とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「ここはどこで、あなたは誰?」

by小さな少年より


第九十九話

(アオサイド)

 

 

目を開けると、そこは綺麗な青空が広がる湖の上だった。自分は水遁の術が使えたのか、水の中には沈むことはなかった。

 

…………綺麗な青空だなぁ、ホント。

 

でもこの景色…………どこかで…………。

 

 

自分はふとそう思ったとき、誰かの泣き声が聞こえた。

「どうして…………」「なんで…………」とすすり泣く誰かが目に写る。

 

泣いてるのは小さな少年だ。黒髪で青い瞳の……………………え?

 

自分に似ている…………?

 

「お前はいったい…………」

 

自分はそう呟くと少年は自分に振り返る。やっぱり自分にそっくりだ。

 

「お兄ちゃん……オレは間違っていたのかな…………」

「間違っている? それが泣いてる理由か」

「うん…………あのね――――」

 

ポツリポツリと彼は語り始める。彼は救いのヒーローになりたくて不殺を誓った。

 

しかし環境がそれを許さない。戦争でそんな信念など無意味だと思い知らされたそうだ。

 

 

――――彼の恩師が死ぬという形で。

 

 

彼の理想は間違いではない。誰もが望んでいるモノだ。

しかし叶わない、実現できない――――それが『理想』

 

厳しい現実の前では無に還らされたのである。

 

「……………………」

 

無言になる。彼の質問には明確な答えがない。いや、違う。

答えはあるが正しい(・・・)と断定できない。

 

まあ人の答えは十人十色だ。彼の求める答えが、自分が出した答えが合うとは限らないのだから。

 

 

『さて、答えは得たかい?』

「ッ!?」

 

自分の背後には同い年の男がいた。顔は――――ない。真っ白な身体でかろうじて人間だとわかる変な存在だ。

 

「お前は……」

『僕が何者かなんてどうだっていいだろ? それよりも彼に答えを出してあげなよ』

 

真っ白な存在に勧められて自分は少年に向き合う。

 

答えは――――――出せない。

 

自分が出す答えがそれでナニカが決まってしまいそうなそんな気がしたのだ。

 

『やれやれ…………どうやらまだまだ、ここに来るのが早かったみたいだね』

「どういうことだ?」

『君は既に知っている(・・・・・・・)さ。だから僕は答えない。答えてあげない。ヒントは既に出ているからね』

 

真っ白な存在が指を鳴らす。すると、身体が徐々に湖に沈み始めたではないか。

 

ここはこいつの世界なのか!?

 

『また会おうよ、○○くん。今度は君の答えを――――君が導いた道をこの少年に教えてやってよ』

 

 

意識がなくなる前に真っ白な存在が笑っていたような気がした…………。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

退院したある日、管理外世界にてロストロギアが紛れ込んだらしい。それを我らが隊長はやてさんがその任務を承り、その世界に行くことになった。

 

てか、承けたまったというよりぶんどった感じだ。「休暇をくれやァァァァァ!!」とぶちギレる彼女に敵う上司はあまりいない。

 

そして自分はというと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ退院前の自分はベッドに縛られて搬送されてるのでしょうか…………」

「仕方あるまい。貴様を一人にすればまた女性に迷惑をかけるだろう」

「あれはスキンシップですよ、衛さん」

「たわけ。あれはどこからどう見てもセクハラだろうに」

 

ばんなそかな。とは言え動けない自分はドナドナ気分で次元船に連れて行かれるのだった。

 

 

「シキ、シキ!! あの巨大な塊はなんなのだ!」

「次元船って言われてるモノだ。しかし興味深い……。はやて、あれを解体していいか?」

「なんであんたは興味もったモノを解体したがるんや!?」

 

なお、シイは残り、キリトはアスナに縛られてミッドにいる。唯一付いてきた一誠は食事に夢中だったことを追記しておく。

 

…………混沌化してきたなぁ。

 

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

地球にたどり着いた機動六課は現地の協力者であるアリサ・バニングスと月村すずかと出会った。隊長達は彼女達との再会を喜び、紹介していないメンバーを紹介してから彼らはバニングスの別荘に向かった。

 

そこは森に包まれ、湖がある自然豊かな別荘だった。エリオとキャロとスバルははしゃぐ中、アオは「子どもだなぁ」と呟く。

 

まあそれはさておき、と彼はそう思いティアナに声をかける。

 

「……何よ」

「なんか落ち込んでいると思ってな」

「なら、放っておいてよ」

「無理だな。なんせ、自分はお人好しらしいから」

 

沈黙。それから会話が続かず、彼と彼女は湖を見ているだけだった。

 

「スバルから聞いた。『無血の死神』を怨んでいるって」

「ッ…………あのバカ」

「あいつだって自分に話すまで迷っていたさ。わかってやれよ」

「……それで復讐をやめろと?」

「さあね。別に止めるつもりはないさ」

 

アオの言葉にティアナは目を丸くする。てっきり止めるものかと思っていた。

 

「自分はティアナの意思を尊重するよ。でも覚えてくれ。『復讐』は必ず悲劇をもたらす……ってね」

「どういうことよ?」

「んー、これは先生から聞いた話なんだけど、例えば誰かが復讐を誓って達成したとしよう。すると復讐された人物の親族は復讐した人物に報復する。それから報復した人物は今度は報復された人物の親族に復讐される。つまり、復讐ってのは『無限に続く悲劇』なんだ」

「だから必ず悲劇が起きる……か」

「そゆこと。ま、赦す赦さないのはティアナの自由さ。復讐するなとは言わないけど…………忘れないで。ティアナは一人じゃない。ティアナの周りには仲間がいるってことをな」

 

アオはそう言ってティアナから離れて子ども達の水遊びに加わった。残った彼女は呟く。

 

 

「……どうすればいいのよ」

 

 

今の彼女は闇の中。

されど彼女の周りは光だ。

 

いつか彼女がそこから救われることを祈るアオだった…………。

 

 

 

 

 

 

(ソラサイド)

 

 

 

 

 

 

久しぶりに地球にやってきたオレこと神威ソラは欠伸をしながら翠屋にいた。どうもまどか達が「ケーキが食べたい。いつ行くの? 今でしょ!」とノリノリにお願いしてきたため、ケーキを買いに来たのである。

 

ついでに気分転換も来ていたのであるが、スカさんからのお願いもある。どうも最高評議会の連中に例の古代の遺物を強制的に取られたらしい。不機嫌な彼は地球に落ちたロストロギアを回収して嫌がらせに使うらしい。

 

まあ、これが飲み終わったら探しにいくとするか。

 

「むぅ、このブラックは苦い……。ミルクはない? マスター」

「お子ちゃまね、千香。この苦さがたまらないのよ」

「ぬぬぬ、なんだこのいいようのない敗北感は…………」

「砂糖を入れてるあんたが言うべき言葉じゃないわよ、ほむら」

 

取り巻きは知っての通りのこの二人。時間停止のほむらと究極の変態の千香、そして音の使い手のさやかである。

つい、この間さやかが考えた超音波攻撃は効いた。平衡感覚が掴めなくなるという恐ろしさを直に感じたからな。

 

「相変わらずだね、ソラくんは」

「相変わらずですよ、マスター。てか、いつノエルを雇ったのですか? あの変態はある意味敵ですよ。店を乗っ取ってイロモノ喫茶店にされますよ。実体験のあるし」

「はっはっはっ、大丈夫だよ。彼女は彼とセットでアルバイトしているからいつも暴走したときは彼が仕止めてるから♪」

「笑顔でとんでもないこと言ってるなぁ」

 

ここでノエルに再会したときは驚いた。メイド服を着る辺りは相変わらずだが、ランダムでどこかへ放浪するこの変態女が一つの世界にとどまるなんてありえない。

まあ、士郎さんの話から察するに貰い手が見つかったということだろう。

 

おめでとうノエル。そしてババアの年齢なのに肌年齢に騙されて、貰らってくれた男性に幸あれ。

 

「ノエルじゃなくてエールだよん、ソラっち」

「また偽名か?」

「ううん、本名。探し物が見つかったから元に戻そうと思ったの。きゃ☆ 言っちゃった♪」

「ババアが言うとキモい」

「うにゅー…………ババアなんてひどいー。ほら、見てよ。このピチピチ潤いのあるお肌を!」

「見た目が二十代なのは士郎さんと桃子さん並の年齢詐欺だろ」

 

はぁ…………なんでこいつがいるんだよ。面倒なヤツに出くわした上に相方の二人(ほむらとさやか)はくだらない戦いで火花を散らしている。

 

オレのライフ(SUN値)はゼロだよー…………。

 

「ただいま、お母さんお父さん! 今日は私の――――」

 

ん?とカウンターから振り返るとそこには機動六課のみなさんがいた。画像でしか見たことないヤツや名前がわからないヤツもいる。

 

まあ、気にする必要ないと思いコーヒーを飲むことにした。

 

「なんで『無血の死神』がここにいるのよ!」

「うるせぇなツインテ。喫茶店では静かにするのがマナーだろ」

「犯罪者のあんたには言われたくないわよ! てか、なんで呑気にコーヒーが飲めるの!?」

「わっちのティータイムは何人たりとも邪魔はさせぬ」

「腹立つ! なんか腹立つから殴らせろォォォォォ!!」

 

乱心するツインテを青髪女が羽交い締めにして止める。

がんばれー。オレのティータイムはお前にかかっているのだー(棒読み)

 

「余裕ね、ソラ」

「これがスタンダードになってきたところあたし達もぶっ飛んでいるのかねー」

「安心しなさい。あなたは元からよ」

「やかましい。人外確定女」

「なんですって、このネトラレ女」

 

バチバチバチバチ!!

 

火花を再び散らす二人に千香は「キャットファイトフラグ、キタコレ!」とカメラモードでいつでもハプニングが起きても撮れるようにしていた。

 

相変わらずである。

 

「離してスバル! 離さないとあんたのおかずに生クリームのオンパレードをするわよ!」

「やめて。おかずに罪はないよ! 出来立てホヤホヤのおかずくんを生クリームで汚さないで!」

 

想像しただけで吐きそうになる図だな、そのおかず。

てか、いい加減に静かにしてくれないかなー?

 

優雅は一時が台無しじゃん。

 

 

「うっせーぞォォォォォ小娘共がァァァァァ!!」

 

 

銀のトレイが二人の脳天に落ちる。あまりの痛さに蹲る。

 

銀のトレイで叩いたのはオレより一つ下くらいの金色の瞳で茶髪の少年だ。

 

「ッ~~! 何すんのよ!」

「やかましい。こちとら接客業が売りにしてんのにこうもうるさくされたら商売できねーよ。騒ぐなら外でやれ、馬鹿共」

「あ、アンタ何者なのよ!」

 

ツインテの問いに少年は親指を自身に向けて答える。

 

「翠屋の従業員の五木雷斗。次期店長様だ!」

 

「そうなの?」と士郎さんに聞くと「そうだよ」と笑顔で答えた。

やったね。これで二世代目が確実にできたね、翠屋。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

さて、混沌化しかけたところで五木雷斗の活躍により治まった。ちなみにオレ達を捕まえようとしてきた高町やフェイトだが、雷斗の脳天ぶち抜きの刑(トレイでブッ叩く刑)により中断させられた。

 

なんでもオレ達が犯罪者だろうがなんだろうが客として来ている限り公私混同は許さないとか。

…………普通は私的なことで言われる言葉なのになー。てか、高町達の頭がとても痛そうに見えたよホント。

 

それから大人しくなって、休憩になったところでオレと雷斗と四季、そして黒髪少年の四人は席についていた。

 

「んで、テメーらは何者だ?」

「犯罪者で神器使いだ」

「錬金術士で神器使いだ」

「奇遇だな。俺も喫茶店の従業員で神器使いだ」

「なにこのカオス!?」

 

八神がツッコんだ。いや確かに神器使いのみが共通点でその他がバラバラだ。

てか、錬金術士ってアレか? 合成魔獣を造り出すアレか?

 

「よく知ってるじゃん。そうだ、俺はそれを造り出していた。ちなみに一番のお気に入りは『にゃー』と鳴く顔が猫なドラゴンだ」

「いやどんな生物!? めちゃくちゃシュールなんだけど!」

「甘いな。知り合いの中には顔が猫で身体がゴリゴリマッチョなナイスボディな合成魔獣がいたぞ」

「そんな合成魔獣は嫌すぎる!」

 

四季の美的センスがわかんない! 人のこと言えないけど、その合成魔獣になんの需要があるんだよ!

 

「バカヤロー。『にゃー』という破壊光線が撃てるんだぞ。ノーモーションで撃てるんだぜ? 『んちゃ砲』なんだぜ?」

「無駄に強いなオイ!」

「オイ、『ばいちゃ砲』はあるのか? あれがなければ不完全だぞ」

「雷斗もなに言ってるの!?」

 

こいつらは何を求めてるんだよ、そのドラゴンもどきに!

てか、鳥山先生の作品に感化されすぎだぞ!

 

「目指せ、『スーパーサイ人』」

「どうでもいいわ!」

 

四季の目標がもうわかんない…………。

 

「ツッコミ疲れないか?」

「それなら変われよ雷斗。こいつはある意味変態より疲れる」

「変人にいちいち構うな。変態より数倍疲れる人種にいちいちツッコんでいたら廃人なるぞ」

「大袈裟すぎね? それ……」

「ちなみにこいつの作品の中に『かめはめ波』が撃てる猿がいる」

「なにそのいらない情報」

 

というか二人って知り合いなのかよ?

そこに疑問があったので質問すると帰ってきたのはyesだった。

 

「前世からの付き合いだ。コイツに何度も実験動物扱いされたことか……」

「何言ってやがる。お前も人を技の開発のサンドバックしてたじゃねぇか。お互い様だろ」

「女体化する薬を飲まされてエールに襲われたことがあるんだけど?」

「………………………………」

「オイ、口笛吹いて誤魔化すな」

 

そんなこともあったんかい。てか、雷斗くんマジどんまい。すると四季は今度はオレに話しかけた。

 

「さてソラ。お前の目的はなんだ?」

「管理局をブッ潰す」

「…………なるほど。だけど、潰されたことに影響はどうするつもりだ? これが潰れたら治安がかなり悪くなるんだが」

「知るか。こいつらは人の大切な者に手を出した。だから潰す。治安が悪くなろうが知ったことじゃない」

 

オレの答えに雷斗は眉間に皺をよせる。何か言いたそうだが、反論できる素材がないんだろうな。

 

「あのー、ちょっといいか?」

 

オレ達の話に参加して来なかった黒髪少年がやっと会話に参加してきた。んで、何か言いたいことがあるのか?

 

「アオと呼んでくれ。まずその考えは極端すぎるじゃないか? いくら管理局が汚職していると言っても、この組織による影響は絶大なんだ。その抑止力を潰すことはやり過ぎる」

「やり過ぎが丁度いいんだよ。一度滅んだ方がいい教訓だ。バカ共(管理局)は大きくなりすぎて下の立場を理解していない。また魔法が使えないとか犯罪者だからって偉そうにふんぞりかえってる上級魔導士はバカばかりだ。居場所を無くすことを体験してろって話だ」

「……上級魔導士の中にはまともなヤツはいる。家族を想いやるいい人もいる」

「それは管理局の中だ。外から見ればオレが言ってたヤツらが多い」

「お前も自分が言ってたヤツが多いことも知らないだろ?」

 

…………こいつ。

 

「あんた、ヒーローに憧れたことあるか?」

「あった。けど、捨てた」

「なんでだよ?」

「実現できないと思い知ったからだ。どんなにがんばってもどんなにオレの想いを叫んでも結局変わることがなかった。そのせいで大切な人を失った」

 

オレがそう言ってコーヒーを飲むとアオは苦虫を噛んだ顔になった。

 

「だからオレはヒーローより英雄になることにした。敵に畏怖され、蹂躙する化け物にな」

「だけどそれは……」

「ああそうさ。いつか一人になる。だが、それがどうした? 理想に囚われて大切な人を失うくらいなら敵を皆殺しにした方がマシだ。それがオレが経験し、導き出した一つの答えだ」

 

オレはそう言って席に立つ。

お金は既に払い済みだし、後はケーキを持って帰るだけだ。

 

「お前はお前で答えを見つけ出せればいいさ、アオ。オレはもうヒーローになるつもりはないしな」

 

オレはそう言って店から出ようとするとアオが立ち上がった。

 

「……あんたは自分が止める。あんたの行動で誰かが悲しむなら絶対止めてやる」

「ほう? それは楽しみだねぇー…………。つまりオレを殺して止めたいと?」

「違う! あんたを救う。そんな悲しい考えしかできないあんたを救いたいんだ!」

 

オレを救う? 悲しい?

は! くだらない……。

 

「やってみろよヒーロー……。そんなくだらない理想をぶっ壊してやる」

「やってやるさ英雄……。悲劇の登場人物を救うのはいつだってヒーローさ」

 

 

オレはほむら達と店を出て空を見上げる。笑みが自然と溢れる。

 

――――ホント…………らしいよ、お前は

 

だからこそ、アオ…………お前だけは徹底的に潰してやるよ。

 

 

 

 

 

(??サイド)

 

 

 

 

 

「はぁ…………厄介なことになったな、雷斗」

「ああ。全くだ…………」

「というか今のお前が弟子と戦って勝てる?」

「…………アイツは甘いだからこそ勝てる相手だが、甘さと容赦がないなら別だ。神器の性能を駆使しまえば勝てない」

「それはつまり?」

「『過去』と『今』じゃあ、まるっきり違う。今のアイツは最高にして最強の神器使いだ『最凶』の俺が止められるかどうかも怪しい」

「と言いつつも止める気満々…………だろ?」

「……………………」

「『アレ』はある意味お前だよ。そして『閃光』が求めたあいつじゃない。お前は自分とは違う答えを持った神器使いになってほしかったんだろ?」

「…………だから俺が止めてみせる。必ず、な…………」

 

――――とある少年の決意。

――――とある師の決意。

 

『無血の死神』と『閃光』――――ソラと雷斗

 

『最高にして最強の神器使い』と『無名の神器使い』――――ソラとアオ

 

 

三人の戦いは…………近い。

 

「あれ? そういえば一誠は?」

「さあ、道に迷ってるんじゃね? 夕飯ごろには戻ってくるだろ」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

兵藤一誠は人外である。ドラゴンの一族でゴムゴムの力を持つ変わった男である。

生命力は高く、身体能力も高い。彼自身も普通に考えて負けるはずがないと思っている。

なぜこのようなことを言っているのかと言うと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その彼が瀕死(・・)になっていたからである。

 

「ゴム人間って普通の打撃系がなかなか効かないんだなー」

「でも海楼石の籠手で拳が通るようになったじゃない」

「あんま使いたくなかった戦法だけどクライアントの意向だしなぁ」

 

男はしぶしぶと言った感じでその籠手を使っていたようだ。一誠はなんとか立ち上がり、決死の一撃を与えようと両手を掌打の構えをとる。

 

「ギア(セカンド)――――ゴムゴムの…………」

「おっ? 必殺?」

「『JET(ジェット)バズーカ』ッ!」

 

襲撃者の男に一撃が入った。渾身の一撃だ。そのため一誠の身体が悲鳴をあげて、身体から血が噴いた。

 

「んな、ばか……な…………」

 

一誠の下から魔方陣が浮かび、彼は光の粒子となって消えた。彼がそう言っていた根拠は――――その男にはダメージが一切効いていなかったのだ。

 

「いてーな。結構効いたな、今の」

「嘘つきなさい。びくともしてないじゃない」

「いやいや、お前と違って衝撃とかビリビリくんのよ。というかその常時アビリティがほしいな」

「必要ないでしょ。第一今のところあなたに一撃を与えられて通用するとしたら、『美国織莉子』のお気に入りぐらいじゃないかしら」

「そういえばそいつの一撃って身体の一部が吹き飛ぶんだっけ?」

 

彼と彼女は一誠が消えたことに気にせず、そしていつの間にかその場を去っていた。

 

 

 

――――二人の狙いは異世界の住人をこの世界から退場させること。生死は問わない

 

――――そして第二の犠牲者は…………もうじき現れる




最後に現れたのはスカさん陣営でも六課陣営でもありません。閑話で出てきたラスボスさんの仲間です。
ちなみに一誠は死んでいません。元の世界に還らされただけです。まあ、彼の弱点である海楼石さえなければあの男の人に勝てたかもしれませんが。

次回、銭湯――――そして戦闘…………あれ? 韻ふんでないコレ。


――――戦いは…………近い

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