とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――彼は甘くない。敵であれば子どもだろうと容赦しない」


第四十四話

オレはまどか達を探しに地球へ戻った。

空中にいるオレは状況確認のために、遠目から見る。そこではやはり、あちこちに結界が張られているな。

 

それぞれが自分達の偽者と戦っているのだろう。

 

「ってこっちもか。休みがないなんて鬼畜だな偽者共」

「偽者じゃないぞ! 力のマテリアル、レヴィ・ザ・スラッシャーだぞ!」

 

子どもっぽい口調をしたフェイトがいた。

いやでもフェイトって歳の割には大人に近いよな。

 

これが普通か。それよりもツッコミたいことがある。

 

まず髪まで青く染めている。

もう反抗期? 早くね?

 

名前が厨二っぽい。中学二年辺りの病気に発症とは、いと悲し。

 

「オイ、フェイト。早熟だったせいで退化するなんてリンディさん泣いてるぞきっと」

「僕はオリジナルじゃないぞ! レヴィ・ザ・スラッシャーだ!!」

 

レヴィ・ザ・スラッシャーって完璧な厨二発症者である証拠である。

オレは暖かい目で彼女を諭そうとすることにした。

 

「フェイト、人生辛いことあるけど生きてればいいことあるさ…………だから、ね? その名前はやめようね?」

「オリジナルじゃないって言ってるだろー!! もー怒った! 部下一号やーておしまい!!」

 

なんか怒らせたみたいだ。すると、どこからか小さな影が現れた。

クリクリとした純粋な青い目。特徴的なアホ毛。そして手にはカギのような剣を持っている。

 

…………ていうかオレだ。しかも戦争行く前の。

 

「師匠! こいつがどうかしたのですか?」

「ぼくのことをオリジナルって勘違いするんだ! しかも頑固に!」

 

えっ、もしかして別人なの?

 

ということフェイトの二人目の姉妹ってことか?

 

そんなことを考えていると、小さなオレはオレ自身に神器を向ける。

 

あれも偽者か? だとしたら驚異じゃないな。

 

「おい、そこの死んだ目!」

「えっ、どこどこ?」

「お前だって! よくも師匠を人違いしてくれたな。オレが懲らしめてやる!」

 

あー、懐かしいな。あの頃のオレは子どもだったから「懲らしめる」とか言って戦場で敵と立ち向かっていたな。

 

「覚悟!」

 

小さなオレは無謀にも突っ込んできた。斬り込むが、甘い。殺す気なんてない斬撃は軽々と避けれる。

 

レヴィというフェイトもどきは「やってしまえ!」と歓声していた。

 

うん、とりあえず――――

 

「邪魔」

「ゴフッ!?」

 

頭を掴んで腹部に膝蹴り。小さなオレは咳き込んだ。

 

オレは離れたヤツにあっという間に近づき――――――――神器(全てを開く者)で首を叩き折った。

ボキッと嫌な音を立てて、小さなオレはそのまま下へ落下し、消えていった。

 

「な、なんてことをするんだ!」

「え、だって偽者じゃん。死んだところで光の粒子になって消えるから別に問題ないだろ?」

「そうじゃない! 子どもを殺すなんて酷いよ!」

 

子どもねぇ…………。オレはおかしくなって笑った。フェイトもどきはそれに対してさらに憤慨した。

 

「何がおかしいんだ!」

「んなもんオレには関係ないな。オレは子どもが戦うなんて当たり前の戦争に参加してたからわかるんだよ。そんな甘い理由で生かしたところで報復される。そんなヤツがいたからな。もう死んでるが」

「っ…………!」

 

歯を食い縛り睨み付けるレヴィ。

それに、とオレは続けた。

 

これがオレが小さなオレを抹殺する理由を口に出した。

 

「青二才の理想と信念はとうの昔に捨てた。だから気に入らないんだよ。…………昔の自分を見ていると殺したくなる!」

 

その理想のせいで師匠を亡くした。だから、オレはあの頃のオレに憎悪を抱く。

あのとき……あんな考えさえなければ師匠は死なずに済んだのに…………。

 

「お前の言うことはわかるよ。正論だ。子どもを殺すヤツは外道って言ってもいいだろうよ。…………けどな、そんな外道でいいよ。外道らしく惨めな最期が来るまでオレは大切な者を守るって決めてるんだ」

 

だから敵は殺す。女だろうが子どもだろうが老人だろうが戦場に立つ敵であれば全て殲滅する。

それが今のオレの信念だ。

 

「…………部下一号の仇をとってみせる!」

「仇討ちならご勝手に。ただし――――やれるもんならな」

 

オレは神器を構えるとレヴィはフェイトと同じ戦斧を構える。

双方、飛び出そうとしたとき熱光線がオレに向かってきた。

 

その魔法をオレは神器(全てを開く者)で解錠でキャンセルした。

 

熱光線を撃ってきたのは…………高町?

いや、高町は短髪じゃないし何よりもあの騒がしさがなく、物静かだ。

 

「シュテルん!」

「ミシュラン?」

「どうやったらそう聞こえるのですか?」

 

高町モドキは呆れながらそう言った。

オレってどうでもいいヤツの名前覚えるの苦手なんだよね。

 

「さりげなく最低ですね神威ソラ。私の名前はシュテル・ザ・デストラクター。理のマテリアルです」

「血? 物騒なマテリアルだこと」

「その血じゃありません」

 

間違えちった。テヘッ。

 

「ここまで気持ち悪い『テヘッ』は見たことありません」

「やっぱかわいくないわな、これ」

「なに普通に会話してるのシュテル! こいつ部下一号を消した敵だよ!?」

 

レヴィはそう言って戦斧を構える。しかしシュテルはそれを手で阻む。

 

「やめておいた方がいいでしょう。彼は魔導士ではなく神器使いという未知の化け物です。彼の能力を使えば私達なんてあっという間にスプラッタにされるのがオチです」

「化け物は否定しないけど、見ず知らずのヤツに言われるなんて、ちょっとショック」

「嘘を言いなさい。現に不敵笑っているでしょう?」

 

おや、顔に出てたみたい。

シュテルに指摘されて自分は笑っていたことに気づいた。オレって狂っているのかねぇ?

 

「ま、どっちでもいいか。向かってくる敵だったら殲滅するだけだし」

「こちらとしては見逃してほしいですね」

「あ。別にいいよ。オレ達に危害を加えないなら、何もしない。約束するよ。それにそちらはなんか目的とかありそうだしな」

 

オレがそう言うとシュテルは「感謝します」と言って飛び去った。

レヴィは「必ず仇討ちしてやるー!」とアッカンベーしながらシュテルに付いて行った。

 

「ま、できればまた戦うことがないことを祈るよ」

 

オレとしては連戦は勘弁だ。あんまり戦いたくない。

オレの弱点が浮き彫りするからな。

その後、みんなと合流してオレ達はアースラに保護されるという形で入艦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。フェイト、お前ってアリシア以外に姉妹いる?」

「いないけど…………。あ、もしかしてレヴィに会った?」

「まあな。次会ったら調べるか……………………血を全て抜き取ってからそのDNAを」

「母さん、この人いますぐ止めて! レヴィがスプラッタになる!」

 

リンディさんに殺人はダメよと怒られた。

 

冗談だよ。ブラックユーモアなのになぁ。




今回のテーマはソラの闇です。理想のせいで大切な者を亡くした彼は他人の理想を認めますが自分の理想は認めないし、憎んでいます。

だから今回の凶行にはしったのでしょうね。

次回、なんと未来の少女が現れる!! まあ、オリキャラだけどね。

――――蛙の子は蛙さ

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