とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「――――それは彼の常識。だから、救わない」


第十四話

「汚された…………汚されちゃったよう…………アリシア…………」

 

おばさんのコスプレ劇場が終わり、千香はホクホクと満足した表情をしていた。

プレシアさん、三角座りでマジ泣きしているし、カオスな現場になってしまったのでオレは流れを変えるために口を開いた。

 

「いい加減に立ち直ってください露出女」

「あなた達、私をそんなにいじめて楽しいの!?」

 

涙目でなぜか怒られたし。

 

「んで、オレ達になんの用か説明してくれ。さもなければこの写真を管理局に送りつける」

「やめて! ホントお願い!」

 

さすがにこの写真をばらまかれたくないので、プレシアさんは金髪少女を部屋に戻してから話を始めた。

 

大切な娘を蘇らせるためにクローン造って、ジュエルシードを集めてアルハザードに行こうとしていたが、オレ達の力を知り、娘を蘇らせる神器はないか聞いてきた。

 

「可能と言えば可能だ。だけどたぶん無理だ」

「どうしてよ!?」

 

納得してないプレシアさんにオレは説明することにした。

 

それぞれの世界にはそれぞれのルールが存在する。

 

人を生き返らせる、過去を改変するなど理を覆すものを禁止したり、容認したりする世界があるがルール通りではないもしくは、反則を行えば、それを阻止する力が発動する。

 

その名前は抑止の力だ。

 

かつてキュウべぇが推測した力である。ワルプルギスの夜を倒した後、救済の魔女が現れたように。

それは本当にあるとオレの師匠から後から教えられたしな。

 

「そんな…………じゃあアリシアは…………」

「絶望することはないさ。これは仕方ないことだから」

 

あのときオレは神器の力を使って戦ったから抑止の力が働いたのだと思う。ほむら達と一緒に挑んだがあれは絶対に勝てない相手だ。

 

負けるのは仕方ない。

勝てるとしたらまどかのような大量の因果を持ったルール通りの願いかほむらの理を反逆の力のみだ。

 

もうほむらには反逆の力はないが。

 

絶望したこの人をオレはあまりに不憫にあることを教えることをした。

 

「まあ、あくまで神器による蘇生は無理って話だけど」

「えっ?」

「神器はこの世界のルールでは反則だがアルハザードの技術は反則じゃないつまり蘇生することはできるはずだ」

 

まあ蘇生そのものが反則なら不可能だが。

 

それにアルハザードに行ける事態はオレの神器(全てを開く者)を使えば可能かもしれない。

 

だけどオレはあえて教えない(・・・・)ことにした。

 

喜びに声をあげているプレシアを見ていると、まどかが肩をつつく。

気づいているのだろう。

 

「どうして? ジュエルシードを使わなくてもソラくんの神器なら」

「…………まずプレシアさんが言ってる場所があるとは限らない。リニスから聞いた話じゃ、おとぎ話とも言われてるしな」

 

いくら異世界と言えど、空想の世界は無理だ。前にさやかに頼まれたが神器は応えてくれなかったし。

 

「それに…………」

「それに?」

 

これがオレが一番で、プレシアさんに対して快く思わない理由。

 

 

 

 

 

 

 

「気に入らないから」

 

 

 

 

 

 

死人を蘇らせる?

 

ふざけてるとしか言いようがない絵空事だ。ご都合主義は本の中の話で充分だ。

たとえ死ということを否定することができたとしても、生き返ったそいつは普通からすれば化け物に変わらない。

 

それにフェイト・テスタロッサを娘と見ず、道具としか見てない彼女の目にムカついた。

少しだけ自覚しているみたいが、完全と少しでは月とスッポンくらいの差がある。

 

過去にとらわれ、今を大事にしない人間が未来を、幸せを掴めない。

絵空事ばかり見る人間に、オレは快く手を貸さない。

 

「ひどいか?」

「…………ううん。ソラくんは怒りはもっともだしね」

 

かつてオレ達は精一杯生きていた。ほむらなんかは簡単に大切な人が死んでいる光景を目の当たりしてる。

 

だから気に入らない。気に入らないから教えてやらない。

 

ご都合主義を信じてるこの女に助けることを。

 

オレは聖人君子でもヒーローじゃないからな。

 

まどかは無言でオレの手を握り、オレはそれを握り返すのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

プレシアのジュエルシード集めはリニスに頼まれる形で協力することになった。あくまでお世話してくれた借りを返すためで、ジュエルシードが集まったらおさらばする予定だ。

 

「リニスは残るんだな」

「はい。私の大事な家族ですから」

 

そう言ってオレ達に別れを告げて、時の庭園に残ってプレシアのお世話をすることになった。少しツラいが彼女の意思を尊重したくて何も言えなかった。

 

「そういえば海から拝借したってことは残りも海にあるのか?」

「そうだね。たまたま潜って見つけたんだよ」

「いや潜るって海底までよく息が続いたな…………」

「変態に不可能はない!」

「んなわけあるか」

「バレた? いやー神器の力でちょっとね」

 

大方守る力で酸素ボンベを作って潜ったのだろう。オレと千香は魔法を使って、海の上空で金髪少女が魔法を撃つのを待っていた。

 

残りのメンバーは時の庭園で優雅にお茶をとって歓声するとか言ってたな。

ちくせう、まさかジャンケン負けた上に千香と組むことになるなんて。

 

「こんな美少女と一緒にいるのに何が不満なの?」

「ぬかせ変態。お前が美少女だったらカエルは美女だ」

「それひどくない!? あ、でもなんかジュンときた。もっかい言って」

「この…………変態!」

「ハァハァ…………いいわ。もっと罵ってちょうだい!」

「もうやめて。ソラくんのライフはもうゼロよ…………」

 

こいつの変態性が増す中、金髪少女がジュエルシード強制発動成功。

んで合体して水龍が出現。

 

オイ、龍が出現って、初っぱなからハードじゃねぇかい。

 

「でも倒せない…………ってことはないでしょ? 英雄さん♪」

「そだな。んじゃとっと終わらせるか。いつも通り」

 

オレ達は神器を召喚し、水龍に向けて言った。

 

「精一杯生きただろ?」

「悔いはないでしょ?」

 

「「なら、安心してとっと死ね」」

 

 

物騒? これがオレ達二人の戦場の頃に言ってた決めセリフだけど、何か?




すみません。次回、番外編その三を入れます。

昔の彼女が案外まともです。




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