とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

113 / 158
「百合カップル? いいえ、重犯罪者です」

byキリト


第九十一話

(アオサイド)

 

 

自分は現在、隊長命令で五河四季とキリトと交流を深めていた。

 

四季とキリトはシイに召喚された神器使いで、キリトはもう一度『無血の死神』に会うために召喚に応じたそうだ。

どうもキリトはヤツとは友人のようで、かつて悪者から恋人を救ってくれたそうだ。

 

一方、四季は好奇心でそれに応じ、ついでに夜刀神十香も連れてきたらしい。こいつはラタトクス機関という組織に属しており、精霊というカワイ娘ちゃんとキャッキャッウフフというデート作戦で出れさせて封印するという役割を担っていたのだ。

 

つまり、リア充男だったのだ!

 

合計四人の女の子とイチャイチャしていたとはうらやまけしからん! 即刻、チェンジを所望したい!

 

「断る。イチャイチャすることなんかどうでもいいが、俺にとって精霊は興味深い対象だ。そう簡単に渡せるか」

「つまり、シキは私の恋人なんだな!」

「いや、ペットだ」

「ペットッ? 飼われてるのか、私は!?」

 

まさかの予想外の発言に十香は驚愕。…………そういえば、大体この子って四季に食べ物与えられて喜んでいたな。ワンコのごとく。

 

「なるほど、愛玩用なのですね。わかります」

「だろ? 癒されるし」

「私はワンコではなーいッ!」

 

プンスカ怒るが、四季に頭を撫でられてほにゃーと頬が緩んでいた。

あらやだ。一家に一人ほしいわ、この子。

 

「話を戻すぞ。お前は神器使い…………というわけじゃないんだな?」

「まあな。まだ神器が発現してないんだと思うけど、自分って記憶喪失だからねー。隊長に拾われるまでの記憶がないんだよ」

 

ヘラヘラと笑って言うが、話していることは深刻だ。自分が誰かわからないという苦しみはあると言えばあるが俺は気にしてない。

周りが気にしてあまり関わらないようにしてるけど。

 

しかし四季はどうでもよさそうに「ふーん」と答えて会話を続ける。

 

「お前に魔法を教えたその『先生』ってのは何者なんだ? 基本構造や魔力生成のどれを見てもほぼ完璧に仕上がっていた。ここまでできるように見てくれたヤツに興味が出てきたぜ」

「うーん、『先生』が何者か…………。自分もさっぱりだけど、たぶん四季より強いかも。神器が二つあるらしいし」

「神器が二つ…………か。仮に敵なら厄介だな」

 

四季が難しい表情をしていたが俺は笑って四季の推測を否定した。

だってあの『先生』はヒーローを目指す大のお人好しなんだよ。そんな人がテロリストに加担するなんてあり得なかった。

 

「甘いな。そういうヤツだからこそ、油断できねぇよ」

 

四季はコーヒーを飲みながらそう言う。自分だってそんなこと信じたくない。

 

…………あの人に限ってそんなこと……あるはずない。

 

「それより『無血の死神』ってヤツの情報がほしい。キリト、アオ。何か知ってるか?」

「容赦のない規格外……としか言いようがない。アイツはあの『約束されし勝利』の神器使いを苦戦ながらも倒したんだ。しかもその神器使いはあの『神器使い戦争』では老将だったらしいって後になってわかったんだ。要するに……生半可な実力では瞬殺されるオチだ」

 

キリトの印象によるとかなり――――いや、超マスタークラスというべきの実力者みたいだ。

新人のティアナ達が相手すれば『絶対に負ける』じゃなくて『絶対に殺される』という結末かもな。

 

ちなみに自分は『無血の死神』という人物は知らない。いや、『覚えてない』のだ。

 

隊長に拾われるまで自分は先生と過ごした日常と名前しか覚えていない。シャマル先生曰く、どうも記憶障害らしいが自分はそうとも思えない。

 

なんなんだ……この違和感は……。そんなことを思っていると、アラートが鳴り響く。

 

ガジェットとドールか!?

 

「やれやれ、またヤツらか。昨日もあんなに来たのに、ご苦労なヤツらだ」

「早く行こうぜ、四季。今日から俺も参加なんだから」

「あいにく、俺は行かねーよ。昨日でやる気の全てを費やしたから」

「我が儘言うなよ。シイに怒鳴られるぞ」

「昨日怒鳴れたし、それに…………」

「それに?」

「今朝、謹慎処分くらった。やっぱ昨日の仕返しが原因か」

「お前、なにしたの!?」

 

あー、そういえばシイさん。昨夜のショートケーキの苺が『情熱の君へ』という最強のタバスコに変えられてたと愚痴を言ってたが……あんたが原因だったのか。

 

てか、この人。完全にやる気ナッシングだよ。今まさに十香を餌付けしてるし。

 

 

まあなんにせよ…………。自分とキリトと集合場所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーか、一誠。お前も来いや」

「待ってくれよ、今は肉を食ってんだから」

「はよ来い」

「うぬー…………」

 

紹介し忘れていたがこいつの名前は兵藤一誠。性欲魔神ならぬ食欲魔神である。

 

この間なんか食ってばかりでリニアに来なかったしな…………。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

今回の任務は昨日と同じでレトリックの確保だった。搬送中に奪われたレリックを確保のために、ガジェットと襲撃者が逃げ込んだ廃墟の都市へ来ていた。

 

スターズとライトニングはガジェットを殲滅しに行き、マッスル部隊の隊長、自分、キリト、シイさんとで襲撃者を捜すことになった。

さらに二人手に分かれて発見率を上げてるわけだが。

 

「そう簡単に行かない……か」

「自分もそう思うよ。こんなに広かったら見つからない」

「てか、今回の襲撃者の特徴は?」

「えっと、確か。ピンクのツインテールと黒髪ロングの…………」

 

と自分が狭い路地道の曲がり角へ足を運ぼうとしたとき、キリトが手で自分を止める。

 

『――――? ――――』

『――――。――――』

 

誰かの声が聞こえた。自分とキリトはお互い頷いて曲がり角を飛び出して自分は魔法の発射の準備、キリトは神器を召喚して構えた。

 

さあ、見つけたぜ! 襲撃者さんよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あむ、んちゅ…………だ、駄目よ、まどか。こんなところで…………」

「ティヒヒヒ。大丈夫だよ、ほむらちゃん。ここなら追っ手が来ても平気だよ」

「そ、そうかもしれないけどぉ…………ぁん……」

「大丈夫。すぐに終わらせるから……ね?」

 

 

…………何やら如何わしい雰囲気でキスやら身体を触り合うピンクと黒髪の女性達。

 

普段なら大人の魅力を兼ね揃えていそうな黒髪の女性だが、押しに弱いのか、やや弱気そうになっており保護欲を掻き立てそうなギャップがあった。

 

一方、黒髪の女性に比べればやや小さいピンクの髪の女性だがその小柄容姿ながらグイグイといく野性的な行為に勇ましさを感じるギャップがあった。

 

そんな彼女達は自分達に気づいて目が合ってしまった。

うん……とりあえず自分が言うことはただ一つ。

 

「あ、すみません。ごゆっくりー」

「いや違うだろ。この二人は犯人だろ」

 

キリトが自分にツッコむ。いや、違うでしょ。絶対この人じゃないって。

犯人がこんな百合百合でキスし合うほどマヌケじゃないって。

この人達はたまたまここでイチャコラしていたレズカップルだよ、きっと。

 

うん、そうだ。そうに違いない。

 

「どんだけ認めたくないんだよ!? いや現実見ようぜ!」

「こんな馬鹿な現実があるか!」

 

自分が彼女達に指を向けると彼女達は口を開いた。

 

「どどど、どうしようまどか! 追い付かれちゃったわよ!?」

「そうだねー。おまけにキスし合うところ見られちゃったし」

「はぅぅ…………」

「恥ずかしがる必要ないでしょ、ほむらちゃん。だいたい、ソラくんのするときは人前でチュッチュッとキスしてるじゃん♪」

「そんなに人前でしてないわよ! 私がキスするときはあまり人気のないところよ!」

 

 

………………………………。

 

「と言ってるが…………どうする?」

 

キリトにそう言われて自分は深呼吸してからー。はい、吐く。

 

「知るかァァァァァ! なんでこんな場所でキスし合ってるんだよ!? 追っ手が来ること予想できるだろ!?」

「予想してたよー? これを終わらせた後にソラくんを襲おうと妄想してムラムラしちゃったから、ソラくんもいないし。代わりにほむらちゃんを襲って見ました!! えっへん!」

「威張るなピンク! だからってここでイチャコラすんのか!? ラブホでしてこい!」

「「だが断る」」

 

ムガァァァァァ腹立つわ、コイツらァァァァァ!

 

「あんまりペースに乗るな。コイツらのペースに乗れば戻れなくなるぞ……………………普通の人間に」

「どゆこと!? それって何かに感染するってこと!?」

「いやコイツらから感染することはあんまりないけど、コイツらの仲間に『究極の変態』がいてな。ソイツのせいで一人……感染しちゃって…………なんでアスナをもっと早く助けにいけなかったのかなぁ…………」

「オイィィィィィ神器を自分に向けるなァァァァァ!」

 

ヤベー、なんだよ。まさかキリトのトラウマを植え付けさせるほどの『究極の変態』って…………。

 

「もーいーかーい?」

「まーだだーよォォォォォ!!」

「うっわ…………全力全開で『まだ』って言ってるよ、この人」

「仕方ないだろ! キリトの何かが刺激されて鬱になってるんだから!」

「でもそんなの関係ないでーす♪」

 

どういうことだ、とピンクの女に言おうとした直後。自分はキリトを小脇に抱えて、その場を回避した。

 

ドッッッガァァァァァンッッッ!!

 

 

――――直後、凄まじい爆発音と衝撃が自分に襲いかかった。

 

「っ…………てぇー……」

 

自分は襲撃者の二人を見ると黒髪の女が撃ったと思われるバズーカ砲をその場で捨てていた。

 

「てめぇ……それ質量兵器じゃねぇか…………」

「そうね。でも関係ないわ。私達は犯罪者。法を犯す罪人。ルールを守らないのは当然じゃなくって?」

「……全くだ。神器使いを魔導士と同じもんなのかと勘違いしていた」

 

自分は口に入った砂を吐き捨て、元に戻ったキリトを下ろした。二人の女は神器を召喚し、完全に戦う雰囲気になっていた。

 

キリトはそれに応じるかのように二つ目の神器を召喚した。

 

「二対二に見えるけど、そちらの子はまだ実力が足りないわね。実質で言えば、二対一になるわ」

「甘いな朱美ほむら。確かに数ではこちらが劣るかもしれないが、二刀流ならアンタらには絶対負けない」

「アハハハ、それもそうだねー。でも私とほむらちゃんが負ける道理じゃないよー?」

「ぬかせピンク。黒髪も自分を甘く見るな。魔法だけでアンタら二人を圧倒してやる」

 

自分、キリトは構えると襲撃者二人も構える。

 

「懺悔は済んだ?」

「後悔はした?」

「「なら、安心してとっとくたばれ」」

 

 

彼女達の死刑宣告を合図に自分達の負けられない戦いが今始まった。




相変わらずのソラクオリティ。二人も毒されてきたなぁ(棒読み)
ちなみに一誠はガジェット殲滅中です。

さて次回は覚醒?

――――これが彼の……神器なの、か?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。