辺りに黒い煙が舞い上がる中、オレ達は銀髪女性と対峙していた。
「こいつ、もう公式チートじゃね? 何回叩きつければ諦めるんだよ。キュゥべぇかこいつは」
「あれはある意味無敵だったけど、これはモノホンだねー」
「まどかさん、大丈夫?」
平気、と答えて、いつもの笑みを浮かべるがしんどそうに見える。
いくら円環の魔力が無尽蔵だからって生成に必要なものは精神力と体力を混ぜたエネルギーである。
それを休み無しでオレに供給しているのでさすがに疲れるのは無理ない。
「そろそろ、まどかがダウンするな。あいつらまだかよ…………」
「ソラくんの神器って長期決戦では使えないのよね?」
「オレの魔力量は平均の上だから、さやかの
「咎人に滅ぼしを――――」
「またスタラだよ、スタラ」
「スターライト……略してスタラだね。もうこりごりだよー…………」
「いちいち『
憂鬱そうにオレとまどかは溜め息を吐いて、まどかがそれにいつでも対抗する準備に入る。
ドンとこいという気持ちで『
「どうしたのアレ?」
「生理かな?」
「陣痛かしら…………?」
「まどか、下ネタ禁止。あとマミさん、それ予想の斜めを行きすぎてる」
なんでいつの間に妊婦になってんだよ。
戦う妊婦なんて新しすぎ――――――――いや待て。ソゲフの人はそんな人と戦っていたって女神から聞いたことある。
これが時代か…………。
オレ達は納得したかのようにウンウン頷いた。
『いやなに納得してんねん、あんたら。そんな時代はまだや。世界崩壊のときにくる時代やから』
『はやて、我が思うにそれはメタいぞ』
はやてと衛のテレパシーが聞こえる。どうやら上手くいったみたいだ。
だけど、オレってテレパシー送るの下手だからなぁ。
なので、オレはスマホを取り出してライトに書き込む。
『無事?』
『うん。というかなんでリインフォースの中でライトが繋がってるんや!?』
『それがライトというアプリだから』
『ライトは次元を超えるアプリか…………なんか燃えてきた!』
『あんたのせいで衛くんが、変なスイッチ入って腕立て伏せし始めたで!?』
ライト内ではもはやカオスとなっていた。すると、見慣れた少女達が揃った。
「終わったぞ」
「シグナム強かったぁー。何回危なかったことか」
「シャマルを縛って、吊るしてきたよ♪」
上からザフィーラと戦っていた杏子。
シグナムと戦っていたさやか。
そして我らの変態、千香である。どうしてだろう、シャマルが大変なことになってるビジョンしか思い浮かばない。
とにかく倒された守護騎士達は光の粒子となって消えていっただろうな。現にヴィータもそうなったし。
『というわけで神器使い軍団揃ったけど、どうすればいい?』
『殺さない程度に全力全壊』
『把握。まどかのオーバーキルでティロってやる』
『手加減してや!? ほんまにな!』
そんなに心配することないさ八神。ちょっと臨死たい――――じゃなかった。黒焦げになる程度だから。
「神威くん」
高町もきたか。
「その…………この間はごめん…………。わ、私が草太くんを止めなかったばかりに…………」
「別に気にしてない。止めようが止めまいがお前がどうにかできることじゃないって思ってたから」
「で、でも…………」
「くどい。期待してないって言ってるのがわからないのか?」
高町はションボリと落ち込んで黙る。まあ、ちょっと励ますか。
「別にお前のことが憎いからこんなこと言ってるじゃねぇよ。言いたいことが言えないお前があいつの暴走を止めることなんて、はなっから期待してないってことさ」
――――言いたいことが言えない。
これはオレの予想だが、高町はかつて士郎さんが入院していたから一人ぼっちだった。
家族に迷惑かけたくないばかりに『良い子』を演じようとして、自分を殺していた。
公園にいたのはその殺していた自分が我慢できず爆発した証拠だ。
「ち、違うの! 私は…………」
「違わない。なら、なぜ一言も喋らず静観していたんだ? オレが殺されそうになったときに」
「それは――――…………」
「ほらみろ。お前は何も言えない。失うことを怖れて、躊躇う臆病なガキだ」
キッと睨んできたが、歯を食い縛って悔しそうにしていた。
こいつはまだまだ子どもという証拠だ。
「オレを睨んだところでお前が臆病であることは変わらないし、お前が否定することはできない。そうだろ?」
「なら、神威くんはどうなの…………。失う怖さを知らないでしょ!?」
自分はどうなんだって言う反論か。オレは鼻で笑って言い返した。
「んなもん知らないさ。オレは既に失ってるからな…………大切な恩師が」
「え…………」
「失う怖さより先にオレは自分の求めた理想のせいで大切な人を失った話だよ」
地雷を踏んだと思ったのだろうか高町は俯く。しばらく、無言になりオレは嘆息を吐いて口に出した。
「高町、失う怖さは確かに恐ろしいさ。だけど、それに怖がって何も言えずになってしまうといつか後悔することになる」
「後悔することに…………」
「それを知ってる女の子を知ってるんだ。だから――――変わる勇気を持て。お前はまだまだやり直せるから」
かつて暁美ほむらが後悔したことを彼女が同じ後悔しないことを祈りながらオレは目をつぶってそう言った。
「変わる勇気…………」と呟いた高町はしばらく無言になり、目を瞑る。
目を開けたとき、彼女の表情は暗いものから決意ある少女に変わった。
彼女は強くなるだろうな。
そう思っていると、まどかの神器が発射準備ができた。
本人曰く、なぜかデストロイアーチャーのときだけ円環の理と同じ格好になってしまうらしく、今まさにまどか神になっている。
「未来永劫に魔法熟女(笑)が生まれないのなら――――私が絶望する必要はない!」
「そこでネタを入れるお前もお前だよ…………」
なんだよ魔法熟女(笑)って。
魔法少女が成長したら魔女って言い回しじゃなかったのかよ。キュゥべぇじゃないけどさ。
そんなこんなで銀髪女性がオーバーキルに倒され、魔法陣から銀髪女性と八神を含めた守護騎士達。
そしてマッスルポーズでアピールしながら衛も現れた。
…………そんな登場の仕方をした衛は八神にドロップキックされるのは無理もないと思う。
すると、銀髪女性だった闇の書は何かに変身しようとしていた。
銀髪女性ことリインフォース曰く、彼女を苦しめていた暴走体らしい。
クロノ少年やユーノ少年が駆け付けた。
なんか知らない杖を持ってる辺り、新しい武器らしいな。
役者は揃った。
あとは拍手喝采の喜劇の結末か、涙頂戴な悲劇の結末になるかの二択だけだ。
「あれ? そういえばオリ主くんは?」
「来る途中、杏子ちゃんがワンパンで沈めたの」
高町がそう言ったので、杏子を半目でみる。
「だってアイツ、ソラの悪口ばっか言うんだもん」
ブリッ子ぶるな。だが許す。
こうして高町もこの作品のアンチ枠から抜けるフラグを立てたのだった!!
…………フェイトと同じく敵だけど。
ちなみにASが終わればGOD編です。
原作はあんまり知らないので穴だらけになると思いますが、それでもカオスになるようにがんばります。
次回、再来。
――――さあ、魔の舞台装置をつかさどる女性よ。役者の糧となれ