とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「間違っているなら自分は否定する」

byアオ


第百四話

(??サイド)

 

 

彼女は正しかったのだろうか?

彼女の努力は否定されるモノだろうか?

 

彼は断言する――――間違っていないと

彼は断言する――――あなたは間違っていると

 

 

ゆえに彼は戦う。相手がたとえどんなに強くても、相手がどんなに理不尽な実力者であっても。

 

なぜなら彼は『幼き彼』と同じ理想を持つ者だから。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

ティアナとスバルはなのはに挑んでいた。今日の訓練はなのはを撃墜させることがルールだ。

 

順調。まさに好調だ。

 

これなら雷斗のアドバイスを元にした連携がうまくいく。

危険な連携攻撃だが、なのはを倒すにはこれしかないと彼女は考えていた。

 

ティアナはスバルに陽動の指示を出した。その陽動はとても無謀で危ないモノだったため、なのはに叱咤される。

その隙をついてティアナはクロスミラージュを構える。

なのはは得意とする砲撃を放ち、ティアナを墜とそうとする。しかし、それは幻覚。

 

つまり本命は上からの魔力刃と下からスバルの拳の奇襲である。

 

通る――――そう思った刹那、拳はシールドで止められ、魔力刃はなのはの手によって止められた。

 

「おかしいな……。これじゃあいつもしていたような訓練じゃないよ……」

 

声色が低い。アオはこのときぶちギレたなと顔に手を当てる。

 

やれやれと呟きながらアオは隣にいる雷斗を見ると、彼は剣呑の目で見ていた。

 

どうしたのだろうかとアオが思っているとそれは起きた。

 

「少し頭を冷やそうか……」

 

スバルをバインドで縛り、ティアナを砲撃で吹き飛ばす。それを見たときアオは背筋がゾッとした。

何か嫌な予感がする。このままじゃとんでもないことが起きる。

 

彼はモニター室から出て訓練室に向かう。

彼が到着したときティアナは何かを言って魔力弾を撃った。しかしそれはなのはのショートバスターで相殺された。それでティアナは戦意損失した。

それで終わりならまだいい。しかしなのははあろうことがとどめをさそうとしている。

 

 

――――なぜ誰も止めようとしないんだッ!

 

 

彼は神器を展開してティアナに迫る魔力弾をキャンセルする。

 

「…………なんで邪魔するの? アオくん」

「やり過ぎだからだよ。もうティアナは戦意損失している。もう終わっている相手に何をしているんだよッ」

「指導の邪魔だよ。邪魔しないで」

 

これが指導? ふざけているのか!

 

アオは煮えたぎる想いでいっぱいになった。

 

戦うことを止めた相手に、戦意無き相手にとどめをさすこのやり方が教育というのは納得できない。

 

「ふざけんなよ。これが指導なら『オレ』はあんたのあり方を認めない。ティアナの努力を否定し、こんな正義でもなんでもない理不尽で暴力的な力で押さえつけるあんたのあり方を否定する!」

「うるさい、うるさい、うるさいよッ! 邪魔するなら――――オトスマデ」

 

無謀と言うべきか?

不可能と笑うべきか?

 

そんな戦いが今始まった。

最初に言っておくが勝者は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――いない…………

 

 

 

 

(アオサイド)

 

 

 

 

エース・オブ・エースに勝てるとは思っていない。彼女に勝てるならもう自分は『無血の死神』の足止めくらいになっている。それほど強いのだ。

 

「ッお!」

 

ピンクの極太砲撃が迫ってきたところをギリギリで回避する。バンバン神器を使いたいが、これはとても燃費が悪いのであまり使えない。

 

この神器で戦う場合、如何に相手に近づき、如何に相手を無力化させるかという戦略的な戦い方をしなければならない。

というか魔力量が平均だからあまり長く戦えないのよねー。ちなみにティアナは気を失って倒れているし、ぶっちゃかけ味方は無し。ハッハッハッ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝てるかァァァァァッ!」

 

 

思わずシャウト。

いやだってエース・オブエースだぞ!?

巷で有名な砲撃魔だぞ!?

 

勝てるはずないじゃん! 何してんの自分はホント!

 

《勝てない? それは君の勘違いだよ》

 

なんか知らない声が頭に聞こえるしッ。本格的にヤバいし!

 

《じゃあ君は逃げるのかい?》

 

……………………。

 

《『彼』は逃げなかったよ。どんなに相手が強くても、死の恐怖があっても、彼は逃げなかった。それは君の夢でも知ってるはずだよ?》

 

…………自分はアイツじゃない。アイツのように勇気がない。

 

《あるさ。なんせ君は『彼』だから。君は『彼』の強さを誰よりも知っているはずさ》

 

謎の声はそう言うといつの間にか、自分の視界があの夢と同じ世界になっていた。

 

湖だけの世界の上に立つ自分と――――自分同じ年齢の少年

 

 

同じ髪の色で同じ紅い瞳。白いシャツとズボンを履いた少年だ。

彼のことは知っている。真っ白な男の正体はコイツだ。彼はいつからか自分の中にいた。

 

気づいていた? いや気づこうとしなかった。なぜなら彼は自分が『彼』と同じモノを表す象徴だったのだから。

 

《だけど、それもおしまいさ。君はもう今の『彼』とは違う。また新しい別の可能性なんだよ》

 

彼は自分に――――『オレ』の手を握る。

暖かい手だ。優しい気持ちが手から伝わる。

 

《僕ができなかったこと、僕が憧れたモノ、そして『彼』が諦めたモノ…………それらを君が叶えてほしいんだ》

 

『オレ』に…………?

 

《以前君に出会った幼い『彼』は絶望していた。今の『彼』はあの幼い『彼』が自分の夢を諦めてなったなれの果て……。だけど君は諦めずなろうとしている》

 

少年は微笑む。彼の後ろには幼い『彼』がいた。彼も笑っていた。

 

《○○くん、君が僕達の夢さ》

「戦ってよ、お兄ちゃん。オレがなれなかったヒーローになってよ!」

 

 

そこで声は聞こえなくなる。再び現実に戻される。自分が幻覚を見ている間に状況は変わっていた。

なのはさんは息をきらせており、自分は身体がビルにめり込んでいた。

 

幻覚を見ていた間に幼い『彼』が戦ってくれていたのだろう。

 

「負けられない……」

 

負けられなくなった。

負けたくなくなった。

 

ティアナのためじゃない、なのはさんのためじゃない。

 

 

…………そう、あの夢の世界の少年と『彼』のためだ。

 

間違ったことを正す――――それが『ヒーロー』だから。

 

「なのはさん」

「?」

「『オレ』、勝たせてもらいます」

 

消えた神器を再び手に取り、ビルから飛び出す。

なぜか身体が軽い…………。負ける気はしないッ!

 

 

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

なのはは戸惑っていた。突如、アオが意識をなくしたかと思えば、逃げ腰から積極的に攻撃に転じたからだ。

彼女は思う――――まるで彼のようだ、と。

 

しかしまだ足りない。自身の経験と感覚を信じてあらゆる斬撃を回避し、カウンターに砲撃を浴びさせた。

ピンクの砲撃でビルにめり込んだとき、なのはは息をきらせていた。

致命的な一打はないとは言え、回避するには一苦労であった。

 

そんな息をついたとき、彼の意識が戻った。既に神器は消えており、ダメージで動けない。そう思っていた。

 

 

――――しかし、それは間違い

 

 

そう気づいたときにはアオはなのはの前に来ていた。

油断した。まさかアオがここまで早く動けるとはおもってもいなかった。

 

しかし近距離になったところで変わらない。なのはは接近戦においてアオには負けてないと思っている。

ゆえにスフィアを用意して棒術の構えにはいる。

 

「らァァァァァッ」

「ッ!」

 

アオの猛攻。右へ左へ上からの斬撃。

なのははそれを受け止め、レイジングハートの柄の部分でカウンターを放つ。

しかしそれは回避され、回し蹴りを受けてしまう。

 

少し飛ばされたところでアオを見据える――――が、いつの間にかアオはいなかった。

 

どこ? どこにいるのッ?

 

アオを探す。しかしどこにいるのかわからない。そしてアオは姿を現した。

 

「『神速』ッ」

(後ろッ!?)

 

なのはは咄嗟にレイジングハートで受け止めたが、その斬撃はレイジングハートで受け止めるべきではなかった。

 

それは『封印』の斬撃。『閉じる』の概念を持つ斬撃であった。

 

《す、みま……せん。ます、たー……》

「レイジングハートッ」

 

スリープモードに強制的にさせられてバリアジャケットも解除されたなのははすぐにスリープモードを取り消してまた、バリアジャケットを展開した。なんとか地面と激突はなかったが、またもやアオを見失ってしまった。

 

 

ザクッ

 

 

「あ……え……?」

 

 

なのはの胸から鍵のような剣がのびていた。そして鍵を閉める音と、共にバリアジャケットは解除されてしまった。

 

「な、なにしたの……アオくん」

 

感じない。あの力が…………私と周りを繋げる力が感じない!

 

なのはは困惑する。彼が封印した力は彼女にとってとても大切で彼女にとって周りを繋げる絆みたいなモノだ。

 

「なんで…………なんで…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――魔力が感じないッ!!

 

 

「リンカーコアの魔力供給の機能を『封印』した。これであんたは魔法は使えない。空も飛べない」

「あ…………」

 

絶句した。それを意味するのは――――

 

「要するにもうあんたはただの人間(・・・・・)だ」

 

――――絶望。彼女はそれを聞いたとき、ショックのあまり意識がなくなってしまった。

 

そしてアオも――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――倒れてしまった。




アオが倒れた理由はダメージによるモノです。ただでさえ、身体が弱いのでなのはの魔法を受ければ当然、倒れます。

そして次回、高町なのはの反省

――――ま、彼がなんとかしてくれるでしょ。なんせ『彼』を育てた男なのだから


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