とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――そんなこんなで逢引である。彼女の根は乙女なんだぜ?」


第十七話

エピローグ的な話をすれば、オレ達は管理局からお尋ねものにはならなかった。

 

理由はプレシアさんに全て擦り付けたことと、彼女がかつて巻き込まれた事件の真相が書かれた書類をリンディ提督に渡したから。

 

いつそんなものを手に入れたって?

 

管理局まで行って、ほむらと一緒に時間停止で盗みましたが何か?

 

あ、そうそう。この一件でフェイトとアルフに敵視されました。

 

リニスとしては説得を試みたみたいだが、やっぱ母親を消した元凶だしねー。

つーか、肝心のリニスもプレシアさんと行っちゃったし。

 

あ。重大発表があった。ほむら、よろしく。

 

「本日呪いは解除されたって女神様から連絡あったわよ」

「やったね! さよならモテないオレ! こんにちわモテ期なオレ!」

「あ、でもモテたら私とまどかが全力で邪魔するから。私達以外の別の人と結婚したらソラくん殺して私達も死ぬから」

「さよならモテ期。ようこそヤンデレ…………」

 

ガーン。まさかここに好意を持つ乙女がいたとは。しかも病んでいるほど。

 

ちくせう。こうなったらマミさんが入れた紅茶で一息でい。

 

「うーむ、やはりマミさんの紅茶はおいしいなぁ…………」

「ふふ、お粗末様。よかったらお嫁さんにもらってくれてもいいわよ?」

「あいにくオレはこんなできた人とは似合わないので」

 

ソファーでゲームしていたさやかが立ち出した。

 

「じゃあこのさやかちゃんがなってあげてしんぜよう!」

「元気すぎて処理できないから却下」

 

バッサリである。さすがのさやかもショボーンになる。

同じく座っていたまどかと千香が立ち上がる。

 

「さやかちゃんがだめなら…………!!」

「いやいやこの超絶美少女であるボクが!」

「お前らは論外。昔のまどかだったら話は変わるけど」

「ほむらちゃん、昔の私ってなんだったっけ!」

「今も変わらないかわいいまどかよ」

「それじゃあOKだね!」

「違うし。ていうか外見じゃなくて内面みろやお前ら」

 

ほむらがフサァと髪を流して言った言葉を否定し、オレは嘆息吐いて立ち上がる。

 

まあなんにせよ……………………。

 

「帰ってきたなぁここに」

 

さあ平和を謳歌しようか。

 

「ま、どうせトラブルに巻き込まれるだろソラって」

「誰がソゲフさんだと杏子」

 

よろしいならば戦争だ。オレ達は平和的にテレビゲームで雌雄を決することにした。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

快晴な天気にて二人の男女が町に出掛けていた。

 

今日はまどかと散歩出かけた。

 

普段はハッチャける彼女だが、デートしようぜと真面目な表情で言ったら赤面して了承した。こいつって案外に受け身に弱かったりするんだよな。

 

前世もそうだし。

 

 

そのとき見たはにかんだ照れた笑顔は忘れない。

そのとき見たほむらの嫉妬血涙も忘れない。

 

どっちに嫉妬してるのかは定かではないが怖かった。

 

「見て見て、これかわいいでしょ?」

「のろいうさぎか…………。オソロかわいい言われる大人気の人形がここにあったとは」

「……………………じー」

「わかった。買ってやるからそんな小動物な目で見るな」

「やったー♪」

「抱きつくなって。たく…………」

 

子どもみたいに喜ぶ今日のまどかはかわいいなぁ。いつも自重しないのに、こういうところがあるからオレを癒してくれる。

 

「許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ……………………」

 

あとほむらさんや、物陰から射殺さんばかりの目で睨まないで。お願い。マジで恐いッス。

 

「これは後で婚約指輪も買うべきだね!」

「たった今、ソゲフされた」

 

あばよ、幻想。こんにちは残酷な現実。

 

また自重しない娘に戻ったこの少女はいったいどこに向かっているだろうか。

 

「私とほむらちゃんとソラくんのバージンロード」

「チェンジで」

 

そしてほむらさんや、どこからそのスナイパー銃を取り入れた? またなんとか組団からか?

 

 

 

閑話休題

 

 

 

人形を買って、服も買った後、ソフトクリームを買いに言ったオレがまどかが待つベンチに向かったが……………………いない。

 

はて、どこに行ったのやら。

 

すると某残酷系魔法少女アニメの着信音が流れる。

最近流行の若手二人組の少女『倉リス』の着信音である。相手はまどかからだ。

 

オレはスマホの通話モードに耳に当てた。

 

『誘拐されちった、ティヒ♪』

「いや楽しそうな声で言うなよ。ていうか、なぜにそうなった!?」

『いやーなんか月村さんとバーニングさんが誘拐される光景目撃しちゃって、私の中に眠る正義の心赴くままにドロップキックで助けようとしたら捕まちった♪』

「あのなぁ…………」

 

楽しんでるなチクショウめ。こちとら心配してたのに、意外に呑気なヤツめ。

とにかく、場所を聞かないと。

 

『あ、こいつケータイ持ってやがる!』

『てめえ、いつの間に――――おふぅっ!』

『乙女の必需品に手を出さないで!』

『頭ぁ、無事ですかい!? 息子とたまは無事ですかい!?』

『ちょっと新しい世界が見えた…………』

 

ヤバいな。いろんな意味で危ないし、バレた。

このままじゃ居場所がわからなくなる。そうなるとマズイな。

 

つーか、頭の急所に男として同情する。

 

『良いから寄越しやがれ!』

『あぅ…………絶対データ覗かないでね! 寝ているソラくんのあられのない写真コレクションが保存されているから!』

「今携帯持ってるヤツ、それぶっ壊せェェェェェ!」

 

全力でスマホにシャウトした。

 

あられのない寝姿ってなによ!?

いつの間に撮ったんだよオイ!

 

そうこう言ってる間に通話がキレた。

 

……………………うん、その携帯が破壊されていることを祈ろう!! 頭さんお願い!

 

まあ、それはさておき…………。

 

「つーか、最初からあいつに聞けばいいじゃん」

 

オレはその人物に電話をかけた。頼むぜ…………王子様。

 

 

 

 

(まどかサイド)

 

 

 

 

そして私のターン。私と月村さん達は廃工場でグルグル巻きに縛れていた。

 

テンプレ的に言えば、囚われたヒロインだね。

 

「私達をどうするつもりよ!?」

「用があるのは月村だったが…………まさかバニングスの娘まで捕らえることになろうとはな。まさか化け物とつるんでいるとはな」

 

これまたテンプレ展開だった。

バニングスさんが話している相手はいかにも悪者ですと言ってるような人だった。

 

黒スーツにサングラス。おまけに頬に痛そうな傷がある人って本当にいるんだなぁ。

 

「すずかが化け物ってどういうことよ!?」

「知らないのか? ククク、滑稽だ。滑稽だぞバニングスの娘! まさか本当に何も知らずそいつと関係をもってたのか!?」

「何がおかしいのよ!?」

「教えてやるよ。こいつの正体をなァ!」

 

頭っぽい人が勝手に話始める。

 

なんでも月村さんは血を吸う吸血鬼という夜の一族という人種らしく、紅い瞳になったり、催眠をかけたり、そして人間とは思えないくらいの怪力があるらしい。

 

何度も月村さんは頭っぽい人にやめてと懇願するが、ゲスい笑い声を出しながら最後まで言い切った。

 

酷い人だねー…………。

 

「んん? なんですか? 黙っちゃって? もしかして今さら恐ろしくなったのですかァ?」

 

なんか私に変な誤解されちゃってる。心外な。そんな人達より怖い相手なんかいるのに。

 

「バカ言ってんじゃないわよ! すずかは私の親友よ! 絶対怖がってやるものですか!」

 

バニングスさんは吠えた。

うん、さすが親友なだけである。彼女のそういうところが好ましいと思える。

 

私も親友を大切にする人だから。

 

「ククク、そうですか。でも残念無念。君達はここで殺されるのでーす! 月村以外は用がないですからァ!!」

 

そう言ってマシンガンやらライフルを構える黒スーツ達。

 

ちょっとマズイかも。さすがに一人を犠牲にする覚悟じゃないと乗りきれないかも。

 

「夜の一族の当主の座の交渉材料として月村ちゃんには人質になってもらいまーす。けど、君達はいらない。バニングスは身代金を要求するのはまだしもこんなチンチクリンな少女が使えるはずないから殺しちゃうん♪」

「ひどい…………ほむらちゃんやソラくんだって言われたことないのに! 『まどかって幼児体型だよね』って言ってるのに!」

「いや対して変わらないって。つーか、さりげなく罵倒してるからひどいなそいつら」

 

同情的な目で見るなら殺さないでよ、もう。

 

「あははは、ちょっとマズイね。うん、これはピンチだホント」

「なにカラカラ笑えるのよあんた!? なんで銃口向けられているのに平気なのよ!?」

「そりゃあ毎日見てますから。主にほむらちゃんがソラくんに向けている光景で」

「あいつ、ほんとなにしたの!?」

 

バスルームでラッキースケベが起きちゃってね。なんで毎回、起きるのかな。

 

ソラくんってそういうスキル高いのかな?

 

「随分余裕じゃないですか。死ぬ覚悟ありますってことですかァ?」

「冗談キツいですよキモい人」

「キモい人!? 辛辣だね君!」

「そりゃそうですよ。だって月村さんの一家をストーカーレベルまで知っているし、しゃべり方が気持ち悪いですよ♪」

「君ってよく満面な笑みで毒が吐けるね!?」

 

吐きますよそれはもう。姉に鍛えられてますから♪

 

「それに私は一切死ぬ覚悟はありません。怖い時は怖いです。今でもビクビクしてます」

「じゃあ、なんで悲鳴の一つも上げないのですかァ?」

「そりゃあそうですよ。もうすぐ王子様が来ますから」

 

この人達にメルヘンな娘って目で見られてるね私。呆れた彼らはトリガーを引こうとする。

 

でも怖くない。だって約束したから。

 

いつだって、どこにいたってあの人達は来てくれる。

 

 

ドッッッゴォォォォォン!!

 

 

「なんですかァ!?」

「大変です! 表にいた連中がバズーカで――――ほむん!?」

「部下一号ォォォォォ!?」

 

ゴム弾が部下一号ドイツ語男の人に直撃した。

 

私は銃を使う人を知っている。ああ…………やっぱり――――――――

 

 

「ほら、来てくれた」

 

 

私の王子様と白馬が。

 

ヒーローとその相棒がそれぞれ信頼する武器をもってね。

 




連投。次回はその続編です。

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