とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――誰だって求める者はある。だから今回だけは許してあげてね、世界のみんな」


第四十話

エピローグ的な話を話せば、ロッテとアリアに指示を出していたお父様ことグレアムというオッサンが違法のためクロノ少年に捕まった。

 

彼自身も後悔していたらしく、管理局を辞めることにしたらしい。

 

いや、あんたの辞職程度で八神家は治まると思わないと思うなぁ。

家主の八神はやてを除いてだが。

 

それにしてもオリ主くんの殺人未遂も許されるとは思わなかった。

普通は少年院行きだが、管理局では魔力量が高くなおかつ優秀な人材という理由のため、無罪放免にしたらしい。

 

まどか達が憤慨したのは言うまでもない。

 

まあ、高町達もオリ主くんの信念に少し疑問を持ち始めたことだし、それでいいだろう。

 

そして、オレ達に重大な選択が残っていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

雪景色が広がる世界にて、オレ達神器使いとクロノ少年を含めた高町達魔導士組。

そして八神を除いた守護騎士達が、人の気配がない森にいた。

 

どうやら闇の書の防衛プログラムという八神を苦しめる元凶がリインフォースにまだ生きており、それは取り除くことができないくらい深いところにリンクしているらしい。

 

結果、リインフォースは闇の書もろとも消えないといけないらしい。

 

守護騎士達もそうなるのかと彼女達自身が聞いてきたが、どうやら闇の書から切り離して独立させたらしい。

 

「衛はどうしたのだ?」とオレはリインフォースに聞いてみた。さっきから見当たらないが…………。

 

「眠っている主のところに置いてきた。彼には既に言っている。筋肉の演説ができなくて残念だとか言っていたがな…………」

「それは聞かなくて正解だと思うぞ」

 

オレはやれやれと白い嘆息を吐きながら呆れる。

あいつの筋肉至上主義はたぶん永遠に変わらないだろう。

 

でも意外な話、あいつは変態という仮面を被った普通の少年だったということだ。

 

変態=最強という自己催眠してチキンハートを無くすとはなかなかである。

 

「お前には感謝している。主を救ってくれてありがとう」

「救ったのは衛さ。あいつがいなきゃ、ホントにバッドエンドになってたよ」

「だが、きっかけを与えてくれたのはお前だ。…………ありがとう」

 

頭を下げるリインフォースに照れくさくなってオレはそっぽを向いた。

美人に感謝されたんだ。仕方ないだろ。オレだってこんな人に感謝されたら照れくさくなるって。

 

それに…………また感謝されたな。

 

プレシアさん以来だな。

 

「そういえば、プレシアさんのお墓ってどこか聞いたのか?」

「…………ある次元世界に移したって今日アリシアからラインが届いた」

 

フェイトは素っ気なく答えた。オレがしたことは許されないという気持ちがまだあるのかもな。

どうでもいいけど。

 

「神威。あなたのしたことは許せない。私はたぶん永遠にあなたを恨むと思う」

「だろうな。お前の母親をどっかにやった張本人だしな」

「だけど…………ね」

「ん?」

「少しずつ、あなたを許していこうと思う。それがアリシアの願いだから」

 

目を瞑り、今ここにいない姉を想うフェイト。

アリシアめ、余計な気遣いを…………。オレは別に恨まれてもなんでもないのに。

 

「あーソラくん照れてるー♪」

「…………うっせぇ。ほっとけ」

「あら、そんなこと言うソラにはお仕置きではなく、誉め殺しという罰を与えるわ。光栄に思いなさい」

 

勘弁してくださいほむら様。もう羞恥心で死にそうです。

 

オレは土下座してほむらの罰を勘弁するようにお願いした。

…………みんなに笑われたことがかなり恥ずかしいです先生。

 

「お前にそんな顔があるとは意外だな」

「笑うな! たくっ…………。これから自分が逝くっていうのに何のんきに言ってやがる」

「そうだな。最期におもしろいものも見せてもらった。もう…………悔いはない」

 

リインフォースはそう言って高町とフェイトにお願いした。

そろそろか。リインフォースが消えるときが。

そして――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってや!」

 

――――衛に車イスを押された八神が来るときが。

 

甘いなリインフォース。お前の主は厄介なほどの優しいヤツだ。

 

「あ、主!?」

 

八神は一刻も早くとばかりに前へ前へ行きすぎて遂に前のりに倒れてしまった。

まだ立てない彼女はそれでもリインフォースに近づこうとする。

リインフォースはそんな八神に近づき、身体を支える。

 

「自分が消えるとか言わんといて! アンタは私の大切な家族なんやで!?」

「主、しかし…………」

「なんも言わんといて! 消えることは許さないで! ずっといるんや! これからも、いつまでもや!」

 

年相応なワガママなお願いだ。

 

だが、現実は変わらない。リインフォースは消えない限り防衛プログラムは復活はする。そうすればまた八神を苦しめる。

 

だからこそ、彼女の意思は堅い。

 

「主、ワガママを言ってはいけません。私はこれ以上あなたに迷惑かけたくありません」

「迷惑やない! 迷惑なんか…………!」

「わかってください。私も、私も生きたいです…………こんな優しい人に出会ったのにお別れしたくありません…………!」

 

でも、とリインフォースは続ける。

 

「でも、運命は変えられません。私はいなくならなければなりません」

「リイン……フォース…………」

「私は世界で一番幸せな魔導書です…………。ありがとうございました…………私の優しい主様…………」

 

そう言ってリインフォースは八神を衛に任せてそこから離れた。

 

彼女は覚悟を決めた。高町とフェイトはそれに答えなければならない。

 

「しっかし、最後の最後で彼女の本音が聞けたなぁ」

「うんうん、感動的だね~。千香ちゃんちょっと感動しちゃった」

 

でもな、リインフォース。お前は唯一誤算を犯した。

どんな誤算かって?

 

「んじゃ、やりますか」

「がんばってねー。全てを台無しにするのが変態の役目ですから♪」

「オレは変態じゃねぇから」

 

オレは神器を召喚し、高町達が魔法を放つ前に――――リインフォースを刺した。

 

神器使い達は嘆息を漏らし、それ意外はオレの凶行に驚愕していた。

 

「その呪縛…………解錠してやる!」

 

オレは神器を回すとリインフォースの身体から何かが開いた音が鳴る。

 

すると、リインフォースの身体は光出し、タイツ姿から真っ裸になった。

オレは神器を抜き、そのまま苦しそうに浮いている闇の書に向けて斬りかかる。

 

「この女を道連れにすることはオレが許さん。だから安心してとっと死ね、害悪」

 

オレは闇の書を真っ二つに切り裂いた。そして、とどめとばかりにまどかが弓矢を放って闇の書は欠片を残して消滅した。

 

ナイスまどか。残り物を殲滅してくれて助かった。

 

「な、何が起きたのだ? 私に…………」

「バグに侵された管制人格からお前を『解放』した。プログラムだったから簡単にできたよ」

 

要するに融合機能を失った魔力があるプログラムである。シグナム達と同じ存在と考えてもいい。

 

そのことを八神達に説明した。

 

「それじゃあリインフォースは…………」

「死なないよ。ほら、何か一言言ってやれ」

 

オレの言葉と同時に八神は衛の腕から飛び出して、リインフォースに飛び込んだ。

 

感動のあまり涙まで出す始末だ。

 

「我が友よ、ありがとう…………」

「感謝する必要はないだろ? だってあいつは言ったじゃねぇか」

 

 

 

――――――――『生きたいです。別れたくないです』ってね。

 

 

 

それにな、リインフォース。

 

運命は変えられないかもしれないけど、その果てにある『結果』は変わるもんだぜ?

 

オレは不敵に笑いながらそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ! 真っ裸なリインフォースと幼女なはやての百合百合シーンのシャッターチャァァァンス!! 富竹フラッシュ!」

 

あ、ヤベ。こいつ忘れてた。そしてほむらさんや、どうしてオレにアイアンクローするのですか?

 

「女性を丸裸にしておいてまだそんなこと言えるのね。ケダモノにはお仕置きよ」

「本音は?」

「たわわに実った果実に対する八つ当たり」

 

オレは「解せぬ」と一言残して、意識がブラックアウトした。

 

その後の展開は衛から聞いたけど、写真撮られてアースラで販売されたリインフォースは羞恥のあまり高町直伝のスタラをその場で撃ったり、八神がその写真をオークションで競り落としたり、残りはマミさん主催の優雅なお茶会していたそうだ。

 

やはりカオスで終わってしまった。

 

あ。ちなみに写真見てわかったけど、リインフォースって脱いだらスゴいんだ。

意外にあるよあの子。




…………救済完了!!

はい、リインフォースは融合機ではなくなった代わりに生存させました。
「ぶっちゃけ、リインフォースって管制人格プログラムでなくなったら大丈夫じゃね?」という作者の自己満足でソラに助けてもらいました。

後に彼女はどんな活躍するのかは楽しみにしてください。…………変態化する兆候があったけど。

さて次回は日常と進級。

展開が早いのはすみません。自分の実力不足ですから。

――――桜がまた舞う季節がやってきた。








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