とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――魔法。それは彼と彼女のもう一つの武器」


第二十五話

生き物のいなさそうな静かな世界で、オレ達は空中戦をしていた。

オレが斬り込むと赤毛ロリもといヴィータはハンマーで防いだり、回避したりする。

 

こいつ、見た目がこんなのくせに動きは歴戦の戦士だな!

 

「なんか不穏なこと思ったか?」

「直感スキルは高いロリだなと」

「なんだとてめぇ!?」

 

一旦離れてヴィータは魔力で球体を数個造り出した。空中に浮かぶ赤い球体にハンマーをぶち当てて発射。

 

「ゲートボールか!」

 

ゲートボールの魔弾をオレは右へ左へとヒョイヒョイ避ける。

 

ああくそ、なんとか避けることはできるが元々オレは空中戦が苦手な神器使いだ。

別に浮遊魔法が苦手ではないが、神器を使ってる間に魔法はあまり使いたくなかったから空中戦の練習はしてない。むしろオレはビルや建物を使って飛んで戦うジャングルファイトが得意方だ。

 

「隙あり!」

「ゲッ」

 

二個だけ回避できない球体がオレの目の前にあった。

 

仕方ない。戦時以来だが――――

 

 

「『跳ね返せ(ミラーシルド)』!」

 

 

防壁を展開し、球体を防ぐだけでなく――――"跳ね返した"

 

跳ね返した魔弾はヴィータのハンマーによって弾き出された。

 

「なんだその魔法は!? 見たことねぇぞ!?」

 

そりゃそうだ。オレ達が使う魔法とこの世界の魔法は違う。

 

デバイスという補助機はなく、脳裏に描いた魔法陣を展開する――――それがオレ達の魔法『マジック』だ。

 

「チッ、自分の攻撃でやられて――――」

「たまるか…………ってか?」

「っ!?」

 

補助マジックを使い、速さを高めたオレはヴィータの背後をとる。

 

振り向き様にハンマーをオレにぶつけようとするが、それは既に"予想"している。

その前にオレはデバイスに向けて神器を差し込み、封鎖した。

 

「なっ、デバイスがスリープモードにさせられた!?」

 

パソコンで強制停止させるようにデバイスを機能停止させることができた。

自らの相棒が停止したことでヴィータは落下していく。

 

本来ここで落下させてミカン箱のようなスプラッタな結末にしたいが聞きたいことがあるので、クロノ少年のモノマネのバインドで拘束してから地にゆっくり下ろす。

 

「さあ話してもらうか。お前らの目的を」

「くっ、誰が!」

 

 

「くらえ! 『フォルテッシモ』!!」

 

 

ズドォォォォォン!!

 

 

轟音と煙と共にシグナムがヴィータの前に吹き飛んできた。

 

「ガハッ!」

「シグナム!?」

 

さやかのヤツ。最大奥義でぶっ飛ばしてきたな。

オレがシグナムのデバイスも機能停止にしてからバインドで拘束していると、さやかが着地してきた。

 

「空に飛んだり、剣がバラバラになったりと苦労したわよ。あの人かなり強かったし」

「それでも勝てたお前はスゲーよ」

 

空へ飛べないハンデを抱えながらも勝てたこいつに健闘を称えて頭を撫でた。

照れ臭そうに笑みでさやかはオレに言う。

 

「それじゃあうめぇー棒の件許して」

「だが断る」

「解せぬ」

 

食い物の怨みは深いでごわす。

 

 

きゃァァァァァ!!

 

 

「この悲鳴はシャマル!?」

「てめぇらシャマルに何しやがった…………」

「「……………………」」

「いやなんだその『またヤツか』って顔!? なんだよ、シャマルに何が起きたんだよ!?」

 

懇願するかのようにヴィータは聞いてきた。その答えを出すかのようにシャマルがシグナムと同じく飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――バニーガールの姿で。

 

 

 

 

 

 

「「は?」」

「うぅ…………まさかこんな格好させられるなんて…………もうお嫁にいけない…………」

「シャマル、なんでそんな格好してるんだ!?」

「むしろ何があったか教えてほしいよぅ…………」

 

オレもだよ。どうやったらこうなるんだよ。千香もさやかと同じように着地して彼女達の疑問に答えてくれた。

 

「よくぞ聞いてくれました。これぞ師匠直伝、名付けて『高速着せ替えアタック』だよ! ちなみにそれは師匠お気に入りのコスだよ!」

「あんたの師匠はとんだスケベオヤジだよ」

「師匠は女だよ?」

「あんたの師匠はとんだエロオヤジだよ!」

 

さやかがツッコむ。

 

ろくなこと教えてないなあの人。戦時中にお世話になったけど、ほとんどがギャグとノリで敵を殲滅してたな。

 

しかもほとんどがメンタルブレイクという名の強制コスプレだったりする。

 

ついた異名が『混沌の神器使い』である。

光と闇ではなく、場を混沌させるカオスな神器使いと称えて。

 

オレの師匠もよくそのことで愚痴とか言ってたな。

 

「ふっふっふっ…………ええのうええのう。この乳に、腰、そしてヒップ。美女のコスプレは一番でゲスぅ♪」

「フラッシュするな変態。本人の意思関係なく撮るなよ」

「恥ずかしい…………。でもなんでだろう…………この羞恥心に爽快感があって、新しい何かが…………」

「シャマルというお姉さん、頼むから目覚めるな!」

 

これ以上変態が感染するのだけはやめてほしい。

 

「これで一件落着だね!」

「「落着じゃねぇよ!!」」

「あべしっ!!」

 

オレとさやかの拳骨ツッコミで千香は地面とキッスした。

 

とんだ置き土産を残してくれたよ。

 

オレとさやかは目覚めそうなお姉さんを正気に戻そうと奮闘するのだった。

 




シャマルが目覚めた!←この人でなし!!

いや目覚めませんよ? シャマルはまだノーマルです。


…………たぶん。

次回、遭遇。

――――さあ、物語を面白おかしくしようか少年少女達よ。


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