とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「----もうどうにも止まらない!! 誰かこの人止めて! あ、でもおもしろいからやっぱいいわ」


第二十九話

激闘の轟音が鳴り響く中で、あっという間に衛とオリ主くんの戦いは中盤戦に持ち越した。

 

オリ主くんが剣を降り下ろせば、衛は腕で受け止め。

衛が上段蹴りを放てば、オリ主は動体視力と直感で回避した。

 

「普通はその腕は斬れるだろ!?」

「マッスルパワーの前では無意味! 鋼の肉体の真髄を見るがいい!」

「こいつ、どうかしてるよ!」

 

オレもそう思う。

 

後、なんか目がおかしいのかな?

衛が五人になった。いやマジで。

 

「僕の目はどうかしてるかな。天道衛が五人に増えたように見えるのだが」

「アームストロング少佐の秘技の一つの残像拳だよ♪」

「いやあり得ないだろ! 残像って実体のない分身だよな!? あれ、思いきり実体になってるよな!?」

 

クロノ少年の言う通り五人同時でオリ主くんを集団リンチしてる。実体なければあの四人はなんなんだよ…………。

 

「なんかオレより強くなってね?」

「そうだねー。肉弾戦に持ち込まれたらおしまいだよ、あれ」

 

まどかの言う通りである。

衛が一旦距離を取り、それを追撃するオリ主くん。衛は一息を入れて、叫ぶ。

 

「マッスルスパーク!!」

「ぐぁァァァァァ!」

「出たァァァァァ身体の生態電気を放出させる奥義マッスルスパークだァァァァァ!!」

 

まどかのテンション高めに解説する通り、身体から放電され、オリ主くんは感電してしまい、クラクラと空中に浮かんでいた。

 

「あれって人体でもできるの? 解説のまどかさんや」

「今の天道くんは千香ちゃんレベルの変態だから当然できるよ」

「ああ、そうなのね…………」

 

やはり変態は最強か…………。もうやだ…………。

非常識過ぎて精神が摩耗して正気になれないや…………。

 

「もー疲れた…………」

「ソラくん、休みたいなら今日は帰って私とベッドインしようよ!」

「君は公務員面前でなにを言ってるんだ!?」

「ああ、そうだね。もうそれでいいや…………」

「神威!? 帰ってこい! 頼むから!」

 

もう何も怖くない。

 

全て委ねようと思った。すると誰かが優しく顔を抱いてきた。

 

「ソラくん、もうがんばらなくていいわ。あとはお姉ちゃんが守ってあげる」

「ああ…………お姉ちゃんの身体、暖かいやー…………」

 

甘いニオイがするなー…………。後、最近大きくなった微かな膨らみが心地よい。

 

「ソラくんの甘えさせるなんて好感度上昇をはかるなんて、マミさん恐ろしい子!」

「ふふ、弟を甘えさせるのまもお姉ちゃんの特権です♪」

 

まどかが吠えているがなんにも聞こえないことにした。

あーなんにも聞こえないー。ボクわかんなーい…………。

 

「フォォォたぎって来たぞ天宮ァァァァァ!!」

「こいつ化け物か!? 俺のダークインパルスを生身で受けきっただと!?」

「お返しだ! ゆけい、芸術的な錬成物達よ!」

 

轟音と共にオレのSUN値が元に戻った。

 

はっ、オレは何を!?

 

正気に戻ったとき、衛はビルの瓦礫を打ち込み、ポーズ取ったマッスルの銅像達を錬成し、それをオリ主くんに向けて発射。

 

なんとか避けることができたが顔がかなり引きずって、苦笑をしていた。確かに当たりたくないなあれ。

 

「あ、マミさんもういいです…………」

「あら、残念」

「正気に戻ったね…………あと少しで洗脳しようと考えてたのに」

「何気に恐ろしいまどかに戦慄を覚える」

 

そんなやり取りしていると、衛は真っ直ぐにオリ主に突っ込み、正拳突きの構えをとる。

 

「くらえ、師匠直伝! マッスルゥゥゥインパクトォォォォォ!!」

「ぐ、ァァァァァ!?」

 

その正拳突きでオリ主くんはビルを貫き、地面に叩きつけられた。

 

ジュッドォォォォォォンとどっかの野菜星人のような音と共に砂煙が舞った。

砂煙が晴れたとき、オリ主くんはピクリとも動かなくなったが、千香が近づいて生存確認。

 

あ、なんとか生きているらしい。

 

「見たかこれこそが芸術的筋肉と芸術的奥義! エクセレントエレガントなりィィィィィ!!」

「無駄に暑苦しいなオイ」

 

ポーズをとる衛にツッコむ。

 

するとオレの呟きと同時にオリ主くんの元に新たに二名が叩きつけられた。

 

フェイトと高町だ。アルフは千香によってビルの屋上でしばられてハァハァと興奮した息をあげている。

 

そういえば、千香が『アルフは縛って目覚めさせる』とか言ってたな…………。

あいつ、戦いの最中レフリーだけでなくそんなこともしてたんだな。

 

「全滅だな」

「全滅だね」

「帰りましょうソラくん」

「いやそう簡単には帰せない。同行してもらおう」

 

今さら、クロノ少年は仕事しようと杖を構える。ぶっちゃけ、オレらにはこんな結界意味ないし。

というかね――――

 

「衛くんが結界壊そうとしているよ?」

「えっ?」

 

指さす方向には正拳突きの構えをとる衛。

 

「マッスルゥゥゥインパクトォォォォォ!!」

 

ガッシャァァァァァンッ!!

 

ガラスが割れるような音がし、結界は壊された。アースラ組や守護騎士達も唖然である。

後から聞いたけど、あの結界結構頑丈だったらしい。

 

それを物理的に破壊したらそりゃビビるわな。

 

その隙にドコでもドアを展開してオレ達神器使いは逃げるのだった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「フハハハハ! 見てくれはやて! このエクセレントな筋肉を!!」

「ホンマ誰やあんた!? 私が知ってる衛くんやないで!?」

 

帰ってきたら、はやては目を開かせて驚愕していた。

 

そりゃあ、草食系主人公的な少年がいきなり筋肉至上主義者に変わってたらなぁ…………。

 

「まどかちゃんいったい誰を紹介したん!? 何があったんや衛くんに!」

「彼はアームストロング少佐という元軍人でマッスル至上主義者の錬金術士の教えを受けて筋肉を武器にするマッスルファイターになったんだよ♪」

「なんでそんな人を紹介したん!?」

「おもし――――…………彼のためだからだよ♪ ティヒヒヒヒヒ♪」

「今、おもしろいっていいかけたよね!?」

 

相変わらず黒いよまどかさんや。はやて、ホントにごめん…………。

 

「いやソラくんが謝ることないで。ていうか、なんかザフィーラと仲良くなってるし」

「あいつの人間形態ゴツいからなぁ」

 

二人同時に嘆息する。すると、ほむらが爆弾発言を投下した。

 

「そういえば、天道衛とソラって前世の世界で会ってたわよ」

「……………………え?」

「時々、彼が前世の友人の言葉を口に出していたから気になって、女神さんに電話したら彼って幼稚園の時にソラと出会っていたらしいわ」

「………………………………」

 

つまりあれか? オレは前世の友人を変態にしてしまったってことか?

 

…………アハハハハ♪

 

「八神、首吊りの縄ある?」

「しっかりしい! 簡単に死んだらあかんで!」

「大丈夫。友達を変態にしたから、もう何も怖くない…………!!」

「なんか知らへんけど、それやめて! マミるって絶対!」

 

マミるってマミさんのことかなぁ? もうどうでもいいやー。

 

 

その後、オレは現実逃避し、暴走したほむらとまどかと千香をはやて一人が阻止してくれたらしい。

 

ありがたやーありがたやー(ぶっ壊れ)




ソラ遂に壊れる――――

そりゃ、知り合いを変態にした罪悪感と損失感で壊れてしまうもの。
そして衛くんが人外化しましたが、ソラも人外です。話が進むにつれて彼の異常性が判明します。

ちなみに衛くんはただの変態ではありません。
これ以上はネタバレになるので言いませんが、ヒントは彼は『臆病者』だということです。

最終決戦では彼は逃げ出しませんが、このキーワードを覚えてください。


次回、猫の災難。

――――罪には罰を、駄犬には鞭をってね。

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