「――――再会した彼は変わりすぎた。だから勘違いする」
とある神器使いの最期
黒髪の青い瞳の青少年ことオレはドコでもドアから飛び出した。
戦争を終えたオレは再び見滝原にいる彼女達に会うために、ドコでもドアを使った。
そう使って見滝原にいるはず――――なのだが。
「えっ? ここどこ?」
砂漠だった。辺りはビルの瓦礫やら廃墟の瓦礫がひょっこり浮かんでいる程度である。
「なんだってこんなところに――――って、あれって…………」
無数の目に囲まれた一人の少女が寝ていた。その人物は黒のロングストレートであり、時間遡行者である少女――――
「ほむら?」
相棒である少女は眠っている。しかしただの眠りではない。これは…………。
「久しぶりだねソラ」
「出たなナマモノ」
やっぱりこいつが原因かインキュベーター。
魔法少女を量産し、魔女に変えるために暗躍していたはずだったがまどかによって、魔女はいなくなり、魔法少女は消えるという運命になった。
そして、こいつは魔獣から生み出されるグリーフシードーを宇宙の延命エネルギーとして集める使命になったはずだが、
「今回なにしやがった」
「なに、ただの実験さ」
「実験? 相変わらず好奇心だけは正直だな」
「そういう君は口が悪くなってないかい?」
当たり前だ。戦争で成長した子どもだからなオレは。
キュゥべぇの実験内容を聞いてみると円環の理である鹿目まどかを把握すること。そして把握できれば干渉し、支配できるのではないかと思っている。
「お前、それほむらの逆鱗にモロに触れてるぞ。殺されるどころじゃ済まないぞ…………」
「しかし不可能ではない。だからこその実験なのだから」
くだらない…………。オレはそう思って神器を召喚する。
「僕を始末するつもりかい? 無駄だね。僕の身体は」
「あいにくお前の実態を知ってるからやる気はねぇよ。でも、まあ…………殺せないことはないぞお前」
「どういうことだい。ぜひとも説明してもら」
グシャ
オレはヤツが言い終える前に蹴り殺す。本気の蹴りでヤツの頭は豆腐のように飛び散った。
「オレとお前はそういう仲じゃねぇだろ。だから教えてやるもんか。…………今度、お前がもしオレの友人がこんな実験に巻き込むから覚悟しろ。
そう言ってオレは解錠し、ほむらの中にダイブした。
厳密に言えば、ほむらの擬似的な魔女結界だが。
☆☆☆
真夜中の満天の星空。ビルがやや光るインスピレーションは綺麗な夜だ。
そんな夜空を――――
「なんでさァァァァァ!?」
現在進行形で落下中!!
いやなんで!? 人の心や夢の中にダイブってスカイダイブするってことが基本なの!?
オレは成すすべなくそのままとあるビルの前に落下してしまった。
てか、骨折はしてないのは奇跡じゃね? 伊達に戦争生き残ってるだけある肉体である。
「いってェェェマジで効くわこれ…………」
そう言ったとき、目の前で煙幕が上がり。
「「「「「ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット!」」」」」
オレの目の前に五人の友人達が揃ってカッコつけていた。
――――再会初っ端からツッコミたいところはいろいろある…………。
ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテットってなに?
新しい戦隊ヒーロー?
つーか、まどかとさやか。お前らって消えたよな? なんで実態化してるんだよ。
なによりほむら。お前、そんな気弱そうな少女だっけ?
うん、とにかく総合的に言わせてもらうと――――
「ないわー……………………」
痛々しいです。これが友人だと思いたくないくらい痛々しいです。
「誰だてめぇ!」
「ひでぶ!?」
なぜか杏子さんに殴られてビルまでぶっ飛ばされ、叩きつけられた。
あれ? オレってもう友人じゃないの?
そう思うと少し泣きたくなったオレだった。
☆☆☆
夜は明けて朝である。通行人が行き交う並木通りだが……………………。
「メチャクチャキモいよこの通行人達!」
なんで顔無し!? のっぺらぼうが最近の流行なの!?
妖怪達に支配されたのか見滝原よ!
てか、普通の人はいないのか!?
「なんだよこの歩くホラー…………。もうこの通行人達皆殺しにしてやろうかホント…………」
物騒なことを言っていると見たことある三人の少女達が目に入る。
まどか、さやか、マミさんだ。
とにかく呼んでみた。しかし、怪訝な表情をされた。気になったので、オレは近づくことにした。
「どうしたんだよ。こんなに呼んでいるのに」
「あの…………すみません」
「どちらさまですか?」
…………はい?
「えっ、マジで覚えてない?」
「あなたのような好青年見たことないし」
「なんで名前を知っているのかちょっと気味悪いです…………」
「新手のナンパくん。さっさとここを立ち去ることが身のためだよ」
さやかがそう言ったとき、オレは駆け出した。
泣きたい…………。友人に忘れ去られるなんてかなり泣きたいです!
そしてその日はインターネットカフェに引きこもった。リアルな引きこもりである。
閑話休題
「そんなこんなで状況は変わらないので探索である」
真夜中の世界でオレは廃墟のような場所に来ていた。いくらほむらの中の世界とは言え、オレを覚えてないのはおかしい。
改変された世界でもマミさんと杏子はオレの知り合いだったのに。
とにかくそれが知りたいために探索である。
すると、あらまあ。銃声が鳴り響いているではありませんか……………………って誰か撃ち合ってね?
というか世界ってこんなにモノクロだっけ?
「あ、マミさんとほむら見っけ」
とにかく会話しようと近づくとカチッと音がなり、止まっていた銃弾と魔弾が動き出した。
「「あ…………」」
「ちょっ、マジかァァァァァ!?」
シヌシヌシヌシヌゥゥゥゥゥ!?
オレは神器を召喚して、迫ってきた全ての弾を弾き返した。
ビームで戦う神器使いの悪夢の再来だった。マジで一斉掃射だもん。
そして全ての弾を弾き切ることができた。
「ぜぇぜぇ…………死ぬと思ったー」
「また会ったわね」
「巴マミ。彼は?」
「先日、私と鹿目さん、それに美樹さんにナンパしてきた人よ」
「まどかにナンパした…………ですって?」
そう言ってグレック17を向けてきた。無表情だからシャレにならんし、マジで怖いよそれ。
「あなたは何者なの? どうしてあれだけの銃弾と魔弾を防げたの? というかもう人外ね」
……………………。
「まどかにナンパする愚か者がいるとは思わなかったけど、巴マミの反応を見たところ失敗してストーカーに成り下がったようね。さっさ失せなさい変態。二度と私達に関わらないで」
……………………はぁー、まさかここまで忘れ去られるわ、貶されるわ、変態扱いされるわでもうオレのライフポイントはゼロだわー…………はっはっはっ。
ブチンッッ(何かが切れた音)
「ふざけんなよお前らァァァァァ!」
「「っ!?」」
ぶちギレたオレの怒鳴り声で二人は萎縮する。
「誰がストーカーで変態だ! んなもん千香かとその師匠がポジショニングしとるわボケ! あと誰がまどかやさやかみたいなガキスタイルにナンパするか! するんだったらせめて巴マミくらいより上の大人のお姉さまを口説くわ!! 自意識過剰なんだよお前らは!」
「誰が自意識過剰よストーカー!」
「うっせーボッチ! お前はスッ混んでろ! もしくわ黙れ、ていうか死ね!」
「逆ギレ!? そしてかなりの辛口!?」
ほむらがツッコむがオレは気にせず、言い切る。
「もういい! だいたいほむらの中だかなんだか知らないけど、通行人がのっぺらぼうの妖怪ワールドに我慢できん! お前ら含めて血祭りじゃァァァァァ!!」
オレはあるだけの魔力でマジックを発動しようとした。
「ちょっ、あんた落ち着いて!」
「静まるのですぅ!」
さやかと銀髪少女に止められた。ほむらとマミさんは手を握り合い、ガタガタブルブルと震えていた。
離せェェェまだ怒りが収まらないんだよォォォ!!
「ていうか、ほんとに誰!? あんたみたいなイケメン知らないよ、あたし!」
なんだとコラ。だったらまた名乗ってやる!
「オレの名前はソラ! 『全てを開く者』の神器使いにして戦場では『無血の死神』って呼ばれてた! よく覚えてろ!!」
「…………は!」
「えっ…………」
「…………マジ?」
「し、死神さんなのですか?」
上からほむら、マミさん、さやか、銀髪少女である。
ってオイ、オレのこと忘れたのじゃなく。まさか…………。
そう思ってオレは自ら青い瞳を指さす。
「オイ、オレの特徴幼い頃から変わってないんだけど?」
「「「ああ、確かにソラ(くん)だ(わ)…………」」」
「みんななんて嫌いだい…………」
もういじけてやる…………。
閑話休題
オレがマミさんに慰められている間に、ほむらとさやかは逃げ出した。
なんかバツが悪そう見えたがもういいや。もう知らないや。
「まさかここまで成長してたなんてお姉ちゃんも驚きだわ」
「お姉ちゃんって自称するなら最初に気づくべきだと思うんだけど?」
「うっ、痛いとこ付かれたわね」
「あと人外ってなんだよ。さりげなく言われたけど、あんたらも人外染みた動きしてるだろ。マミさん達にだけには言われたくない」
「どうしようべべ…………。ソラくん本気で拗ねちゃった」
セメント率をあげたオレに狼狽するマミさん。すると、逃げ出したさやかが戻ってきた。
「なぎさーただいま。無事にほむらを――――」
チャキ
さりげなく帰ってきたさやかの首に神器を向ける。よし、脅して尋問しよう。
「さりげなくなに戻ろうしてるんだお前? よし、今すぐにお前らがどんな状況を答えろ。ハイかイエスのどちらかだ」
「いや、気づけなかったのは謝るけどさ、ソラもソラで全然違う別人になってない!?」
「はっはっはっ、戦争で成長すればこうなるのは当たり前さ。ちなみにまどかを殴ればみんなが元の世界に戻るなら殴るし、ほむらを倒せば元の世界に戻るなら、オレは容赦なくシバき回して泣かす」
「容赦なさすぎるわ! あんたこの短い期間で何があったのよ!? 昔は純粋で天真爛漫な少年だったでしょ!?」
「お前らからしたら短い時間の流れかもしれないけど、こちらは十年間の月日がながれてるんだよ。オレってもう二十歳なんだよねー」
「見た目も心も変わりすぎよ…………。昔のソラが恋しいよ…………」
「そうね、バイオレンスになっちゃったわね…………」
さやかとマミさんは嘆息を漏らす。バイオレンスか?
これが今のオレのスタンダードだけど。
その後、さやか、銀髪少女がどんな存在なのか知った。
さやかは円環の理で消えた後に、まどかと同じ円環の理の一部となっていたそうだ。
「銀髪少女とさやかはまどかの荷物持ちって役割とバックアップみたいなもんか」
「銀髪少女じゃなくてなぎさなのです!」
「黙れ元お菓子の魔女。また口の中に突っ込んで中からぶち抜いてやろうか?」
「ひぅっ。さやか、この人怖いなのですぅ…………」
「コラ、怖がらせるようなことしないの。この子は敵じゃなくて味方なんだよ?」
なぎさはさやかの後ろに隠れて、オレはさやかに注意された。
そうは言っても初対面のヤツを警戒する癖は治らないものである。しかも元お菓子の魔女だしな。
「これからどうするんだ?」
「あたしとしてはここも悪くないって思ってるんだけど」
「だが、あいつは真実を、現実を求めている。そうだろ?」
さやかは頷く。ほむらもまた元の世界に戻りたいのだろう。
「あいつのソウルジェムはもう限界だったのよ。そこをキュゥべぇにつかれて捕まってこんな仮想世界に捕まっちゃった」
「……………………」
「ねぇ、ソラ。お願い、あいつを解放してやって。まどかもそれを願ってここに来て記憶を失ったんだ。だから、あいつを救ってやって」
「………………最期まであいつと一緒にいるつもりさ」
なんせあいつはオレの相棒なのだから。最期まで見届けるつもりさ。
――――なーんて思っていたことがあった。
このときなんでほむらのことをちゃんと理解していなかったのだろうか。
ちなみにこのソラの容姿は細マッチョで顔の輪郭が整っています。
そのためモテていましたが、彼は鈍感というか無自覚に拒絶していましたため誰とも付き合っていませんでした。
理由? 主に千香とノエルの暴走の抑止力のためです。
あとは無自覚に五人少女達を求めていたのじゃないかな?
次回、後半。
――――そして全ては始まりへ