とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――こいつらを敵に回したらいけない。さもなければ辱められる」


第三十話

だんだん寒くなる十一月の末。

 

その日の夕方、オレと杏子はミカン箱を買いに行っていた。

 

先月はヴィータとシグナム達によってぐちゃぐちゃにされたため、今回は杏子が付いている。

ぶっちゃければ、杏子にとって食べ物を粗末にされてたまるかという理由もあっての同行だと思う。

 

一緒に行くと言い出したときの恥ずかしそうな顔は気のせいだろな、きっと。

 

というわけでコタツの装飾品もとい食品購入というリターンマッチである。

 

ミッションであるブツは手に入り、あとは帰宅すればミッションコンプリートだ。

 

「ってなんか魔女結界出てね?」

「あーもしかしてさ。誰か絶望したじゃねーの?」

「高松かフェイト辺りじゃない? 一応、魔法少女だし」

「…………あえてスルーしてたけど、これ魔女結界じゃねーからな。あと高松じゃなくて高町な」

「安心しろ。オレもあえてわかっててボケたから」

「だろーな」

 

はっはっはっと談笑するオレ達の目の前に仮面をつけた男が現れる。なんだこいつ?

 

「闇の書に近づくな。さもなければ災いに巻き込まれるぞ」

「災いって…………ねぇ」

「アタシ達の前世の成れの果てが災いだったし、あんま怖くないし」

「というわけでやり直せ。テイクツー、アクション」

「いや、なに普通にやり直しさせるのさアンタ達」

 

仮面の男にツッコミを入れられた。今のでわかったけど、こいつ実は女じゃねぇの?

 

しゃべり方がそうっぽいし。

 

「ソラ、こいつ女じゃねぇの? しゃべり方がそうっぽいし」

「あ、それ地の文で言ったからもういいよ」

「メタいよアンタ! というかあっさり見破られた!?」

「えっ、正解だったの?」

「アタシはてっきり今流行りのオネェという男性かと」

「心も身体も女だよあたしは!!」

 

そう言うものの男声でその口調は、ねぇー…………。

 

「うわっ、ということはこいつ自分で言っておいて男装してるじゃん」

「この変態!!」

「アンタ達そんなにあたしをいじめて楽しいの!?」

 

オレと杏子のコンビネーションで彼女のメンタルのライフポイントはゼロである。

 

遠くから「もうやめて! ロッテのライフはゼロよ!!」って聞こえた気がしたが聞きたいことがあるので聞くことにした。

 

「んで、なにしに来たんだ変態」

「あんた容赦なく傷ついた女の子の心を抉ること言うわね!」

「あいにく、変態にひどいめにあってるから容赦ないんだわ。あ。あと杏子も容赦なく頼む。あいつらの抑止力が増えたらこちらも助かる」

「アイアイサー♪」

「ウガァァァァァ! もう許さない!!」

 

遂にぶちギレた男装少女がオレ達に向けて回し蹴りを放つ。

オレ達はそれをそれぞれ左右に分かれて回避し、さらにオレに追撃してこようとする。

オレはその場に飛び引こうとしたが、魔力の鎖に巻き付かれた。

 

「バインド? もう一人いるんだな」

 

オレは咄嗟に杏子とアイコンタクトをとり、追撃の拳を腹部に受けた。

 

 

いったいなぁー。

 

 

でも杏子はオレの考えを理解して、すぐさまに民家の屋根に飛び乗って移動した。

頼んだぞ杏子。

 

「さーてと、どうしようかねー」

 

仮面の男装ヤローの追撃は続いていた。

オレはあえてバインドを神器で解かず、そのままの状態で左右に身体を動かして回避する。

 

「あ、オイ。そこミカン箱あるから気をつけ」

「はァァァァァ!!」

 

バチャ、ベチャ!!

 

「…………オイ、またか」

 

手を額で覆い隠したかった。また潰されたよ定価314円。どうしよう、これ杏子のぶちギレフラグだよな?

 

「オレはもうしーらないっと」

「なっ!」

 

召喚した神器(全てを開く者)を手に取り、バインドを解錠した。

 

ガキィィィンッ

 

拳と神器がぶつかり、金属音が鳴る。

 

「くっ、なんだよそれ!」

「神器。魂の武器って説明するのもこれで何度目だよオイ。もう面倒だから時空管理局のクロノ少年に聞いてくれ」

「クロ助を知っているのか!?」

「えっ、まさかの知り合い? あのヤロー、暗殺者まで用意するとはもう許せん。ミカン箱一年分を賠償金として請求してやる」

 

というわけで邪魔な拳を弾き、仮面の男装ヤローに神器を挿し込み、かかっている魔法を全て解錠する。

 

ガチャリと音が鳴り、男装から猫耳美少女にシフトチェンジしたことに少し驚いたが、すぐに動きをバインドで封じる。

 

「な、なんで!? 魔法が解けた!? しかもこの術式はなんなんだよ!?」

「知らなくて当然だろ。ここにはない世界の魔法で創ったバインドだから」

「ここにはない魔法って…………」

「聞きたいことがいろいろあると思うけど、あっちも終わったぞ」

 

昆で巻かれたもう一人の仮面の男装ヤローが杏子に連れて来られた。

 

「アリア!」

「ごめん…………こいつの魔法に翻弄されて…………」

「幻想共をナメるなよ。さてとソラ。そういえばミカン――――」

 

そう言った杏子に無言でオレは潰れた無惨なミカン箱に指をさした。

ついでに「こいつらが原因」って言っておいた。

 

「てめぇら…………食い物を粗末にするなって母ちゃんに言われなかったのか…………あぁん?」

「「ひぃ!」」

「ソラ、バット出せ。こいつらボコボコにしてやる!」

 

というわけで家にあったバットを召喚して貸した。

一応、バリアジャケット的なものをきているし、衝撃だけで大丈夫かもしれないけど。

 

「結構打撃性のある武器になるんだよな、あれ」

「ちょっとあんた止めなさいよ! この赤毛、目がマジよ!?」

「あ、無理。こいつを食い物に対する怨みは深海より深いし、あと」

「あと…………なによ?」

「せっかく並んで買ったオレ達の苦労…………どうしてくれるんだ。あ?」

「こいつもキレてた! ってお願い、女の子が女の子を殴るシチュエーションはさすがにえぬ――――にゃあァァァァァァァァァァ!!」

 

ロッテとアリアという猫耳美少女達は杏子が気が住むまでしばかれた。

 

え? オレはどうしてたって?

 

携帯でラインしてましたが、なにか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

縄で縛った猫耳美少女達を八神家に連れていき、八神達に事情を説明した。

 

ものすごくかわいそうな目で二人に同情していた。

 

そんなにひどいことしたかなぁ。

 

「いや、抵抗できへん少女達に容赦なくバッドでシバくなんてさすがにひどいで」

「神威家の逆鱗に触れた馬鹿共の当然の末路だろ」

「エゲツないで…………」

「というか、あたし達も最悪ああなってたこと?」

 

ヴィータもなっていたかもしれない末路に少し震えていた。

 

大袈裟だなぁ。ズタボロのボロ雑巾になった程度なのに。

 

「大袈裟や! 大惨事や! ちょっと自重してほしいくらいやで!!」

「八神、一番ひどいお仕置きはマミることだ」

「それ聞いたことあるけどどういうことなん?」

「主に芋虫の化け物にこいつらの頭を食い潰させる♪」

「笑顔で悲惨なこと言うなや! あんたもあんたでエゲツないで!?」

「悲惨な死に方させることがマミらせることさ」

「あかん。誰かこの人止めて…………」

 

おやおや、猫耳少女達が怯えているねぇ。別にするつもりないのになー。

 

チャキ

 

だがしかし他は別だが。ほむらはグロックを猫耳姉妹に向ける。

 

「さて、さっさとあなた達の目的を話なさい。答えはイエスかハイよ」

「拒否権ないし、グロック17構えないで! それは質量兵器よ!?」

「質量兵器ってなにかしら? これは火薬が入ったエアーガンよ。撃てば一撃で天国へ逝ける優れものよ」

「死んでるよねそれ!?」

 

ほむらがアリアに脅迫もとい尋問を行っている。彼女はやれやれと嘆息を吐き千香を呼んだ。

 

あ、ヤベ。あいつら終わった。

 

「千香、あなたにこの子達に変態の恐ろしさを教えてあげなさい」

「アイアイサー♪ ゲヘヘヘ、さあ姉ちゃん。お着替えしましょうねー?」

「離しなさいよ! あんたなにするつもりよ!?」

「ちょっとした着せ替え人形になってもらうだけだから不安ならなくていいよ♪」

「離して! やめてよ!」

「あ、私も協力するで」

 

ロッテを連れて八神と千香は台所へ消えて行った。

 

 

 

 

そして――――数分間、ロッテの悲鳴が響いた。

 

 

 

 

「ちょっとロッテになにしたのよ!?」

「「………………………………」」

「目を逸らすほどのことされてるの!?」

「いや別に肉体的にひどいことはされてないよ…………たぶん」

「自分でお願いしたのもなんなのだけど、ちょっと罪悪感あるわ…………ごめんなさい」

「あの人達ほんとロッテになにしてるの!?」

 

アリアのツッコミが終わると同時に目が虚ろで縄から解放されたロッテがフラフラとアリアの前まで歩いて倒れた。

その後にホクホクと満足した二人が出てきた。

 

「うぅ…………アリアぁ…………あたし汚されちゃったよー」

「ギリッ、あんた達なにしたのよ!」

 

射殺さんとばかりに八神と千香を睨むアリア。二人は笑顔で、

 

「「コスプレ写真会!!」」

 

サムアップで返した。

ポカーンとアリアが唖然とするのも無理はないと思う。

 

「いやー素材がよくてバニー、婦警、ブルマ、裸ジーンズ、巫女、花嫁、堕天使エロメイド、裸エプロンなどのエクトセトラをいろいろ着せることができたよー」

「さすが千香ちゃんやで。絶妙なアングルとコスチュームを用意するなんて、もう匠の域やで! 特に堕天使エロメイドは素晴らしい!! 猫耳とメイド服は萌え素材やで!」

「そういうはやてこそチョイスとポーズの要求が素晴らしかったよ! ちなみにボクは裸エプロンがよかったです!!」

 

鼻息を荒くするほど彼女達は熱が籠った会話をし、ガッと握手した。

 

変態とエロオヤジの友情である。

 

というか八神ってエロオヤジだったんだな。

 

「ちなみに管理局と全次元世界にアップする予定」

「焼き増し可能で十二月九日にアップ予定。カミングスーン!!」

「いやあァァァァァあたしの黒歴史がァァァァァ!!」

「ロッテしっかりして!!」

 

そりゃ、全国ネット以上の驚異だなオイ。遂に発狂したぞロッテ。

 

まあ、なんにせよ…………。

 

「ついでにアリアも撮ってやれば?」

 

そう言った直後、獲物を見る目でアリアを見る二人。

 

失言? いいえ、ロッテのためを思っての道連れです。

 

「「……………………ナイスアイデア」」

「あ、あなた! なんて恐ろしいことを!? あっ、ちょっ、やめてェェェェェ離してェェェェェ!!」

 

アリアが台所へ消えて行った後、オレとほむらは音楽機器を取り出して悲鳴を聞かないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、『倉リス』っていいな。

 

ほむらは『ビーンズ』聞いてるし。




哀れ、猫耳姉妹。彼女たちの写真が後に有名になるきっかけになるとはこのとき誰も思っていません。

ちなみに『ビーンズ』や『倉リス』は架空のバンド名です。決してバーロの小学生やまどマギアニメを歌った人たちではありません。

次回、『本気の』

――――オリ主くんが凶行にはしるとき、ふざけることが当たり前な彼女の怒りが爆発する…………

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