とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

by悪魔となった少女より


第百三十一話

暁美ほむらは優雅にこちらへ歩いてきた。四季は不機嫌な顔になり、ツインテは何やら得たいの知れないナニカを見つけた顔になっていた。

 

なぜ四季が不機嫌なのかはわからないけど。

 

「コイツが黒幕か? 随分小さいな……これなら朱美ほむらの方がスタイルはよかったぞ」

「スタイルなんてどうでもいいわ。ねぇ、そうでしょ? ソラ」

 

悪魔の力――――邪悪な力がここまで感じるくらい強い。

気分を悪くする力――――呪いが一種の香水のように彼女から漂っていた。

 

「さて――――ウェルカム、ようこそ。私の庭へ。歓迎するわ、ソラと異物さん達」

 

四季達を招かねざる客とした言い方だな。オレだけを喚ぶつもりだったみたいだ。

それにしてもなぜ四季は不機嫌なんだ?

 

「……お前が俺の研究データをサルベージしたのか?」

「ええそうよ。すばらしい失敗作だったわ。なんせ愚かな駒を一つ手に入れて良い余興になったわ」

 

プライドは道化か。根源的な原因であるほむらをツインテは険しい目で見ていた。ツインテの兄が死んだのはこの女のせいでもあるからな。

 

「てか、何者なんだお前?」

「あら、あなたの愛しい暁美ほむらよ?」

「ほむらはアースラでぐっすりだ」

 

オレの言葉に彼女は口を塞ぐ。さて答え合わせといこうか。

 

「まずお前は『ほむら』であってほむらじゃない。あいつは悪魔の力を少し持っているが、それでもお前ほど邪悪じゃない。ほむらの皮を被ったナニカ――――それがお前だろ?」

「…………クスクス」

 

否定はしない、か。ではこいつは誰だと言う疑問が出てくる。何者かはわからないがほむらの反逆の力を取り込んだ者と言えるのが妥当だろう。

 

ほむらの悪魔の力がなくなったのは見滝原だとまどか達は言っていた。よって出身地は見滝原。そしてこの力を取り込めるくらいの器でなければならない。

 

「考えてみたんだ…………強欲の男とあろう者がたった一人の美少女を見逃している。それはあり得ない。あのクズはあいつに手を出せない――――つまり、そいつは手を出せばただでは済まない女だった」

 

そう、ヒントはアグスタで。答えは生前のアオとの決戦で出ていた。

 

「お前の名前は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――一ノ瀬。一ノ瀬シイ。違うか?」

 

ほむらの姿が黒く染まりそこから一ノ瀬シイの容姿になった。胸元を開けた黒いドレスは男を魅了する蠱惑を放っていたが、オレにとっては忌々しい気分にさせる呪いが感じた。

 

「さすが兄さん。私のことをよくぞ…………」

「……当たってほしくなかったけどな」

 

やっと過去を見つめ直そうとした矢先がこれだ。かつての家族がラスボスとはSF映画のダースさんもビックリだ。

 

「んで、お前がオレ達の相手か?」

「ううん。残念だけど異物は除外だよ」

 

指を鳴らすと四季達に転移が発動した。

くそッ、こうなったら楽にはいかない。

オレの弱点である燃費の悪さは仲間によって解消される。よって、一対一では長く戦えないのだ。

 

「この力はホントにスゴいよ。なんでもかんでもルール違反できるし、敵なんてすぐに掃除できる。ただ、この力には欠点がある」

「欠点?」

「感情が制御できないのよ。しかもそれがある男に向いている」

 

ほむらの愛はまどかに向いていた。なら、一ノ瀬シイは誰に――――

 

「あなたよ。兄さん」

「は? オレ?」

「うん。暁美ほむらの初恋は兄さんの死によって失恋となった。まあ自業自得で失ったモノだけど、彼女は一ノ瀬ソラにどうしても会いたかった。またあの人の顔、におい、暖かさを求めていた。その結果、鹿目まどかに破れ、自分の力を失い失敗した。だけど暁美ほむら――――いや反逆の力は諦めなかった。『彼女』は新たな器を求め、再び復活のときを待った。クスクス…………そしてその器――――ソラの種違いの少女の中に入ることができた。スゴいわよ。ソラの妹だけであって反逆の力が中に入っても器は壊れてないのよ」

 

オレが死んでからの話はあまり聞いてないが、まさかこんなことになっているとは。

 

にしてもこいつの目的はオレなのか?

オレを求めて何がしたいんだ?

 

「単純な話を言えば兄さん――――いえ、私はお兄ちゃんが大好き」

「お断りだ。オレはお前を妹としか見ないし」

「せっかくの告白なのに…………でも、関係ないよ。私はお兄ちゃんが大好き。好き好き大好き――――殺したいくらい」

 

背筋が凍るほど冷たい声色だ。

殺意?

敵意?

悪意?

好意?

 

なんだこのわけのわからない感覚は!

 

「お兄ちゃんを殺したい。

お兄ちゃんを壊したい。

お兄ちゃんを独り占めしたい。

お兄ちゃんをおもちゃにしたい。

 

…………クスクス、私の愛は鹿目まどかを求めた暁美ほむらをも凌駕するモノだよ? 幸せだね~♪」

 

邪悪で妖艶なその女にオレは敵意を込めた目で見据える。こいつはもはや悪魔――――神を貶める最悪の恋する女だ。

 

「さて、お兄ちゃんの(おもちゃ)を用意しなきゃ♪」

 

彼女が指を引っかけるようにあげると地面から棺桶が出てきた。その中には黒髪の白骨化した遺体があった。

一ノ瀬は――――シイはその遺体にアオの神器を刺し込む。すると召喚陣が棺桶の真下から現れた。突風が起こり、オレの視界を遮ろうと風は起こり続ける。

 

「なんだこれは!」

「最凶の敵を喚ぶ儀式――――まあ、お兄ちゃんならわかるでしょ?」

「儀式召喚!」

 

最低最悪の召喚術。魂や生物を生け贄にして強力な神器または使い魔を喚ぶ。寄り代も必要とすることもあるが、シイには生け贄にすべきモノがない――――

 

「いや待て! まさかッ」

「私の前では世界のルールなんて意味はない! だから喚べる。さあ、来て!」

 

光が起こり、そこで風は止んだ。目を開けるとそこにはかつてのオレが立っていた。黒髪で青い瞳――――だが左目だけは空洞のように暗い目。その男は一目見たときオレは理解した。

 

――――こいつは『死』、そのものだと。

 

「名前はナイトメア――――悪夢をもたらす者と言ったところね」

「ナイトメア…………」

 

ソラではないソラ。それがナイトメア。

偽物でも本物でもないナニカ。

 

「この人はソラ――あなたのもう一つのなれの果てからきたのよ」

「もう一つのなれの果て?」

「そう。グリードに奪われ、殺されたことで絶望し、生まれた最凶。奇跡もなく、最悪の未来から来た悪夢――――ふふ、魔法少女で言う絶望して生まれた魔女よ。」

 

なんてことだ。ラスボスが自分とはどんだけテンプレなんだよ。

正直、オレとしては相手したくないよ。だって自分と相手したらただじゃ済まないもん。

 

「加えて私の魔力は無限。つまりナイトメアが魔力切れを起こすことなく戦える」

 

儀式召喚した使い魔には魔力切れの消滅ない。つまり生物として変わらないのだ。

これはまずい。二体を相手にオレは戦えるのか?

 

「さあ、足掻いて見せなさい!」

 

シイに命じられたナイトメアはオレに向けて斬りかかってきた。その場を飛んで回避したが、斬った先にあるビルが真っ二つに斬られた。剣圧でこれかよ!

 

「くそッ」

 

『閃光の衣』と『全てを開く者』を召喚して、早さで翻弄した。一度に二つの神器を使うとすぐに魔力切れを起こすが今はそんな余裕はない。

ナイトメアは危険だ。早く決着をつけないとこちらがやられる!

 

オレは背後をとり、神器をはしらせる。しかしそれを読んでいたかのようにナイトメアは対処され、蹴られた。

内蔵に響く重い一撃だったが、すぐに体勢を立て直す。

 

「遅い」

「ぐが!?」

 

ナイトメアはいつの間にかオレの前にまで来ていた。また蹴られたオレはビルに叩きつけられ吐血した。

オレより身体のポテンシャルが高い…………!

 

自分自身かと思いきや実力は完全にあっちが上だ。

絶対的に絶望的。それがオレの今の状況。

 

「諦めて。もうお兄ちゃんは死ぬしかない。死んで私のモノになるしかない」

 

ふざけるなと言いたいがどうやってもオレはどうしようもない。オレの身体は横になって倒れている。

 

…………ごめん、みんな。オレはもう――――

 

 

「諦めないで!」

 

 

誰かの声がした。この声は知っている。そうだ、あいつだ。オレは手をつけて立ち上がろうと顔をあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、立つんだ! 立つんだ! ジョォォォォォぶへし!?」

「ジョーって誰だよ!」

 

どっかの親父の格好をした女に上段蹴りを放つ。ここにきてネタにはしるのが千香である。この女は相変わらずである。そしてドMである。

 

「ハァハァ…………ヤベー、今ので絶頂しそうになった。ワンモアプリーズ!」

「するか!」

 

せっかくのシリアスが台無しになった。だが、おかげで絶望していた心が立ち直った。

…………感謝はしないけど。

 

「何この変態……」

「キャッル~ン☆ みんなのアイドル千香たんだお! よろしくねぇん!」

 

さすがの黒幕もこのイロモノには苦笑せざる得ない。

というかいつの間にかアイドル風のフリフリ衣装になってるのはこれ如何に。

 

「だが、味方が一人得たところで」

「一人? 違うよビッチ」

「誰がビッチよ!」

「あ、ごめん。つい本音を」

 

千香の毒舌に青筋を立てるシイ。ザマァとはこのことだな。

 

「ソラは一人じゃない。いつも一人に見えるけど違うよ。ソラは繋がっているんだよ――――みんなの絆で」

 

千香の答えを表すかのようにガラスが砕ける音共に五人の来訪者が降り立った。

 

「またせたな!」

「美少女戦士さやかちゃんよ!」

「ふふ、お姉ちゃんが助っ人よ♪」

「覚悟はいいかしら? 偽物」

「ほむらちゃんのセクシードレスを返してもらうよ!」

 

上から杏子、さやか、マミさん、ほむら、まどかが御送りする豪華ラインナップである。あとまどかさんや、目的がなんかちがくね?

 

「ううん、あれを着せてソラくん共々おいしくいただきたい」

「ほむらだけいただいてろ」

「ほむんッ!?」

 

裏切られて反応するほむら。

あらやだかわいいツッコミ。

ま。まどかの欲望は放っておいて…………さてと、

 

――――覚悟しろ

――――後悔しろ

――――準備はできたか?

 

「なら安心して」

「「「「「「とっと死ね!」」」」」」

 

これがホントの最終決戦開幕だ。




ラスボスは自分自身というテンプレですみません。
まあやりたかったことなので後悔してませんけど!

次回、最終決戦

――――だけどこいつは滅びない。一生な…………

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