とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「ふふ、前哨戦はお・し・ま・い・よ」

by友江マミ


第百十八話

(アオサイド)

 

 

かつて一人の少年がいた。純粋で真っ直ぐでいたずらっ子な男の子がいた。だけどその少年は現実を知り、夢を諦めた。

 

かつて一人の少年がいた。悪者が許せずヒーローに憧れ、そして悪の欲望で殺された男の子がいた。だけど、その少年の想いは自分に受け継がれた。

 

英雄とヒーロー。

蹂躙と救済。

 

どっちが勝っても文句はない。だけど、この戦いで思い出してほしい。いや思い出すだけでいい。

 

――――かつてこんな日が自分にもあったんだ、と

 

そう自分がソラに教えることは…………

 

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

剣術において経験ではソラが上だ。その手の天才の少女と戦ってわけだ。なお、その戦いの原因はエクレア争奪戦だったりする。

 

「エクレアで鍛えられたオレの剣術を特と見よ!」

「なぜにエクレア!?」

 

わけがわからないよとばかりに下からの袈裟斬りを繰り出すが、神器でそれを滑らすように流し、ソラは腹部へ蹴りを繰り出す。

 

「ぐふッ」とアオは後方へ飛び、それと同時にソラはアオへ飛び込む形で斬り込もうとする。

 

「なんのォ!」

「チッ!」

 

アオはそれを受け止め、あらかじめセットしておいた雷魔法を放つ。空中に飛んでいるソラが避けるには不可能。ソラはなんとかしてアオから離れたが至近距離から受けることを回避しただけだ。雷魔法を受けることは避けられない。

 

直撃。バリバリと感電するソラは地面に叩きつけられた。アオは壁を蹴り、今度はソラへ斬り込もうとした。

 

 

ゾッ――――

 

 

不意に寒気がした。ソラが何かをするという感じがした。まさしくその通りでアオの手足をリボンが拘束した。

 

「『シンクロ』」

「や、べッ!」

 

ソラの髪の毛が金髪に染まり、神器(全てを開く者)は刃がなくなり円筒状になっていた。カチャッとアオにそれを向けて叫ぶ。

 

「『ティロ・フィナーレ』!!」

 

巨大な魔力砲弾がアオに直撃し、煙幕が立ち上る。ソラはそれを確認してから『シンクロ』を解除し、再び構える。

 

まだ終わらない。なぜなら相手は自分だ。最後の最後まで足掻き、苦しみ、そして勝利を掴もうとする。

 

ちなみにマミとの『シンクロ』はもう使えない。魔力さえあればできると言えばできるが分けてもらった魔力はさっきので底を尽きた。残っているのは杏子、さやか、ほむら、そして千香の魔力である。まどかの『シンクロ』はオーバーキルのため、ゆりかごごと破壊しかねないのでもらってない。

 

「負けて、負けてたまるかァァァァァ!!」

「さすがはオレ。しぶとさはG並みだ」

 

今度は杏子の『シンクロ』を使う。髪の色と神器はまたもや変化し、赤毛と槍状になった。長いカギというイメージがしっくりくるモノだ。

 

「うォォォォォ!!」

 

アオは『神速』を使った先制攻撃に成功――――したかに思われた。

 

「き、消えた!?」

 

霧のように消えたソラに戸惑うアオ。そこへソラが彼の肩へ突きを放った。

 

「ッ、が!?」

 

肩をやられたので逆襲に蹴りを放つが、またもや霧のように消えた。

 

「そいつも幻想だ」

「果たして」

「どれが本物だ?」

 

合計十人くらいの赤毛のソラがいたずらっ子な笑みを浮かべてアオを挑発する。

 

「ナメるなァァァァァ!!」

 

アオの神器から雷魔法が上へ放たれた。そして上から雨のような雷魔法が放たれた。

 

ソラ達はそれを回避する、がアオが放ったごく小さな魔力弾で幻想達を消す。そして残ったソラを本物と断定して『封印』の斬撃でソラを切り裂く。

 

「ッ、コイツも!?」

 

アオが切り裂いたのは幻想だった。では本物は?とアオが辺りを見回す。そして気づいたときにはソラが懐刀にまで来ていた。今度のソラは黒髪で手甲には『アクセル』と書かれたカードがあった。

 

「ちょっくら、くらっとく?」

 

カードが『トップアクセル』と書かれた刹那、物理現象を越えた拳のラッシュがアオの身体中へ襲いかかる。

そして最後の一撃でアオは壁へ叩きつけられる。

 

「WRYYYYYYYY !!」

 

WINとばかりにソラは手をあげて勝利ポーズをとる。

これでおしまい。誰もがそう思っていたが、それでもアオは立ち上がる。

 

既に身体はズタボロ。フラフラとした足取りだ。

 

「…………どうしてお前立ち上がる?」

「アンタに……思い出してほしいんだよ…………『オレ』を」

「もう過去は捨てた。オレは昔の自分が――――」

「いつまで逃げるつもりなんだよッ!!」

 

ここにきてアオは叫んだ。

 

「アンタの過去は確かに愚か者だよ。馬鹿みたいな理想を求めて大切な人を殺してしまって諦めた。ああ、それでいいよ。だけど拒絶すんなよ!」

「お前に…………お前に何がわかる! 自分が求めた理想が夢が大切な恩師を殺したこの気持ちが! 家族に拒絶された辛い過去が!」

「だから許せないのか、自分が!」

「ッ!」

 

アオの言う通りだ。ソラは昔の自分が嫌いだ。受け入れられないものだ。しかしそれはもはや起きてしまったこと。やり直しはできない。

 

ソラは逃げていたのだ。自分の前世――――または過去から。

 

現実が嫌で過去や未来へ逃げる者がいるがソラは違う。今を充実してるが過去から逃げている。未来へ逃げている。

 

「いい加減に許してやれよ……過去の自分を。いつまでも逃げるなよ……家族から」

 

嫌うのは良い――――だけど振り返ってほしい。

受け入れなくても良い――――だけど見向きをしてほしい。

 

それがアオ(過去の自分)の願いだった。

「カフッ」とアオの口から血が吹き出した。

 

「……お前、まさか」

「そうだよ……気づいてなかったのか? 自分はもう長くない……。クアットロが言ってただろ? 失敗作だって…………」

「…………お前は今のオレを否定するか?」

「しない。だってアンタはアンタだ。ソラはソラ。間違ってると思えばそれは間違ってるし、正しいと思えばそれは正しい。第三者の意見なんて元々参考程度みたいなもんなんだよ。ホントに正しいのは自分が信じたモノさ……」

「……………………」

「なあ、ソラ。自分はアンタのことを――――ッ!!」

 

アオが突然立ち上がり、ソラを右へ押した。

何事?とソラは思った刹那――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――アオの胸に穴が開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…………?」

 

アオは倒れる。倒れた原因は撃った犯人のせいだ。

なのはじゃない。

ヴィヴィオじゃない。

 

では誰だ?

 

ソラは撃った犯人を睨み付けた。しかしそれは予想外だった。

 

「なんで……なんでこんなことをした――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――マミさん!!」

 

マミはいつものようにニコニコ笑ってマスケットを向けていた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

前哨戦は終わり、本番はここから始まる。

もしかするとシリアスばかりの物語。はたまた悲しいばかりの物語。

 

残酷な決着もありますが、ご覧あれ…………




過去をいつか振り返ってほしい。あの頃の自分は馬鹿ばっかりしていたなど、過去の自分を好きになってほしい。そう思って書いたのがこのお話です。ソラはもう過去から逃げないでしょうね。

そしてマミさんまでも敵に…………たぶん自分がソラだった折れてますね。まあご都合主義という部分で言えばソラはまだ折れません。ソラが折れるときは完全に誰かを失ったときです。
アオのように最後まで足掻き足掻いて足掻き切って、何かを掴もうとする男こそ、ソラです。

だからソラを信じてください――――彼はまだ絶望していないと。

次回、幕開け

――――こんなことがあってもオレは負けねぇぞッ


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