自分の笑い声がしたのは気のせいだと思いたくなった鹿目まどかだった。
――――――――そして、その日。転校生と出会い、仲良くなり、彼女はある事件に巻き込まれる。
だが、不安になることなかれ。
最高にして最強の味方がこの地に来るのだから。
あれ? なんかラスボスフラグ立った? まあいいや。
ちなみにまどかがいる世界はただの平行世界ではありません。
そして、まどかがいる世界は『まどマギ』であって『まどマギではない世界』です。
まだネタバレしたくないので伏せて置きます。
次回、接敵。
――――問答無用? 残念。それが彼の一般常識だから。