とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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今回は長いです。というかギャグばっかなこの作品ですがときどきシリアスが入りますよー。

――――最後にグロ注意警報発令です。それでも良い方は覚悟して見てください。ではどうぞ!

「最低、最悪、最厄――――まさに不幸だな…………」

by五河四季


第百一話

『閃光の衣』――――それはかつて師匠に継承された神器である。それを持つ者がオレの目の前にいた。

 

「まさかあんたまで転生していたとはな……」

「まあな。第二の人生ヒャッホーイしてやろうかと思ったがエールに捕まった」

「変態から逃れられない運命か」

「そういう馬鹿弟子もそうだろ」

「所詮蛙の子は蛙さ」

「お前と血繋がってないだろ」

 

オレと師匠は意外な形で再会した。

いや初めて会ったときはまさか、って思ってたけどホントに転生していたとはねー。

 

ソラくんもビックリだぜ。

 

「んで、師匠は何がしたいの? オレのメタスラ捕獲を邪魔するつもり?」

「いんや、全くそう考えてないから安心しろ」

 

「ただ……」と付け加えたところで背後から攻撃に備えると、クナイを刺そうとしてきた師匠が現れた。

 

「テメーに仕置きしなくちゃいけねーなって思って」

「なぜ仕置きされなきゃならん」

「理由は簡単。俺が求めていたお前じゃなくなったから」

「あんたが求めていた『オレ』? まさか目の前にいる青くさい理想を抜かしたこいつになれってこと……かなッ!」

 

力任せに振り切り、受け身をとっている師匠に向けて神器を降り下ろす。師匠の身体に神器は――――

 

――――スゥ……と、当たることなくすり抜け。オレはすぐに周りを警戒した。

 

師匠は超速攻型の神器の使い手だ。短距離と長距離という例えを表すならば短距離が得意というわけだ。

 

 

――――ほんの一瞬という時間で相手に近づき

 

――――『殺された』ことを認知させず

 

――――『あっという間』ではなく『あっ』と言わせず対象を抹殺する

 

 

故に『閃光(フラッシュ)』――――光の速さで即死さける化け物だ。

 

 

「おまけに人外だし」

「誰が人外だゴラ」

「一度ガスなんちゃらと戦ったときに流し込まれたウイルスに適応してたじゃん」

「あれはビビった。一時期ワインレッドの瞳になるとは思わなかった」

 

菫さんもびっくり新事実だったりする。あ、そういえばあっちにいるガスなんちゃらの美幼女元気かな。九尾のロリババアで偉そうだったけど。

 

「今は関係ないだろ。てか、死ね。今すぐ死ね。俺のストレス発散のために死ね」

「それひどくね!?」

 

容赦の知らない師だ。いきなり現れたと思ったらクナイ突き刺そうとするし、それを防ぐと今度は消えたと思ったら殺気がある方向に神器を構えるとクナイが飛んでくるし、おまけにビリビリしていて肌が痛い。

 

「チッ、見えないなら勘を頼りにする……か。成長しているなソラ」

「そういう師匠は退行してるよ。オレが知ってるあんたなら音も立てないし、なにより気配を感じさせない。暗殺者(アサシン)のあんたらしくないな」

「仕方ないだろ。思い出したのは約一年前だし、士郎と恭也につい最近鍛えさせてもらったばかりだ。勘がどうも鈍るんだよ」

 

『最凶』のこの人でもブランクは大きいか。なら、今がチャンスってこと。

んじゃ、いかせてもらうぞ。

 

「オラァ!」

「ッ、お!?」

 

接近していた師匠が現れたところで掌打を放ち、彼を防御させる。怯んだところを神器で斬り込むが、やはりクナイで防がれる。

 

それを予想していたオレは開いた片手で魔法を放つ。至近距離の氷魔法は冷えるぜ?

 

「ぐっ、手が……」

「もらったァ!」

 

好機。問答無用に地面を蹴り、飛び込むようにして斬撃を放つ。

 

しかし金属音が鳴るだけでそれは失敗に終わった。

ここで邪魔してきたのは――――

 

 

「やっぱりお前(アオ)もか!」

「当たり前だろ!」

 

ヤツはオレを押し返して追撃にかかるが、あっさりそれを押し戻し、逆に追い詰める。

そこを師匠は凍らせた片腕を外して、雷を帯びさせた左の手刀でオレの神器を受け止めた。

 

「義手?」

「月村の特注品だッ」

 

オレは師匠の蹴りを受けて後ろへ飛ばされた。蹴り放った足には雷が帯びていて、威力と鋭さが倍増していたのでかなり痛い。一般人なら最悪肉傀にできるんじゃないのか思っていたりする。

 

「イテテ……久しぶりに効いた」

「溝尾を狙ったのに動けるとかどんだけ元気なんだよ」

「あいにくもっと痛いのは師匠が死んだ後に経験していたからなぁ。ま、痛いもんは痛いけど」

 

オレは神器を構えながらいつものように口に出す。

 

「懺悔は済んだ? 後悔したか? なら、安心して――――とっと死ね」

 

 

 

 

(千香サイド)

 

 

 

 

 

やあやあ、みんなのアイドル千香ちゃんだよん。にしてもスライムを多い。六課のみなさんが善戦してるからこちらに被害はないが、ボクの目の前には『最凶』がいた。

 

「おっひさー千香ちゃん。早速だけど大人しくしてね」

「嫌です。てか、こんな絶好になりそうな状況で大人しくしろってのもおかしいですよね?」

「お互い『混沌』をもたらす者だから目的は同じだねぇい。だーけーど、今回はカオスは無しよん。理由はライトがご褒美くれるから♪」

「ご褒美って?」

「それは……えひひひ、電撃ビリビリぃ~…………」

 

あー、お仕置きのことだね。これは不味い。師匠と敵対するとは厄介だ。

 

あらゆる攻撃は無力化され、あらゆる能力を無力化にする正真正銘の化け物。

 

『勝てる』じゃなくて、『勝てない』。

 

つまるところこの人に勝利することは絶対にないということだ。

 

「うにゅー、このままじゃ六課に先を越されそうだし、さやかちんとほむほむは六課の人に時間をかけられているし…………あ♪」

 

名案を思い付いた。

 

用は――――

 

 

「師匠を壊せばいいんだ♪」

「それは名案じゃないよ」

「アハハハ、師匠はわかってないねー? ボクが元からどういう存在でどういう在り方だったのか、ね?」

「……ああ、『人形』――――だったね」

 

 

人形だから考えはしない

人形だからシンプルな答えを出す

人形だから容赦は――――できない

 

 

師匠はため息を吐きながらサバイバルナイフを構える。ボクもまたスタンロッドを構える。

 

「勝っても負けても文句はないよん?」

「ボクは敗北を知らない、理解できない。同時に勝利を知らない、理解できない。『人形』だったから」

 

ボクと師匠がぶつかる。互いに譲れないモノを賭けて。

 

 

……まあ変態的な戦いになるけど。

 

 

 

 

(四季サイド)

 

 

 

 

 

とりあえずソラを二人に任せて俺は森の中に逃げたメタスラを追いかけていた。あれはどうしてスライムでありながら固く金属なのか、知りたい、理解したい。

 

だから解剖する。それが俺のスタンダードだ。

 

ぷるぷると震えるソイツをやっと追い詰めた。あとは切り裂いて解剖するだけだ。

その一歩を踏んだ刹那――――メタスラが破裂した…………。

 

「自爆……? いや違うな。これは拳圧(・・)で吹き飛ばしたってところか?」

「スゲーな一目見ただけでわかるの?」

 

バイザーで顔を隠した男女が俺の背後にいた。

 

男はやや黄色のヒーロースーツを着ており、最儀礼ようのマントを羽織っていた。なんかどこかのアンコのヒーローを彷彿させそうな格好だな。

女は小さな容姿で男と同じくバイザーで顔を隠していた。ピッチリ着こなされたタイツと小さな籠手をつけている。たぶん、二人とも近接格闘タイプだろう。

 

「んで、お前は誰だ? 俺になんのようだ?」

「単刀直入に言えば排除。たくっ、気乗りしない命令だな」

「仕方ないわクラウ。彼らに私達は逆らえない」

「オリビア、そうは言ってもこいつはまだまだ若造なんだぜ? ものスッゲー年寄りな僕達には気乗りしないって」

 

若い…………歳のことじゃないな。実戦経験のことだろう。つまり、この二人は戦争など経験してきた猛者。しかもかなりの年寄りだ。

 

…………経験においての話だ。

 

「悪いけどここで倒れてくれ。クライアントの命令で邪魔らしいんだよ、お前」

 

俺は言い様のないナニカを感じてその場から右へ飛んだ。すると俺がいたところに男がパンチを放っていた。

 

パァンと空気に響く音がその威力を示していた。しかも予備動作無しで必殺とはこれ、いか…………に?

 

「あ、れ……?」

 

腹部が痛い。避けたはずだ。なのに……なのに――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――横腹が抉れたコレハナンダ?

 

「ガハッ…………」

 

吐血する。ちくしょう。まさか、避けていたと思っていたのに僅かにカスっていたのかッ?

 

くっ、だけど幸いなことに男はそこから一歩も動かず待っている。早いとこ逃げてみんなに……。

 

「残念だが、僕が手を出すまでもないと判断して動かなかった」

 

 

ザシュッと肉を貫く音が胸から響く。胸から小さな手が生えて心臓を握っているのではないか。

 

「ぐ……ぼ……」

「これでおしまい――――バイバイ」

 

瞼が重い…………意識が沈む。

俺は自分の心臓を握られている光景を見ていることしかできず、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!!




え? なにこのシリアス…………。

次回、現れた最厄達

――――そして敵は顔を出しはじめていた

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