とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――やはり彼女の娘だった…………」


第四十六話

アースラのとある一室にてオレ達神器使いと魔導士組がそれぞれ揃っていた。

理由は衛と八神の前に現れた一人の少女とオレの関係だったりする。

 

「ふわーパパだー♪」

「オイ、初対面に抱きついてあまつさえ、パパとはなんだパパとは。オレは前世から童貞でピカピカの三年生だぞボケ」

「相変わらず知らない人には辛辣だねー。スリスリ~♪」

「スリスリすんな!!」

 

自称オレの娘、神威天気はオレの胸にスリスリしてきた。

 

パパってなんぞ? オレはまだ子作りした覚えはないぞ?

いつでもバッチこいってヤツらは知ってるが。

 

「説明してもらうわよパーパ?」

「ひどい…………私達に秘密に子ども作ってたなんてひどいよ!」

「ほむらさんや、とにかく説明するためにいつでも撃つ準備しないで。マジで怖い。あとまどか、お前もな。神器出していつでも滅ぼすようなことしないで」

 

グロックと神器を構える二人の修羅をなだめる。

第一に子作りできる年齢じゃないだろ、オレ。

 

「ママ達も相変わらずだねー。パパをいじめて楽しそう♪」

「聞きました? ほむらちゃん。私達のことママですって」

「あらやだ。想像妊娠してできた子かしら?」

「移り変わり、はやッ!」

 

思わずオレはツッコむ。臨機応変なのはこのことだろうよ。

 

それから衛の彼女から聞いた話によるとどうやら彼女は未来から来たらしい。

いつものようにお昼寝していたら、謎の次元の渦に巻き込まれてタイムスリップしたそうだ。ほむらもびっくりな事実である。

 

ちなみにそれぞれに娘がいるらしい。彼女は姉妹の中で末っ子らしいが。

 

「未来のことはあまり言えないけど、パパはお母さん、まどかママ、ほむらママ、杏子ママ、さやかママ、マミママと今でも仲良しだったよー?」

「アタシ達も未来ではソラと一緒ってわけか」

「それ聞いて安心したー」

 

杏子は納得し、さやかはホッと息を吐いた。そういえばこいつって前世では失恋してたよな。

まあ、それを考えると無理ないか。

 

「ちょっと待って。お母さんって誰かしら?」

 

マミさんは首を傾げて天気に聞いてきた。

そうなのだ。お母さんだけ固有名がなくて誰なのかわからないのだ。

 

…………いや、ヤツって予想はできてるんだけど信じたくない。

 

だって天気はいくらなんでもヤツとかけ離れているし、若干ゆったりしたマトモな女の子だぞ?

それが事実なら残酷すぎる…………。

 

「やあやあ、ボクのお手洗いの時になーにおもしろいことしちゃってるの?」

 

千香がハンカチで手を拭きながら入ってきた。

すると、天気はバッと千香に振り向いて、オレから千香へ飛び込んだ。

 

「おかあさーーーーん♪」

「おぉ、いつからボクは母親に!? パパは誰! ソラだったら今すぐ寝室に行かせるよ!」

「そこで何するつもりだ!?」

「それはボクのうれし恥ずかしなご褒美タイム!!」

「わけがわからないよ!?」

 

と聞きかえしたが、グヘヘヘと妄想に浸る千香は聞いていない。

どうせ、ろくなことじゃない。

 

「うにゅーお母さんの匂いだー♪」

「ミルキーな匂いでしょ?」

「うん!」

「そういうわけでこの後、君にはこの衣装を」

「させるか!」

 

なんか際どいバニーガールの衣装を取り出そうとした千香に向かって拳骨を落として失神させた。

なんかハァハァと息が荒くなってた気がする。こいつ気絶してるよな?

 

まあなんにせよ、危なかった。もう少しでこの子の将来に黒歴史が刻まれるところだった。

そんなやりとりがあったことを気にせず天気はまたオレに甘えてくる。

 

「パパーおんぶしてー」

「いや身長的に無理が――――……って聞く前に乗るなよ!」

 

揺さぶるが天気はコアラのようにガッチリとホールドして離れない。やれやれ…………しばらくそうさせるか。

 

オレは嘆息を吐きながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅふふふ…………お姉ちゃん達がいない間に幼いショタパパにマーキングしとこ。あ、写真も撮っとこうかな」

 

 

 

背中から聞こえたこの発言でオレは確信した。

 

あ、こいつ千香の娘だ。だって初期のあいつにソックリだもん。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

そんなこんなで千香の娘こと天気はさやかと杏子、千香と一緒に現在アースラ探検している。

 

何やら自分達が未来でどんなことしているのか気になるそうらしい。

でも天気曰く、あまり未来のことはしゃべれないらしい。

 

どうやら未来のことを口に出さないのが世界のルールであるため、それを破ると最悪抑止の存在が現れるらしいから、と未来のオレが言っていたらしい。

 

もう救済の魔女のような神話レベルの化け物はこりごりだ。

 

そして残ったオレ達はと言うと、

 

「よし、誰もいないな。うめぇー棒買いにいくぞ」

「あ、私はマーブルチロル買いに行こ」

「まどかに付いていくわ」

「私は紅茶の材料ね。それじゃ、各自解散ね」

 

オレとまどか、マミさん、ほむらはアースラからこっそり抜け出してコンビニ前に来ていた。

 

だって娯楽やお菓子あんまないし、何より閉じ込められてつまんないもん。

 

というわけで抜け出して好き勝手行動することになった。

今ごろリンディ提督辺りが胃を痛めているだろう。

ま、ドンマイを込めて焼き肉味のうめぇー棒を買っておいてやろう。

 

「ていうかまた結界? ヤバい。魔女がいるの?」

「魔女はいませんが魔法少女はいます」

 

上から声がしたのでその方向を見ると、高町モドキがいた。確か、名前は……………………

 

「シュテル・ダークネスだっけ?」

「シュテル・ザ・デストラクターです。ダークネスという名前じゃありません」

「んじゃ、イチイチ全部名乗るのがめんどいからテルミで」

「あなたにシュテルと呼ぶというセレクトはないのですか?」

 

無表情だが、どこか怒っているように見えた。

感情が希薄な少女だな。

 

「んで、そのシュテルちゃんがオレになんのようだ?」

「私達の目的のためにはあなたが邪魔です。ここで取り押さえます」

「邪魔ってオレってただの男の子なんだけどなー?」

 

ヘラヘラと笑って誤魔化そうとしたが、熱線がオレの真横を通過し、当たった地上が爆発した。オレはその余波で少し飛ばされたが着地して神器を構える。

 

「オイオイ、冗談キツいね。いきなり発射するものかね?」

「します。なんせ、あなたはあらゆるモノを開閉できる『全てを開く者』の持ち主ですから。私達が求めるモノを封印する可能性がありますから」

 

なるほど、それは納得した。

シュテルがオレを襲うには充分な理由だ。

 

そして新たな疑問ができた。

 

 

 

…………なんでオレの神器の名前を知っている? それは神器使い達や高町達を除外した知り合い以外には話していないことだぞ。

 

 

誰から聞いたんだ?

 

「聞いたというより闇の書から得た知識からですね。あなたは一度管制人格に取り込まれたそうですね? そのときあなたの記憶が写し取られたというわけです」

 

つまり、オレの癖や動きも理解していることか?

 

やられた…………。

 

誰か一人がいるのはまだしも動きを見切られたオレ一人がこいつに挑むのは些か無謀である。

いくらオレの神器(全てを開く者)の高性能であっても当たらなければ発揮しない。

 

「安心してください。あなたを殺すことはしません。ただ、捕らえるだけです。もし私達がそんなことをすれば確実に潰されますからね」

「それは確かにあり得そうぁなー…………」

 

よくわかってるじゃないか。

 

そう思ってオレは奇襲の斬撃を放つ。しかしあっさり回避された。その上、高町より速くなっていた。次々と斬りかかるが全く当たる気配がない。

オレはそんなシュテルの速度に怪訝な表情になっていく。

 

 

――――オリジナルよりも速い、だと? ありえない…………。

 

 

高町をベースに造り出されたこいつが高町より速くなるのは信じられない。

あいつは高い火力と防御力を重視した砲台タイプだ。鈍足のはずなのにオレより少し速く動けている。

 

なぜオレより速い、と聞くと彼女は答えた。

 

「私はある人の助言で気づきました。どうすればオリジナルより速く動けるのか?」

 

シュテルは目を瞑りながら答えが出たということ言った。

どういうことだとオレは聞いてみると、彼女は無表情だがどこか今にも自慢したい子どものような口調で言葉を出した。

 

「聞きたいですか? 聞きたいですね?」

「あ、なんか嫌な予感がするから別に…………」

「仕方ないですね。答えてあげましょう」

 

聞いてよシュテル…………。

 

「私はレヴィのオリジナルの服装から私は学びました。『脱げば脱ぐほど速くなる』、と」

「いや速く――――なるのか? てか知らないんだけどその定義。なんかヤなんだけどそれ」

「速くなります。実証されてますから。そして恥女というレッテルが張られますね」

「レヴィが恥女って暗に指してないかそれ?」

「レヴィは恥女ではありません。純粋なアホの子です」

「とりあえず味方をアホとか言ってやるなよ…………」

 

オレは呆れた目で見ているとシュテルは続けて言い出す。

 

「私はバリアジャケットの変更を試みましたが、どうも上手くいきませんでした。あと恥女というレッテルを張られたくないし」

「後者が本音だろ」

「認めます。けれど、私は諦めず今のままでどうやってレヴィのような速さになるのか求めました。そして気づきました」

 

どうやって速くなるのか、と聞くと彼女は答えた――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下着を脱げば、いいと」

 

――――予想の斜め上な形で

 

「うん、ちょっと待て。今なんて言った? なんか変なアンサーが聞こえた気が…………」

「言いたいことは一つです。『パンツ はかない』です」

「気のせいじゃなかった!?」

 

シュテルの背後に褐色肌のホムンクルスがサムアップする幻想が見えた。

てか、恥女じゃん! パンツ履かないとかノーパンで戦うつもりか、こいつ!?

 

「どんな定義だよ! 『脱げば脱ぐほど速くなる』という定義より恥ずかしいことだろ!」

「何を言いますか。これは既にレヴィが実証済みです。おかげでレヴィもノーパン主義者になってくれました」

「レヴィぃぃぃぃぃ!? お前も変態になってしまったのかァァァァァ!?」

「あ、大丈夫です。レヴィは『面倒だったから』という理由で脱ぎましたし、元からレギンス派だったそうです。私のような『スースーする感覚がたまらない』という理由ではないので安心してください」

「それなら安心――――…………できるかァァァァァ!! お前がノーパン主義者になってどうする!? 高町泣くぞ絶対!」

「ふぁ…………風でスースーする感覚が…………たまりません!」

「サムアップして答えるなよ!!」

 

まさかのフェイトの服装で感染するとは思わなかった!!

というか、よく考えたらこいつに助言与えたヤツは誰だよ!?

 

「天ヶ瀬千香です」

「またあんの変態かァァァァァ!!」

 

頭をグシャグシャするオレはもはや乱心である。

もうマテリアルがまともなのはディアーチェしかいないのか!?

 

そう思いながら目の前の変態に攻撃を続けるのだった。

 

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

一方ソラが戦っている間に八神はやてとディアーチェは戦っていた。

 

「納得してくれへんのか…………」

「そうだな。我の考えは貴様には相容れぬようだ」

 

お互いピリピリとした空気の中で一斉に魔法を放つ。

譲れない戦いはまだ始まったばかりだ。

 

「女の魅力は乳やろォォォォォ!!」

「ちがーう! 女の魅力は尻だァァァァァ!!」

 

 

 

という争いをしていた。なぜこうなったのかと言うと談笑していたらケンカになったとしか言いようがない…………。

そしてそんなケンカの中で衛は筋トレをしていた。

 

なにこのカオス。真面目に戦えよ、お前ら………………。




ちなみに天気ちゃんは末っ子ですが、一部の姉と同年代のらしいです。

彼女達は母親の遺伝を受け継いでいるため、未来のソラをたびた困らせているらしいです。
まあ、唯一の清涼剤としたらたぶんほむらの娘ではないかと。

だってあの子の初期っておどおどしていたけど無害でしたから。

そしてシュテル覚醒!! 速さという弱点を脱ぐという方法で解決しました。
…………うん、なんかすみません。真面目な回にしたかったのですが、Fate/exstraのラニという脱ぎ魔がいたのでそのネタを使いたくて………………ほら、キャラ的に似てたし。

そういうわけでシュテルファンのみなさんすみませんでした。
唯一まともマテリアルはディア―チェのみってさすがは王様としか言いようがありませんね。
おっぱい星人ならぬお尻星人ですが。

次回、ソラの弱点判明!? お楽しみください。

――――英雄であれど所詮は子ども。まだまだ弱点はある。

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