とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「そして最後はカオスで終わる」

by友江さやか


第八十九話

(ティアナサイド)

 

 

二対一。聞こえは私達に有利かと思われたこの戦いだが、青髪の女性のワンサイドゲームになっていた。

 

「っ! スバル、また来るわよ!!」

 

青髪の女性によって投擲されたサーベルがこちらに飛んできた。私はそれを撃ち落とそうにも、投擲された力が強いため、ポイントを逸らせるだけだった。

 

「おぉー。すごいわね。射的であたしの剣を上手く避けてるじゃない♪」

 

ナメられてる。ものすごく腹が立つ。けれど、相手は新人の私達がどうにもならない敵だ。

 

「うーん、そろそろ時間なのに遅いねー? 一刀のヤツどうしたのかな?」

「…………仲間がいるってこと?」

「まあね。あたしよりかなーり強いよ、あいつ。そうね…………あっという間にここを吹き飛ばされるくらいね」

 

ウインクする彼女の言葉に私はゾッとした。

そんな敵がここにいるのか?

 

ハッタリと思いたかったが、敵は一人でいるとは思えなかった。事実に違いないだろう。

 

 

 

――――刹那、私達の車両の天井が吹き飛んだ

 

天井は消え去り、綺麗な空が見える青空教室になった。

その隣の車両には吹き飛ばした犯人が青髪の女性に話しかけていた。

 

「見つけたのか? なら、退くぞ。今、八神衛が参戦してきたため、ガジェット達の損失が激しくなってる」

「ゲッ、衛が出てきたの? ちょっと今はマズイなー」

 

青髪の女性がそう答えると私はその女性が飛び乗る前にクロスミラージュを向ける。

 

 

――――逃がさない!!

 

私は魔力弾を撃つ。しかし、それは一刀と呼ばれる青年が投げた刃物によって弾かれた。

 

「邪魔なヤツらだなー。…………いっぺん、死んでみるか?」

 

肌に鳥肌が立った。私とスバルは咄嗟にプロテクションを発動した。

 

「『炎龍斬』!!」

 

その判断が正解だったことを示すように彼が放った斬撃が大きな炎の津波となって、私達に襲いかかる。

強すぎる一撃に私のプロテクションはあっさり破られてしまった。炎が私達に襲いかかる刹那――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ、相手はこの俺だろ? 帝王様よぉ」

 

 

――――何者かが私達の上から現れて、炎の津波を『切り裂いて』相殺した。

 

「だ、誰!?」

「何者なのよ!?」

 

謎の少年に私は言葉を出すが彼は無視して、青年に短刀を向けるだけだった。

私は文句を言おうとした直後、衛さんが私達のところに降りてきた。

 

「無事か、貴様ら」

「衛さん、彼は何者なんですか?」

「うむ、我が部隊に雇われる身となった五河四季殿だ。ヤツはレアスキル――――神器の使い手だそうだ」

 

先程の炎を消した斬撃はその神器によるものなのだと少し納得できた。だけど、傭兵を雇うことには些か不満はあった。

 

「…………信用できるのですか?」

「さてな。今のところは我にもわからぬがヤツの相方は信用に値することは、はやてと一緒の感想だった」

「八神総隊長が?」

 

八神総隊長の信用に値する人か。一度、お目にかかりたいと私は思った。

すると衛さんが、青髪の女性を見て目を丸くした。

 

「貴様は…………さやか殿か!?」

「ありま、衛? 相変わらず筋肉モリモリよね、あんた。細くなろうと思わないの?」

「マッスルモードだからモリモリなのは当然だ。見よ、この芸術的な筋肉を!!」

「ホンッッット、相変わらずよ、あんた…………」

 

衛さんの知り合いなのだろうか? 名前を知ってるところ顔見知りであることは確実だ。

私が衛さんに彼女との関係を聞くところ、彼女はどうやら『無血の死神』という人物に繋がると判明した。

 

『神威ソラ』――――七年前に上層部の圧力により、捕らえようと天宮草太が率いる部隊が襲撃したところ、返り討ちに合い、全滅した。なのはさんやフェイトさん、はやてさん、衛さんの四人もその現場にいたらしい。

彼は非殺傷ではない魔法や神器を使って、天宮部隊を皆殺しにして、その隊長である天宮草太を地獄の世界へ放り込んだそうだ。

 

それから彼は消息を断ち、この世から消滅かしたかのように現れなくなったが再び現れ、多くの局員を抹殺した。

 

局員を皆殺しとはやり過ぎだと思っている。いやそれに以前に私にはヤツには個人的な怨みがある…………。

その彼に繋がる女性が目の前にいることにいても立ってもいられなかった。しかし、衛さんは私を前へ行かせなかった。

 

「どうして止めるのですか!? 今なら…………」

「たわけッ。彼女を倒せるという甘い考えを持つな!! 貴様ごときの若造がアヤツに勝てるはずがないわ!」

「ッ…………!!」

 

叱咤され、私はやっと自覚した。

そうだ。今の私達が勝てる相手ではない。むしろ、これからも勝てることも怪しい。

戦術、技術、経験の全てがあちらの方に軍配が上がっている。

 

どちらにせよ、勝てる相手ではないのだ。

 

「やれやれ…………強そうなのが二人か」

「大丈夫だって。そろそろ、あいつが来る時間だし。…………あ、来た♪」

 

さやかと呼ばれる女性の目の前にドアが現れた。衛さんは「マズイ!」と言いながらドアに向かおうとしたが、彼女がサーベルをフルスイングした直後、衛さんはこちらへ叩きつけられた。少年もドアに飛び込もうしたがガジェットの妨害で失敗。

 

私達は犯人の青年と女性を逃してしまうのだった…………。

 

 

 

 

 

(さやかサイド)

 

 

 

 

 

「たっだいまー、チンク~♪」

「ぬぁ!? いきなり抱きついてくるな、さやか!」

 

スリスリとチンクの柔らかな頬っぺたを擦るあたしを一刀は襟首を掴んで引き離す。

 

「チンクをいじるのは後にしろ。彼女にはまずこれを渡すのが先決だ」

 

一刀はレリックを出して、チンクに渡す。

 

「管理局の追っては?」

「あるわけないでしょ? なんせ、ソラが直々に迎えに来てくれたのだから」

「そのさやか達をここへ帰した肝心の功労者は今、どこにいった?」

「さっきまどかとほむらと千香の変態三獣士に見つかって逃走中。捕まったら絶対犯されるね」

「…………ヤツのそういうところは同情するぞ」

 

変態達のターゲットとなったソラをチンクも不憫だと思っているようだ。ここ最近、ソラの干からびた姿しか見かけないのは気のせいだろうか?

 

その一方でまどか達の肌がピチピチになっていたけど。

 

「ま、いつも通りってことよね。平常運転で何よりよ」

「これが日常とはアイツの平穏はいったいどこに…………」

「ちなみにまどか達に拘束されたところを見計らって、参戦予定」

「安息の地はないのか!?」

 

当たり前よ。ソラの安息の地なんて最早、便所とマミさんの胸しかない。

 

なんでマミさんの胸が出てきたのはあの人の胸は現在進行中に成長しているのだ。二十歳になってからバストがG以上あるのはこれ如何に。まあ、ソラはその母性の塊で癒されてるのだけど。

 

あたしにツッコむチンクは呆れた顔で、質問してきた。

 

「で、『アレ』はしっかり馴染んでいたか?」

「馴染んでいたけど、まだ機能はしてないみたい。ドクターと千香にそのことを報告しておいてね」

「わかっておる。全く……、なぜあの組織に『ヤツ』を行かせるのか千香の頭はわからないことだらけだな」

 

チンクは踵を返して背を向ける。

 

…………チンクにはわからないと思うよ、きっと。

思い出してほしいんだよあたし達は。『彼』が捨てたモノを。

 

それから千香は見たいんだよ。別の可能性ってヤツを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやァァァァァそこだけはらめェェェェェ!!』

「あ、ソラが捕まった。混ざってこよ」

 

この後、ソラを四人でおいしくいただきました、まる。




はい、今回でリニアの戦いはおしまいです。

というか、彼女達は善戦した方ですよ。仮に一刀と当たっていたらまず殺されていたでしょう。
彼は子どもには少し甘いのでエリキャロはリニアから落とした程度で見逃しましたが、彼女たちを相手すればバラバラにされていたかもしれません。

この作品に出てくる『北郷一刀』はそれほど狂暴です。『変人』の四季が相手してよかったですねー、ティアナコンビは。

ちなみにティアナの『怨み』はある種のフラグです。原作通りにディーダは死にましたがそこには『無血の死神』が関わっています。

いずれ真相はわかるでしょう……。

次回は、反省会

――――そして、生まれたのは『疑問』

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