とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「また、オレは…………失うのか?」

by神威ソラ


第百二十七話

打撃音と爆音が響く。戦いは激しさを増していた。

 

オレと四季は変態共の戦いを見守っていた。まあ筋肉馬鹿とナルシストの戦いだが、凄まじいモノだ。なんせ衛は錬成で相手を追い込もうとすれば、相手は爆発でそれを力技で無効化する。

 

創る者と破壊する者。

 

考えたこともなかったが能力も対立関係だ。

 

「貴様、なかなかやるではないか!」

「フッ、当然。美しい僕ならば当たり前だが君は逞しいね。筋肉で僕の爆破を無効化するとは」

「たわけ。それこそ当然だ。衝撃に耐えられぬ柔な筋肉ではないわ!」

 

いや普通は耐えられないから人間は。それからお前らなんかライバル関係できてない?

さっきからお互いの強さを認めてるし。

 

「なあ、四季。もう先に行っていい? なんかこっちも戦いに加わったら怒鳴られそうだし」

「だな。なんかやる気が失せた」

 

マッスルとナルシストの戦いを見て誰得?

そんなわけでオレが先に進もうと思うと、夜刀神がこちらに向かってきていた。しかも霊装という精霊特有の武装を着て。

加勢するつもりできたのか?

 

「おー、夜刀神。無事――――ッ!!」

 

四季も気づいたのか夜刀神の道を壁を錬成して遮ろうとした。しかしそれはバターのように切り裂かれた。

 

「ひどいぞシキ、ソラ! なぜ私を阻もうと」

「黙れ。なら、その殺気はなんだ? ペットの分際で飼い主に噛みつくような育て方をした覚えはないぞ」

「……………………ふふ、ハハッ!」

 

夜刀神は笑っていた。普段ならば今のペットというところでツッコむところだが、コイツは違う。

ヤバい。偽物じゃないし、恐らく。

 

「グリードかッ」

「その通り!」

 

グリードがオレ達の仲間を引き連れて現れた。一刀と師匠、ティアナはいないが、どうやらそれ以外はやられたみたいだ。

 

「高町、ギンガ、スバル、千香、エール…………ヤバいなソラ。高町、ギンガ、スバルは一人程度でなんとかできるが二人以上は難しい。おまけに人造神器使いに、『最凶』の神器使い…………勝てる気がしない」

 

衛も含めたいところだがあいつが戦うべき相手はあのナルシストだ。

現在、衛とナルシストはどうやらグリードの登場で戦いをやめている。

 

「グリード……君という男は!」

「なんだ? 気づいたのか?」

「当たり前さ。僕はオーラには敏感な男さ」

 

何がどうしたと聞くとナルシストは答えた。

 

「彼は僕達の仲間に手をかけ、神器を抜き取ったようだ」

 

それを聞いたときオレはグリードの前に現れ、神器(全て開く者)を召喚して斬りかかった。

それは高町によって防がれた。

 

「オイオイ、いきなりか?」

「黙れ。お前の行いにいい加減にぶちギレてるんだよ!」

 

オレが後退すると四季は錬成でグリードを串刺しにしようとしたが、夜刀神の斬撃で防がれた。

 

「美しくないね!」

 

ナルシストは今度はグリードの目の前で爆撃した。グリードが煙で見えなくなったときオレと四季はジト目でナルシストに言う。

 

「オイ、見えないじゃねぇか」

「しかも一応、味方がいるからするなよ」

「僕にとっては敵だから」

 

正論を言われたのでこれ以上は言わなかったが、どうやら千香のシールドで防がれたようだ。しかしそこにはグリードがいない。

 

どこに!とオレは思うと背中から殺気を感じて四季と衛の手を引いてその場を飛んだ。

 

「え――――」

 

それがナルシストの最期の言葉だった。芋虫に頭から食われた。かつて平行世界のマミさんみたいな終わり方をした。

 

「ラストがマミられた!」

「この人でなし!」

 

「きゃははは」と面白そうに笑う女性陣を見て、シャレにならない。狂っているよ……こいつら。

 

あのナルシストは悪いヤツじゃなかった。

敵だったけど悪いヤツじゃなかった。

 

なのになんで……なんで…………。

 

「ガハハハ、うるさいヤツが死んで精々したぜ!」

 

高笑いするゲスの手には芋虫が生えていた。あいつがナルシストを殺した。

 

オレは神器を握る力が籠る。四季は無言のまま錬成で刀を造り出す。衛は手を鳴らして戦う準備をしていた。

 

「あ? やるつもりか?」

「「「当然だろがクソヤロー」」」

 

かつてない怒りを剥き出しにオレ達はグリードを睨む。

 

「なら、俺も混ぜてくれよ」

 

ドガァァァァァンと壁を突き破って師匠とティアナが現れた。やっと合流できた。

あとはこいつら全員、ぶっ飛ばすだけ!

 

「まだ生きてたか死に損ない!」

「高町を返してもらうぞ…………スイーツのために!」

 

え、それが本音?

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

なのは達を相手するソラと四季。衛は十香を一人で相手していた。残ったエールと千香はグリードの傍らにおり、雷斗が相手するのはグリードを含めて三人になる。

 

雷斗は忍者が使うクナイを使って、お手玉していた。

 

「ふーん、雷斗はたった一人で相手するの?」

「当たり前だ変態。お前らごときは俺一人で充分だ」

「クスクス…………グリード様の敵は、ハイジョハイジョ…………」

「ガハハハ! ごときかどうかはテメーの命でわからせてやる!」

 

雷斗はクナイをグリードに向けて投擲。千香のシールドはそれを遮ったが、いつの間にか雷斗の姿はない。彼の専売特許は高速移動を越える光速の歩法だ。

 

「まず一人――――」

 

その言葉を聞いたとき、千香は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。雷斗の電撃を帯びた手が彼女の首を掴んでいた。スタンガンと同じ要領で彼女を気絶させたのだろう。

 

「へえ……てっきり殺すかと思ってたが」

「殺せばソラが敵になるかもしれない。アイツを殺すにはそれなりの覚悟と準備が必要になるから合理的じゃない」

「とか言いつつ実はソラと敵対したくないと言うおやごこ――――あふんゥゥゥゥゥッ♪」

 

雷斗はエールがいい終える前に空中回し蹴りで彼女の顔面を打ち抜く。何度もバウンドさせてそして、彼女はソラと戦っていたスバルを巻き込んで壁に激突した。そのとき興奮して艶やかな吐息を漏らしていたことは気のせいだと思いたい雷斗だった。

 

「あとはテメーだけだグリード」

「ガハハハ、さすが『最凶』様ってことか!」

 

グリードは歓喜した。これが『最凶』の実力。

 

圧倒的で理不尽な存在――――それが彼が目指していた異名だ。

女や財宝、地位、名声などなどあらゆるモノを彼は手に入れた。しかし、『最凶』という名声だけはどんなことをしても手に入られない名声だった。そして彼は『最凶』になることを目標とし、その手順を知った。

 

『暁美ほむら』が持つ悪魔の力。それはまさしく『最凶』になれる力ではないか。

 

「オレは『最凶』になる。だが、その前にテメーの力も奪ってやるよ!」

「やれるもんならやってみやがれ!」

 

雷斗は分身を出し、グリードはラストの爆弾泡を出した。

雷斗がクナイを投げれば、それは泡で粉々にされ、雷斗の分身が泡の近くにいたら爆撃する。そんなやり取りがしばらく続き、グリードがシロの芋虫を出してきた。

雷斗は電光石火の早さで芋虫を掻い潜り、芋虫を串刺しにしようと電撃のエネルギーで伸びたクナイで刺しこもうとした。

 

「はん! あめぇーな!!」

 

なんと芋虫は爆発した。しかも爆発したのにも関わらずグリードにはダメージはない。

まさかラストとシロの神器が融合するとは思わなかったため、雷斗はその爆撃を受けてしまった。義手である片腕が吹き飛んでしまった。

 

「チッ、しくじったか」

 

雷斗が再び高速移動しようしたが足に何かが絡まる。雷斗の足には影が紐のように絡めていた。

 

「影の操作かよッ」

「それだけじゃねぇぜ!」

 

グリードがポカリッと空いた穴に泡を入れ込む。すると雷斗の目の前に穴が現れ、そして泡が現れた。雷斗は爆発する前にクナイで泡を打ち抜いた。ギリギリのところ爆発はせず、泡が破裂しただけで済んだ。

 

「今度はワームホールか……。テメーはどれだけの神器使いをッ」

「ガハハハハハハ!」

 

高笑いする悪に雷斗は怒りを覚える。とは言え、ヤツの犠牲になった数だけ神器の数があるというわけである。加えて魔力量と技術も異常。神器は燃費の良し悪しはあるがそれだけ使えるには時間がかかるモノだ。よってコントロールがずば抜けていると雷斗は判断した。

 

「さっさと終わらせねーとしんどくなりそうだ」

「安心しな。さっさと終わるさ」

「どういうこと――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソラァァァァァ!!」

 

 

四季が叫んでいた。雷斗は

どうしたとばかりに見た。そこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――魔力矢で貫かれた血で汚れたソラがいた。

 

「が、ふぅ…………」

「……………………」

 

なぜまどかがソラを撃った?

なぜ彼女はソラの敵だったのか?

 

頭が混乱する雷斗にグリードは答えを出す。

 

「オレの神器の前提条件は接触。つまりオレに接触すればアウトさ」

「だけど朱美まどかはお前に一切……!」

「ああ、触れてない。だけど――――髪の毛一本(・・・・・)でも触れたらアウトだぜ~?」

 

ここで雷斗は気づいた。まどかは誰と戦っていたのか。

答えはスバルだ。そして彼女はグリードに与えられたのか知らないグローブをつけていた。そこにもしグリードの髪の毛が編み込まれていたとしたら――――

 

「ガハッ!?」

 

今度はティアナが雷斗の胸を撃ち抜いた。しかも非殺傷を解除した魔弾で。雷斗はそのまま崩れ落ち、血を吐き出す。

 

「ガハハハ、ざまぁねーな!」

「くそがァァァァァ!」

 

激昂して立ち上がろうとした雷斗だが、影が彼をしばり上げる。グリードは芋虫を出してそして――――言った。

 

 

 

 

「あばよ、負け犬」

 

 

 

グチャンッ!!

 

 

肉が食われる音共に雷斗は芋虫に肉塊となった。

 

「ガハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

勝者笑う。敗者は嘆く。

 

「ちくしょう…………ちくしょう…………」

 

ソラは殺された師匠を見て、ただ涙を流す。




次回、胸くそ悪いバッドエンド

――――あ、これはifの物語だけど本編に繋がります。

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