とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「許さない、赦さない、ユルサナイ」

by神威ソラ――――『無血の死神』


第九十六話

さて、今宵始まるのは少年少女が望んだ復讐劇の序章。

誰が失い、誰が悲しむかは時の運。

 

では、始めよう――――オレ達の復讐(劇場)を。

 

 

 

 

 

(はやてサイド)

 

 

 

 

 

パーティ会場は大物ばかりで賑わう中で不意にその声が静かになった。

理由は二人の女性の登場である。一人はメイドで、金髪のストレートヘアー。スタイルは抜群で母性溢れそうなくらいの穏やか雰囲気を周りに与える美女である。

もう一人はメイドの女性のような大きな胸はないが、スレンダーでモデルのような女性で、私や周りから見れば人形のような魅力を感じさせる黒いドレスを着た婦人やった。

 

「衛くん、もしかしてあの人…………」

「『ミッドの歌姫』だ。まさか幻と言われるほどの有名人がこのようなところへ来るとは……」

 

『ミッドの歌姫』。彼女は歌手活動で表に出ることは滅多になく、あまり顔を知られていない女性だが、その歌は周りを魅了し、販売されたCDもすぐ完売するほどの大人気のため、周囲から『幻の歌手』と呼ばれている。

 

「情報が少なすぎて誰だったのか一瞬わからぬかった」

「せやけど、なんで幻の有名人がこのホテルにやろ…………?」

 

『ミッドの歌姫』はしばらく大手企業の人達と談笑した後、司会者からマイクを借りていた。

 

「みなさん、こんにちわ。ミキ・アマノカワです。今日はみなさんに私の新曲と重大なお知らせがあります。まずは私の歌を聞いてください♪」

 

ミキ・アマノカワが合図すると曲が鳴り、彼女は歌う。

 

 

 

――――美しい旋律

――――誰もが聞き入る美声

――――そして歌う姿はまさに女神に等しいと表現できるものやった。

 

私もつい彼女の美声に感動して聞き入ってしまった。仕事中やけど、この美声を聞いたら仕事どころやないかもしれへんようになる。

 

「? 衛くん、どないしたん?」

「いや、どこかで聞いたことがある歌だな……と思って」

「そりゃあとCDちゃうの?」

「いや……CDからではなかったと思うが……」

 

訝しげに衛くんはミキさんの歌を聞いていた。

テレビ番組から聞いたんちゃうの、と思っているとミキさんの音が終わった。

 

とてもええ曲やったで。

 

「ありがとうございました! それではミキさん、続きまして重大発表をお願い致します!」

 

司会者がそう言うとミキさんはマイクを握り、口を開いた。

 

「今日はみなさんにお知らせしたいことがあります♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、ミキ・アマノカワはジェイル・スカエリエッティの手先です♪」

 

……………………は?

 

私だけでなく周りの人達が凍りつく。なんや、スンゴイカミングアウトしたような…………。

 

「え、えーとミキさん? それはどういうことですか?」

「どうもこうも事実でーす♪ 私はスカさんの仲間ってことなんだよ? キャッ、言っちゃった♪」

「じょ、冗談はほどほどに…………」

「冗談? ボク(・・)は常に全力全壊だよ?」

 

口調が変わった直後、私と衛くんはバリアジャケットにセットしてミキさんに向けて魔弾を放つ。彼女は私達の魔法を避けるまでもなく、ナニカで遮った。

 

「いきなり攻撃するなんて物騒じゃないか。ねぇ、はやてちゃんに衛」

「やかましい。堂々と我らの目の前に現れといて攻撃せずにいられるか」

「全くや。まさか一人で来ないなとこに来たやないよな?」

 

私の質問にミキ――――いや『天ヶ瀬千香』はクスクスと笑い出す。

どうなら一人やないことやな。どこかに千香ちゃんの仲間がいるはずや!

 

「いやー確かにそうだけどー…………クスクス」

「何がおもろいねん」

 

 

――――せやけど、私達はここで気づくべきやった。

 

 

「だってさぁ、ボクは一人で敵地に来てないけど――――」

 

 

――――私達四人の隊長達は中を警戒するんやなく

 

 

外には(・・・)彼が来ているんだよ?」

 

 

――――外から来る化け物を警戒するべきやったんや、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町、ハラオウン!! 今すぐ外へ向かえェェェェェ!!」

 

私がそれに気づいたときに衛くんはなのはちゃんやフェイトちゃんに向けて叫んどった。

 

「もう遅いよ」

 

なのはちゃんやフェイトちゃんがバリアジャケットを纏ったときには千香ちゃんの神器が発動しており――――――――その神器で私達は会場ごと閉じ込められた。

 

 

 

 

(アオサイド)

 

 

 

 

自分達が任されたのは外の守備である。…………全く、襲撃する気配がないから意味がないと思う。

 

あーあ、中では隊長達は内部監視という建前で楽しんでいるだろうなぁー。

 

 

――――そう思っていた刹那、ホテルにナニカが覆われた気配がした。

 

「な、なんだぁ!?」

「これは…………」

 

シグナムさんは見覚えあると言った顔でホテルを覆った半透明の結界を見ていた。

すると、デバイスから隊長達の通信が入った。

 

『緊急事態や! 私らが千香ちゃんの策略で閉じ込められてもうた!』

「本当ですか主はやて!」

『今のところは千香ちゃんを捕らえようと衛くん達が戦ってるんやけど、千香ちゃんだけやなく三人(・・)も潜んでおった!』

「誰と誰ですか?」

「マミさんとまどかちゃん、あとフェイトちゃんに似た女性や!」

 

フェイトさんに似た女性?

プロジェクトFか?

 

『それよりも周囲の警戒を最優先にして! 今、そっちにSSS(トリプルエス)級の犯罪者が向かっとる!』

「SSS級……ですと!?」

 

SSS級――――通称災厄の存在。

管理局では魔力ランクで犯罪者の危険性を示している。S級以上だと人災扱いされ、AAA級の魔導士達が束にならないと勝てない存在である。

SS級くらいは過去に一人いたくらいで逆に言えばSS級以上は本来存在しない。

 

 

――――だが四年前にSS級を超える者が現れたのだ。

 

そしてそれはたった一人の男を示している。

 

「まさか……ヤツですか?」

『せや、最悪シグナムだけやなく全員でかからへんとヤバいあの人や』

 

険しい表情のままシグナムさんははやてさんの通信を聞いていた。

どうやらそのSSS級の犯罪者がこちらに向かっているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――呑気に通信していて大丈夫か?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない第三者の声が聞こえた。いつのまにかデバイスのウインドウに『アンノウン』と表示されていた。

どうやらこの場にいる局員全員に通信されているようだ。

 

『その声は…………やっぱり…………』

『その通り。オレさ。久しぶりだな、八神』

『一応、衛くんが婿入りしたから八神は実質二人やで』

『どうでもいい。衛は衛。八神は八神と言うまでだ』

 

相変わらずだ、とシグナムさんはぼやいていた。しかし、こんな彼女のマジな表情は見たことがない。

恐怖と喜び満ちている顔だ。

 

『お前らに言いたいことがあってな。まずは言っておく――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――宣戦布告だ』

 

その言葉を聞いた直後、ガジェットの反応が起きる。

ヤバい……これは!

 

「防ぎきれようがない!」

 

ザコを相手するのは自分達だが、はやてさんはSSS級を相手するなら全員でかからないとヤバい。

つまり、今いるシグナムさんとヴィータさんの二人の隊長で彼を相手しなければならない。

 

『さてさて、今宵のお前達の相手は――――無血の死神。

 

後悔しろ、無力さを思いしれ。

 

…………そして、とっと死ね』

 

その宣告と共に自分達はガジェット達の反応があるところへ向かった。

 

 

 

 

 

(ティアナサイド)

 

 

 

 

あいつが…………兄さんの仇がここに…………。

 

私の顔は笑みで歪む。スバルは心配そうに見ていたが気にしない。私はヤツを絶対に捕まえる。ランスター家の弾丸がどんな相手でも通用すると証明するんだ!

 

 

 

 

 

(シイサイド)

 

 

 

 

 

ここにお兄ちゃんが…………『無血の死神』が…………。

 

私は神器を握りしめる。私には戦う力はない。けれど、他者を支える力には長けている。

 

「サイト、お願い」

「さっそく仕事は英雄退治かよ。ま、全力でお相手するだけだがな」

 

不敵に笑うサイトに続いて私は彼のいる場所に向かう。




次回、最悪

――――彼女は挑むべきではなかった。そのせいで……失う

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