とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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ソラ達の冒険の行き先が決まりました!!

行き先はのヒントは――――『暁美ほむらの数あるループの一つです』

ではどうぞ。


第五十二話

――――ああ、またこの世界か…………

 

真っ暗な世界にオレはいた。ここはいつも夢で見る世界。

 

暗闇の中の自分、誰もいない世界。何もない世界。

そんな世界で、誰も存在しない一人ぼっちな自分。

 

 

――――オレはいらないの? いちゃいけないの?

 

 

かつて母親に拒絶されたトラウマがフラッシュバックする。

その時は彼女達がいたから乗り越えることができた――――――――…………が、その彼女達はいない。

 

 

――――目の前の敵が全て奪ったんだ

 

 

だから憎い、許さない、救わない、殺す。

敵は殺さなきゃ、殺されるは自分だけではない。…………大切な人まで奪われてしまう。

 

だからオレは敵を排除する。

 

 

――――…………暗闇の世界。それが今のオレの心象風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、空から光が射し込む。見上げると、見えてきたのは青い空。

 

その光に当たる少女がいた――――――――まるで天女のように

 

黒い長い髪に細い身体。

いつもクールでいつもオレをいじめて楽しんでいるが、オレが一人ぼっちのときには必ずいてくれた人。

 

前世のときから鋼の心と意思を持ち、ホントはオレと同じ寂しがり屋で不器用だけど可愛い女の子。

 

その少女がオレに手を差し伸ばす。オレはその手を掴むと暗闇の世界が払われ、綺麗な青空が広がる湖の水面の上にいた。

 

…………明るく美しい心象風景となったのだ。

 

――――彼女がいたからオレの心は晴れた

――――彼女がいたからオレは『いつもの』オレでいられるんだ

 

 

そう、その少女の名前は…………――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤に燃えるオレの家のごとく、オレの憎悪は燃え盛っていた。

魔力弾がたくさん向かってきたが、肩に当たろうが膝に当たろうがお構い無しにオリ主くんの部隊に向かっていった。

 

「なぜだ! 神威ソラは魔法が効かないレアスキルがあるのか!?」

 

隊員の一人がそう言うのでオレは答えと共にその隊員に斬り込む。

 

「身体を貫けない魔力弾なんてBB玉と同じなんだよ!」

 

神器でその隊員の魂を身体から切り離した。

糸が切れたマリオネットのように彼は崩れ落ちた。

 

それを確認した隊員達はオレから距離をとった。

 

 

「っ! 全員殺傷設定にしろ!」

 

隊員の一人が死んだことを知ったとき、オリ主くんは今さら本気で殺しにくる気になった。

 

遅いんだよ…………――――なにもかもな!

 

「らァァァァァ!」

 

次のターゲットを決めたオレはそろっている隊員を二人共斬った。

結末は最初と同じで、隊員達はオレに殺傷設定の魔力弾を撃った。

 

「…………逆効果だっての。『跳ね返せ(ミラーシルド)』!!」

 

オレはその魔力弾達をマジックでまるごと隊員達に跳ね返した。

隊員達は胸やら肩やら貫かれて苦悶を浮かべる。その隙にオレは三人の隊員達を斬り捨てた。

 

「残り…………十五人」

 

燃え盛る家を背景に自身の唇を舌で舐めふく。

隊員達は徐々に恐怖に煽られてガタガタ震えていた。

 

「誰一人逃さない。蹂躙し、徹底的に排除してやる」

 

皆殺しだ!とそう叫ぶと遂にオリ主くんの隊員達は我先にとオレに背中を向けた。

 

 

本来、部隊でオレに挑むことは有利に事を運べるがその部隊は瓦解した。

もはや、ザコを刈り取るだけの作業にすぎない。

 

オレは逃げ出している隊員達に向けて、多数の雷のマジックを放ち、近くにいる者は斬り殺した。

 

あとはオリ主くんだけか。

 

そう思っていると高町のスタラクラスの砲撃がこちらに飛んできた。

魔法名は覚えてないが高町スタラくらいある魔法らしいが、オレに対しては無意味である。

 

――――オレはその魔法を神器でキャンセルしたからである。

 

キャンセルされた魔法は消滅し、空中にいる疲労したオリ主くんに向かってジャンプし、蹴り落とした。

 

「ぐは」と肺から息を叩き出されて、地面に寝転ぶオリ主くんに向かってそのまま飛び蹴りを決めた。

 

今度は口から血を吹き出した。だが、まだ止めない。

オレはオリ主くんの首を掴み上げ、ティーバッティングのように身体を神器で打つ。

 

 

ボキッ、メキメキ!!

 

 

嫌な音と共にオリ主くんは近所の壁へ叩きつけた。壁は瓦解し、オリ主くんを下敷きにした。

オレは再び近づき何度も何度もオリ主くんの顔を蹴り続ける。

 

殴る、蹴る、殴る、蹴るの繰り返し。骨を折り、砕き、そして使えなくさせる。

 

それから剣らしきデバイスも拾い、握りつぶした。そこから機械的な断末魔が聞こえたがどうでもいい。

これでヤツに武器はないしな。

 

「オイ、まだ生きてるだろ? まだ動けるだろ? そうだろ!」

「あ、が…………も、う…………やめ…………」

「やめない。止めない。お前をぶちのめすまでやめるかよ!」

 

オレは瓦礫に埋まった彼の身体を力一杯蹴った。

瓦礫は吹き飛び、オリ主くんは路上で地面に転がった。

 

「気は済んだよ。あとはお前を殺す。…………絶対に」

 

今のオレは師匠を失ったと同じ顔をしていると思う。

修羅となったオレは神器を上げて、転がった彼を斬り下ろす作業に入ろうとした――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――しかし、神器が握られた腕にピンクと金色のバインドが巻き付いた。

 

「もうやめて! 草太くんを殺さないで!」

「神威、もう罪を重ねないで!」

 

高町とフェイトだけでなく、衛や八神もいた。

しかし今のオレにとって、それはただの雑音(・・・・・)でしかなかった。

うるさい者でしかなかった。

 

「邪魔すんな…………殺すぞ」

 

オレの殺気を込めた声に高町とフェイト、八神の震えは止まらなくなった。

バインドを引きちぎり、オレは今度こそオリ主くんを殺そうとしたが、今度は身体に衝撃がはしり、足が地面を滑らせる。

 

「衛、なんのつもりだ?」

「純粋な少女の願いを聞かぬ愚か者を飛ばしただけだ」

「ほざけ。敵の声をイチイチ耳を貸してられるか。その間に殺した方が効率がいい」

 

「やはりか…………」と衛は呟く。

八神は微かだが、衛はもう気づいているようだ。

 

 

 

――――そう、もうオレは衛達は味方には見えない(・・・・・・・・)

 

 

 

頭に血が上ってる? 違うね。オレは冷静で、ちゃんと考えてるよ――――――敵をどうやって排除するかをな。

もう周りはただの敵だ。それ以上もそれ以下でもない。殺すべき対象でしかない。

 

 

「ならば友として間違ったことを止めるまで」

「やってみろファイター。お前の筋肉がオレにはどれほど意味ないか教えてやる」

 

オレはそう言って神器(全てを開く者)を捨て、そのまま前に突っ込んで衛の身体に拳を埋め込んだ。

 

「カフッ! くっ、なん――――グガ!?」

 

踏ん張ろうとしたところでオレは地面に手をつけて、逆立ちのような蹴りを顎に向けて放つ。

蹴り上がった衛をオレは離れた場所から手に召喚し、衛の身体へフルスイング。

 

防御体勢に入ったが、お構い無しに結界に張られた民家へ叩き込んだ。

衛はフラフラしながら立ち上がる。

 

まだ戦えるか…………。

 

「なんでなん!? 衛くんがなんであんなにダメージ受けるん!?」

 

八神は疑問の声をあげた。

確かに物理攻撃において衛の耐久力はすさまじく、大抵の攻撃はあんまり効かない。

 

「だが、よく考えてみろよ八神。オレがやってきたことを」

 

八神に向かってそう言うと彼女はハッと何かに気づいた。

 

やっと気づいたか。

 

岩やビルを切り裂ける腕力。ビルからビルへと跳ぶほどの脚力。

神器使いはこれをできてしまうくらいの身体能力が隠されているのだ。前世でも、正直これには驚いたが同時に恐怖があった。

なんせ、やろうと思えば人を簡単に腕力で殺せるのだから。

 

でも、もうオレにはもうそんな恐怖はない。躊躇もない。

敵が鋼の肉体ならばなおさらだ。鋼ごと潰せばいい話だ。

 

「だが、しかし…………それでも我は諦めぬ…………」

「いや諦めろ。お前が相手しているのは神器使い達から英雄とうたわれた化け物だ」

 

オレは衛の前まで近づき、そして最大威力の斬撃を身体に与えた。魂は切り離していない。

しかし、かなりのダメージが衛に受けたはずだ。

 

「が……は…………」

 

現にバリアジャケットは解除され、その身体は倒れた。

これで邪魔者は――――いない。ヤツ(オリ主くん)を殺すだけ。

 

「…………だからそこで寝てろ。オレがヤツを殺すまで」

 

オレはそう言ってオリ主くんに向かおうとするが、足首を掴まれた。

衛はまだ諦めていないようだった。

 

 

「このまま…………では、貴様は我らの元からいなくなってしまう…………そんな気がするのだ…………」

 

 

…………うるさい。放っておいてくれ。

 

 

「だから…………頼む…………怒りをしず――――」

「…………うるせぇよ」

 

…………もういい。こいつから殺そう。オレの頭はもう衛を邪魔者でしかない。だから排除する。

八神の悲鳴がしたが気にしない。向かってくるなら八神もみんな殺すだけだ。

 

オレはその手始めに神器(全てを開く者)を衛に向けようとした――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ

 

 

 

 

 

 

――――そしてまた(・・)彼女に止められた。

 

「なんで……だって…………お前は…………」

「私をナメるんじゃないわよ。あれくらいで抜けられないじゃあ魔女を単身で倒してこれなかったわよ」

 

彼女はいつもの顔でそう言った。

 

「だから落ち着きなさい。あなたは一人じゃないから…………」

 

彼女はそう言ってオレを後ろから抱き締めた。

暖かいその身体で、オレの冷えた心は暖かくなっていった。

 

「もういなくならない…………?」

「ええ」

「どこにもいかない…………?」

「どこに行っても探してあなたを見つけるわ。だから、こっちを向きなさい」

 

オレは彼女の指示に従い、顔だけ振り向いた。

 

 

――――柔らかな感触が唇に押し付けられた

 

 

キスされたのだと、唇が離れたときにオレは気づいた。だけど羞恥心はなく、胸が暖かくなるモノだった。

 

「ありがとう…………ほむら」

「ええ、どういたしまして♪」

 

涙を流してオレは純粋な感謝を彼女に伝えると、彼女は見惚れるくらい綺麗な笑顔で答えてくれた。

 

彼女がいるからオレは『いつもの』の自分でいられる。だから、オレは『いつもの』の自分に戻るのだった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一回するわよ、ソラ。…………ハァハァ」

「いやなんで興奮してるの!? 今、キスとかそういうことしてる状況じゃ――――…………っていきなり顔を掴んでるの!? ちょっ、強引すぎ…………ムゥゥーーーー!?」

 

その後、『ズキュゥゥゥゥゥン』な熱いディープキスされたり、首にキスされたり成す(すべ)なくほむらにされるがままに蹂躙された。

…………ほむらって実はキス魔なんだね。

てか、いつか貞操が奪われるそんな気がするよ…………。

 

そう思う今日この頃でした、まる。




そして最後には台無しにする――――それがこの小説です。
ぼけなすワールドのほむらはキス魔です。ムラムラするとキスしてくるので生徒のみなさんは気を付けて帰ってください。ただし、ソラ。テメーだけは駄目だ。生け贄だからねー(ゲス顔)

さて、ソラはチートですが最強というわけではありません。
チート=最強という法則を否定したくて今回のお話を作りました。

心の支えがなくなると彼は壊れていきます。壊れた彼はブレーキがなく、ただひたすら敵を抹殺する使徒になります。
師匠を失ったときのソラはまさにその状態です。

孤独は人を弱くさせます。繋がり広い人ほど、それは強力になると自分は思います。
豆腐メンタルと言われがちなマミさんですが、長いこと孤独であれば誰だって弱くなるだろうかと思います。

かと言ってソラが豆腐メンタルというわけではありませんが。

次回、オリ主くんの末路と行き先

――――安心してとっとくたばれ、オリ主くん

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