(管制人格サイド)
神威ソラ。主曰く、規格外にして型破りな男である。
彼とその取り巻きのせいで天道衛が変態化し、なぜかザフィーラも筋肉至上主義者にシフトチェンジしてしまった。
どうしてこうなった…………と嘆いていた。
そんな怨敵のような相手と戦うことになった。
私は魔法陣を展開し、突っ込んでくる彼に備えた。
「いくぜ」
――――…………え?
突如、彼が私の目の前に現れた。いつのまに!?
テスタロッサのような速さで移動したのか!?
私は信じられないと思いながら魔力刃を展開し防御体勢に入った。
「おら!」
「くっ!?」
彼の斬撃をそれで受ける。予想以上のパワーアップしていた。
「チッ、叩き落とせなかったか」
なんというトップスピードとパワーだ。
私の肉眼では追えなかったとは。
相当のスピードの上に子どもとは思えない力になっているに違いない。
それに――――
「まさかスピードだけでなくテスタロッサと同じ魔力変換資質があるとはな」
「まりょくへんかんししつ? なんぞそれ。オレは単に電気属性を身体と神器に付与しただけだし」
だとしたら厄介だ。魔力を変換してないとしたらそれは魔力無しで電気属性の攻撃ができるというわけだ。
「この神器の真髄はまだまだこれからだぜ?」
そう言った直後、再び見えなくなった。
ヤツの動きを計算し、予測――――完了。魔力反応を察知し、彼の居場所と目的がわかった。
北北西からの奇襲か!
「そこだ!」
私が放った魔力弾は移動し終えた彼の元に向かっていって直撃――――――――しなかった!?
魔力弾がすり抜けただと!?
「どこだ!」
辺りを見回す。発見した。
三時の上空に――――
「ここでーす」
「いんやここさ」
「いやいや、ここだって」
しかし四方八方から声が聞こえた。改めて見回した。
なんと、彼が分身をしているではないか。
「馬鹿な…………なんだこれは…………」
「これが『閃光の衣』の真骨頂――――影分身。高速の果てにある移動をした結果に生まれるオレの残像達さ」
くっ、魔力反応を追おうとしても無数に反応が点滅を繰り返すばかりだと!?
こんな隠し球があるなんて!
「いや、待て。ならばお前の魔力供給の人物から狙えば――――!?」
私に向かって魔力弾が飛んできた。
「ふふ、遅くなってごめんなさいソラくん」
友江マミか! ヴィータが負けたのか!?
「ええ。あの子ったら人の話を聞かずに罠がある方へホイホイと向かってくるものですから。思ったより早く終わったわ♪」
「耳が痛い話だ…………」
ほら、と友江マミはリボンど煤巻きにされて目をグルグルさせたヴィータを見せる。
呆れるほかはあるまい。
「さてと、弱点はもうないぞー?」
「っ…………!」
彼の声がする方向を見る。いつの間にか朱美まどかを友江マミのところに連れていた。
「早くしないと主ごと葬りそうだぞ衛。ま。お前ならできると信じてるけど」
彼はクククと笑って、朱美まどかと友江マミを含めて彼は私に向かって言う。
「充分生きたでしょ?」
「満足して生きたでしょう?」
「そういうわけだから――――」
「「「――――安心してとっとくたば(れ)(ってね)(りなさい)」」」
処刑申告された私の震えはまだ止まらない。
…………そして戦闘中に天宮草太が神威ソラによって使い捨て装甲盤されていたことも忘れない。こいつ鬼だ。
(衛サイド)
真っ暗な闇の中を我は進む。
その空間は足場はなく、浮いて前に進むようなところだ。
我は今、はやての夢に向かっている。
一寸先も真っ暗な世界で一人だけで進むのは心寂しいが、友に背中を押された我には怖いものはない。
「どこまであるのだ。この闇は?」
「そだねー。わたしちょっと疲れちゃったー」
「そうか。……………………は?」
我の後ろに誰かいたか?
いや、確かここにいるのは我だけのはず…………。
「ここだよん♪」
「っ!?」
我が声がした方向に振り返ると、「やっほー」と手をヒラヒラしたフェイトが……………………いや違う!
フェイト・ハラオウンは夢の中にいるはずだ!
ではこの瓜二つの少女は誰だ!?
「貴様…………何者だ? この天道衛が気配に気づかずに背後をとるとは」
「あれれー? 警戒されちゃった? ごめんねーちょっとイタズラしちゃおうと思っててね♪」
ありえぬ。イタズラのつもりで我が気配を察知できなかっただと?
師に認められた気配察知だぞ? それを気づかせないコイツはいったい…………。
「天道衛くんで合ってる?」
「そうだ。その名で名乗った通りだ。貴様は何者だ?」
「わたし? ふふん、わたしはねー」
その少女の名前はハーレムという下らない願望をかかげていたかつての我が知っている名前――――
本来は生きてるはずがない少女の名前――――
その少女は口に出したのだ。
――――――――アリシア・テスタロッサ、と
アリシアまさかの参戦。彼女はどうして生き返ったのか、プレシアがどうなったのかは次回のそれぞれの夢で判明します。
そしてソラの神器は二つあったのです。
ソラの師匠は自分が唯一認めたソラ以外に自分の神器が渡ることを嫌い、ソラの身体に継承の証を埋め込んだそうです。
最後まで彼が戦争に生き残らせるためにした最期の親心だったとソラは思います。
だから夢に出てきた彼が許せなかったのでしょう。
次回、それぞれの夢へ
――――夢は覚めるもの。だから目覚める時だ。