水龍は龍らしくない触手を出して、オレ達に攻撃してきた。
オレは
「んじゃ、金髪少女とその犬。さっさとそいつ離れてろ。お前魔力がなくなっているだろ」
「犬じゃなくて狼だっ!」
「まだいけます!」
「うーん、でもやめておいた方がいいよ? ソラに巻き込まれたくなかったら…………ね」
千香の声色は冷たく金髪少女に向かって言い放つ。
金髪少女は納得できなそうな顔になったが、オレは気にせず、水龍に向かって斬り込む。
ギャァオオオオオ!!
咆哮をあげ、オレに食らいつく。
それを右へ回避した。
水龍の身体にできた大きな切り傷は水音を立てて、再生された。
「再生機能があるのか?」
「それじゃ、ボクが動きを止めて『閉じちゃって』よソラ!」
千香はそう言って半透明の檻を造り出した。オレは剣先を水龍に向け、封印の波動を放つ。
水龍にそれが直撃した後に再び、接近。
「【エリアルブレード】!」
風の魔法を纏った斬撃でその身体を切り裂く。
水龍は再生させようとするが、再生が発動はしなかった。
「お前の能力を閉じて封印した。解除したきゃオレの解錠の波動を受けなければならねぇよ」
ま、解除する気さらさらないが。
オレは今度は電気の魔力を神器に纏い、首に向かって投げた。
水龍の首は跳ね飛び、光の粒子を出しながらジュエルシードへと変化した。
「【サンダーレイズ】。神器をブーメランみたいに投げる遠距離専用の剣の奥義。ま、言っても理解しないと思えるけど」
オレは帰ってきた神器を受け取りながらそう言った。千香は一息をついて近づいた。
「やった?」
「いんや…………まだだ」
オレが否定した直後、ジュエルシードは今度は数本の竜巻へと変えた。
第二形態ってヤツか? バラバラに分かれるなんて予想外だ。
「金髪少女に伝えてくれ。早急に手伝ってくれってな」
本当の戦いはこれからだ。
(フェイトサイド)
彼の実力は圧倒的だった。水龍をものの数分で無傷で仕留めた。
すごい…………これが神器使い。
反則クラスの能力とその身体スペック。私やアルフが束になっても勝てない相手。
私は最初に彼と出会ったときに感じたのは忌避だ。
生理的というか、本能的に彼が気に入らなかった。嫌悪と言っても違いない。
しかし今感じる忌避は別の意味かもしれない。
――――畏怖だ。
尊敬と恐怖が混じった感情だった。
怖い、恐い、コワイ。けど、味方であれば頼もしい。
「おーい、お嬢ちゃん手伝ってー!」
彼の相棒がそう言って私を呼んだ。ジュエルシードは今度は竜巻に変わったようだ。
「いくよ、アルフ」
「はいよ!!」
私はその手伝いに向かい、竜巻と立ち向かう。
身体は魔力の枯渇でまだダルい…………けどお母さんのため!
「無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァ! 今のあたしは痛みに喜びを覚えた雌犬! こんな攻撃屁でもないね! ハァハァ…………ていうかむしろもっと来いやァァァァァ!」
「アルフが…………私のアルフが知らないナニカに目覚めてしまった…………」
ほら、神威が顔をひきつらせて同情的な目で私を見てるじゃない。
かつてまともだった面影のない使い魔を見て、私は天ヶ瀬千香を怨みを込めた目で睨むのだった。
(フェイトサイドout)
「同士が増えた! 万歳!」
「よし死ね」
千香を竜巻に向けて蹴り飛ばした。「あばばばばば!?」と電撃を受けたような声をあげながら、竜巻に耐えていた。
そのとき聞こえた艶声と荒い息は聞かなかったことにしたい。
「ヤベーそのうちユーノ少年も目覚めてはなかろうか…………」
未来ある少年を修羅の道引き込んだかもしれない元凶は自身を巻き込んだ竜巻を一つ倒していた。
アルフという犬もなんかダメージ負いながらも、魔力弾で竜巻を一つ消しているし。
あいつら不死身じゃね? というか変態属性って無敵?
変態最強説が浮上する中、何やら空から誰かが降ってきた。
「時空管理局だ!」
「フェイトちゃん無事!?」
「神威、なぜお前がここに!?」
「おのれ、アルフ! 自分だけご褒美もらってるんだ!?」
「「ユーノ(くん)!?」」
「彼は元からこうだったのかい?」
違うと思う。つーか、ユーノ少年、もう手遅れだったのかい。
金髪少女はなんか飼い主見つけた犬のごとく涙目ながらの顔を明るくしていたし、そんなに普通の友達ほしかったの?
すると、オリ主くんが状況を聞いてきたので答えてあげた。
「ありのままに言えば、プレシアさんに脅されて協力中。イコールフェイトという金髪少女の味方になった。そしてアルフとユーノを目覚めさせたあの変態はまた生身で竜巻に突っ込んだ模様」
「なんだこのカオス展開!? 原作にはなかったはずだろ!?」
「いや原作ってなんぞ? この小説はノリとカオスと変態でできてるギャグ有りシリアス少々ある作品だぞ」
「メタい発言禁止なの!」
原作主人公にツッコまれたでござる。もう…………お嫁にいけない。
「ボクがもらってあげる!」
「変態属性抜けたら、考えてやる」
「解せぬ。変態の何が悪い」
いや心労の五割はお前だから。ちなみに残りはキチガイ姉妹である。
誰か助けてマジで。
「とにかくとっと封印するか」
オレは竜巻に向けて封印の波動を撃つ。
するとあら不思議。封印されたジュエルシードが浮いてるではありませんか。
「さて残りは――――って終わっとる」
そりゃそうか。高町や金髪少女のような高魔力保持者やクロノ少年やオリ主くんのような経験豊かな人材。
そして認めたくないが変態三人衆の活躍である。
あの三人の属性って変態であるデメリットがある代わりに最強がついてるではなかろうかホント。
「友達になりたいんだ、私。フェイトちゃんともっとお話したい。もっと仲良くなりたいんだ!」
「なのは…………さん」
なんかドラマが始まってるし。まどかとほむら辺りが画面に釘つげにしているだろうなぁ。
と呑気に見てたらいつの間にか剣を向けられてた。
「動くな。お前にまだ聞きたいことがある」
「いや空気読めよ。あそこでドラマ始まってるだから鑑賞させろよ」
「知るか。どうしてお前がまどかマギカのキャラと一緒にいる? なぜプレシアに協力する?」
「答えを出すならあいつらは前世の友達で、プレシアさんは期間限定のアルハザードへ行きのジュエルシード集めに無理矢理協力させられた歪な関係。理由はそれを断るとなんかうるさそうだったから」
「そんなこと信じられるか!」
「いやー事実なんだけど…………お? まどか、どうした? えっ?」
空から落雷注意ってなんだ?
ってプレシアさんが紫の落雷を金髪少女に当てちゃった!
ひどい…………それでも親か!と言いたいがどうせ親じゃないもん、娘クローンだもんとか言いそうだ。
プレシアさんマジパネェ…………。
「ズルいよフェイト!」
「プレシアさんこちらもバッチこい!」
彼と彼女の発言を聞かなかったことにしたい。これ以上犠牲者が出ないことを祈ろう。
「な、なんてこと――――ぐは!」
「隙ありんす」
オレはオリ主くんを殴り飛ばし、浮いてるジュエルシードに向かう。千香も同様に行動する。しかし、クロノ少年も行動してきた。
そしてそれぞれが何かを掴んで、通り過ぎた。
「チッ、半分しか取れなかったか」
「そう易々は取らせないさ」
不敵に笑うクロノ少年も半分か……………………あれ? んじゃあ千香は何を掴んだんだ?
あいつもなんか取ったみたいだし。
「美少年のパンティーゲットだぜ!」
「ブッ!?」
バーンと千香が出したのは、ヒラヒラ揺れるトランクスタイプのパンティー。
さすが変態。求めるものが違う。
「…………ノーパン少年、今すぐに残りのジュエルシードを渡せ」
「誰がノーパンだ! というどうやってとった! 僕はズボンだぞ!?」
「変態に不可能は…………ない!」
「なんだそれ!?」
「座右の銘みたいなもんだ。諦めてジュエルシード渡せノーパン野郎」
「ただの変態じゃないかそれ!」
「同士が増えた!!」
「仲間に入れるな!」
やはりこの展開は避けられない。
なんでだろ。こいつがいるとシリアスが続かない。
「次のターゲット……………………君に決めた!」
「私!?」
ポケットな主人公よろしくとばかりに、高町さんがロックオンされた。
「ふっふっふっ、小学生の生パンは最高級のご褒美よ…………グヘヘヘヘ」
「誰かこいつ止めて…………杏子さんヘルプー」
「あ、ちなみにその次はソラだから!」
ブルータスお前もか。カエサルさんと同じくと味方に裏切られた気持である。
オレがロックオンされてしまった。こうなったら是が是非でも高町に逃げ切ってもらわなければオレの下着と貞操が危ない。
千香が動きだそうとしたとき、足元から魔法陣が展開された。金髪少女やアルフからにもだ。
これって転移魔法?
「チックショォォォォォ! 目の前に、目の前にお宝があるのにィィィィィ!」
邪神は消えた。悪は去ったのだ。いやさすがに見てられないよなアレは…………。
そんなこと考えているとクロノ少年とオリ主くんがこちらを見て何か言いたそうだった。
ふむ…………何か言ってやるか。
「あ、どうでもいいけど高町の体重増えてたって千香が言ってた」
「ノォォォォォォォォォォ!?」
悪役らしくないって?
あいにくオレは悪役でもなければ正義の味方じゃないもので。
最後に見た高町の狼狽とオリ主くんの唖然とした顔は面白かった。
ただしユーノとアルフ。未だにプレシアさんのお仕置きに興奮してるお前はもうダメだ。
そう思う今日だった。
これが千香。変態を感染させる魔性の女。
前の話でシリアスだったのに………………。
次回、原作通りの結末へ。狂った者は最後まで狂った道化です。