神のミスというテンプレな転生をした。いやあの老人はワザとそうしたと言っていたな。
あの神は死んで代わりに女神という上級神がこの世界に管理しているらしいが今はどうでもいいか。
とにかく我は最強の特典とニコポ、ナデポという特典をもらい、髪も派手にしてもらい、リリカルなのはの世界に転生した。
既になのはとフェイトは病院に入院している間に、モブ…………いや天宮草太か。そいつによって恋人という関係をとられてしまい、当初予定していたハーレム計画が遅れてしまった。まだニコポとナデポがあるから大丈夫、そう信じていた。
しかし、二日前に起きたヤツのせいで我は全て失った。
美樹さやかの恋人である。上条恭介ではなく、銀髪で青目の男である。
美樹さやかがこの世界にいるとは思えなかったが、特典で彼女をモノにしようと近づいたが、ヤツが現れて、我をストーカーと見るわ、美樹をキャラ崩壊というか暴走させるわで敗北した。
今思えばカオスである。さらにヤツは我の特典を封印まではしたのだ。我はそれに怒りを覚えた。
しかし、ヤツは悪びれることもなく、恐れることなく、我を『ただの人間』と断言した。
特別じゃなくなった?
ただの人間…………だと?
それじゃあもうオリ主ではないのか我は…………?
そう思うとさらに自分のことを化け物と宣言した。
考えてみてほしい。
特別をも剥奪する未知なる力に恐怖を覚えない者はいないだろうか?
我は恐怖した。目の前にいる化け物は我に剣先を向けた。
「一回――――シンデミル?」
我は逃げ出した。惨めに、情けない姿で。
もう会いたくない。怖い。誰か助けて!
我は恐怖に支配された心で家に閉じ籠り、翌日。学校も休んだ。
もう我はなのはを、フェイトを、アリサやすずかを嫁とは言えない…………。
――――――――なぜから、もう特別じゃないから
☆☆☆
数日後、我は学校をサボり交差点に来ていた。
もう死のう…………。特別じゃない我はもう生きる価値も未練もない…………。
そう思い、信号機が赤になったところで横断歩道を歩き出そうとした。
「アホなことやめんかい!」
関西弁の少女が我の袖を掴んで止める。少女は車椅子を乗っているため、足が不自由だと思った。
「離してくれ…………特別じゃない我はもうこの世界に必要とされないんだ…………」
「だからって死ぬんか!? ふざけんなや! そないなことで死んで悲しむ人がおるで!?」
悲しむ人…………か。
「我にはいない、そんな人…………」
「えっ…………?」
「我の家族はな…………両親が既に離婚して、引き取った父親も女遊びばかりするクズみたいな男だったんだ…………。おかげでクラスからいじめられるわ、借金で働かされるわで散々だった…………」
なんで前世の話をこの少女に話しているのだろうか?
でもまあ、事実だ。今も両親はいない。いなくてもトラウマで甘えることはしなかとった思う。
「親戚に引き取られた後も、身内から疎まれて、引きこもった。だけど、そのときに見たゲームで我は感動した」
そう、ありきたりな物語だったが、ヒロイン達と共に戦い、そして悪を滅ぼす姿が憧れた。
いつかそうなりたいと夢を見ながらもう一度がんばった。
結局、交通事故で死んで転生したが。
「転生した後、この世界で我はそうなるような能力をもらった。ああ…………そうだ。そうだった…………我は…………」
――――誰かのヒーローになりたかったんだ
そう呟いて理解した。
モテモテじゃなくていい。
お金持ちじゃなくてもいい。
家族がいなくてもいい。
誰かに見てほしかったんだ。
誰かに認めてほしかったんだ。
誰かに理解してほしかったのだ。
ただ純粋になりたかったんだ。そんなヒーローに…………。
「だけど…………特別じゃない我はもう――――」
「…………れるやん」
「?」
「ヒーローになれる!」
関西弁の少女は我の手を握りしめる。柔らかく暖かい手だ。
「ヒーローはな、特別じゃなくてええねん。無力でええねん。その人の心が救われたならソイツはヒーローやねん!」
「でも…………だけど…………」
「誤解してるねん君は。ヒーローは完全無敵じゃなくてもええねん。人間でも、普通の人でもヒーローにはなれるねん!!」
「あ……………………」
前世で言ってたヒロインの言葉と同じだ――――
その言葉を聞いて我は、絶望の淵から戻りたくなった。
「我には…………もう力がないぞ」
「力がなくても大丈夫。守れることができる」
「我には…………悲しんでくれる人はもういない」
「なら私が悲しんだる。思いっきり泣いてやるで」
「我は…………我は…………」
「うん…………うん…………」
――――生きて…………いいのか?
そう呟くと彼女は太陽のような笑顔で、
「もちろんや」
彼女の言葉が我を救ってくれた。もう絶望しない。
我の心は救われたのだ――――――――彼女というヒーローに。
――――何か成さなくてもいい。
――――何も力がなくてもいい。
――――誰かを救う意思と根性――――そして優しい心があればヒーローになれるんだよ。
かつて、前世で両親が離婚する前に出会った同級生が言っていた言葉を思い出しながら彼女に頭を撫でられた我は久方ぶりに泣いた。
☆☆☆
こうして我は生きる決意とヒーローになる決意を胸に、慢心して怠った身体を一から鍛え直した。
特典も女神によって変えてもらった。
ダライラマ球体はすばらしい。短時間で鍛えられる。
「あ、おかえり衛くん」
「ただいま――――はやて」
そう我を助けてくれたのは少女と一緒に過ごしている。今度は我が彼を守るために。
「お疲れさま。今日はどないやった?」
「やはり師か誰か見てもらう人がいないといまいちというところだ」
「うーん、ごめんなー。私の知り合いの中にはいないで」
「わかっているさ。君にここで住まわせてくらいの贅沢を味わっているんだ。これ以上の贅沢はいらないさ」
「ほほう、この美少女と共に住むことがうれしいと?」
「そうだが?」
自分で言っておいて顔を紅くするはやて。ああ、幸せだ。
こんな幸せいつまでも続いてほしい。
「そういえばアイツも転生してるかな?」
なあお前も元気にしてるか? 我が友――――
――――――――一ノ瀬ソラよ。
というわけで踏み台の改心の回です。
踏み台くんが改心したらこうなるじゃね?と思って書きました。
この小説に踏み台転生者はいない。いるのはそう…………変態と鬼畜外道共のみです。
ちなみに最後に出てきた名前ですが、ネタバレしますとソラの前世の名前です。
なんとこの踏み台くんはまどマギの世界出身でしかもソラの知り合いだったそうです。
なぜ彼がソラに気が付かなかったって? 昔のソラは純粋で真っ直ぐな少年だったのです。それが不良のようになったので気が付きませんでした。
真面目な子が金髪の不良になったらあんまり気が付かないものでしょう? それと同じです。
裏話を言いますと、ソラもまた親と再会してトラウマを抱えた少年だったので、戦時中も苗字は名乗りませんでした。
さて真人間になった彼の活躍は始まったばかりですが…………忘れてはいけない。
この作品は変態が感染するということを。真人間だった人がイロモノになるという世界であると…………。
次回やっと海の回。上手く表現できるかあまり自信がありませんが楽しんでください。
――――お色気? この作品に色気はあるがカオスが大半である。