結界に張られた空はどこか暗い天気だ。
そんな中、オレとシュテル達が戦っているのは市街地である。故にオレにとって得意なジャングルファイトができるというわけだ。
しかしそんなオレでも弱点はある。
人外とか言われてるけど、弱点はあるのだよワトソンくん。
「チッ、さっさと当たれノーパン娘!」
オレはビルとビルの間を駆使して、空中にいるシュテルに向かって斬り込む。
しかしヒラリとかわされる。
「お断りします。当たれば動きを封じられるのでしょう? それとノーパンになった私は無敵です」
「どうでもいいわ! しかもそのどや顔、腹立つ!!」
そう言いながら、シュテルは熱線を撃つがそれを神器でキャンセルした。
シュテルが言ってることは正解だ。
相手は生身の人間ではない。さらにシュテルはあくまで高町モデルのプログラムであり、中核的な存在ではないため、一撃で機能を停止ことはできない。
できると言えば相手の動きを止めるのみだ。
「防御はしません。だけど、回避はします。それから攻撃する。それがあなたの攻略法です」
「ノーパンのくせによくできました…………よ!」
オレは雷のマジックをシュテルに放った。シュテルはそれをシールドで防いだときに、オレはすぐさま斬りかかる。
しかしシュテルはバックへ下がってから空へ逃げたため、斬れなかった。
「そしてあなたは飛ぶことは苦手。そのため、あなたは私を深追いはしない。なぜなら私のモデルである高町なのはの十八番に挑むという愚行ですから。むしろ自身の得意なジャングルファイトに引き込むつもりなのでしょう?」
シュテルはそう言ってオレへ熱線を撃つ。オレはまた神器でキャンセルした。
マズイ……こいつはもしかして…………。
「気がついたようですね。そう、これがあなたの弱点。なぜあなたはあまり戦おうとしないか? そしてなぜあなたはもう一つある
答えは一つ、とシュテルは続けて言った。
「あなたは
「っ…………!」
そうだ。シュテルの言う通りオレは長く戦えない。
前世のオレはまどか達と会ったときは十二歳だったから魔力量はまだあり、戦時中のオレは全盛期とも呼べるくらいそれなりに長く戦えるほどの魔力量はあった。
――――ところが今のオレは九歳の身体。つまりまだ子どもの身体だ。
そのため魔力量は少なく、あっても平均の上くらい。連続で神器が使える回数も大体三十回で限界になる。
だからこそオレは誰かがいないと長くは戦うことはできないし、一人で戦うときはできるだけ早く終わらせるべきなのだ。
「…………さすがだ。よく研究してくれたもんだ」
「知のマテリアルですから」
無表情で胸を張るシュテル。
いや無表情で胸を張られてもなぁ…………。
「どうせならまな板じゃなくてボインなお姉さまの方がよかった」
「決めました。あなたは後でシバきます」
怒りの琴線に触れたようだ。なんてこったい。
すると、魔法陣が現れて八神モドキとレヴィが現れた。気のせいだが八神モドキは既にボロボロだったがヤバい。
一対多数になった!
シュテルは時間稼ぎだったのか!?
「そうですよ~。あなたを確実に封殺するためですよ~」
オレは後ろを振り向くとバインドされてしまった。その時に
視界に入ったのはアミエと似た服装を着た女性だ。どうやら彼女の仕業らしい。
ピンクのロングストレートヘアー。ゆったりとした顔立ち。
そう、アミエが言っていた特徴に合致していた。
彼女の名前はアミエから聞いている。
確か……………………
「お前は、淫乱ピンクのキリン・オブ・スシタロー!!」
「誰ですかそれ!?」
「えっ? 違うの?」
「キリエ・フローリアンよ! どこをどう間違ったらスシタローやキリンが出てくるのよ!?」
「なつかしの感想欄参照。なんかオレのことキリンと呼ぶ人いたから」
「メタ発言禁止よ!」
おぉ、このツッコミは正しくアミタの妹っぽい。
お前のことアミタ探してそうだぞ?
「ツッコミで姉妹判断しないでよ! てかお姉ちゃんと会ったんだ」
「『帰ったらお尻ペンペンしてやるー』って愚痴を言っていたな」
「あの人はお母さんか。いやお姉ちゃんだけど」
「オレの場合、自宅ではなくて公園でやることをオススメしたら快く頷いてくれたぞ」
「アンタ何しちゃってるの!?」
もうやだコイツ、とキリエはさめざめと泣いて嘆いていた。そんなにひどいことしたかなぁ?
なんかマテリアルズも同情的な眼差しでキリエさん見てるし。
「お、オホン。とにかく大人しくしていればこれ以上危害はくわえないわよ」
「あ、持ち直した。それからアミタから聞いたんだけど、お前ってケーキ食べ過ぎて」
「お願いだから誰か、この人黙らせて!」
素直な少女レヴィがキリエの言うことを答えて、背後からオレの口を手で抑えた。
えっ? なんでこんなデリカシーないこと言ったのかって?
…………アミタのシスコン話の逆恨みさ。一時間くらい話してたぞあの人…………。
ま、結局オレは白旗をあげて降参するのだった。
(まどかサイド)
私達は集合場所で揃っている中、ソラくんだけまだ来ていない。
すると、マミさんから着信音が鳴った。なんか渋くて懐かしい曲だったと思う。
「あ、ソラくんから電話だ」
「今どこにいるか聞いてくれないかしら」
「わかったわ」
ほむらちゃんに頼まれたマミさんは通話を始める。
『あ、もしもしマミさん? ちょっとマテリアル捕まって来れなくなったんだけど』
「さりげなくマテリアルに捕まったとか言わないで」
マミさんは呆れながらため息を吐いた。
ソラくんもしかして余裕なのかな?
「それじゃあ今すぐお姉ちゃんがたすけ――――」
マミさんがそう言いかけたとき聞いてしまった。
『あ、ソラ! 勝手に電話かけるなよ! 君は捕虜なんだぞ!』
『うっせー。こちとら暇で暇で堪らないんだよ! てか、背中に抱きつくなよレヴィ!』
『だってソラの背中暖かいもーん!』
『部下一号の仇はどうした! オレは怨敵だぞ』
『えっ? ……………………誰だっけその子?』
『忘れ去られた!?』
『過去は振り返らないのが大人の女性なんだよ、ソラ』
『こいつホントにレヴィ!? 短時間で、ものスッゲー大人になってるのだけど!!』
電話から活発そうな女の子の声がした。
それだけでなく…………。
『ソラ、ちょっと手伝ってください。この金庫開けたいです』
『どっから持ってきたその金庫!?』
『ちょっとあそこにあるバニングスという豪邸から』
『盗むなよ!』
『何を言いますか。私達の行動には資金が必要です。ですから別に翠屋のシュークリームが食べたいからというわけで持ってきたわけではありません』
『それが本音だろ! わかったから返してこい! あとで買ってやるから!』
『ところでソラ、ノーパンになりませんか?』
『ならねぇよ!! 男のノーパンなんて誰得!?』
今度は知的そうな女の子の声が。さらにさらに…………。
『苦労をかけるな』
『いや苦労をかけさせないように止めろよ王様。これだといつも通りの振り回されてるオレだから』
『普段の貴様って苦労人なのだな…………』
『そうなんだよ…………。最近、杏子の食べる光景が癒しになってるんだよ。あの幸せそうな表情が唯一の清涼剤なんだよ…………あははは』
『しっかりしろ! なんか口から白いの出てるぞ!?』
『三途の川やー…………』
『渡ろう!!』
『渡るな! レヴィも悪ノリするな!!』
偉そうだが、面倒見の良さそうな女の子の声が聞こえた。
そう…………そうなんだね…………。
「ソラく~ん…………♪」
『ハッ! ま、待ってくれ。これには訳が!』
「いやいや、もうわかってるよー」
「そうね。私も把握したわ」
「お姉ちゃんもよ♪」
私達三人は通話口にて、一斉に向かって言い出した。
「「「敵は
『いやァァァァァなんか知らないけど殺されるゥゥゥゥゥ!!』
『捕虜が暴走した!?』
『だ、誰か取り押さえ、ふにゃ!?』
『あ、キリエがシバかれた』
ブツ、ツーツー…………。
そんなカオスな展開が起こった後に通話が切れた。
さてと、帰ったらほむらちゃんやみんなと一緒に考えようか…………。
「題して『ソラくんお仕置き計画』を、ね♪」
「腕が鳴るわ」
市街地にて行きゆく人達は私達のオーラに怯えていた。
あーれ? 私達、別に怒ってマセンヨ?
ソラの死亡フラグが立ちました。これが主人公としての性(さが)なんでしょうね。
ちなみにソラの弱点なんですが大人になっても変わりません。もう一つの神器を使いながら戦うとすぐにエンストしてしまうくらい『全てを開く者』は燃費が悪い万能な神器ですから。
次回、覚醒。
――――忘れた頃にやってくる。変態ではないけど。