ではどうぞ。
「――――彼女は愉悦の探究者。いったい昔の彼女はどこに行ったの…………」
綺麗な青空に広がる世界。そんな世界で飛べるとは素晴らしいことである。今まさにオレはそんな状態である。
こんにちわ、ソラくんです。
さてみなさん。今、オレは何しているだろうかわかるだろうか。
ヒントは目の前に高町と金髪少女とオリ主くんがいて、動けない状態です。お分かりだろうか?
「家から出たら拉致られた件…………」
「黙ってろ」
厳しいオリ主くんである。背後から攻撃するなんて不意討ちとは卑怯なり。親御さんは泣くにちがいない。
「親はいない。死んでる」
「あっそ。で、暇だ。携帯ゲーム持ってくればよかった」
「…………お前は一応辛い過去とかに同情しないのか?」
「同情したところでなんになるの? あとぶっちゃけお前の過去なんか知るか。興味のない人の過去なんかどうでもいい」
そもそも眼中にないし。
オレの答えが気に入らないのかオリ主くんの表情は険しい。いや基本そんなもんだろ。知らないのになんで同情しなきゃならん。
つーか、なんで一触即発なの高町と金髪少女は。
はっ、謎は解けた!
「修羅場か…………! すばらしい……………」
「オイなんだその顔は。愉快そうに顔して」
「いやいや、まさに一人の男を巡って争う女性の姿はとても美しいと思って」
「本音は?」
「もっと醜く争え、馬鹿共!」
「最低だなお前!」
何を言う。まどかならば、さらに場を混乱させるために暗示をかけたオカマの人を参戦させるだろう。
質の悪いことに最後に残らせるのはそのオカマだろうな。
何を隠そう、ヤツは愉悦のためにそこまで考える腹黒い女だからだ!!
…………昔は純粋無垢だったのに。
若干黄昏ていると、いきなり黒い衣装を着た少年が割って入った。…………誰あれ?
「クロノ・ハラオウン。十四歳の管理局執務官さ」
「労働基準法を問いたい年齢だなオイ」
どうでもいいけど、なんか金髪少女を捕まえようとしていた。しかしオリ主くんはヒーローのように止め、勝手に戦いを始めやがった。
オイ、オレは放置かよ。
「うーんっと」
とりあえず光の縄を解錠し、自由の身になった。一目みたらだいたい術式もわかるし。
『あ、ソラくん大丈夫?』
『遅いテレパシーだな』
『ティヒヒヒ、ごめんね。ちょっと人探しに時間かかちゃった♪』
人って誰だよ。なんか嫌な予感するんだけど。
すると、猛スピードでオリ主くんに向かっていく浅黒なマッスルさんがいた。
え、まさか……………………。
「ダァァァァァリィィィィィンッッッ!」
「ぎゃあァァァァァ! 誰だよあんた!?」
「しどい! あちきという身がありながらそこ美少年とよろしくしてたのネェン!?」
………………………………。
『…………オイもしかしてアレはお前の差し金?』
『囮にはもってこいの人材だね♪ 暗示をかけたオカマさん役に立った?』
『阿鼻叫喚へと変貌したわ!!』
やはりこいつはただでは済ませない。予想通りにしてくれたことにオレは嘆息を吐いた。
『あ、それと今すぐそこから離れてね』
『え。なにするつもり?』
『オリ主くんと黒い子もろともブッ飛ばすから♪』
『なにおっそろいこと言っちゃってるのこの娘!?』
マジギレしちゃってる!?
って遥向こうにピンクに光る何かが!
あ。これはヤバい。マジだわ。
「オリ主くんー! 早く逃げてねー! 今から悪魔がそこら一帯ブッ飛ばすからなー?」
「ちょっ、逃げるな!」
しかしスルーでござる。だって命大事もん。
というわけで、オレは脚力を駆使してそこから遠くへ離れた。
ヤバいヤバいヤバい! もうそこまで――――――――
ジュッッッドォォォォォォォンンン!!!!
――――その十秒後、ピンクの無数の矢が雨のように落ちてきて、そこら一帯を文字どおりブッ飛ばした。
それはもう核兵器のごとくの威力で。
走馬灯の中でオレは、その攻撃はかつてほむらを助けるために撃ったキュゥべぇ殲滅の魔法だったと思い出した。
と、言っても生きてるけど。
その余波でオレの身体も空へ投げ飛ばされ、どこかの家の屋根に受け身をとらない形で叩きつけられた。
「イッテー…………」
屋根からブッ飛んだ一帯を見ると黒いモノが三体あった。間違いない。高町とオリ主くんと少年だ。
マッスルな男性は…………あ、いた。なんか正気に戻ってどっかに行っちゃった。
なんであいつだけ無事? 変態だからか?
「あ、よかった。逃げ切れたんだね」
ピンクの悪魔がニコニコしながら舞い降りた。
まどか神モードと言われる円環の理の衣装をきたまどかだった。全力全壊のときに見せる姿だ。
「死ぬかと思った」
「ひどい人達だね。ソラをこういうことするなんて」
「いや犯人お前だよ」
まどかにツッコむが彼女は口笛を吹きながら誤魔化す。拳骨を落としたい。
「どうせならどっかのヒーローのように助けてほしかった」
「その助け方をすれば惚れる?」
「惚れはしないけど見る目が変わってた」
「なんてこったい。ますますフラグ立てて、即ほむらちゃん共々結婚というハーレムルートが潰えちゃった…………!」
「自重してよほんと」
ハッチャけるヤツの暴走は誰にも止められないか。まどかは元の姿に戻った。
『少しいいかしら?』
「よし、助け方はさておいてお礼に何か叶えてあげよう」
「結婚して! むしろ抱いて!」
「あと九年待て淫乱」
「くっ…………法律国家め!」
『ちょっといいかしら?』
「ならギャルのパンティをもらって!」
「なにその新しいウーロン。与えるパンティってなんぞ。ていうか何気なく脱がないの」
「くっ…………理性め! 私の邪魔を!!」
「いや邪魔するわマジで」
『あの……聞いてる? ねえ』
「翠屋のシュークリームでどうだ」
「三色味のを二つ」
「例の高いのか。ま、いっか。ついでにマミさんのを一つずつ買いにいくか。杏子が何かとうるさそうだし」
「やったー♪ ソラくん大好き!」
「うぉッ!? いきなり抱きつくなよ!」
「えへへへ、照れてかわいいよソラくん♪」
「たくっ」
こういうときだけ甘えてくるから無下にできない。
「ソラくんの背中って暖かいね。ふぁー眠くなってきたよ…………」
「寝ろよ。送ってやるから」
「ありがと…………スースー」
「お疲れ様…………まどか」
眠る彼女を愛しそうに見ながらオレは眠り姫を背負い翠屋に向かった。
こういうときのまどかは子どもらしくてかわいらしいよな。
きれいな青空が広がるそんな世界で、そう思う一日だった。
『話を聞いてよ…………クスン』
知らない間に知らない女性が映るウィンドに気づいたのは翠屋のシュークリームを買った後だった。
え、この人誰?
次回、接触。
彼と彼女が何者かなんて最初から決まっている。